Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



 このタイトルがGWのあたりにネットで流行しているのは知っていたがホラーにはあまり興味がないのでスルーしていた。ただ最近たまたまyoutubeにレコメンドされて、しかも全4話が見られるということでなんとなく見てみた結果、ほぼ一気見だった。面白いか面白くないかと言えば、普通に面白い。そしてこれはホラーというよりはミステリーの文法を使っているんじゃないかと思いながら見ていた。ミステリーは元々好きなので、それなら自分でも普通に楽しめるわけだ。

 1947年に生まれ、1969年に失踪したイシナガキクエと言う女性。彼女を55年間探している米原実次という老人。この老人の依頼でテレビ東京が企画した「公開捜索番組」という特番。この番組のスタートが、このドラマのスタートという入れ子構造となっている。イシナガキクエはそもそも実在する(した)のか。そもそも米原と言う老人はいったい何者であり、なぜ自分の半生を一人の女性の捜索に費やしているのかなど、最初から提示される謎は多い。

 「公開捜索番組」の組司会者にはアナウンサーの安東弘樹を起用し、ゲストには元警察官を配置するという、ありそうな形式である。リアルタイムで情報を流し、背後に待機したスタッフが電話で情報を受ける形の「公開捜索番組」はある時期のテレビ番組では流行する形態だったが、最近はあまりないように思う。それをフィクションの形式で再現するところにテレ東らしさがまず伺える。フィクションではあるが情報を募集するという形で情報を集めるわけで、番組内では電話のやりとりも行われている。

 基本的には番組内番組を放送し、その番組の裏でスタッフが情報収集をし、現場に向かうという形式がとられている。要は、「番組制作とそのための取材」がこのドラマの核である。一応ストーリー「らしきもの」は存在するが、どこに向かっているのかがはっきりしない。ただ、重要な謎である米原老人の動機を探るところにこの番組がフォーカスし始めた時に、ようやくこのドラマはホラーではなくミステリーの文法を使っているなと感じた。

 Why done it? つまり、「なぜなのか」がこのドラマ(及び番組内番組)の核である。なぜ米原はイシナガキクエを探しているのか、だ。イシナガキクエが何者かを探そうとしても「寄せられる情報が多すぎる」ことで混乱する様も番組内番組では演出されているため、そのルート(イシナガキクエを直接探すルート)ではなく、米原老人ルート(この老人の動機を解明すれば、イシナガキクエが何者かも分かり、そして彼女の生死の情報も分かるはずだというルート)に舵を切るようになる。

 イシナガキクエのビジュアルはさながら『リング』の貞子のように幽霊っぽく演出されているが、彼女が怖いわけではなく、彼女の周辺が怖いのである。それはつまり、死んだ(かもしれない)人間よりも生きている人間の方が怖い、ということだ。ドラマの後半では多くの有力な情報が提示され、記録映像も再生される。この映像がいちいち古めかしいところがよく作りこんでいるなと感じるところだし、映像内で何が行われているかもはっきりしない。はっきりしないが、集められた情報を寄せ集めるとなんとなく推測できてしまう。そこにこのドラマの怖さが集約されていたと思う。

 米原老人がすでに亡くなっていることもドラマ序盤で明かされるため、ピースがつながりそうではっきりとはつながらない、つまり謎が多く残されたままドラマは終わる。あとは皆さんご自由に、と言ったところだろうが、謎を残して終わる点はミステリーとしては不親切な一方で、ホラーの要素を多分に含んでいる。つまり本作はミステリーの文法で作られたホラーだったのだな、と最後にようやく気付く構造なのだ。


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