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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:Netflix
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 もともとジミー・チンのドキュメンタリー映画『MERU』や『フリーソロ』を見ていたのでジミー・チン=山岳カメラマンのイメージがあったが、その彼がドキュメンタリーではなくフィクションを作ったというのが気になって見てみた。ナイアドは実在する人物で、元水泳選手。その彼女が還暦をすぎてから「キューバからフロリダまでの177kmを泳ぎ切る」という無謀な挑戦をすることになり、その挑戦の軌跡を追う映画になっている。最終的には成功し、その体験をもとにした自伝『対岸へ』がこの映画の原作になっているとも言えるだろう。

対岸へ。 オーシャンスイム史上最大の挑戦
ダイアナ・ナイアド
三賢社
2016-12-29


 エンドロール部分では実際の映像も挿入されるが、ナイアドを演じるアネット・ベニングがほとんどナイアドなのでは? と思うくらいに似せている。それは演技や見た目を似せているというより、全身をそういう風に作っている、という印象だ。もちろんどこまでがトレーニングの成果なのかは分からないが、「老体でありながら力強い」という肉体をベニングが見せつける。そして、カメラはそれをしっかりと映している。

 ナイアドをとらえるカメラワークだけを分析すると、すごくリアリズムだけど同時にロマンティシズムだと言える。ナイアドを決して若くは描かない。ちゃんと老いた女性として描いている。だから身体は顔のあちこちにシワが寄っているが、それをカメラにちゃんと映し出している。でもそのリアリズムがあるからこそ、ドラマチックな映像を作ることができるのだという予感が映画の序盤からしっかりある。

 とりわけ映画前半部分の、177キロスイミングにまだ挑戦する前の血気盛んなナイアドは老いを感じさせながら力強い。しかしこの映画は事実がそうであるように、何度もナイアドに失敗をさせる。ある時はクラゲの出現、ある時は天候の問題、またある時は持病によるコンディション不良。などなど、60代の肉体を海に浮かべ、数日間にわたって泳ぎ続けなければならないというチャレンジはあまりにも過酷過ぎることをカメラは映し出し、ナイアドの苦悶の表情も映し出してゆく。

 そうしたナイアドを見ていると、力強さよりも今度は「老い」が目立って見えてくる。肉体も水泳選手のイメージする分厚さはない。むしろ、鍛えても鍛えても得られる筋肉には限界があることをナイアド演じるベニングの肉体が具体的に示すのである。同時に、ナイアド曰く「30歳の時に知り合った」親友のボニーもまた、60代のおばあちゃんであるがこのボニーおばあちゃんを好演しているのがジョディ・フォスターである。

 ナイアドとボニーの関係性がどういったものなのかは、映画では明示されない。腐れ縁の親友とも言えるし、レズビアン的な感情を宿しているようにも見える。いずれにしても二人は一心同体であり、「一心同体でなければ成功できない」と二人とも思っている。だが、何度も失敗を重ねるにつれて次第に二人の心は離れてゆく。一心同体を失ってゆくのだ。

 では、本当に失うのか。挑戦は終わるのか? ナイアドの良さは楽天性だが、その楽天性は現実を直視しないというマイナス面もある。ナイアドの挑戦はボニーを含めた多くの協力者がいないと成立しない(映画では少数のチームだが、実際はもっとたくさんいたようだ)。つまり、個人の挑戦ではなくチームの挑戦であり、心はナイアドとボニーの二人だけではなく、チーム全体に共有されなければならない。

 だからこそボニーは全力でナイアドにぶつかってゆく。いろいろな言葉をボニーは本気でナイアドに投げかけるが、要約すると「あんた一人でやってんじゃないのよ!」だ。一人で独走してしまうナイアドの手綱を締めるように、ボニーはナイアドに現実を直視させ、奮い立たせる。諦めろとは一言も言わない。ただ、「私を置いていくな!」とはっきりボニーは伝える。あまり触れることができなかったがボニーだけではなく、チームのみんながナイアドに夢と希望を託している。ナイアドの挑戦こそが、みんなのロマンティシズムでもあるのだ。だからこそ一人でゆくな、むしろみんなをちゃんと連れていけ!とボニーが伝えようとするのは、非常に合理的な反応だ。

 老いを直視させる。何回も失敗したという現実も直視させる。それはつまり、「私を置いていくな!」というメッセージにつながる。また、ナイアドは映画の最後にこう語っている。水泳は個人戦だと思っていた、でもそうじゃなかった、と。支える側であるボニーは、おそらくそのことをずっと前から知っていただろう。当の本人のナイアドだけが、ようやく最後に気づいたというオチだったのかもしれない。
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