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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



見:ホールソレイユ

 原作の評判も良く、また『さくら荘のペットな彼女』のような実績があるから、といった要素はあるとしてもテレビシリーズがスタートする段階で劇場版の製作が決まっているというケースはなかなかに珍しいのではないか。ただ、原作の6巻と7巻にあたるパートをテレビシリーズから独立させるアイデア自体は悪くない。少なくともテレビが1クールならば、7巻までを三ヶ月で放映するのには無理がある。実際5巻までの流れを描いたテレビシリーズも、相当する巻によってはかなりカットしてしまったな、という感覚はあった。けれどもひとまずテレビシリーズは幕を閉じ、シリーズの一つの山が劇場で見られるというのは、嬉しい気持ちが強かった。

 選択の物語である。それも、二律背反の選択で、どちらかを得ればどちらかを失うというタイプの究極の選択である。それも、二人のヒロインから一人を選ぶのではなく、自分か牧之原翔子なのだ、というの咲太にとって、そして本来は無関係だったはずの第三者の桜島麻衣にとってつらい複雑な現実なのだ。このような究極の選択を要求する物語をどのように表現するか、に焦点を当てよう。

 そのために、ここは桜島麻衣の視点から見ていこう。牧之原翔子がメインヒロインになる回であり、翔子のウェディングドレスなどなかなか力の入ったシーンを見ることができたが、個人的には瀬戸麻沙美が演じた麻衣がいままでにないくらい魅力的に感じた。今回の彼女の役割は、端的に言えば献身である。彼女の場合、エゴを隠さない献身である。つまり、「咲太と一緒にいたい」という気持ちは譲らない。けれども、病気を抱える翔子を遠ざけるわけでもない。翔子が「やさしい人になりたい」と願うヒロインならば、麻衣はすでに優しすぎるヒロインだろう。

 同時に、咲太のまわりにいる「サブヒロイン」たちもまた、咲太や麻衣に対してとても優しい。双葉理央はいつものように科学やSFの知識で二人をサポート(なにせ今回のネタは同時存在とタイムリープである)するし、古賀朋絵も意外なところでスキル(?)を発揮する。理央の存在は映画に安定感を、朋絵の存在は抜けたところを提供してくれるので、翔子/咲太/麻衣の三者関係がどんどんシリアスさを増していく中でのいいアクセントになっている。アクセントという意味では麻衣の妹、豊浜のどかも忘れてはならないか。

 さて、展開については6巻の部分をかなり圧縮することでかなり前半は早足になっている(どうしても「消化している」という印象がぬぐえなかった)が、その分7巻に相当する映画の後半部分にかなり重きを置いてきたのが伝わってきた。映像表現においても、声優たちの感情のこもった表現についてもで、前述したように瀬戸麻沙美が本当に素晴らしかった。彼女が桜島麻衣を演じてくれたおかげで、「メインヒロイン」は彼女しかいないという思いにさせられる。

 そしてその分、咲太の肩の荷は重い。朋絵と「偽の恋人ごっこ」をしていたのがなつかしくなるほど、これまでにないくらい心理的に追い込まれていく。逆にそこまで追い込まれた中で彼がどのような選択を、行動をするかが見ものであり、印象的な結末へとつながっていく。繰り返しになるが、美しい結末を劇場で見られたのが何よりうれしい。















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