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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:Amazon Prime Video

 今年も9月11日が近づいたからかもしれないが、9.11後に最初に作られた関連映画『ユナイテッド93』がAmazonビデオの100円レンタルコーナーに入っていたので見てみた。グリーングラスは以前2011年にノルウェーの起きたウトヤ島連続殺傷事件を題材にした『7月22日』を見て非常に感銘を受けたので、過去作品も見てみたいと思っていたところだった。



 この映画には二つの緊迫が描かれている。一つは管制サイドだ。いくつかの管制が舞台になっており、アメリカ軍の関連部門も描写されているが、最初はそもそも何が起きているのかの情報が少ない中、画面上の針路や機内との交信などに「異変」を感じるところから始まっていく。会話を聞き、繰り返し再生して"planes"という単語を聞き取るシーンは、9月11日に現実に起きたことをよく知っていても鳥肌が立つ。ただのハイジャック(a plane)ではなく、planes、つまり何者かが組織的に複数の航空機をハイジャックしたのではないか、と。

 世界貿易センタービルに二機が突っ込むシーンも描写されており、ここで事態の大きさに気づき、愕然とする。いまであればソーシャルメディアで早くからリアルな情報を得られたかもしれないが、当時はまだ携帯電話を持っている人が大勢はいないようなテクノロジー環境だ。機内の人も機外の誰かから情報を得ようとするが散発的であり、結果としてもっと早く適切な情報を入手できていたら、結果は違っていたのかもしれないと思ってしまった。

 こうした情報環境はしかし、機内の人々の様々なやりとりを、いわば人生で最後の行為を映しとる。携帯電話で家族に連絡する者もいれば、その電話機を近くにいる携帯電話を持っていない人に貸し出す者もいた。祈り続ける者、大丈夫、なんとかなると自分や周囲を安心させる者。そして、なんとか反撃のチャンスをうかがっている者・・・などなど。

 グリーングラスが描きたかったのは、こうした名もなき人たちだったのだと思う。管制の人や軍の人たちも含め、この事件に関わった(そして亡くなった)人たちを画面に残したかったのだろう。『7月22日』もまさに、亡くなった人を丹念に描写し、そして残された人の闘いを鬼気迫る展開で追った作品だった。

 本作でもその鬼気迫るシーンは終盤に訪れる。しかし私たちは悲劇的な結末もまた知っている。いや、知っているからこそ最後の10分ほどのシーンを、たとえこの映像がフィクションだとしてもしっかりと見ておきたい。そう強く思って、見つめていた。


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