見:NHK Eテレ
Info:公式サイト/filmarks/IMDb/Letterboxd
Eテレにて。ストーリーはベタベタな青春ものだけど、ちゃんと70分の中でメリハリをつけて上げるとことは上げ、落とすとことは落とす花田十輝節がくっきりと見えるのがいい。映像に違和感というか慣れない感覚があったのは最初だけで、映像制作プロセスをダイナミックな3D映像で表現する場面は、初めからこの映像スタイルを選択していたからこそできたことだと思う。手書きアニメと比べて3Dだから「しょぼい」なんて思考はもう過去の遺物なのだということを、これまでも爽やかに叩きつけられると気持ちいい、とすら思える。
主人公は朝屋彼方。軽音部でバンドをやっているクラスメイトの中川萌美の依頼に応じてMVを制作したところ好感触を得、それからも夜な夜な動画制作をしては学校に来て机に突っ伏すという、少し前の少年漫画に出てきそうな熱いキャラクターだ。その彼には外崎大輔というクラスメイトがいて、外崎には絵の才能がある。彼は授業中に寝ることのない「真面目な高校生」として日々を送っているが、家に帰ったら創作に没頭するところは彼方ともよく似ている。彼方と違うのは性格と、すでに大きな評価を得ていることくらいか。
そんな熱さと爽やかさを持つ彼方がある雨の日に路上で出会ったミュージシャン、織重夕の音楽に一目惚れ(一聴き惚れ?)する。織重はすぐその場を立ち去るが、実は彼女は彼方の通う高校に新しく着任した英語教師だった。つまりこれは、春の出会いの物語でもある。Eテレの実況をTwitterで追っていると新海誠の『言の葉の庭』(2013年)に例える人がちらほらいたが、『言の葉の庭』の2人ほど年齢差はないし、また今回の映画に恋愛感情は明確に描写されていない。分かりやすく恋愛や性的感情をビビッドに描こうとした『言の葉の庭』とはむしろ明確に違う、というべきだろう。ただ、「ものづくりに対する情熱」と「ある挫折」を描いている点はよく似ている部分ではある。
IMDbのレビューコメントでも指摘されていたが、今の時点でこの映画を見ると国内でも新海誠よりもむしろ『ルックバック』(2024年)との類似性を語る人は多くいるだろうと思う。何かを作るという情熱、影響、嫉妬、そして挫折。ただ楽しく作れていたのは最初だけで、そのあとには必ず苦しい時間がやってくる。それをどうやって乗り越えていくのか、あるいは乗り越え「られない」自分と対峙するのか。この分岐で迷わず前者のルートを進んでいく彼方の青臭さと瑞々しさがこの映画の持ち味である一方、後者のルートを選ぼうとする外崎と織重の姿を描いているのも良い。彼方のルートが青い道だとすれば、外崎や織重の歩く道は暗くて黒い道という色遣いの差異も明確になっている。
だからこそ、織重夕というキャラクターをちゃんと描くだけの時間がなかったのが惜しいところではある。ただ、この映画のタイトルになっているようにあくまでこの映画は彼方の情熱と瑞々しさ(苦しみや挫折を含めて)を描きたかったのだと思うので、「変なバランス」をとる映画にならなかったからこそインパクトを残しているのは確かだと思う。
何かを作ることや表現すること、それを続けることと辞めること、色々な感情が入り交ざる中で「応援すること」を中心的なテーマに据えたことで70分の中に一本きれいな筋が通っているとも思った。日本語では「エール」というワードをチョイスしつつ、英題では「cheers」と言うワードをチョイスしているのも個人的には良いなと思った。cheerではなく、cheers。今の時代、ある活動を応援(cheer)してくれる人はたとえその姿が見えなくてもたくさんいるのだ、画面越しに。

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