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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。





見:Amazon Prime Video
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 アマプラにて。『赤毛のアン』、『アンの青春』、『アンの愛情』原作3冊分を一気にアニメ化したため、11歳で養子になってから4年生大学を卒業、そしてギルバートからの2度目のプロポーズまでを描いている。2クール24話の中にぎゅっと物語を詰め込んだ美しいアニメになっている。

 まず舞台となっているカナダはプリンスエドワード島アヴォンリーの風景が非常に美しい。11歳で初めてこの土地を訪れるアンが駅から家までの道すがら、馬車上でマシューに語って利かせる場面が印象的であり象徴的だが、孤児になったかわいそうなそばかす赤髪の少女が、美しい場所で人生を再スタートさせる、というポジティブな「予感」に満ちている。アンが島の大人たちや友人たちに囲まれる中でアンが精神的に少しずつ成長していき、都会の大学へ進学して最後は幼馴染と結婚、という点はある種の王道ビルドゥングスロマンとも言える。

 だからこそ24話という尺の制約の中でプロセスをどう描くかが過去の映像化でも同じように課題だったのだろうなと思わされた。前述したように11歳からスタートして大学卒業までを描くため、非常にテンポよくサクサク進んでいく。当時の医療環境や衛生事情に深く言及されることはないが、病に対して人ができることがいかに乏しいのかという意味で、アンは若くしていくつもの死を経験する。しかしこのアニメはそうしたつらい出来事も、比較的早く消化せざるを得ない構造を持っている。

 逆に言うと、悲しいことだけではなく楽しいことすらあっという間の過ぎ去ってしまうアニメでもあるのだ。それはいくらかも物足りなさ、例えばアニメ終盤に登場するお金持ちの坊ちゃんガードナーとの交流は本来もっと分厚く書かれていてもよかっただろう。二人が出会って惹かれるまでが早すぎるのが小さな違和感ではあったが、そうした短い遠回りを経て最終的にこのアニメが見せたかったのは「愛情とは何か」であり「愛情はいかにして結実するのか」だったのだと思う。だから親友のダイアナや大学時代の学友だったフィリパがそれぞれの形で結婚を決めていく中で、「自分は誰を選ぶべきか」だとか「自分の気持ちをどう伝えるべきか」で逡巡する様が描かれる。

 同時に、アンはキャリア志向の女性でもある。教師として教壇に立ったあとに大学で文学を学んだ彼女は、今後また教師にもなれるし小説家にもなれるだろう。結婚という当世的な女性の目標は共有しているが、それ以上に自分の力でキャリアを切り開いていこうとする、近代的(というか現代的?)女性像を体現するヒロインだ。ヒロインであるアンの名前が、このアニメでは印象的な場面で何度も呼び掛けられるのもいい。呼びかけられるたび、そのアンはAnnではなくAnneなのだ(eがあることが重要)と想起させられるからだ。

 アン・シャーリー。彼女が仕事か家庭かではない、どっちも取りに行くタイプのヒロインだからこそ2025年のEテレ枠にふさわしいアニメだったのだと思う。この流れを考えると、『あしながおじさん』を現代的にアニメ化することも可能だろうなと、ふと想像してみた。ぜひヒロインは坂本真綾でお願いしたいなとも思った。



あしながおじさん (光文社古典新訳文庫)
ウェブスター
光文社
2015-11-27

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