Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

 夏の冒険ミステリーとして森博嗣原作の「カクレカラクリ」が昨日TBSで放映されてたんで少し感想を。森博嗣初の映像化なんだが、スッキリまとまっていてミステリーっぽくはない。

 天文好きの大学生阿部と陽気な栗本は星が綺麗だという風見温泉にバイトで訪れる。行きの列車の中で風見村の二大名家花山家の長女、花梨に遭遇。温泉に着いた後、旅館の跡継ぎである太一から風見村にまつわるエピソードを聞かされる。120年前に作られたからくり人形がきっかけで村が花山家と風見家に二分され、今でも対立が続いているという。花梨とその妹怜奈とともにからくり人形にまつわる謎を解き始める。
 120年前に何があったのか?長く続く確執を彼らは打ち破れるのか?
 
 主人公の2人だけでなく風見村の3人もそれぞれに個性的。それぞれが自分の長所を発揮しながらも短所もさらけだしていく。深みにはまるにつれ、それ以上踏み込む勇気を失いかねたりもする。村を助けたいという思いだけはあり、その中での彼らそれぞれの自分探しの冒険、と言った感じか。
 
 完璧だと思われている花梨は、それ故に奔放な妹にあこがれたりもする。へっぴり腰で優柔不断な太一は、幼なじみの怜奈へ思いを寄せつつもなかなか積極的になれないでいる。それぞれが独りだったら何も出来ず立ち止まってしまうだけだろう。大人達は大人達で深入りしたくないが故に、真相を明かしたいかどうかは別として謎を解きにはいかない。
 
 そんな中での阿部と栗本の登場。彼らは風見村の3人から牽引される形で謎解きに入るものも後半は牽引していく側として3人と関わっていくようになる。全く違う価値観や習慣。逆に、阿部の言う当たり前だったら気づかないよね、というような大切なもの。どこか強がりを見せるようだったりグサッと刺さるような会話戦も楽しい。そこは森らしいと言ってもいいはず。要所要所で飛び出すコカコーラはご愛敬。

 肝心の謎解きは、石碑のトリックさえ見破ればそれほど難しくもない。謎に関しては解けたあとの真相がポイントだろう。全ては偶然じゃなかったんだ、というような感じのラストになってしまうのが上手い。2時間のスッキリ感があるので逆に小説なら物足りないかも知れない。

 古いしきたりを打ち破る!といういかにも若さ故のお話ではあるが、それだけで終わる訳ではなく、予想以上に清々しくて気持ちいいミステリーだった。謎解きを一つの旅とするなら『夜のピクニック』に通じるようなようなテイストを持った一つの青春像。同じように持つべき物は友達だと思わせられて、ユーモアにも富んだお話。やっぱりこれは青春ものとして見るべきだろうね。
このエントリーをはてなブックマークに追加

コメント

コメントフォーム
評価する
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • リセット

トラックバック