Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



●はじめに

 @genneiくんの企画した積読 Advent Calendar 2023のトリを務めさせていただきます、バーニングです。エンジニア界隈の人たちが多く参加されているようですが私はエンジニアではなく、昔から本ばかり読んでいるソーシャルワーカーです。ソーシャルワーカーって何ですか、を説明すると長くなってしまうので端折りますが、ご了承ください。幻影くんとは学生時代からの友人で、コロナ以降は全然会えてないですが気づけば長い付き合いですね。今回も面白い企画をありがとうございます。

 さて、前述したように本をたくさん読みます。冊数ベースだとここしばらくは年間200-300のレンジに収まる程度には読んでいます。金額ベースだと50万はくだらないと思いますが、怖いので細かく数えてはいません、いや明らかに巨大な支出なのでちゃんと数えろやと言うべきですが。また、これだけ膨大な量の本をどうやって読んでいるのか、どうやって仕事と両立しているのかと言う話も以前書きましたので、興味ある方はご覧ください。




●ヴァージニア・ウルフとは誰か?

 さて本題に入りましょう。ヴァージニア・ウルフをたくさん積んでるんですよね、という話をツイッターやスペースで時々していたわけですが、そもそもウルフのことを知らない人はなんじゃらほいだと思います。とりあえずWikipediaを置いておきます。



 また、saebou先生がyoutubeでアップしている講義動画でも20世紀前半の重要なイギリス小説としてウルフは紹介されています(31分過ぎ)。ジョイスとウルフだけ覚えて帰ってください、という言葉が印象でしたが、やはりそれほどイギリスの文学史の中では重要とされている人だと言ってよいでしょう。



 ヴァージニア・ウルフは文学史の中では「モダニズム文学」の旗手として、あるいは近代的な女性作家の代表として、またあるいはフェミニズム文学の担い手として紹介されることが多いように思います。つまり、彼女の遺した文学作品をどのように解釈するかについては、読み手の文脈に大きく依存するのだなということが分かります。

 なので(?)2023年に彼女を積むとはどういった意味を持つのか? といったことについても、自由に考えてよいはずです。もちろん文学(史)研究や文芸批評はもう少し厳密にやるべきですが、本をどのように読むのかについては読者の自由なはずです。そのため、2023年のアドベントカレンダー最後を締めくくる最後のエントリーでは、私の自由な読み、ならぬ「私の自由な積み」の話をしたいと思います。

●なぜいまウルフを積むのか?

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 ブログのタイトルに関連させて「2023年にヴァージニア・ウルフを積むこと」について改めてつづってみようと思います。1910年代にデビューし、第二次世界大戦のまだ終わらない1940年代前半に亡くなった作家であるヴァージニア・ウルフを、2023年に積む意味とは何か? ということです。

 まず重要なのはウルフは戦時の作家であり、戦間期の作家だ、ということなのです。長編デビュー作『船出』と続く『夜と昼』は1910年代後半に出版されており、第一次世界大戦の最中に執筆されたと考えるべきでしょう。日本語での翻訳も多い代表作の『ダロウェイ夫人』や『灯台』は戦間期にあたる1920年代に出版されていますが、この間にウルフはパンデミックを経験し、インフルエンザに感染したと言われています。そして最晩年に出版した『幕間』では、まさに戦争の足音が近づいてくるイギリスの風景を小説の中で表現しています。

 戦時の作家であり、戦間期の作家でもあり、そしてパンデミックを経験した作家であるということ。そして『自分ひとりの部屋』というエッセイは現代のフェミニズムの潮流の中で再び脚光が当たっていますし、『三ギニー』は戦争と女性について書かれたエッセイです。約100年前に生きたウルフを読むという行為は、大きな戦争とパンデミックを経験している2020年代の現代人には確実に響くものがあるはずなのです。

●『ある作家の日記』について
ある作家の日記 新装版
ヴァージニア・ウルフ
みすず書房
2020-05-22


 もっとも、ウルフをたくさん積む直接なきっかけは2023年に読んだ『ある作家の日記』という日記です。これはデビュー後の『夜と昼』の創作エピソードから、入水自殺する直前までのウルフの日記が収録されている本です。彼女の死後、夫のレナードによって出版され、現代でも読み継がれている一冊です。

 この本を読むことで、自分にとってヴァージニア・ウルフは文学史の中にたたずむ一人の作家ではなく、激動の20世紀前半を懸命に生きようとした一人の人間として理解することができたと思います。ウルフはフィクションを多く残す小説家でありながら、エッセイや日記といった形で自分自身のことも多く書き残してくれたおかげで、20世紀前半のイギリスから遠く離れた2023年の日本でもウルフの息遣いを確かに感じることができました。そして、もっと彼女のことを知りたいと思ったのです。

 これこそが、私が2023年にウルフを積んできた理由です。

●結びにかえて、積読の紹介

 もともとウルフは夫と一緒に小さな出版社を営んでいました。ウルフの死後数年後には戦争が終わったこともあってか、出版が加速します。戦後には日本でも翻訳が多くなされ、写真に挙げた箱入りの『ヴァージニア・ウルフ著作集』と、甥のQ・ベルによって書かれた『ヴァージニア・ウルフ伝』はいずれも1970年代にみすず書房から翻訳出版されています。そのためいずれも非常に年季が入っていますし、『ヴァージニア・ウルフ伝』は入手するのにやや苦労しました。

 また、精神科医の傍ら文学研究や翻訳にも勢力的だった神谷美恵子によるヴァージニア・ウルフの本を読むのも楽しみですし、全集の翻訳にも関わった川本静子の本も入手したので読むのがとても楽しみです。他方で『フラッシュ』や『ジェイコブの部屋』は比較的刊行が新しい本であるため、普通に新刊として購入することができました。

 ウルフ関連の書籍でまだまだ手に入れてない本もありますが、入手が難しい順番に購入を行ったので、次の「積読」はひとまず写真の本をすべて読んでからでも遅くないだろうと思っています。本を読んだ結果については読書メーターmediumで紹介していくと思いますので、関心のある方はこちらもフォローしてみてください。


◆参考
自分ひとりの部屋 (平凡社ライブラリー831)
ヴァージニア・ウルフ
平凡社
2017-09-20


三ギニー (平凡社ライブラリー860)
ヴァージニア・ウルフ
平凡社
2017-10-11


かわいいウルフ
小澤 みゆき
亜紀書房
2021-03-17

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