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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:Netflix
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 北村紗衣(2024)『女の子が死にたくなる前に見ておくべきサバイバルのためのガールズ洋画100選』の内の1本。これから意識的にちょっとずつこのリストを消化していこうかなと思う。今回見た90年代アメリカの、女3人によるロードムービーは後半やや詰め込みすぎな感じではあるけれど、ニューヨークから始まった旅をきれいに終わらせるのではなくてあくまで「旅の途中」を描いた映画だと思った。

 レズビアン、エイズ、DVと予期せぬ妊娠。レズビアンのジェーンは傷を負っているわけではないが、「黒人のレズビアン」というインターセクショナリティを持つ彼女はさまざまな差別や偏見の中を生き抜いてきたことが伺える。他方でロビンは最初自分の出自を明かさないが、旅の途中でひどい肺炎にかかり、入院することになる。そこで初めてエイズであることを医師がジェーンに伝える。なぜエイズになったかは最後まで語られない。

 ロビンの出した新聞広告を見て、クラブ歌手の仕事をクビになったばかりのジェーンがやってくるのがこの映画のスタート地点だ。二人は必ずしも「気が合う」わけじゃないが、レズビアンのジェーンからすると「タイプじゃないからいい」ということで、二人は旅を始める。途中で合流するホリーは典型的な恋に恋するタイプの女性だが、であるが故に「ダメンズ」を引っ掛けてしまう所もある。途中からはロビンの病気、ホリーの元彼の死といった二つの重大な事実がこの映画を覆うようになる。

 つまり、旅に出て、一応ゴールは決めてあるものの、この映画はゴールに向かってまっすぐ進まない。いや、「進めない」のだ。ロビンが体調を崩したら休むしかない。ホリーのもとに警察がやってきて、被疑者として彼女が逮捕されてしまうと放っておくわけにはいかない。だからこの映画の後半は刑事ものや司法もののような展開になってゆく。ロードムービーを見ていたはずなのに、いきなり『虎の翼』が始まったような気分である(映画ではないが、とらつばも十分に「ガールズ」作品と言えるだろう)。

 旅を始めたけどゴールに向かわない。各種のトラブルがあると、当然ケンカもするし仲が悪くなることもある。その上でこの映画が提示する方向性があるとすると、それでも連帯はできる、という希望的観測だろう。あるいは、「連帯するしかない」のかもしれない。男を頼らないわけじゃない。でも、男がいてもいなくても、女同士の絆を誇っても良いし、信じても良い。そうした希望だと思う。もっとも、「自分たちで何とかしなければならない」という姿勢は個人主義の国アメリカを象徴しているとも言える。あるいは、第3波フェミニズムと、ポストフェミニズムの中間点に位置付けることもできるかもしれない。

 ただそうしたイデオロギーをいったん離れてこの映画を観察してみよう。恋愛や結婚はいつか終わるかもしれない。でも友情は、明確な終わりがない。ロビンはまだ生きているがおそらく彼女はもう長くないことが予感するエンディングを見せられる。だから映画のあとに物語があるとすれば、ロビンの死を悼む光景なのだろう。でも死を悼むということは、それほど重要な絆があった、という事実でもであるのだろう。

 確かにこの結末は悲しいし、悲しすぎる。だが、孤独に生きていたロビンが、人生の最後に友情を獲得できた物語だと解釈したら。遅かれ早かれ人生には終わりが来てしまう。ロビンにとってはずっと早かった。それでも、彼女の人生すべてが不幸だったとは到底思えない。むしろ、いい出会いがあって本当に良かったねと、最後に優しくかけてあげたい。それこそが、最高の追悼になるのではないかと思いながらにぎやかな音楽が流れるエンドロールをみつめていた。
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