ドキュメンタリーは比較的よく見ているが、見たものの感想を短くツイッターに放流して終わりになってしまうことが多かった。このブログで時々長い文章を添えることもあるが、すべてのドキュメンタリーに1本エントリーを書くことは現実的ではないので、今回こういう形をとってみた。
なるべく続けたいが、とりあえず備忘録として使っていければいいかなと思っている。
**************
◆BS世界のドキュメンタリー「密入国 闇の組織を追え −英コンテナ39人遺体事件の真相−」(2022年10月27日放送、BS1、50分)
この事件のことは知っていて、その壮絶さには言葉を失うし、この番組で死ぬ間際の当事者の語りや家族の語りなどを聞くとエグ……と思いながら見ていた。ただ、この番組は非常に優れた国際犯罪ミステリーを謎解くようになっており、これがフィクションであればすぐれたシナリオとして楽しめたのに、という複雑な思いも抱かせる作りになっていた。
◆ETV特集「ブラッドが見つめた戦争 あるウクライナ市民兵の8年」(2022年11月5日放送、ETV、60分)
ここ最近見た中では最も印象に残っている1本。下手すると、いやしなくても2022年に見た中ではベストだったかもしれない。西野晶という、ある若い制作がウクライナ戦争についてネットサーフィンしている中で彼女が「たまたま発見した」ブラッドという青年との交流を描く。
もうすぐ戦争勃発から一年が経つが、ウクライナ戦争をどのようにとらえるかは本当に難しい。その難しさを、改めて突きつけられる一本であるとともに、ブラッドという青年のビルドゥングスロマンにもなっている構成が非常にうまいなと感じた。
彼は2022年に初めて従軍したのではなく、それ以前のロシアとの衝突ですでに従軍経験があったことが、日常を捨て、非日常の舞台へと誘ってゆく。なぜ、再び戦場に戻ったのか。「戦間期」に彼はどのような人生を送っていたのか。彼はいま、戦場で何を考えているのか。一つ一つの言葉、表情、そして母親の語る息子への思い。すべてを目に焼き付けたくなる一本。
◆「こうして僕らは医師になる〜沖縄県立中部病院 研修医たちの10年〜」(2022年12月3日放送、BS1、100分)
2012年に放映されたドキュメンタリーの10年後を追跡したドキュメンタリー。小堀医師の在宅医療のドキュメントを継続的に撮ってきた下村幸子が本作も手掛けており(10年前もそうだったらしい)、その意味で医療現場の躍動感を、そこで生きる医師それぞれの人生の一端が見えるのがとても面白かった。
何人かの医師が中心的に取り上げられているのが、一橋で医療経済学を学んだあとに長崎大学医学部に編入して、初期研修後に沖縄での離島医療や海外での留学などを経ていまは関東で在宅医療をやっている女性医師・長嶺由衣子の姿がめちゃくちゃ印象に残った。パワフルなのは当然なのだが、芯の強さ、純粋さというものを持ち続けている姿がとてもいいなと思った。小堀医師もそうだったが、市井で生きている人間一人一人への関心や思いというものが、在宅医療では最も重要なのではないかと思う。
◆映像の世紀バタフライエフェクト「ナチハンター 忘却との闘い」(2022年12月12日放送、NHK総合、45分)
自分の中でナチスの存在とナチスに対する反省というものは、それ自体が少し古い歴史的産物だと思っていたけれど、全然そうではなくて現代につながってるんだ・・・! と思わせてくれる一本。
「映像の世紀バタフライエフェクト」というシリーズがそういう「時代を超えたつながり」を毎回テーマにしているからこその(ある種意図的な)構成だったとは思うが、シリーズの中でも良くできた一本だったと思う。逃げようとする人間の邪悪さと、逃げる人間の追い詰めようとするまた別の人間の執念の強さの双方を、ドラマチックに描いている。
◆未解決事件「File.09松本清張と帝銀事件」(2022年12月29日・30日放送、NHK総合、150分)
このシリーズはコストがかかっているわりに割と当たりと外れがあるかなと思っているのだが(前回のJFKはわざわざ今やらなくても、と感じた)今回の帝銀事件特集は当たりの部類だなと思った。ドラマ編もドキュメンタリー編も両方面白かったのは、ロッキード事件を扱った回と匹敵する。
ドラマ編は大沢たかおの演技と、彼のキャラクターを生かした安達奈緒子の脚本が面白く、非常に生き生きとしている松本清張を現前させることに成功していたように思う。ドキュメンタリーはドラマ編の流れを追随しつつ、そこで描かれなかったことや、清張がたどりつこうとして跳ね返された政治的事情を戦後の非常にややこしい文脈の中で想像させる面白い構成だった。
なるべく続けたいが、とりあえず備忘録として使っていければいいかなと思っている。
**************
◆BS世界のドキュメンタリー「密入国 闇の組織を追え −英コンテナ39人遺体事件の真相−」(2022年10月27日放送、BS1、50分)
この事件のことは知っていて、その壮絶さには言葉を失うし、この番組で死ぬ間際の当事者の語りや家族の語りなどを聞くとエグ……と思いながら見ていた。ただ、この番組は非常に優れた国際犯罪ミステリーを謎解くようになっており、これがフィクションであればすぐれたシナリオとして楽しめたのに、という複雑な思いも抱かせる作りになっていた。
◆ETV特集「ブラッドが見つめた戦争 あるウクライナ市民兵の8年」(2022年11月5日放送、ETV、60分)
ここ最近見た中では最も印象に残っている1本。下手すると、いやしなくても2022年に見た中ではベストだったかもしれない。西野晶という、ある若い制作がウクライナ戦争についてネットサーフィンしている中で彼女が「たまたま発見した」ブラッドという青年との交流を描く。
もうすぐ戦争勃発から一年が経つが、ウクライナ戦争をどのようにとらえるかは本当に難しい。その難しさを、改めて突きつけられる一本であるとともに、ブラッドという青年のビルドゥングスロマンにもなっている構成が非常にうまいなと感じた。
彼は2022年に初めて従軍したのではなく、それ以前のロシアとの衝突ですでに従軍経験があったことが、日常を捨て、非日常の舞台へと誘ってゆく。なぜ、再び戦場に戻ったのか。「戦間期」に彼はどのような人生を送っていたのか。彼はいま、戦場で何を考えているのか。一つ一つの言葉、表情、そして母親の語る息子への思い。すべてを目に焼き付けたくなる一本。
◆「こうして僕らは医師になる〜沖縄県立中部病院 研修医たちの10年〜」(2022年12月3日放送、BS1、100分)
2012年に放映されたドキュメンタリーの10年後を追跡したドキュメンタリー。小堀医師の在宅医療のドキュメントを継続的に撮ってきた下村幸子が本作も手掛けており(10年前もそうだったらしい)、その意味で医療現場の躍動感を、そこで生きる医師それぞれの人生の一端が見えるのがとても面白かった。
何人かの医師が中心的に取り上げられているのが、一橋で医療経済学を学んだあとに長崎大学医学部に編入して、初期研修後に沖縄での離島医療や海外での留学などを経ていまは関東で在宅医療をやっている女性医師・長嶺由衣子の姿がめちゃくちゃ印象に残った。パワフルなのは当然なのだが、芯の強さ、純粋さというものを持ち続けている姿がとてもいいなと思った。小堀医師もそうだったが、市井で生きている人間一人一人への関心や思いというものが、在宅医療では最も重要なのではないかと思う。
◆映像の世紀バタフライエフェクト「ナチハンター 忘却との闘い」(2022年12月12日放送、NHK総合、45分)
自分の中でナチスの存在とナチスに対する反省というものは、それ自体が少し古い歴史的産物だと思っていたけれど、全然そうではなくて現代につながってるんだ・・・! と思わせてくれる一本。
「映像の世紀バタフライエフェクト」というシリーズがそういう「時代を超えたつながり」を毎回テーマにしているからこその(ある種意図的な)構成だったとは思うが、シリーズの中でも良くできた一本だったと思う。逃げようとする人間の邪悪さと、逃げる人間の追い詰めようとするまた別の人間の執念の強さの双方を、ドラマチックに描いている。
◆未解決事件「File.09松本清張と帝銀事件」(2022年12月29日・30日放送、NHK総合、150分)
このシリーズはコストがかかっているわりに割と当たりと外れがあるかなと思っているのだが(前回のJFKはわざわざ今やらなくても、と感じた)今回の帝銀事件特集は当たりの部類だなと思った。ドラマ編もドキュメンタリー編も両方面白かったのは、ロッキード事件を扱った回と匹敵する。
ドラマ編は大沢たかおの演技と、彼のキャラクターを生かした安達奈緒子の脚本が面白く、非常に生き生きとしている松本清張を現前させることに成功していたように思う。ドキュメンタリーはドラマ編の流れを追随しつつ、そこで描かれなかったことや、清張がたどりつこうとして跳ね返された政治的事情を戦後の非常にややこしい文脈の中で想像させる面白い構成だった。
コメント