最後に愛が勝つ ――『パトリオット・デイ』(アメリカ、2016年)かつて難病患者だった13歳の自分へ

2019年01月31日

ポストモダン、歴史修正主義、フェイクニュース、そして三日月宗近の魂 ――『映画 刀剣乱舞』(2019年)



見:イオンシネマ綾川

 1月で期限が切れるイオンシネマのチケットが余っていたのでなんとなく見に行ったが、思った以上に無茶苦茶面白くてとても満足した。「歴史修正主義」というワードがナレーションで登場するあたり、原作ゲームを手掛けたニトロプラスの恐ろしさを感じるけれど、しかし本当にこれはポストモダン的な作品になっているなと思う。

 たとえば『戦国自衛隊』のような作品があって、ゼロ年代にはリメイクも作られているけれど、リメイクはあくまでリメイクで、映像や演出の技術の向上はもちろんあったけれど、それ以外に現代的だと思わせる印象は少なかった。しかし本作の場合、2.5次元ミュージカルを手掛ける俳優たちがそのままキャラクターとして出演することで、2.5次元の映像化に成功しているということ。そして、平成ライダーを多く手がけた小林靖子が本作の作品を手掛けていること。そして歴史修正主義と同じくらい、本作で重要なのはフェイクニュースであるということだ。つまり、騙し合い、コンゲームと言っても良いのである。

 真実の歴史を変更しようとする時間遡行軍と、真実の歴史を守ろうとする刀剣男士たち、といった構造自体は非常にシンプルなものだ。アンチヒーローに対してヒーローがどのように立ち向かうのか。あるいは、時間遡行軍の真の狙いはいったい何なのか? 決戦の舞台として選ばれるのは、あの有名な本能寺の変だが、ここでの防衛戦が終わっても物語は終結しない。本能寺だけでなく、各時間の各地域に軍勢を送っているらしい時間遡行軍にとって、本能寺の変もいわば「陽動」なのではないのか?という疑念。そして、多くの場面で黙して語らない三日月宗近の真意も鍵になってくる。

 面白いなと思ったのは、歴史修正主義というのはあくまで出発点に過ぎないことだ。この物語の真骨頂は、さっきも書いたようにコンゲーム、つまりいったい何が真実なのか?ということをめぐった情報戦なのである。ポスト本能寺の変を経て、明智光秀や豊臣秀吉など、各軍勢はそれぞれの動きを見せるが、本能寺の変が実在の歴史をなぞらなかったことによって、明智や秀吉たちの動きも想定がつかない。そして「生き残ってしまった」信長や、信長を支援する側につく時間遡行軍もまた、狙いを持って行動をしている。

 こうなってくると、刀剣男士側も一枚岩とはいかない。単に、三日月宗近とそれ以外、という構図だけではない。なぜならば、彼らの中には歴史的に信長に縁のある刀剣も含まれるからだ。もちろん、そういった「私情」と任務は直接的には分かれるけれども、ヒーローたちが一枚岩ではないというのを、100分ほどの短い映画の中でも存分に存在感を持って発揮させること(そのビジュアルはもちろんのこと)はさすがだと思ったし、そのヒーローの葛藤を描くことは小林靖子にとってはおそらく得意分野でもあるのだろう。いずれの俳優も舞台版から継続して演じているからか、それぞれの刀剣に見事になりきって素晴らしい演技を見せている。(個人的には日本号がとても好き)

 そんなこんなで、これは本当に見どころの多い作品だ。様々な葛藤を乗り越え、そして一つの真実にようやくたどりついた先に見せる刀剣男士と時間遡行軍による殺陣は本当にお見事。このシーンだけでも、映画館で見る価値はあまりにも大きい。かっこよくて、美しい。成人男性が見てもロマンを感じるのは、歴史のロマンに裏打ちされた物語であると同時に、刀剣男士たちの演技が本当に素晴らしいからだ。たまたま見に行ったにしては、本当にいいものを見ることができたな、と思っている。

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