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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



 アニメは全部見ているが原作は途中まで、原作の公式二次創作である『からかい上手の(元)高木さん』も途中まで、というやや中途半端な「原作ファン」ではあるものの、地元である小豆島が実写の舞台になるということはさすがに見ておいた方がいいかなと思い見て来た次第。とはいえ主な舞台となっている土庄町は自分にとっては「隣町」という扱いなので厳密な意味では地元ではない。ただあのグラウンドで陸上の記録会をやったな〜とか合同練習をやったな〜という記憶は持っている、というところ(夏休み期間に撮影したとはいえ実在の中学校で撮影をしたのはまあまあすごいことではあるが)。

 これは見に行く前に気づくべきだったかもしれないが、「高木さん」のフォーマットを利用したザ・今泉映画だった。どこが今泉映画なのかはいろいろあるが、基本的に高木さんと西方の「からかい」はそのまま会話劇に応用可能なのだという点が大きい。「からかい」だけを演出するならば、様々なリアクションのついた演技なので会話劇にならない。ただ、改めて今泉映画らしいなと思ったのはその「からかい」を所与の条件としない、つまりそもそも「からかいとは何ぞや?」を掘り下げようとするのである。

 第三者視点からするとすごくほほえましく、同時に西方がうらやましくてたまらないようにも見える「からかい」の構図だが、もっとシンプルに紐解くことをこの映画はやろうとしている。単に『からかい」を続ける二人を映し出すだけなら、一本の映画としてやや面白味に欠ける(まあそれでも面白く作れた可能性はあるが)。そのため、「からかい」の構図を問い直す、そのための「10年後の再会」を演出したのだろう。もちろんこの設定は原作にはない、映画オリジナルの設定だ。

 そしてさらに面白いなと感じたのは、「10年後」の設定を生かすために、大人になった高木さんと西方と対比させるように、二人が出会うことになる中学生を多数用意している点だろう。大人になった高木さんと西方は島の中学生、つまり過去の自分たちとどこか似ているようでどこか違う彼ら彼女らとどのように関わるのか。その関わりを中で、何を感じるのか。

 高木さんが中学校で教育実習を行う3週間という時間も絶妙で、再会を楽しむには短くも長すぎることはないが、確実に終わりが見える期間に、西方は高木さんに果たしてアクションを起こすのだろうか? とやきもきしながら観客は見守ることになる。そして3週間あれば島の様々なロケーションを移動することができるのも、オール小豆島ロケのメリットを生かしているなと感じた。

 『愛がなんだ』や『アンダーカレント』も原作ものだったが、この映画の場合「原作ものではあるがオリジナル」という今泉映画としては初めての試みだと思う。それでも、絶えざる会話の積み重ねや、重要な場面でのロングショットなど、演技をしているようで演技には見せない会話のバリエーションが強い魅力である。そしてそれは原作ファンにもおおむね納得感を持って受け入れられているのではないか(もちろん個人差はあると思うが)。

 いずれにせよ、大人になった高木さんを永野芽郁が演じるのは、あまりにも完璧すぎたと思う。このキャスティングによってこの映画の成功確率は一気に上がっただろうなと思うくらい、高木さんを演じきっていて見事だった。
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