ランニングブームという現象は、たとえば宮間あやが言うところの「ブーム」から「文化」にすでになっているのではないか。
ということをあえて考えたわけではないけど、現状ではいたるところで市民マラソンが行われているし、関西や東京圏の大都市の大会になると応募倍率もなかなかに高い。東京マラソンに○年連続で落ち続けている、みたいな話はネットではいくらでも耳にする。
自分にとってのランニングは小学生のころから毎年のように上位に入り込んでいたマラソン大会が原点にある。そのあと中学に入って入部した陸上部では長距離ではなく短距離といくつかのフィールド種目(幅跳びや高跳びを経験したあと最終的にはなぜか砲丸投げに落ち着いた)を経験したので、長距離的な意味でのランニングからは少し遠ざかってしまった。
なので基本的には趣味的なランニングを高校や大学時代にはよく行っていて、山手線の内側に住んでいた大学院時代には池袋や新宿方面の繁華街に走って行くのを楽しみにしていた。
高松に暮らしているいまのランニングの楽しみとしては、間違いなく海に行くことだろう。時間を問わず、高松港の近くにはランナーがたくさんいるし、港周辺は年に一度行われるトライアスロン会場にもなっている。平坦で景観がよく、そして大都市ほど密集していない。大きなアップダウンがなく、自然にほど近い地方都市というのはランナーにとってはやさしい街なのだと思う。(しかし夜走るときには車に気を付けないと普通に危ない)
そういうなかでランニングというよりは走ることそのもの、あるいは運動することについての知識や関心をもっと深めようといくつかの本を最近読んだ。
最初のきっかけはジョン・レイティとエリック・ヘイガーマンによる『脳を鍛えるには運動しかない!』だった。原題はもっとシンプルだが、このタイトルは本の内容を分かりやすくコンパクトにようやくしている。つまり、運動(本のなかではとりわけ有酸素運動が推奨される)が脳に与えるインパクトや効能について、様々な視点から書かれている。
原著はアメリカで2008年に出ており、日本では2009年に訳された本なので少し前の本ではある。ただ、2000年代に入ってからの医学論文に関するレビューも多々記述されていて、科学的に運動と脳の関係を書いた本として読むことができる。本書は専門書ではなくて一般書なので、専門的になりすぎずに読みやすいという点で、バランスもとれている。
たとえば第一章と二章では運動が勉強や学習にもたらす効果について書かれている。第一章でのアメリカの学校の取り組みの例は非常に面白い。それは、体育の授業のやり方を変えたことで成績が向上したという内容で、体育をスポーツの得意な誰かのためではなく、授業に参加するみんなが楽しめて、身体を動かすことができる方法に変えたということだ。
その他うつや依存症、あるいはADHDといった脳内物質と関連のある疾患や症状に対しても運動が効果的であることを説明している。このあたりは最近NHKスペシャルかなにかでにたような番組を見たことがあったのでふむふむ、という程度だったが、第八章で女性の脳に及ぼす影響について書いた部分は非常に興味をもって読んだ。
女性に特有な生理、つまり月経とその負の影響(月経前症候群:PMS)については、男性には完全には想像しづらいが女性には日常的な現象だろうと思う。生理前だからイライラする、だるい、頭痛が、という話はよく耳にするし、周期的に訪れる不可避な現象という辛さについてはやはり想像を絶する。
このPMSにも運動が効果的だと書かれている。それは単に気分転換という意味ではなく、ホルモンへの影響が科学的にも明らかになっているという説明だ。ホルモンの変動に関しては同様に、産後うつや更年期障害といった女性特有の症状にも見られることであり、ここにもやはり運動が適する。
そして女性特有の現象として挙げられるのが、妊娠だ。妊娠中の運動はリスクではないのか、という前置きを置きながら、2002年のアメリカ婦人科学会の報告を引きながら運動の有用性を提言している。もちろんやりすぎはよくないし、身体を痛める。具体的にどの程度の、という点が書かれていることや、妊娠中におけるストレスや不安を軽減する精神的な作用についても触れられている。さらに、妊娠中に運動をしたグループとそうでないグループとでは産後の子供の身体能力にも差が見られる、というポイントはなかなか面白い。
というように、運動の具体的な効用とその方法について膨大な例が挙げられており、読むだけで身体を動かしたくなる一冊、というところがすばらしい。その上に読みやすい。
第十章で書かれている言葉に、本書の主張の根幹が書かれているので引用しよう。
この本を読む読者もまさに、心沸きたつような気分になるのではないか。運動を始めよう、というのは苦手な人や嫌いな人にとってはハードルが高いものかもしれない。それでも、ここまで運動のインセンティブがあるのなら、運動こそが自分自身を救ってくれるのかもしれないのなら。
第十章にはご丁寧に、「運動が嫌いでも落ち込むことはない」というアドバイスもセットで書かれている。運動の効用を大げさに評価するべきではないだろうが、書かれていることには耳を傾けて損のないことばかりだ。
というわけで、寒い冬だけど逆に身体を暖めるには最適なので、みなさん運動しましょう。というオチをつけつつ自分もちゃんと最近は走れてないことについて自己嫌悪を覚えている。時間のやりくりが一番むずかしい。
あと、さっきの本に加えてジョン・レイティが書いたもう一冊の本と、走るために生まれたような民族について書かれたまた別の本について触れたかったけど長くなったのでまたいずれ。
ということをあえて考えたわけではないけど、現状ではいたるところで市民マラソンが行われているし、関西や東京圏の大都市の大会になると応募倍率もなかなかに高い。東京マラソンに○年連続で落ち続けている、みたいな話はネットではいくらでも耳にする。
自分にとってのランニングは小学生のころから毎年のように上位に入り込んでいたマラソン大会が原点にある。そのあと中学に入って入部した陸上部では長距離ではなく短距離といくつかのフィールド種目(幅跳びや高跳びを経験したあと最終的にはなぜか砲丸投げに落ち着いた)を経験したので、長距離的な意味でのランニングからは少し遠ざかってしまった。
なので基本的には趣味的なランニングを高校や大学時代にはよく行っていて、山手線の内側に住んでいた大学院時代には池袋や新宿方面の繁華街に走って行くのを楽しみにしていた。
高松に暮らしているいまのランニングの楽しみとしては、間違いなく海に行くことだろう。時間を問わず、高松港の近くにはランナーがたくさんいるし、港周辺は年に一度行われるトライアスロン会場にもなっている。平坦で景観がよく、そして大都市ほど密集していない。大きなアップダウンがなく、自然にほど近い地方都市というのはランナーにとってはやさしい街なのだと思う。(しかし夜走るときには車に気を付けないと普通に危ない)
そういうなかでランニングというよりは走ることそのもの、あるいは運動することについての知識や関心をもっと深めようといくつかの本を最近読んだ。
最初のきっかけはジョン・レイティとエリック・ヘイガーマンによる『脳を鍛えるには運動しかない!』だった。原題はもっとシンプルだが、このタイトルは本の内容を分かりやすくコンパクトにようやくしている。つまり、運動(本のなかではとりわけ有酸素運動が推奨される)が脳に与えるインパクトや効能について、様々な視点から書かれている。
原著はアメリカで2008年に出ており、日本では2009年に訳された本なので少し前の本ではある。ただ、2000年代に入ってからの医学論文に関するレビューも多々記述されていて、科学的に運動と脳の関係を書いた本として読むことができる。本書は専門書ではなくて一般書なので、専門的になりすぎずに読みやすいという点で、バランスもとれている。
たとえば第一章と二章では運動が勉強や学習にもたらす効果について書かれている。第一章でのアメリカの学校の取り組みの例は非常に面白い。それは、体育の授業のやり方を変えたことで成績が向上したという内容で、体育をスポーツの得意な誰かのためではなく、授業に参加するみんなが楽しめて、身体を動かすことができる方法に変えたということだ。
その他うつや依存症、あるいはADHDといった脳内物質と関連のある疾患や症状に対しても運動が効果的であることを説明している。このあたりは最近NHKスペシャルかなにかでにたような番組を見たことがあったのでふむふむ、という程度だったが、第八章で女性の脳に及ぼす影響について書いた部分は非常に興味をもって読んだ。
女性に特有な生理、つまり月経とその負の影響(月経前症候群:PMS)については、男性には完全には想像しづらいが女性には日常的な現象だろうと思う。生理前だからイライラする、だるい、頭痛が、という話はよく耳にするし、周期的に訪れる不可避な現象という辛さについてはやはり想像を絶する。
このPMSにも運動が効果的だと書かれている。それは単に気分転換という意味ではなく、ホルモンへの影響が科学的にも明らかになっているという説明だ。ホルモンの変動に関しては同様に、産後うつや更年期障害といった女性特有の症状にも見られることであり、ここにもやはり運動が適する。
そして女性特有の現象として挙げられるのが、妊娠だ。妊娠中の運動はリスクではないのか、という前置きを置きながら、2002年のアメリカ婦人科学会の報告を引きながら運動の有用性を提言している。もちろんやりすぎはよくないし、身体を痛める。具体的にどの程度の、という点が書かれていることや、妊娠中におけるストレスや不安を軽減する精神的な作用についても触れられている。さらに、妊娠中に運動をしたグループとそうでないグループとでは産後の子供の身体能力にも差が見られる、というポイントはなかなか面白い。
というように、運動の具体的な効用とその方法について膨大な例が挙げられており、読むだけで身体を動かしたくなる一冊、というところがすばらしい。その上に読みやすい。
第十章で書かれている言葉に、本書の主張の根幹が書かれているので引用しよう。
わたしが強調したかったことーー運動は脳の機能を最善にする唯一にして最強の手段だということーーは、何百という研究論文に基づいており、その論文の大半はこの一○年以内に発表されたものだ。脳のはたらきについての理解は、その比較的短い期間にすっかりくつがえされた。この一○年は、人間の特性に興味をもつ人すべてにとって、心沸きたつような時代だった。
この本を読む読者もまさに、心沸きたつような気分になるのではないか。運動を始めよう、というのは苦手な人や嫌いな人にとってはハードルが高いものかもしれない。それでも、ここまで運動のインセンティブがあるのなら、運動こそが自分自身を救ってくれるのかもしれないのなら。
第十章にはご丁寧に、「運動が嫌いでも落ち込むことはない」というアドバイスもセットで書かれている。運動の効用を大げさに評価するべきではないだろうが、書かれていることには耳を傾けて損のないことばかりだ。
というわけで、寒い冬だけど逆に身体を暖めるには最適なので、みなさん運動しましょう。というオチをつけつつ自分もちゃんと最近は走れてないことについて自己嫌悪を覚えている。時間のやりくりが一番むずかしい。
あと、さっきの本に加えてジョン・レイティが書いたもう一冊の本と、走るために生まれたような民族について書かれたまた別の本について触れたかったけど長くなったのでまたいずれ。
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