Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

 最近エッセイというか論考のようなものが続いていてまともな日記はもはや月1,2回にしかなってないという謎な状況である。こんばんは、バーニングです。
 でも少し前にカウンターが35まで回っていて色々びっくりした。こんなに回ったの初めてかもしれん、スクショ撮っておけばよかったと思うなど。
 今週は来週のゼミ発表に向けて詰めなければなーという感じです。

 まあそんな感じで文献や資料をあさらねばならないのですが久しぶりに本の話でもしようかな。
 今年もこのミスの季節と言うことで週末に本屋に行ったんだけど、1位はまあ納得なんだけどそれ以外がう〜ん、という感じ。ここ何年かは本格が強いのかなあ。本格はあまり読まないので、逆に言えば本格以外の書き手が低調なのかもしれない。去年かなり票数の入ってた米澤穂信も今年はさみしかったし、伊坂も『マリアビートル』がなんとか上位には食い込んだものも、ピエロやコインロッカーを連ねた2003年や2004年にはかなわない。
 今年は本当に好みの作家のランクインが少なくてしょげつつ、確かに書いてないもんなあ、とうなずきつつ、隣のあった「このライトノベルがすごい!」を買ってきたのでした。大学入ってからこのラノを買うのは初めてかも。逆に、このミスは2004年版からずっと買い続けていて初めて買わない年となった。
 
 いや、すごいね、インデックス。というか御坂美琴の人気に嫉妬したくなるほど。
 ミステリー界と反してというのはあれだが、色んな意味でこの業界は活気づいている。レーベルも3年くらい前から毎年のように複数創刊されてるし、その中でもガガガ文庫はランキング上位に多く名を連ねていたり。
 あとファミ通文庫がここ最近強いんですね、書店では電撃やスニーカーに押されてて数自体は少ないイメージがあるんだけど、文学少女シリーズとバカテスシリーズが順調に伸びている模様。さらにツイッターでもたまに話題にのぼるココロコネクトシリーズはまだ若手作家さんのようで、次の世代が育っているというのは勢いがある証拠かな、と思う。
 もう一つ勢いのある要因はインデックスやバカテスに代表されるように、アニメ化されていること。ここ最近は出版からアニメ化のサイクルがかなり早くなっているように思う(実感ベースなので詳しく調べたわけではないが、↓に参考として記載しておく)
 たとえばハルヒなんてのは、ラノベ界である程度流行ってから満を持してアニメ化して成功した作品と言えると思う。当時はラノベで人気を博すことが、アニメ化の先行指標のようなものになっていたのではないか。だが最近は人気が出てくるとほぼ同時にアニメになるか、もしくは巻数が少ない間にアニメ化され、ラノベのほうに人気が出てくるなんてのも珍しくない。インデックスやハルヒなんかはある程度巻数を重ねてからのアニメ化と言えるだろうけど、むしろマイノリティなんじゃないかな、と。最近人気の俺妹は1巻が出てからたった2年しか経ってない。
 むしろ西尾の『化物語』シリーズに代表される語りもののように、メディアミックスが前提とされているケースも出てきた。一方で、このラノでも言及があったが冲方丁が本屋大賞と吉川英治文学新人賞を受賞するなど、一般文芸界でも話題になった年である。2008年に桜庭一樹が直木賞をとったあたりから、冲方もそうだし橋本紡や有川浩などラノベ出身の作家が一般文芸でも知名度をかなり高めつつあるのの事実だろう。
 1つは映像化原作の提供ルートとして、もう1つは一般文芸への供給ルートとしてここ数年のラノベ業界は活性化してきたイメージがある。レーベルがさらに増えているという意味で、またアニメ化のサイクルが参考に上げたように2年少々とかなり早くなっていることを考えると成熟していると言ってもいいのかもしれない。

<参考>
涼宮ハルヒの憂鬱:小説初版2003年6月→アニメ化2006年4月(2年10ヶ月)、2009年4月
とある魔術のインデックス:小説初版2004年4月→アニメ化2008年10月(4年4ヶ月)、2009年(レールガンシリーズとして)、2010年10月
とらドラ!:小説初版2006年3月→アニメ化2008年10月(2年7ヶ月)
バカとテストと召喚獣:小説初版2007年1月→アニメ化2010年1月(3年)
文革少女シリーズ:小説初版2006年4月→アニメ映画化2010年5月(4年1ヶ月)
俺の妹がこんなに可愛いわけがない:小説初版2008年8月→アニメ化2010年10月(2年2ヶ月)
*OVAはのぞき、あくまで放映ないし上映時期のみ掲載

 あと、最近読んだ中で面白かったのは『乳と卵』と『ハーモニー』かな。前者は言わずと知れた2008年の芥川賞作品、後者はハヤカワがプッシュしている夭折した伊藤計劃の第2長編。『虐殺器官』のあとの世界のお話。
 『乳と卵』はレビューをすでに書いたので読んで欲しいんだけど、『ハーモニー』は純文学ではないのだが文学性も非常に素晴らしいと思う。主人公トァンとミァハの関係性、ふたりの存在感は読者にとって手の届きそうで、でも届かないくらいの距離で書かれていることが終盤の展開で再び生きてくる。リアルとアンリアルの狭間をさまよう。これをセカイ系と言ってしまうには、あまりにももったいない。
 いずれにせよ、こういう視点で生と死を書いた作家はかつているだろうか?さらにいえば、あくまでSF(個人としてはハヤカワが作った言葉であるリアルフィクションというジャンルのほうがより適当な気がする)の範囲で人間なるものとは何か、という文学的な問いを書いたことに大きな意味がある。SFとしても超一級の世界観やストーリーであるし、他方で多分に哲学的だ。生と死の問題を、公と私の問題に置き換えればどうなるだろう。ヒントが本作につまっている。答えは・・・。
 
 たぶんレビューをいずれ書き上げると思うのでご期待あれ、かな。そのうち2010年ベストの記事を書こうと思っているけど、『ハーモニー』が小説部門で暫定1位です。『虐殺器官』の衝撃よりも、さらに捩れた衝撃がここにはあった。
 私たちは本当に惜しい作家を亡くした。天才とは、儚いもの、か。

11月〜12月上旬の読了
84:黒い季節/冲方丁(レビュー
85:ハル、ハル、ハル/古川日出男
86:インシテミル/米澤穂信
87:日本の医療は変えられる/伊藤元重 編
88:国家(上)/プラトン
89:論点解説 日経TEST/日本経済新聞社 編
90:乳と卵/川上未映子
91:地域医療・介護のネットワーク構想/小笠原浩一・島津望
92:ハーモニー/伊藤計劃

 87は論点がよく整理されていて、主に経済学の視点ではあるが読み応えあり。医療問題を扱う一方、市場における医療の価値を論じている。
 88は哲人王支配を肯定するまでの過程がソクラテスらの議論によって導かれる。結論そのものよりも、ソクラテスの議論の方法というのは『ゴルギアス』で見られた議論よりは、議論の本質というものをついている気がする。
 91は各地域で行われている医療連携やネットワークの事例をいくつかの理論を用いて分析し、かつ今の時流の中で連携を結ぶ中で何が重視されているのかを指摘している。あまり長くはないが、コンパクトにまとまっていて目配せも丁寧で分かりやすい。

今日の一曲
世界のほんの片隅から(2001年)/ZONE
 
 寒い季節に。『ハーモニー』のラストシーンが浮かぶようだ。
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