Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:Netflix
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 ネトフリにて。途中までの流れはだいたい想像がついたが、どうやって落とし込むのだろうと思っていた。痛いまま終わらせるのか、青くささをある種受け入れて肯定した状態で終わらせるのか。吉沢亮はどちらにも対応できる俳優なのがいいなと思った。その吉沢演じる田端楓と、杉咲花が演じる秋好寿乃は大学から浮いていて馴染めない同士で仲良くなり、「モアイ」というサークルを作る。時は流れて大学4年生。巨大化したモアイに対し、モアイを脱退した楓が一世一代の逆襲を仕掛ける、というのが大まかなあらすじ。

 前後はしているが『AWAKE』(2019年)でも青くて痛い主人公を好演しているし、『ぼくが生きてる、2つの世界』(2024年)では大学生ではないが上京した若者らしい青くささを好演していた。今回見たこの映画は、顔がいいのにどこかにくめない、そういうキャラクターを確立した映画かもしれない。彼の企みはひょんなことから成功してしまう。しかし、本当に自分は復讐をしたかったのか? という悩みを抱えるところにこの映画の面白さがある。つまり楓は、青くささと痛さを同時に引き受けるキャラクターなのである。そしてその二面性を、吉沢が本当にナチュラルに演じていた。

 そして吉沢亮と対峙する杉咲花は今をときめく女優の一人と言っていいだろうが、彼女の持つ純朴さを引き出すことに成功した映画と言えるだろう。同時に、二面性をうまく生かした映画でもある。このあとに『市子』(2023年)や『朽ちないサクラ』(2024年)のようなミステリー映画に出ながらも『片思い世界』(2025年)のような青春映画にも出ていることを考えると、杉咲花の役柄の広さは納得できるところだ。前半はほぼ不在ながら、それでも後半部分にしっかりと存在感を示せるのはさすがと言ったところで、杉咲演じる秋好は理想主義者と現実主義者といった二面性を持っている。楓は前者を捨てたと思っていた(だから彼にとっての秋好は「死んだ」のだ)が、秋好はそうではないと突き返す。勝手に幻滅したのは楓の方ではないか、と。

 つまりこれは、田畑楓という大学に馴染めない大学生が、その孤立ゆえに陰謀論を深めていく様子に似ている。実際には陰謀論ではなく、モアイというサークルの不正を暴くという「公共心」とも言える行動をとるわけだが、彼の痛すぎる思考回路は陰謀論者の心理状況とすごく類似するのだ。自己中心的で、被害者的。かつ、秋好という他者の変化を許容できないから、自分だけの殻に閉じこもり、ネット空間という安全な場所から告発を行う。この映画は2020年制作で、映画の舞台も2020年(新型コロナがなかった世界!)に設定されているが、むしろ2020年以降に世界で起きた様々な現象をミクロにしたものが田畑楓という大学生にインストールされているなと思った。

 全体として傑作とまでは行かないだろうけど秀作という感じで、松本穂香とか清水尋也、岡山天音に柄本佑、そして森七菜など脇役に置くのがもったいないほどの俳優陣が脇を固め、そして生き生きしているのも良い。周りの役者が生き生きしているからこそ、どんどん「闇落ち」していく吉沢亮との対比が際立つのがこの映画全体を見て感じる特徴だろう。単に名前のある役者を集めているだけでなく、俳優の使い方や見せ方が上手い一本である。陰謀論者を目を覚ます方法はその孤立を打ち破ることにあるが、承認欲求の強い楓は本当の意味で孤立することはできなかった。だから最後に目を覚ますことができたのだろう。

 同じ監督が『メタモルフォーゼの縁側』を撮っているのでそっちも見ないといけないなと思った。小説と漫画の違いはあるが『メタモルフォーゼ』も原作ものであるため、原作をベースにして映画としてどう見せているのか、に着目したい。また、これが映画初出演だった川原理沙という(撮影当時は中3とか高1だった!)元モデルの女優にも注目していた。登場シーンが豊富ではないが映画後半、ある飲み会のシーンで彼女が見せた言動は、確かなインパクトを残すものだった。

青くて痛くて脆い (角川文庫)
住野 よる
KADOKAWA
2020-06-12

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