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日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。




見:NHKBSシネマ

 NHKBSシネマにて。原題が"A League of Their Own"なので「プリティ・リーグ」というクソ邦題はさすがにどうかなと思うけど、女性性の押し付け(ユニフォームがスカート!)や男性との間の女性差別(そもそも女性が野球なんてすべきではないという価値観)が多く残る時代の中で野球を諦めなかった女性たちと、戦争中に多くの選手が戦争に行く中でもなんとかして女子野球をリーグとして成功させたいおじさんたちの熱い物語という感じ。漫画みたいな展開ではあるが単なるフィクションという訳ではなく事実をベースにしているのも魅力的。

 野球を通じた男女平等や女性の社会進出といったテーマが戦後フェミニズムを思わせるためか、2022年には同じタイトルでドラマ化もされている。たまたま見つけた次の動画は、実際の女子リーグとフィクションとの違いについて解説しており勉強になった。そもそもアメリカの女子野球の歴史はこの映画を見るまでほとんど知らなかったが、映画でも描かれているように後世になって当時の歴史が称えられ、野球殿堂入りしたという出来事は実際にもあったようだ。




 物語としてはとある田舎で牛の世話と両親の世話をしながらソフトボールに興じていた姉妹がシカゴからやってきたスカウトに促され、バッテリーととしてプロの世界に入り、そのままプロテストを受けた他のチームメイトと合流して女子リーグに参加するというストーリー。この姉妹がその後の対立をきっかけに別チームになり、ワールドシリーズの第7戦で対戦する、という流れはあまりにも野球漫画すぎる気はするけど、この個性的な姉妹を軸にした女性たちの物語という構成はジェイン・オースティンの『分別と多感』を思わせる。

 『テルマ&ルイーズ』のジーナ・デイヴィス演じるドティがチームの正捕手を好演しており、「肩のいい」守備型キャッチャーとしてチームを引っ張る姿は印象的だった。またトム・ハンクス演じるデューガン監督が泥酔のせいでベンチで寝ている時ややる気がない時には監督の代わりに打者にサイン伝達をする監督代行の役割もこなしている。チームのキャプテン役であり、またキャッチャーというポジションのせいか監督とも対等に会話をする場面が多く、それが非常に様になっているのもジーナ・デイヴィスのなせる業なのだろうと思った。

 また、トム・ハンクスが最初から最後までトム・ハンクスしているのも良かった。1993年には『フィラデルフィア』、1994年には『フォレスト・ガンプ』でオスカーを獲ることになるトム・ハンクスだが、今回のようなスポーツコメディ映画で「飲んだくれのだめな監督」として生き生きしているのもとても良い。どこまで行っても人間くさいキャラクターを演じるのに、トム・ハンクスはよく似合っている。

 メジャーリーグの代わりの商業主義として生み出された女子リーグはその後10年間で幕を下ろしている。確かにこの映画のように女子選手にスカートを履かせたり、ファウルフライをキャッチした観客にキスをさせたりと徹底的に選手を女子扱い(というよりコンパニオン扱い)していては、その先の発展は望めないだろう。第2波フェミニズムの本格的な到来は戦後の生活が落ち着き、各国が経済発展を遂げようとする1960年代以降のことだから、ちょうどこの女子リーグは狭間の出来事だったのかもしれない。

 それでも、主人公姉妹のような銃後の女たちが、男たちの商業主義を「利用して」思いっきり野球をやった(文字通り砂まみれになって)歴史があったことをフィクションとしてでも再現したことは現代的にも意義があるのだとろうと思った。この映画を見るとアメリカの中では戦前と戦後が断絶しているどころか、その先駆けとして機能しているとも言えるからである。

プリティ・リーグ
ビル・プルマン
2014-04-01

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