Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。



 原作が完結したときの幸福感とは違い、長く続いたアニメのシリーズの終わりにはどこか寂しさがつきまとう、ような気がする。個人的な解釈だが、小説の場合自分のペースで作品に浸ることができるし、向き合うことができる。ものすごく分厚い作品ならともかく、何年もかけて読むラノベなら一冊あたりに費やす時間も少ない(冴えカノの場合一冊一時間あればだいたい読み終わっていると思う)。他方でアニメやゲームのように、映像や声、背景ビジュアルや音楽など、情報量の多いコンテンツに向き合う時はなかなか同じようにはいかない。気がついたら飲み込まれてしまうようにのめりこんでいく。だからこそ終わりを見届ける時に、言葉にできないもの悲しさがあるのかなと思った。

 冴えカノも気づいたらそうした長く続くアニメのシリーズになっている。劇場版でも終わるべきところで終わらせながら、冴えカノらしい(&丸戸脚本らしい)遊び心やサービス精神も忘れないところは本当にすばらしい(特に序盤の焼き肉屋とエピローグ部分)と思った。単発作品やシリーズの年数が浅い作品ならこうはいかないだろうところも(丸戸のネームバリューがあったとしても限界があると思うし)冴えカノならこうだよな、で許してしまえるのは蓄積があったからだろうなと思う。

 蓄積という意味では内容よりもヒロインたちの演技部分に目が映ってしまって、特に恵役の安野希世乃と英梨々役の大西沙織はすばらしかった。原作の終盤でもこの二人の「和解」はかなり重要なポイントになってくると思うが、恋愛については倫也を好きなライバル同士であるにも関わらず最終的に優先させるべきは何かというところに落ち着くのは半ば奇跡的じゃないかすらと思う。

 もちろんこれは詩羽の好アシストがなければ達成しえなかったことでもあるし、英梨々の人の良さみたいなものが出た結果かもしれない。でもそれはどんどん「地が出ていく」加藤恵を非難することにならないのも、これまでの蓄積があったから。それがなければ、詩羽と英梨々が手を引いて、加藤恵のハッピーエンドを祝福するという展開にはならなかったはずだし、英梨々を演じた大西沙織の「泣き」の演技のすばらしさに魅了されることもなかった。言わば、本当に本当に長い時間をかけてここに来たということが、恵、詩羽、英梨々それぞれの言動や振る舞いから強く感じられることができる二時間になっている。



 その恵についてはパンフレットのインタビューで丸戸が安野の演技に大きく影響されたと語っているように、最初から最後まで加藤恵という難しいキャラクターを一貫したスタンスで演じ続けた安野希世乃の上手さには目を見張るべきだろう。彼女にとってずっと殺してきた自分自身の恋愛感情というものを見せるのは容易ではない。それを見せることで「普通の女の子」になってしまうことがどれだけ自分の優位性を殺すことになるのか、あるいは他のメンバーとのバランスを崩すことになるのかも理解した上で、彼女にしかないタイミングで倫也を「仕留めにいく」のは見事だった。

 そんなこんなで最初から最後までニヤニヤしてばかりであったため正直劇場で見るのには向いてない気もしつつ、作品にとって最も理想的な形で完結を迎えられたのは本当にすばらしいなと思った。もちろんテレビシリーズの3期が作られていたならここまで大急ぎの展開でなかったかもしれない。かもしれないけれど、恵と倫也の重要、あるいは詩羽と英梨々の重要なシーンはとても丁寧に表現されていて、全く不満はない。この形で落ち着いたということを、一つの幸福な形として受け入れてやればいいかなと思う。最後だし、ね。






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