久しぶりに事前に全部読んだので、発表直前ながらちゃんと予想してみます。芥川賞は最近ほぼ毎回当ててきているが果たして。
全部読んでいるのと、今回は全部手元にあるので受賞した作品については長めのレビューも書いて載せたいなと思っている。
◎崔実(チェ・シル)「ジニのパズル」
○村田沙耶香「コンビニ人間」
▲高橋弘希「短冊流し」
△今村夏子「あひる」
×山崎ナオコーラ「美しい距離」
タイトルに書いたように、実力と実績から考えても村田沙耶香が一歩リードしているように見える。というか、もはや中堅と言ってもいいくらいだ。(ナオコーラもその部類だが)
その上であえての本命は「ジニのパズル」で。講談社がここまでガンガン押してくるのは想定してなかったが、ガンガン押されている作家自身のルックスと言い、粗削りながらも逆にそのエッジの効いた感じがハマってくる「ジニのパズル」は強い。
ひとつ分かりやすい弱さがあるとすれば、ステファニーというアメリカでのホームステイ先の女性に回想を話す、という構造をとりながらも、その構造があまりうまく言っているとは思えないこと。悪くもはたらいていないが、ジニにとっての二度目の退学、というエピソードを引き出す以上のものがあるのか。
とはいえ、90年代後半を舞台にしたこの作品の空気感は、在日朝鮮人の学校生活という政治的にも際どい路線の小説としてはかなりビビッドだ。勢いを感じるし、宇多田ヒカルの「Automatic」やソニーのMDウォークマンという固有名を持ち込んでくるあたりの時代の空気感も匂わせる。
村田の「コンビニ人間」は「殺人出産」を書いてきたような最近の村田に比べると控えめにうつるものの、村田が書いてきたこれまでのヒロイン像である社会からズレまくりながら自分の境地を信じていきるよくわからない強さ、みたいなのは感じることができる。
「コンビニ人間」の主人公は非コミュに見えて妹や同僚たちとのコミュニケーションに長けているあたり、表面的にはうまくやれているわけだ。学生時代はうまくなじめなくても、社会に出てから地味な強さを見せていくタイプのヒロインは、自身がコンビニ店員でもある(少なくとも「であった」)村田自身の思いや経験がいささか投影されているようにも見える。私小説では決してないのだけれど。
実力的にこの次に来るとすればナオコーラだろうが、ガンとなった妻の看取りをいくらか新しい、かつ社会批判的な切り口で書いた面白さはあるがそれ以上のものをあまり感じなかった。
対照的に、かなり短い部類ではあるが同じく死の匂いを感じさせる高橋の「短冊流し」のほうが感情の繊細さを事細かに書けていて好感を持てる。オリジナリティや短いがゆえの弱さはあるものの、キャリアは浅いながら三度目の候補となった今回、二作受賞なら高橋が来てもいいだろう。
今村夏子の「あひる」もいささか風変わりな家族小説であるが、日常のささいなやりとりの中に不穏さを織り込んでいくスタイルは上手さを感じる。もっと長いものを読んでみたい。
以上、ざっと見てきたが村田を追随する崔のあとに三者が続くという感じだろう。崔を本命にしているが、あるとすれば崔と村田の二作受賞が妥当ではないかと踏んでいる。
ナオコーラと今村夏子は今回はない、という見立ての上で高橋が穴を開ける可能性も微レ存。
ちなみに直木賞は米澤穂信しか読んでないので、とってくれたらとても嬉しいです。
全部読んでいるのと、今回は全部手元にあるので受賞した作品については長めのレビューも書いて載せたいなと思っている。
◎崔実(チェ・シル)「ジニのパズル」
○村田沙耶香「コンビニ人間」
▲高橋弘希「短冊流し」
△今村夏子「あひる」
×山崎ナオコーラ「美しい距離」
タイトルに書いたように、実力と実績から考えても村田沙耶香が一歩リードしているように見える。というか、もはや中堅と言ってもいいくらいだ。(ナオコーラもその部類だが)
その上であえての本命は「ジニのパズル」で。講談社がここまでガンガン押してくるのは想定してなかったが、ガンガン押されている作家自身のルックスと言い、粗削りながらも逆にそのエッジの効いた感じがハマってくる「ジニのパズル」は強い。
ひとつ分かりやすい弱さがあるとすれば、ステファニーというアメリカでのホームステイ先の女性に回想を話す、という構造をとりながらも、その構造があまりうまく言っているとは思えないこと。悪くもはたらいていないが、ジニにとっての二度目の退学、というエピソードを引き出す以上のものがあるのか。
とはいえ、90年代後半を舞台にしたこの作品の空気感は、在日朝鮮人の学校生活という政治的にも際どい路線の小説としてはかなりビビッドだ。勢いを感じるし、宇多田ヒカルの「Automatic」やソニーのMDウォークマンという固有名を持ち込んでくるあたりの時代の空気感も匂わせる。
村田の「コンビニ人間」は「殺人出産」を書いてきたような最近の村田に比べると控えめにうつるものの、村田が書いてきたこれまでのヒロイン像である社会からズレまくりながら自分の境地を信じていきるよくわからない強さ、みたいなのは感じることができる。
「コンビニ人間」の主人公は非コミュに見えて妹や同僚たちとのコミュニケーションに長けているあたり、表面的にはうまくやれているわけだ。学生時代はうまくなじめなくても、社会に出てから地味な強さを見せていくタイプのヒロインは、自身がコンビニ店員でもある(少なくとも「であった」)村田自身の思いや経験がいささか投影されているようにも見える。私小説では決してないのだけれど。
実力的にこの次に来るとすればナオコーラだろうが、ガンとなった妻の看取りをいくらか新しい、かつ社会批判的な切り口で書いた面白さはあるがそれ以上のものをあまり感じなかった。
対照的に、かなり短い部類ではあるが同じく死の匂いを感じさせる高橋の「短冊流し」のほうが感情の繊細さを事細かに書けていて好感を持てる。オリジナリティや短いがゆえの弱さはあるものの、キャリアは浅いながら三度目の候補となった今回、二作受賞なら高橋が来てもいいだろう。
今村夏子の「あひる」もいささか風変わりな家族小説であるが、日常のささいなやりとりの中に不穏さを織り込んでいくスタイルは上手さを感じる。もっと長いものを読んでみたい。
以上、ざっと見てきたが村田を追随する崔のあとに三者が続くという感じだろう。崔を本命にしているが、あるとすれば崔と村田の二作受賞が妥当ではないかと踏んでいる。
ナオコーラと今村夏子は今回はない、という見立ての上で高橋が穴を開ける可能性も微レ存。
ちなみに直木賞は米澤穂信しか読んでないので、とってくれたらとても嬉しいです。
コメント