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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:U-NEXT
Info:公式サイトfilmarlsIMDbLetterboxd


 U-NEXTにて。ジェネリックホン・サンスというコメントも見かけるが、先輩後輩の再会、ストーリーより会話劇中心のミニマリズムにこだわっているところは確かに似ている。ただそれ以上のこだわりを探すのは難しく、3.0でもいいかなと思ったがラスト10分の展開で3.5をつけたくなった

 似ていないところがあるとすると、ホン・サンスの会話劇はたいていが食事や飲酒の場面だが、この映画はとにかくよく歩く。福岡の天神あたりから始まり、徒歩で移動できる範囲をとにかく歩き、歩きながらだらっとした会話を続ける。カメラは話者を近くで追うこともあれば、引いたショットで話者を小さく映し、背景を大きく見せる場合もある

 これはつまり、会話のある風景(=福岡市内のどこか)を映画に収めたい欲求なのだと思う。また、この映画は人が多く行き交う通りよりも、家屋や建物が密集した路地を好む。会話をしていると思い振り返ると姿が消えている、という演出も路地ならではの狭さや複雑さがないとできない演出だろう(見通しのよい大通りから人が一瞬で消えるのは難しい)

 そしてこの映画で重要なのはパク・ソダムの存在である。中年男性二人だけでは物語は始まらない。そもそもこの映画は、ソウルの地下駐車場に併設している古本屋にパク・ソダムが訪れないと始まらない。すでに成人しているが、店主のユン・ジェムンの前になぜか女子高生風の制服姿でソダムは訪問する。それも何度も。いい加減あきれた様子でジェムンは彼女と会話が始まる。ソダムは自分のことを何か知っているらしいとそこで気づく

 福岡に行ってもソダムがずっとガイド役に徹しているのもいい。結果として、ホン・サンス映画で常連役のクォン・ヘヒョとユン・ジェムンは誰にも邪魔されずに会話をすることになる。いや、会話を「しなければならな」くなってくる。おそらく天神エリアのどこかでクォン・ヘヒョが営んでいる薄暗いバーを訪れることであっさりと再会はなされるが、二人の過去に何があったのか、何が理由で再会まで時間がかかったのか、二人の間に共通して登場する女性の名前はいったい誰のことなのか? といった疑問は浮上するが、ミステリーではないので謎は謎のまま温存される。

 ほとんどアドリブのような形で進む中年男性二人の会話は、ホン・サンス映画であれば殴りかかりそうになる会話もでてくるがこの映画では徹底的に暴力は排除されている。だから会話を続けるか、中断するか。次に何かが起こるとしたらほとんどこの2つしかない。福岡という、「韓国からもっとも近い外国」の一つである土地での再会だからこそ、気まずくなるような言動はしづらいという抑止力が働いているようにも見える。福岡における夜の街として知られる天神だが、あえて人がまばらな昼間に撮影しているのも妙味だろう。これが夜ならば、他の酔っぱらい客の眼の前で殴りかかる場面が容易に想像できてしまうが、前述したようにそういうことは起きない。

 中年男性がちょっと難しい再会をしている間、気ままなパク・ソダムは行き当たりで出会った中国人女性と中国語で会話したり、日本人女性に韓国語で話しかけたりする。ずっと険しい顔をしている中年男性二人と、気ままに福岡の路地を歩く若いパク・ソダム。もちろん彼女だっていつか老いるだろうが、まだまだ若い時代を素朴に楽しんでいる姿が、とても自由でいいなとも思える映画だ。
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