Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:ソレイユ・2

 予定の調整が下手なので『エクストリーム・ジョブ』を見逃してしまったが97年のアジア通貨危機〜韓国IMFショックを描いている本作は絶対に見たいと思った。アジア通貨危機は日本でも高校生なら習うレベルなので、もちろん現代の韓国人にとっては悪夢であり重要な現代史であるこの一幕は学校でもおなじみの光景だろう(実際に小学校でリアルタイムに教えられるシーンがある)。

エクストリーム・ジョブ(字幕版)
シン・ハギュン
2020-04-10



 返ってこない手形、急速に進むウォン安ドル高(いまのドル円とはスピード感が違う)、減っていく外貨準備高、「不都合な真実」を隠そうと模索する財務官僚と、一刻も早い情報公開と経済立て直しを模索する韓国銀行(韓国の中央銀行)……ある程度金融、財政、為替、マーケットあたりの知見は必要だと思っていたが実際にその通りで、特に後半何の説明もなくIMFの専務理事が一種の悪役として登場するくだりはちょっと笑ってしまった。このあたりを抑えてから映画を見に行った方がいいかもしれない。

金融入門<第2版>
日本経済新聞出版社
2018-02-23



金融政策入門 (岩波新書)
湯本 雅士
岩波書店
2015-01-01



現代の金融入門 [新版] (ちくま新書)
池尾和人
筑摩書房
2014-02-07



日本銀行 (ちくま新書)
翁邦雄
筑摩書房
2014-05-02



 やや個人的な感想にはなるが、序盤のハン・シヒョンにシン・ゴジラの尾頭ヒロミみがあってとても良かった。情報量を早口で畳みかけるタイプ。どこかで読んだ情報では、現実の韓国銀行にハン・シヒョンが演じたようなキレキレの女性がいたわけではないらしい。だがあえて彼女をこのような役で起用したところは、韓国社会の男女間におけるいろいろな構造の変化を読み取れる。
 
 97年の金融危機はその後の韓国社会を形作ってゆくことになる。小さい会社があっさりと切り捨てられたり、対照的にサムスンのような巨大企業がより強い力を握っていったり。社会全体としては経済的に発展したかもしれないが、その内実は富める者がより富み、貧しい者は貧しい状態が強いられたままになる。アカデミー賞作品賞を獲得した『半地下』はその典型的な例だと言えるだろう。

 とりわけ民主化以降はもちろんいくつもの分岐点が韓国社会にあったのだろうけれど、バブル崩壊がその後の30年間の日本経済の形を大きく決定づけたのと同じくらいのインパクトが97年にあったことを、現代の視点から振り返るシーンがわずかながら挿入されているのもよいなと思った。ただの現代史の出来事ではないことを、その巨大なまでに発展した企業や街の姿と重ねることで改めて見せつけてくる。

 もう少し雑駁とした感想を続けると、韓国銀行で重要なポジションを務めるハン・シヒョン役のキム・ヘスが49歳と知って???という感じ。どう考えてもアラサーにしか見えなかったんだが。あと『バーニング』のユ・アインが転生して逆張り投資家として成功しているのも面白かった。でも成功しても喜びに欠けた表情が良かった。個人としての成功がを手にしても社会に向き合おうとするその姿が、現在の韓国社会が見る一つの夢なのかもしれない。勝者と敗者との間の分断を乗り越える夢を。


国家が破産する日 (字幕版)
ハン・ジミン
2020-04-08



バーニング 劇場版(字幕版)
パン・ヘラ
2019-08-07




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