Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:Jaiho

 この映画は「ガール」であることがきっと重要なんだろうな、と思いながら見ていた。女性が多く登場し、クモもたびたび登場するが、ガールもスパイダーも、ともに複数形ではない。そして、決してホラー映画ではないけれど(クモを含んだ虫は要所で登場するが幽霊は出ません)ぞっとするような展開が静かに続いていく、という意味では平均的なホラー映画よりも怖いんじゃないか、と思わせる映画だった。

 あるシェア物件の引っ越しの風景から映画は始まる。荷造りと荷出しが行われる中、だらだらと続いていく会話劇をそのまま映画にしたらこうなった、という形である。シェア物件なので主人公は他人同士(女2男1)で暮らしていたが、ルームメイトの女が出ていくことになり、表情は真顔のままだが内心は気が気でない様子がひしひしと伝わってくる。その主人公を口説こうとする残った男のみっともなさも含めて、バカヤローと叫びたくなるような映画である。

 しかしながら、前述したようにこの映画は静かに淡々と進んでいく。何度も述べているようにクモ、そしてハエ、そして犬など、来訪者は多い。もちろん人間もやってくる。ある女は主人公を口説いているかのようなパフォーマンスを見せながら、あるシーンではしっかり男とも寝ている。なんなんだこれ・・・と思わなくもないが、ある意味現実とはそういうものでしょう?と、現実ではない(フィクションである)映画を通じて問いかけられているようにも思えた。後半には引っ越し祝いのパーティーが開かれるものの、面倒くささとむなしさがそこには残る。

 要はこの映画には、楽しいと呼ばれる要素がきれいにそぎ落とされている。最初から最後まで楽しくないから、主人公はずっと不機嫌なままなのだ(しかしその不機嫌な表情がなかなかに美しくて魅力的でもある)。主人公にとっては続いていく日常があるはずなのに、「ルームメイトの引っ越し作業」は彼女の日常生活に否応なく非日常を流入させる。物理的にも、心理的にも。

 奇々怪々な人間関係、とこのエントリーのタイトルに打ってみたけど、よく考えたら「奇々怪々でない人間関係」など存在しないのかもしれない。人間は特別な配慮やケアが存在しなければ、いつだって面倒くさい生き物なのだ。どだい感情を持たないクモやハエが可愛く見えてしまうくらいには、人間の感情は厄介なのだということを100分間見せつけられる映画だった。ある意味ではリアリスティックで、ある意味では芸術的である。
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