主人公が最初から最後までずっと優柔不断なアニメ。確かに双子姉妹の両方からアプローチを受け続ける中でたった12話でどちらかを選べ、は現実的には難しそうだ。だからなのか、あえて純というキャラクターに「優柔不断な男主人公であり続ける」ことを課しているように見えた。最終話まで一貫して優柔不断でないと成立しない物語なのである、と。
その割り切りがうまくいったのか、最終回まで姉妹である二人(琉実/那織)のバチバチが収まらないのもいい。ともに個性がしっかりと固まっておりそれぞれに魅力的だが、純を巡ってはダークな部分を隠さない。特に積極的に攻めるタイプの那織を演じる内田真礼の演技が一貫して強気で魅惑的ななところに悶えていた。姉に対しても純に対してもとにかく攻め気で引く事を考えてない那織のキャラクターとあまりにも相性が良い声優だ。
とは言え、単なる三角関係だけではストーリーに起伏がないように見える。だからストーリーに多彩さを加えるのは高校生活という青春の空間であり、愉快な仲間たちである。アニメ後半では「部活を作ろう」という機運になり実際に部活を作ることになるので、これがまた三角関係に何らかの影響をもたらしそうだという予感を残している。原作ものであるせいか三角関係に決着はつかないしつけられないが、この「決着つけられない状態」でどこまで引っ張れるかは見所になっている。
最終話放送後のラジオでは、最終話になっても姉妹のケンカが演出される点に笑いながら会話する主演声優たちの感想が印象的だったが、「決着つけられない状態」の引き伸ばしが嫌な感じをさせないのもこのアニメの特徴だ。単なる姉妹間の駆け引きに留まらず、周囲の人間を巻き込むか騙すかしないとなし得ない展開(11話終盤〜12話序盤)に持っていくことで、単なる三者関係にとどまらないんだよと視聴者に訴えかける。まあかと言って青春群像、と言えるほどきれいではないのもご愛嬌なのだろう。
優柔不断であるということは相手を待たせるということであり、相手の気持ちを反故にするということでもある。だからとにかく見ている側もじれったい。このじれったさを12話分のバリエーションで存分に味わう、のがこのアニメの一つの鑑賞法だろう。続きが気になるなら原作で、だろうがアニメはアニメとして可能な表現と演技で楽しませてくれる。展開的にスッキリしない終わり方なのに、悶えてばっかりなのに、楽しかったと思わせてくれる点でも、貴重なアニメになっているのかもしれない。
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