見:イオンシネマ高松東
2022年はそこまで多くの新作映画を見たわけではないが、年末に見たこれが結果的にぶっちぎりだなと思った。声優交代についてツイッターがかなり燃え上がっていたし、発表になったyoutube配信も少しだけ見ていたので(だからと言ってどうのこうのはなかった。さすがに20年以上経てば演者が交代するのは現実的なので)特に前情報を仕入れたわけではなかったが、そのスタンスで見に行って良かったなと思う。普段はネタバレ全然OK主義だけど、この映画に至っては何も知らずに、けれども原作のシナリオは把握している、という状態で行った時の高揚感がたまらないからだ。
例えば、2時間でインターハイ2回戦の山王工業戦を描き切る、というのは確かに今新たに新作アニメを作るならそれくらいのことをやらないとインパクトが足りないとは思っていた。結果的に1回戦の豊玉戦はほぼカットされているが、これは原作からの連続性をあえて切断するやり方だなと思った。つまり、原作を知らない人でも『THE FIRST SLUM DUNK』を映画館で見れば十分楽しむことができる、そういうものを目指したのだろうと思う。(ちなみにTHE FIRSTの意味は多義的らしいが、はっきりとは明かされていない)
宮城リョータを映画の主軸に据えたのは、一つの案として面白いと思った。とはいえ同時に、リョータである必然性はなかったようにも思う。桜木以外の4人の過去は原作でも十分に描かれていない(桜木自身もそこまで分厚くはない)ため、ブランクやケンカからの再起を狙う三井を主軸にしても、最後の夏にすべてを懸けるゴリにしても、たぶんどのメンバーを主軸に据えても良質な物語は作れただろう。ただ、三井やゴリにあってリョータにないのはフィジカルだ。スタメンの4人の中で、明らかにリョータだけが小さい。
最初から最後まで、ある意味では小さくて幼かった(身長も、精神的にも)リョータがいかに大きく成長していくか、を見せたかったんだろうなと思う。リョータを描くために家族の物語が動員されたのは必然と言えば必然で、沖縄由来の「宮城」という名前を持った少年がいかにして沖縄を離れて湘南の公立高校へやってきたのかは、一つの物語として魅力的である。三井や流川のようなスーパースターではない、桜木やゴリのようなフィジカルモンスターでもない、ただ小さくて俊敏な選手が大男ひしめくバスケットのコートで躍動するのは、多くの観客に刺さるものがあるのは確かだろう。
これもあえて言うまでもないが、小さいリョータを主軸に据えながらその他9名の大男たちが奮闘し、躍動するバスケットのコートを、これほど生々しく描けるとは思わなかった。もう90年代ではなくて2022年なんだということを、声優交代以上に実感することができた。原作とアニメをほぼリアルタイムで目撃した後、2022年まで生きてきて本当によかった、と思えた。
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