Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

music

 久しぶりにやる。というかやっぱちゃんと続けたいですね、これ。
 1月と書いてるけど後半は12月アップロードの楽曲も含みます。


あたらよ「知りたくなかった、失うのなら」


 純猥談とのコラボと聞いてうーーーーん、という感じはあったものの(そういうものをあたらよに求めているわけではないので)曲自体はいくらかキャッチーな前奏から始まり、初見のお客さんを引き込むことにはまずまず成功しているかなと思う。オールドなリスナーに対しても、最後まで聞けばああいつものあたらよだなと思わせる安心感があった。もう少しメロディで遊んでくれても良かったとは思ったけど、普段と違うギター音を強くしたアレンジは、これはこれで。

宇多田ヒカル「BADモード」


 1月にラジオで一番聞いた曲だと言っていい気がする。やたら耳に残るというわけでもないけど、ゼロ年代以降の宇多田ヒカルがちゃんと生きてるよなって感じがする。よく考えたら1998年にデビューした人を2022年もちゃんと聞けるって幸せですよね。

SUPER BEAVER「東京」


 12月に長屋晴子とFIRST TAKEで演じた曲を改めて自分たちだけで、という曲。いろんなバンドやミュージシャンが「東京」というタイトルの曲を作ってきているので、SUPER BEAVERなりのストレートをぶち込んできたなって感じがする。のっけから「愛されていて欲しい人がいる なんて贅沢な人生だ」と始まるのでまあこれだけで相当速い直球ですね、155km/hくらい出てそう。日常とか人生とか、そういうものを歌うことにいい意味で慣れているがゆえのストレートだと受け止めた。

 せっかくなのでこっちも。



緑黄色社会「キャラクター」
緑黄色社会『Actor』



Actor
Sony Music Labels Inc.
2022-01-26


 リョクシャカをちゃんと聞き始めたのは「Mela!」あたりからだと思うけど、このアルバムを聞いて改めてちゃんと聞かないとヤバイのでは、と思ってちゃんと聞いている。去年の「ずっとずっとずっと」あたりもヤバイというか、これってどうなってんの?という曲だったので(長屋晴子が息継ぎをほとんどせずずっと歌い続けているのがいろんな意味で怖くてすごい)。それを言えば「キャラクター」もそうですね。アルバムで一番好きなのは「Landscape」です。これが一番長屋晴子の声をうまく使えている。


にしな「hatsu」


 アップロードは12月だが、12月も1月も本当にこれはよくリピートしていた。にしないいよにしな。「夜間飛行」がこのライブでぐっと好きになりました。

フィロソフィーのダンス「気分上々↑↑」


 この前のNACK5「カメレオンパーティー」(1月30日放送)で土屋礼央がフィロのスの楽曲を複数取り上げていて驚いたが、土屋が言っていたようにボーカルのパワーが最近の彼女たちはほんとうにすさまじい。「テレフォニズム」でもやべーやべー言ってた気がしましたが、「気分上々↑↑」の原曲に特徴的なアップテンポをあえてスローにチルい感じにアレンジしているのがまず驚くし、結果的にこのアレンジがボーカルの存在感を強くしているなとも思う。

milet×Aimer×幾田りら「おもかげ (produced by Vaundy)」


 最初は正直そこまで印象に残らなかったんだが、ラジオで繰り返し聞くうちに耳に残るようになった曲。思ったよりもスルメでした。この3人だといくらはやや細いボーカルかなと思ってたけど、彼女の声が曲に「合っていく」プロセスが好きでした。


おまけ




 スピーカーが欲しい&マイクが欲しい→そうだスピーカーフォンを買おうということで購入したのがこれ。ビジュアルは手元に置くとちょっと安っぽく見えてしまう(ここは悩んだAnkerのConf3でもよかったかもしれない)が音質にはとても満足しているし、マイクとしてもまずまず使えているようなのでいいかなというところ。まあこのへんは沼なので、そのうち飽きてもっといいものを・・・となるかもしれないし、ならないかもしれないが音楽やラジオはこれでしばらく聞くぞ!という気持ち。
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 たまったので一気にやる。

■5月編

●LUCKY TAPES「BLUE feat. kojikoji」


 久しぶりにLUCKY TAPES聞いたけどよかった。

●Ayase「シネマ」


 Ayase名義の曲もちゃんとやってくれるのがうれしい。

小松未可子「悔しいことは蹴っ飛ばせ」


 ブランクについての詳しい事情は分からないが、「Maybe the next waltz」以来4年ぶりとなる新曲のリリース。この間に結婚するなどのイベントがあったので人妻になってから初のリリースだなとか思いながらも、歌手としてのみかこしが帰ってきてくれたのはとても嬉しい。3年前に大阪で見たライブのことを懐かしく振り返っていたら同じツアーの東京公演が円盤となって収録されていて最高やんけ・・・と思いました、はい。

●Homecomings「Here」、『Moving Days』



Moving Days
IRORI Records
2021-05-12


 5月はとにかくずっと聞いていた。ほんとうによい。よい。耳に染みてゆく。

●ぷにぷに電機×Kan Sano「ずるくない?」


 ぷにぷに電機初めて聞いたけどこの人もヤバくない? この人の存在自体がずるくない?? と思いながら聞いていた曲。今もよく聞いている。

■6月

●鬼頭明里「キミのとなりで」


 曲自体は『安達としまむら』主題歌なので少し前のものだがMVがいいですよね。百合はいいぞ、百合は。

●上田麗奈「anemone」


 ハサウェイきっかけに上田麗奈の曲をいろいろ聞いてみたがちょうど新曲と新しいアルバムが出るようなのでうれしい。

●愛美「カザニア」


 めっちゃよくないですか。ついでに言えばMVもめっちゃよくないですか。このまま個人活動がもっともっと増えたらうれしい。

カザニア
KingRecords
2021-06-29



●緑黄色社会「ずっとずっとずっと」


 去年あたりから少しずつリョクシャカを聞いているが、これはかなり出来がよいのでは。

●YOASOBI「三原色」


 ハイペースに曲を出しながらインパクトもしっかり残すあたりがすごい。

SUPER BEAVER 「名前を呼ぶよ」


 SUPER BEAVERも去年あたりから少しずつ聞いているが、発表するたびにいいな、と思わせてくれる。いま10代だったらかなりハマるかもしれない。さわやかさとエモさと熱さ。

■7月

フィロソフィーのダンス「テレフォニズム」


 7月のスマッシュヒットでした。過去曲聴いてるが多すぎて聴けてない。

Poppin'Party×鈴木このみ「DAYS of DASH」


 これも本当によくて、愛美とこのみんがコラボするとはいい時代である。ありがとう2021年7月。

燐舞曲「群青のフローセカ」

群青のフローセカ
ブシロードミュージック
2021-07-21


 春のライブで披露した曲のMV。燐舞曲の新しいアンセムとしても機能しそうな曲だ。

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 今月もやります。可能な限り読書記録みたいに毎月やりたい。(基本的に「最近聴いた新曲」を中心に紹介していく予定)

●にしな「ヘビースモーク」


odds and ends
WM Japan
2021-04-07


 4月はとにかくひたすらにしなを聞いてたような気がする。普段からよく聞いている大阪のラジオ局、FM802が月間通じてプッシュしていたのがにしなの「ヘビースモーク」で、ラジオだけでも相当数聞いたし、↑のMVも擦り切れるほど(動画なので擦り切れませんが)聞いた。何がいいかを一言で言うのは難しい気もするが、なんとなくあいみょんを最初に聴いたときの感覚に近い。音楽性は全然違ってて、ギター一本で歌う女性のシンガーソングライターってところくらいしか共通項はないと思うが。ちなみにあいみょんも3年前にFM802きっかけで知った。まだ「マリーゴールド」リリース前で、「君はロックを聴かない」が最初だった気がする。

●牧野由依「シルエット」


 4月の配信ライブで披露したらしい新曲(ライブ見に行くの忘れてた・・・)。15周年ということだが、そうかもう15年経つのねという気持ちと、15年経っても変わらない美しい声の魅力が存分に生きている。牧野由依は牧野由依らしくこれからもあってほしい。

●愛美「MAYDAY」


 
ReSTARTING!!
KingRecords
2021-04-07


 前回紹介した「ReSTARTING!!」が4月7日にシングルとしてリリースされたが、その2曲目の「MAYDAY」もMVが公開された。「ReSTARTING!!」がいかにも愛美らしい底抜けに明るい曲なのに対して、「MAYDAY」は曲調もMVの雰囲気も暗めの曲。両方あってこその愛美だな、と感じる。これもうまく言えないけれど、彼女のパーソナリティを考慮すると「底抜けに明るい」だけではない方がしっくりくるので。

●あたらよ「晴るる」


 去年の秋に「10月無口な君を忘れる」をyoutubeに発表していきなり1000万再生を稼いだバンドの新曲。前作と比べるとオーソドックスで、バンドとしてのやりたいことというか持ち味はこっちなのかもしれない。両方の曲に通じるのはボーカルの使い方がうまいなーということ。あと、春をテーマにした曲なので毎年この季節になると聞きたくなるかもしれないなということ。オシャレなサウンドに、ノスタルジックな香りのするボーカルの魅力がこの季節にはよく似合う。

●Radio Bootsy「春は溶けて」


 これもFM802きっかけで知った。FM802は毎年この時期にオリジナルのコラボ曲を作っていて、二年前のaiko「メロンソーダ」が思ったよりハマってしまったので毎年楽しみにしている。今年はyamaが参加していて驚いた(少しずつ露出を増やす戦略なのかもしれない)。絵音だな〜と思うようなメロディ、歌詞が多様な歌声と合わさって春の訪れによく似合う。

●Awesome City Club「またたき」


 ここ最近活動的なAwesome。「勿忘」の対に充ててもいいような曲かも。
 さよなら、素晴らしき日々よ。

●Awesome City Club「記憶の海」


 今回発表した曲だとこっちの方が実は好き。PORINのソロで歌い上げる楽曲だが、あまりいままではなかったような幻想的なメロディがPORINのスイートなボイスと重なってとても美しい。息継ぎだけでとてもセクシーに聞こえるし、真っ赤な海に浮かんでいるPORINのイラストも芸術的。アーティストってこういうことだね、と思ったりした。

 初出はアルバム『Grower』なのでこちらのリンクも。

Grower
cutting edge
2021-02-10


●燐舞曲「[Re] termination」


 ギリギリ4月なので入れといてもいいかなという一曲。最後になったけど4月に聴いて一番ヤバイのはこの曲でした。数か月前の単独ライブで確か一曲目に演じた曲で、いきなりの新曲だったので配信ライブのコメント欄が沸騰していたのを覚えている。明らかにライブ向きなのだけど、収録された音を聞いて感じるのはボーカルを務める加藤里保菜のうまさ。燐舞曲の曲はどれも簡単には歌いこなせないと思うが、だからこそいろいろな曲をこの何年かかけて歌ってきたことによる、彼女の成長が良く分かる。アイドルを推す喜びは成長を実感できることだよなあ、と再確認した。
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 以前にクールごとのアニソンまとめとか、その月ごとに聴いた音楽をまとめるエントリーを書いてたことがあったがしばらくやってなかったので、ちょっと再び意識してつけてみたいと考えてのエントリー。
 理由はいろいろあるが、ここ最近はフィジカル(CDなど)で音楽を聴かずに、サブスクリプション(自分の場合はamazon music unlimited)とyoutube、あとラジオが主な音楽視聴体験となっている。amazonやyoutubeではマイミュージックに追加するなどしているが、あちこちに情報が散らばっている結果「特定の時期にリリースされた新曲」をまとめる場所が欲しいなと思っていた。
 というわけで今回は2021年の1月〜3月にリリースされた楽曲やアルバムをピックアップして、短評的にコメントを残していきたいと思う。それでは行ってみよう。


●ヨルシカ「春泥棒」、『創作』
創作
UNIVERSAL MUSIC LLC
2021-01-26


 この三ヶ月、一番聴いていたのはヨルシカだと思う。特に1月上旬にリリースされた「春泥棒」の楽曲とMVがいずれも素晴らしい。春が来る前に桜が散りゆく姿を何度映像で見たことか。いま改めてこの曲を聴いて、MVを見て、しみじみとしている。



 オンラインライブ「前世」もめちゃくちゃよかった。



●中島愛『Green Diary』
green diary
FlyingDog
2021-02-03


 以前(活動休止前)と比べるとここ最近は中島愛の活動を熱心に追っていなかったが、本人がTBSラジオのアトロクに出演していた際のインタビューが面白かったので久しぶりに聞き、そのままハマっている。アルバムタイトルにある通り、彼女のデビューのきっかけとなったランカ・リーを意識したグリーンのカラーイメージそのままに、透明感漂う楽曲が多い。同い年なので30代になってもこの透明感は希少だよな……とただただ感動している。

●田所あずさ『Waver』
 
Waver
Lantis
2021-01-27





 初めてセルフプロデュースを行ったというころあずのアルバムも面白い。「クリシェ」と「死神とロマンス」が好き。今までのような「タドコロック」路線というよりは、やりたいことをパッケージで詰め込んだ感じが伝わってくる。

●宇多田ヒカル「One Last Kiss」


 もはや何も言うまいなんだけど、MVがかわいすぎてやばかった。

●佐藤千亜妃「声」


 凍てつくようなMVの風景、消えそうな声で歌う佐藤のボイス、そして文字通り「声」というシンプルで最低限の情報しかないタイトル。別れの季節に佐藤が歌う歌は「桜が咲く前に」(きのこ帝国)を思い出すが、もう少し大人になった女性の目線としてつづられたのが「声」という楽曲かもしれない。
 いずれにせよ、極上の6分50秒。時間が止まったような、そんな不思議な感覚にさせられる。

●古川本舗「yol feat.佐藤千亜妃 (Music Video)」


 古川本舗復帰第二弾。佐藤千亜妃が来るとはさすがに思ってなかったので震えている。100回くらい聴いた。耳が幸せなので一生聴いていたい。あと映像がすげえわね。
 音楽も佐藤の声を生かす最高のエレクトロニカ。「声」も「yol」も、佐藤の声を一つの楽器のようなものとしてメロディに自然に溶けているのがいいなと思う。こちらも別れの季節にふさわしい歌である。

●フレンズ「約束」


 アニメ『ホリミヤ』のED。フレンズがホリミヤ、という組み合わせだけでも面白いと思ったし、かなり青春(MVはもう少し先の青年期かなと思える)に寄せた感じで、普段のフレンズのメロディとも違うオーソドックスなバラードだけど、その分じわじわ効いてくる感じが新鮮。

●愛美「ReSTARTING!!」


 アイマスやバンドリやD4DJなどでもうかなりの楽曲を歌って来た愛美がついに個人名義でデビュー。MVめちゃくちゃかわいくないですか。(さっきからMVかわいいMVすごいばかり言ってる人)
 イメージの楽曲はバンドリに近い気がするのでアイマスのジュリアに寄せたような、nano.RIPEとのコラボが見てみてえ感。

●Ado「ギラギラ」


 「うっせぇわ」がバズりまくっているAdoだけど楽曲の雰囲気とボーカルのマッチ度はこっちの「ギラギラ」が絶妙だと思う。彼女の低音ボイスが今後どういう音楽に寄っていくかは分からないけど、まだまだ若いので全部が楽しみ。
 声質はyamaに近いイメージもあるけどyamaはポップスも行けるのに対してAdoはもっとハードロック寄りなイメージ。「ギラギラ」がいいのはロックバラード調なところだろう。

●yama「一寸の赤」、「麻痺」


 yamaは毎月一曲ずつくらいアップしてません?と思うほどハイペースに楽曲を作っているが、思った以上に器用な歌唱でなんでもできるなと思わせてくれる一曲。優しいyama、いいですね。



 ただ本来の路線はこういうサウンド向きだなと思う。ポップスとロックとエレクトロの間あたり、

●Night Tempo「真夜中のドア/Stay With Me (Night Tempo Showa Groove Mix) 」


 去年の秋ごろからNight Tempoという韓国のDJの80sアレンジがヤバイという話は聞いていて、その中でも一番ヒットしてるのが松原みきの「真夜中のドア」らしいのだけど、これは確かにめちゃくちゃいい!
 レトロと新しさが違和感なく、そしてめちゃくちゃおしゃれに混ざり合っている。COVID-19でなければあちこちのクラブで流されてもいいのでは〜というような万能なアレンジと、色あせない松原みきのボイスが本当に良い。これも100回くらい聴いた。

●Rainych & evening cinema「RIDE ON TIME」


 東アジアで80sブームを作ったのがNight Tempoだとするならば東南アジアでブームを作っているのはいわゆる歌ってみたでブレイクしているRaynichらしい。まあこのシーン本当によく分からないことだらけなのだけど、満を持してカバーした山下達郎の楽曲がかわいすぎてヤバい。え、こんなにかわいく(そしておしゃれに)RIDE ON TIMEを歌っていいんですか感。
 いやまあ原曲もオシャレだけど、そこからさらに現代のエレクトロサウンドをじわじわ足していった感じ。

● Millie Snow「Plastic Love - Mariya Takeuchi (Cover) 」


 night tempoやRaynichを聴いているとレコメンドされたのがこのMillie Snowのカバー。ボッサ風のゆったりとしたアレンジに大人びた歌唱がよく似合う。本当にアジア各国で80sが流行ってんのなと思わせる動画。

●Limonene「nevergreen」


 最近kamome sanoをほとんど聴いてなかったが久しぶりに聴いたらさすがといったセンス。ボーカルの声に合わせた音を作るのがうまいのと、アレンジがハイセンスなのは安定している。

●坂本真綾『Duets』、坂本真綾×内村友美「sync」
Duets
FlyingDog
2021-03-17


 はい、昨日が41歳の誕生日でした。おめでとうございました。ほんとどれも面白いんだけど、la la larks内村友美と組んだ「sync」がお気に入り。冒頭のピアノでやられる上に二人の声の調和が最の高。最の高だよ!

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 確かlucky tapesをようつべで流し聞いていた時だったと思うが、ようつべによくあるように自動的に次の曲(url)に変わったとき、流れていたのがRAMMELLSというバンドだった。確か次の曲だったと思う。イントロのゆるいメローな感じの音と、サビの歌詞が印象に残った。



 すごく特徴があるわけではないが色っぽくて力強いボーカル(黒田秋子)と、さっきも書いたようにゆったりした、でも力強さはちゃんとあるサウンドが印象に残った。それと唇のアップが何回も繰り返し現れるMVは、攻めの気を感じる。ガンガン攻めるぞというよりは、脱力するときは脱力もして、時にキレを見せる感じがある。
 現代のJ-ROCKの世界でここまでBPMを落としたサウンドだけで攻めていくのはかなり意欲的だなと思ったのと、たまたま今年出たアルバムのツアーをGWの間からやっていて、なおかつ昨日は休みだったので、ふらっと心斎橋まで足を運んだわけである。

 正直最近聞き始めたので、知っている曲も知らない曲も両方ばらばらという感じではあったが、1時間半の本編とプラス2曲のアンコールをゆったり楽しむことができた。いや、ゆったりというのはやや語弊があるか。ベースの村山がベースを置いてマニピュレーターをいじる曲が数曲あったのだが、この時の迫力たるよ。でもこのバンドが「踊る」ことを要求しているから、こういうアプローチはとても正しい。正しいし、このBPMでも踊れるだろってことを伝えてきているように思えた。
 最新アルバム『Mirrors』のリード曲である「真っ赤な太陽」の歌詞にも、「踊れ yeah」という歌詞から始まるように、踊るという意識が強くある。



 もう一つこのバンドの狙いがどこにあるのだろうと思ってインタビューをあさってみたら、リーダーでギターの真田徹の経歴が面白いことが分かった。Suchmosのメンバーとかつてバンドを組んでいたことや、最初に俺が聞いていたlucky tapesが友達であるということ。
 元々真田がやっていたバンドが解散したあと、先にデビューして有名になっていった彼らと比べて自分たちに何ができるのか、という時にボーカルの黒田秋子に声をかけて結成されたとのことで、まだ結成から4年弱しか経ってない新しいバンドだ。

 黒田秋子の人柄や音楽性を知るには、次のインタビューが面白い。

—『マッドマックス』って、ジェンダー論的な見方があるじゃないですか? 男性社会のなかの女性の強さと弱さを描くと同時に、男性の強さと弱さも描いている。黒田さんは以前“Blue”について話をしたときに(RAMMELLSインタビュー 結成わずか半年で注目の的へ駆け上がる)、「右か左かどっちかじゃない」みたいな話をしてくれたり、「こうあるべき」ということに対してすごく違和感を感じている印象があって、“2way traffic”もそういうことを歌った曲なのかなって。

黒田:『マッドマックス』は関係ないんですけど(笑)、うちはお父さんが「大体のルールとか規則は破るためにある」って言うような人だったんです。小さい頃は「なに言ってんだ?」と思ってたんですけど(笑)、だんだんそれが理解できるようになってきて。

たとえば、学校の校則の「スカートが膝上何cmじゃなきゃダメ」とかって、意味わからないじゃないですか? 「こうあるべき」じゃなくて、「自分がどういたいのか」が大事なんじゃないかなって。

—そういうことが、黒田さんが音楽に込めるメッセージでもある?

黒田:誰かが聴いてくれた瞬間からその曲はその人にとっての曲でよくて、好きなように聴いてもらえればいいとは思ってます。でも、「女性だから、笑ってなきゃいけない」とか、そういうのは「うるせえよ」って思っちゃうんですよね。まあ、笑ってたほうが楽しいからいいとは思うけど、「女性だから、じゃないだろ」とは思っちゃいます。

期待の新鋭RAMMELLSが語る「誰も窮屈にならないための歌を」


 「2 way traffic」はデビューアルバムに入っている曲だが、確かに彼女のスタンスっていうのは思っていることをそのままメッセージにこめているように思えた。昨日のライブでも、曲はみんなに自由に聞いてほしい、というような話を冒頭のMCでこめていたけど、自分たちの曲に饒舌じゃないバンドもなかなか珍しいなと思う。
 もちろん彼ら彼女らなりのメッセージはちゃんとあるし、解釈もあるだろうけど、作って発表したあとは自由にというのは、テキスト論的な立場を持ったミュージシャンと言えばいいだろうか。とにかく、「好きなように聴いてもらえればいい」はリスナーとしてはうれしい言葉である。



 「ゆったりと激しく」は語弊があるかなという話をさっきも書いたけど、確かに曲によってはそうかもしれないけど、この両方を兼ね備えているバンドなのは確かだと思った。特に激しさはライブに行ってこそ際立つ。その激しさに負けない、黒田のボーカルがある。楽しそうに、自由に歌う彼女を見る時間は幸福な時間だった。
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 坂本真綾のライブに参加するのは2年2ヶ月ぶり5回目、東京以外では3回目になる。というか、最初の2回(武道館、国際フォーラム)以外は仙台、高松、今回の大阪と来ているのですべて地方公演だな、と気づいた。
 過去4回中、武道館と仙台の東京エレクトロンホールの公演はライブレポも書いているので、興味ある人はそちらもどうぞ。

【ライヴレポ】坂本真綾30歳の誕生日会に参加して感じたこと(2010年3月@武道館の公演レポ)
ステージの中心に坂本真綾がいる光景を目撃した(2012年12月@仙台の公演レポ)

 ブログのタイトルにもしているが、20周年イヤーを終えて少し間を空けてからのリスタートだったり、本人の言葉を借りれば「離陸」というのが今回のツアーのテーマだったようで、そこからALL CLEAR、つまり視界良好でいつでも行けるぜ、というワードにもつながっているようだ。
 そのうえで、今回はCCさくら中学編のOPである「CLEAR」を記念してのツアー(だと思う)なのでこの曲とか最初に歌った「プラチナ」あたりをとっかかりとしつつ、アルバムのツアーではないので素朴にいま歌いたい歌、をつめこんだとも言っていた。
 真綾の言葉をもう少し借りると、いままで歌えなかった曲を救済、とかいま私が一番歌いたい曲を持ってきたんでみなさんのご期待にはそえないっす、みたいなノリがとても楽しかった。「思い通りにいかない私を楽しんで」は名言だ。
 『FOLLOW ME』前後は過去最大級のツアーとか20周年のSSAもあってお祭りみたいな感じだったけど、ちょっと間を置いてリスタートする私をよろしくね、ってスタンスもとても好きだ。

 09年のかぜよみツアー以来精力的にライブをやっているもの、根本的に歌うのが楽しいってのがあるのだろう。自分の好きなように組んで見せたセットリストは90年代から未発売の新曲まで、まさに坂本真綾の22年間をぎゅっと凝縮した感じになっており、公演終了後に周囲が今日の選曲についてざわついていたのも、印象に残る。
 だから自然体で楽しく歌ってる真綾が一番かわいくて一番かっこいいよな、と思いながら歌を聞いていた。多幸感ってやつかなと。季節柄「カザミドリ」やんねーかなと思ってたんですがなかなかいいところに持ってきてくれてとても楽しかった。カップリングとして最新曲でもある「レコード」も、この季節(冬から春への変わり時)にとてもいい。心地よいメロディが、意外とライブの空間には合っている。
 他選曲でいうと、「約束はいらない」はなかった(先日の台湾公演ではやっていたらしい)が「光の中へ」と「指輪」をかましてくるというエスカフローネ以来の真綾オタクには最高だったのではと思う。あとたぶん「ヘミソフィア」と「tune
the rainbow」を同時にやったのも武道館以来な気がするのでラーゼフォンオタクもうれしい。 
 新しいところで言えば「逆光」から「色彩」へとつなげてさらにそこから怒涛のメドレーへ流れこんでいくあたりもかなりぜいたくで、FGOオタクだけではないアニオタのテンションをガンガン乗せていったこの展開は、明らかにまあ「狙っている」とは言えお見事だった。

 MCについて。
 最初のMCではリスタートや離陸について。なつかしい曲もたくさんあるよ、と声をかけて観客にご挨拶。2度目のMCではここからはゆったりモード、座ってどうぞ、眠ってもいいよ、私の歌は人を寝かせるのうまいよ(観客笑)という感じで、「ヘミソフィア」の前まで。
 衣装替えタイムをはさんで「ヘミソフィア」から「ロマーシカ」まで(記憶がややあいまいだが)確か一気にいってたと思う。
 MC4ではデビューして今日までのこと、今日のライブ全般的なこと、CCさくらをきっかけに私のことを知ってくれた人の多さをいまでも感じること。ラジオでもよく話しているが、CCさくらきっかけで真綾を知る→業界に入って真綾と仕事をする→真綾にCCさくらから入りました〜と伝える、ということがわりとあるらしい。
 単純に、この業界にいる人ならば真綾のことを知っている人は相当多いだろう。若手声優の目標にしばしば名前が挙がるくらいだし、22年というのは世代が一巡するくらいの重みもある。あるが、彼女自身は重さをあまり感じてはいなさそうで、ただ20周年のときはいろいろお祭り感が、と語っており、いまのように自分のペースで好きな歌を歌えるという環境が気に入っているようだ。
 もちろんそんな真綾が最高にかわいい、というお話で。

 アンコールに入って「カザミドリ」が聞けてうれしかったのはさっきにも書いたが、ここのMCで3.11の話もはさんでいた。当時はYCCMツアーをやっていて福岡にいたこと(3月の東京公演は延期になるなどしたはず)、そのことによって直接的に大きな地震を体験してはいないということ、そのうえで今まで続けてきたチャリティーポストカードの意味を改めて伝えていた。
 関西だったか大阪と言っていたかは忘れていたが、みなさんは以前に大きな地震を経験されていますよね、だからすでにいろいろなことをしてきたことかと思います、と話していたのも印象的だった。東京の人にとって阪神大震災は平成史の一部ではあるだろうがいまとなっては過去の一幕にすぎないとも思っていたので、3.11と1995年のことを間接的につなげる配慮はうまいな、と思いながら聞いていた。

 まあそんなこんなで、一言でいえば「いま」の坂本真綾を体感できる多幸感と、まだまだアクティブな彼女に対する期待感、そして彼女の持つ幅の広さのようなものを実感できた素敵なライブだった。
 ちょうど10歳年上で、こういう人のように生きたいと思っている一人なのだけど、これからも安心してそう思えるし、思い続けていこうと思う。私の推しは最高にかわいくてかっこいいのだと主張しながら。
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 明けましたが、2015年のベストアルバムを選びました。10枚にしようと思ったけど絞りきれなかったし2015年だしということで15枚にしてみた。勢いで20枚くらいでもよかったけど、まあそれはまたいずれ。
 去年、一昨年とやってきた企画なので過去のエントリーもはっておきます。
2014年のアルバム10枚+2曲
2013年のアルバム10枚

 それでは、今年の15枚いってみます。番号はふってあるけど順不同。ジャンルは思ったよりも偏った感。

1.坂本真綾『FOLLOW ME UP』
FOLLOW ME UP(初回限定盤)(DVD付)
坂本真綾
FlyingDog
2015-09-30


 以前全曲レビューをやったのでくわしくはそちらを。
 リリースしてから数ヵ月が経つがいまだにヘビロテしている。国際フォーラムでのカウントダウンライブ組にうらやましさを感じつつ、16日の高松公演を楽しみに。ってかまあやが高松に来るとはさすがに思わなかった。当日が楽しみ。

2.南條愛乃『東京 1/3650』
南條愛乃/ 東京 1/3650(初回限定盤CD+Blu-ray×3)
南條愛乃
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-07-22


 グリザイアシリーズの楽曲になった「あなたの愛した世界」、「黄昏のスタアライト」、「きみを探しに」を筆頭に南條の-icec力強い声が響き渡るとても耳に優しいアルバム。
「スタアライト」はfSでコンビを組むsatが手掛けているためエレクトロ色全開のアッパーなナンバーだが、「きみを探しに」で歌い上げる切ない恋模様の様子など、幅広く自由に歌えるいまの南條を象徴している。
 タイアップ以外だとTr.2の「believe in myself」やTr.9「Recording.」のようなまるで南條自身のことを歌っているようなナンバーがいい。こういう曲はグループやユニットではなく、ソロで歌うからこそ意味を持つ。

3.牧野由依『タビノオト』
タビノオト(初回限定盤)(DVD付)
牧野由依
インペリアルレコード
2015-10-07


 待望と言って大げさにならない4thアルバム。歌手活動10周年、前作『ホログラィー』から4年かけてのアルバムなのでほんとうに待ってましたという感じ。
 Tr.1の「ワールドツアー」のノリにはちょっと驚かされつつも、Tr.3の「囁きは"Crescendo"」を聴くとやっぱこの人すごい・・・と思わせられる。音大に通っていたとはいえそれはあくまでピアノのためにだとは思うけれど、牧野由依のようにあまりにもナチュラルに歌える声優をいまのところ知らない。彼女の場合、ナチュラルさがそのままかわいいという声の質を持っていて、花澤香菜のようなかわいすぎるとしか言えない声とはまた別の「かわいい歌声」を持った希有な人だなということを再確認した。あと、ピアノとこんなにきれいに混ざる声っていうのもなかなかないんじゃないか。
 『ARIA』シリーズの主題歌を手がけていたころから天使のような歌声を持つ人だとは思っていたけれど10年経ったいまもなお、ならこれからも楽しみでしょうがない。音楽活動のほうでは紆余曲折のあった10年だったが、次の10年もしっかり見守っていこう。

4.戸松遥『Harukarisk*Land』
Harukarisk*Land(初回生産限定盤)
戸松 遥
ミュージックレイン
2015-03-18


 アルバムタイトルからも分かるように、自分の色をつめこんだかのような一色。戸松といえば高身長を生かした快活さであったり、とびっきりの明るさであるわけだけど、とにかく元気、元気すぎる一枚。その中だとタイアップになったTr.2「courage」のやや硬派な感じは逆に目立つ。逆にTr.8「PACHI PACHI PARTY」のほうはアルバムの中でも完全になじんでいる。
 前作『Sunny Side Story』ももちろんいいアルバムではあったんだけど、今作のほうがより楽しさが伝わってきてクオリティどうこうよりもそっちに好感を持てる。Tr.3「ラブ ローラー コースター」には「自分らしくあれ 下手にバランスとらないでいいのさ」という歌詞があるが、戸松自身がこのアルバムでその詞の中身を十分体現できていると思う。
 ライブ、行きたさがある。

5.花澤香菜『Blue Avenue』
Blue Avenue
花澤香菜
アニプレックス
2015-04-22


 もはや歌う声優というよりは一人のシンガーとしての活動が定着してしまったかのように思う3rdアルバム。
 シングルから収録されている「ほほえみモード」、「こきゅうとす」、「君がいなくちゃだめなんだ」の三曲がやはり完成度の高さからすると目立つ。いろんな作り手が花澤の声を試し、あるいは遊んだりして(「こきゅうとす」を手がけたやくしまるえつこからはそんな匂いがぷんぷんする)きた結果がこれ、という感じ。
 全体としてはいままでの流れ通り渋谷系リバイバルという色はあるものの、Tr.1の「I LOVE NEW DAY」なんかを聴いているとありふれたいまどきのシティポップを花澤なりに歌っている、というようなイメージに近い。ありふれているというのは悪い意味ではなくて、もう歌手活動一年目のような新鮮さはいい意味でないのだから、過度なキャッチーさはいらない。
 それよりも自由で、ちょっとふわふわとした、花澤香菜の持っている声が素直に使われているところに大きな満足を覚える。

6.Faint*Star『PL4E』
PL4E [CD+DVD盤]
Faint★Star
Faint Star Tokyo
2015-07-07


 一年ほどしか追いかけられなかったとはいえトマパイのファンだった人間としてはあのサウンドが帰ってくるかもしれないと期待した一枚。先行したシングル2枚から8曲を収録しているので、アルバムのみの新曲はさほど多いわけではないが、一枚通して聴くってのはやはり何とも言えない快感なのだと感じる。
 たとえばTr.5「スライ」、Tr.6「フィルム! フィルム! フィルム!」からのTr.7「今夜はRIDE ON TIME」までの一連の流れを味わえる感覚。力強さとかわいらしさを兼ね備えているのは当然として、洗練されたメロディが彼女たちを鮮やかに彩る。Tr.2「Boyfriend A.S.A.P.」のようなキャッチーなメロはむしろイレギュラーなんじゃないかと錯覚してしまうほど、HINAとYURIAが二人して歌っていることをもっとちゃんとみつめてあげないといけない。(それがなによりこのユニットの真骨頂であるはずだ)
 「今夜はRIDE ON TIME」に関しては明らかに歌詞が狙いすぎなんだけど(どこかのインタビューでHINAが「大丈夫なの?」って驚いてた気がする)まあけどこの二人ならしゃーないよねってなる。たぶん。
 ひところのももクロやベビメタなんかもそうだけど、いまのアイドル業界がポストかわいいをほしがっているのだとするならばこのユニットはもっと上まで突き進んでほしい。

7.アップアップガールズ(仮)『サードアルバム(仮)』
サードアルバム (仮)(初回限定盤)
アップアップガールズ(仮)
T-Palette Records
2015-03-17


 去年出た『セカンドアルバム(仮)』の感想に「総じて最高だった」って書いてたけどこのアルバムもすさまじかった。
 47都道府県ツアーの公演に参加したからかもしれないが、こんなにすごかったっけって思うほどのダンスダンスダンス。そしてもちろん声を上げて歌いまくるし、観客を煽りまくる。「虹色モザイク」をライブで聞いたときの多幸感は捨てがたいけど、リード曲の「Beautiful Dreamer」の力強さも彼女たちの強い魅力だし、かわいさとかっこよさと力強さをぐるぐるにミックスして自分たちだけのアイドル像を作り上げようとしているのはほんとうに素晴らしいと思う。
 願わくばそのハードなスタイルに身体が追い付かないことのないようにと思ってしまうが、それは少しお節介かもしれない。

8.Negicco『Rice&Snow』
Rice&Snow
Negicco
T-Palette Records
2015-01-20


 昨年リリースした「光のシュプール」というシングルに虜になってしまい、そんなに深い思い入れやリスナー体験があったわけではないけどアルバムを購入してしまった。そしてまったく後悔しなかったのでたいへん満足している。
 若いと言っては語弊があるかもしれないがキャリア10年以上を数えるだけあって、若さやかわいらしさを売りにするアイドルたちとは違って多様なトラックメーカーの提供した楽曲にどうやって乗るか、その質が重要なのだと思う。
 たとえば「トリプル! WONDERLAND」のような明るくキャッチーなアンセムソングと歌いやすいメロディと音程とは言えない「BLUE, GREEN, RED AND GONE」のいずれもを質を落とさずに歌うのは容易ではない。
 大人っぽいアイドルとは単に大人のセクシーさのようなものを売りにするんではなくって、ちゃんとキャリアを重ねてきたことを示せばいい。Negiccoを聴いて満足かつ安心できるポイントがあるとすればそれだろう。でなければここまでファンだけでなく楽曲提供者から愛されるユニットにはならない。

9.Tokyo 7th Sisters『H-A-J-I-M-A-L-B-U-M-!!』
H-A-J-I-M-A-L-B-U-M-!!
Tokyo 7th シスターズ
DONUTS
2015-05-20


 アニソン、声優業界では今年一番の衝撃。ナナシスはこれだけアイドルものが続いたあとだとだいぶ後発の企画になるわけだけど、2010年代以降のトレンドを象徴するトラックメーカーを集めたこのアルバムはまさしく未来を生きているよう。
 ゲームは全然やっていないけどこの作曲陣なら信頼できると思いアルバムを購入し、Tr.1の「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!」とTr.2の「Cocoro Magical」を聞くだけであっというまに虜になってしまった。文字通り始まり、スタートラインにたった心境を歌う歌に「どんなに遠くたって春舞う綿毛のように」という目に浮かぶようなきれいな歌詞がつらなっていく。十分に期待感を高めたあとの「Cocoro Magical」のキュートな歌詞にめちゃくちゃときめく。
 最初のうちはこの二曲をひたすらリピートしてたけど全体的にかなりサウンドの幅があって、時には等身大の女の子であったり背伸びをしたい女の子だったりといったポップな歌詞を若手の声優陣が歌にこめている。
 全体的には元気で明るく、かわいい曲が目立つなかでWITCH NUMBER 4というユニットの歌う「SAKURA」はひときわ目立つ。この曲だけがとびっきりに切なくて、メロディアス。
 あとまあ、手掛けている人たちの名前や経歴を見れば瞭然だが、どの曲もとにかく踊れる。なので1stライブ行った勢がうらやましくてたまらなかった。
 本当に、ナナシスはいいぞ。

10.STAR☆ANIS『SHINING STAR*』


 『アイカツ!』二期の集大成となるアルバム。今回も二枚組。一期より二期が、特にドリアカ勢が好きな勢としては「ハッピィクレッシェンド」を幾度となく再生したか分からない。
 それと、映画を見たあとに「SHINING LINE」を聴くとアイカツ!という作品がつくってきた物語の魅力をこれほどきれいに鮮やかに凝縮できるんだと感動してしまう、いまだに。
 アニメのシーンがまざまざとよみがえる、至福の二枚組。

11.AIKATSU☆STARS『JOYFUL DANCE』
Joyful Dance
AIKATSU☆STARS!
ランティス
2015-06-24


 こっちは大空あかり世代の三期を彩る最初のアルバム。歌い手も交代して、まさに新時代の始まりという感じ。
 アルバムのタイトルと絡めるなら新世代の中でもニューウェーブである黒沢凛のソロ曲、Tr.3「MY SHOW TIME!」だろう。たとえばあまふわなでしこのTr.6「恋するみたいなキャラメリゼ」と比べると曲も歌詞も驚くほど違うけれど、いずれもキャラクターの個性に寄り添う形で生まれている曲で、魅力的。キャラソンというよりは持ち歌として聴くほうがいい。
 
12.米津玄師『Bremen』
Bremen (初回限定盤)(CD+DVD) (映像盤)
米津玄師
Universal Music =music=
2015-10-07


 ハチとしてボカロ界隈をとどろかせていたころの活動はある程度追っかけていて、同人時代のアルバムもしっかり持っているわけだけど、メジャーに行ってからはさほど追いかけてなかった。 
 ただあるときラジオを流していたら彼がゲストとして表れてトークをしておりアルバムのリードトラックである「アンビリーバーズ」を聞いた瞬間なんだこれは、と思ってしまった。生身の彼はボーマス会場で何度か見たことがあったし(もうずいぶん前のことではあるが)彼が自分の言葉で歌っているとして違和感が全然なくて、渇いている声で情熱的に歌い上げる様にバンプの藤原を重ねなくもない。
 ボカロPをしているころから変わらないことがあるとすれば(というといくらか失礼かもしれないが)一つ一つの曲にはっきりとした物語を持ったタイプのミュージシャンであるということ。もうひとつ、私性を歌うシンガーソングライターというよりは、ソロではあるがバンド志向の音楽を作っていること。適切な説明ではないかもしれないが、歌詞だけじゃなくてサウンド面でも彼の音楽はギタ一本ではきっと物足りなさを感じる。
 「アンビリーバーズ」を聞いて思ったその感覚は、Tr.4の「Flowerwall」でもう一度強化される。彼は僕「たち」や僕と「君」といった形での複数形の物語を歌い上げるし、それがいまも昔もしっくりくる。
 
13.Chouchou『ALEXANDRITE』
ALEXANDRITE (BICOLOR EDITION)
Chouchou
Ulula Records
2015-04-25


 インスト曲も含んではいるがボーカルメインの楽曲を中心に構成されたアルバムとしてはかなり久しぶり、かつ2014年の『piano01 oto』に続くフィジカル盤のリリースとなった。クオリティの高い美麗なアートワークはブックレットの作り込みにも及んでいて、素晴らしさしかない。
 Tr.1の「fjord」でjulietの声がほとんどまったく変わってないことに安心するし(一定のキャリアはあるはずだがいろいろと謎の多い人だ)julietの可憐な声を支えるピアノサウンドの秀逸さも相まって期待感が高まる。
 なんと言っても言及すべきはTr.12の「Innocence」だろう。今回収録された新曲で、かつMVも作られている楽曲だが、Chouchouにしてはキャッチーで耳に残るサウンドで、わりかし王道寄りの楽曲でもある。
 ただ、7分25秒の長さの中にこめられているのは王道なんてものではなくって、最後に持ってくるしかない物語性のこめられた一曲になっている。ハッピーエンドとバッドエンドの中間というか、何かの終わりにゆるやかに向かっていくような心情が(MVと合わせて見るとなおさらに)とても美しい。


14.仮谷せいら『Nayameru Gendai Girl』
Nayameru Gendai Girl
仮谷せいら
PUMP
2015-12-16

 
 12月にリリースされた2ndEP。1stよりもより私性がポップに表れた表題曲はとても楽しい。1stのころはまだややぎこちなかった歌い方ものびのびと明るく、どこか吹っ切れたように歌っているところはとても魅力。
 Tr.5の「夜が終わるまで」はいままであまりなかったようなテイストの曲で、この曲があることで仮谷せいらの表現の幅を見ることができた。ただかわいく明るく歌えるだけの若い女性シンガーならたぶんたくさんいるだろうけど、自分で詞も曲も作り、あえて背伸びをせずにしっとりと自分たちのことを歌い上げる様には何とも言えない魅力がある。一種のノスタルジーかもしれない。

15.keeno『before light』
before light
keeno
ワーナーミュージック・ジャパン
2015-09-16


 タイトルチューンの「before light」と先行してニコニコで公開されたTr.1「morning haze」だけでもおなかいっぱいなのに、持ち味のkeenoサウンドがたくさん聴けて満足しかない。
 同人時代に出した「at dusk」というミニアルバムを聴いている身からすると1stアルバムはベストアルバム的な印象があったが、2ndの今作は一つのアルバムを作りにきたんだというメッセージがあちらこちらにあって、聴いているだけでとても楽しい。
 早朝のもやもやした感情から始まる「morning haze」から始まり、Tr.2「decide」、Tr.3「yours」を経由する流れが白眉。「before light」までの流れにはいくらか浮き沈みがあるものの、最初の3曲でkeenoの試みが十分理解できるし、最後まで安心してディープなサウンドにどっぷり浸ることができる。耳が幸せとはこういうことを指すのだろう。

 以上、今年は全部で15枚でした! まだ挙げたいけどもうつかれたのでこのへんで!
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 2013年の春に出したSSW以来2年5ヶ月ぶりとなるオリジナルアルバムは20周年イヤーを記念したものになった。15周年のときはベストアルバム『everywhere』の二枚組という体裁だったが、今回オリジナルで勝負してきたのは会場に武道館を選んで一区切りをつけたときとは違い、あくまで通過点にしたいという思いもあるのかもしれない。
 通過点のその先へ。20周年記念ライブのタイトルともなった"FOLLOW ME"に"UP"を加えるというあたりにもそうした思いがかいま見える。15年、20年っていう区切りは確かについてくるけど、これからもわたしは歌い続けるよ? っていう、いくらかの自信と余裕がなければ見せられないいまの坂本真綾の魅力、強さがたっぷり詰まっている15曲。

 最近ネットで仲良くしている(と思っている)駒々真子さんが全曲レビューをブログに挙げていたので、遅ればせつつ便乗します。


1.FOLLOW ME

 コンセプトアルバムでは『Driving in the silence』なんかがそうだけど、オリジナルアルバムで一曲目にタイトルチューン(のようなもの)を持ってくるのは珍しい。初めてかな。
 曲の後半、「生きてるって感じるとき何をしてる?」からの「恋より気持ちよくって」というサビに入る流れの快感はなんなのだろう。特に「気持ちよくって」という歌詞を本当に気持ちよさそうにのびのびと歌うときのなんともいえないエロスのようなものって、いままでの坂本真綾の中に存在しなかったのではないか。むしろ自立した一人の表現者としてそういう部分はストイックに隠していたような気もするので、あまりにも自然体な坂本真綾に「FOLLOW ME」(ついてきて!)なんて言われると、そりゃもうね、って感じしかしない。

2.Be mine!

 『世界征服〜謀略のズヴィズダー〜』OP。アニメ見てません。
 20周年ライブにも出演していたthe band apartが書いた曲。次の曲はおなじみの疾走する北川サウンドになるわけだけど、この曲も自由気ままにぶっ飛んでいる。バンアパはそれほど聞いているわけじゃないが、いい意味でイメージを覆された。(もっと堅実だと思っていた)
 そして魅力は曲だけじゃなくて歌詞にもある。これはTr.13の「レプリカ」にも共通しているが、アニメのOPをつとめる際に必要な派手さ、インパクトに負けない自由さや伸びきった歌声が最高に気持ちいい。快感!って感じがする。


3.さなぎ

 イントロからドラムと弦が奏でる疾走感はおなじみの北川勝利のギターポップ!って感じだけど、「マジックナンバー」や「Get No Satisfaction!」のような底抜けのない明るさではない。むしろタイトルや歌詞が示すように、さなぎから飛び出て成長しようとする自分に対する不安と自信が混在していて、でも最終的には「右足で大地を蹴って大きく踏み切って」前に飛び出していく。
 迷いながらも前に進むのは15周年のときにもあったかなって思うけど、「そして進化の先へ」と宣言して歌うのは(それも最後だけは「先へ」をリフレインする)通過点を超えてまだまだここからっていう20周年らしいところなのかなと思った。
 

4.SAVED.

 『いなり、こんこん、恋いろは』ED。アニメはちゃんと見てたので、ややシリアス展開になったときにこのエンディングを見ると(聞くと)すごく救われたような気がした。タイアップの中でほとんどがOP曲の中、この曲は珍しくEDだが、EDにふさわしい出来。
 効果的なところでピアノが優しく、そしていくらか切なく使われている(「いつかは終わる毎日が」の歌詞が象徴するノスタルジーはアニメの雰囲気と非常によく合っていて、涙腺がゆるむ)けれど、全体的にはあったかいロックバラード。なのでわりとライブ受けもするんではないかなという気がする。
 歌詞で一番重要な"You saved me"の部分はまあやの声をしっかり生かして、澄み切った伸びのある声を使っている。歌詞を書いた鈴木祥子が「使わせている」というべきだろうが、息のあったいいコンビなので安心するクオリティを今回も届けてくれたなと思う。
 
5.東京寒い

 攻殻機動隊新劇のテーマになった「まだうごく」でも「あなたを保つもの」でもなくあえて「東京寒い」を持ってくるのはユニークだなと思うけれど、Tr.3で激しく、Tr.4でやさしく揺さぶったあとにコーネリアスの都会的で無機質なサウンドを並べてくるのは不意をつかれた気もする。
 で、こうやってちゃんと聴いてみるとまあやの低音は無機質でミニマルな電子音楽ともわりと合っている。たとえばPerfumeと中田ヤスタカのように息のあった10年選手というわけではないからミスマッチも多い(声そのものが単調すぎるところとか)けれど、15周年から20周年の間にあった坂本真綾によるセルフプロデュース体制への移行がなければコーネリアスと組むこともなかったかもしれない。
 まあもっとも、元々は『攻殻機動隊ARISE』にまあやが草薙素子役で参加した経緯があるから、そっちのほうが影響としてはでかいとは思うのだけれども。

6.アルコ

 コーネリアスの次に安心と安定の菅野×岩里コンビを並べてくるのはちょっとコーネリアスに厳しいんじゃないの、と思ったりした最初だけど、アルバム全体の中で見るとこの「アルコ」も目立つ。
 それはあえて旧い、なじみの二人が並ぶことによって90年代やゼロ年代のまあやを想起してしまうからかなと思っていて、リスナー側のまあやに対する認知にもよるのかもしれないが、新しいようで新しくないこの一曲をどうやって聴くべきかは案外難しいのではないか。
 素朴に、コーラスの美しさであったり、相変わらず大それたあっさりと書き上げる岩里節なあたりとか、それを2015年もやってますよっていうのは、なにも更新してないというわけではないはず。2015年のまあやだからこそ歌えるものがあるとは感じるが、それが具体的にどこがどう90年代から変わってきているのかまでを事細かく指摘できるほどではないな、ともまだ素朴に感じる。

7.幸せについて私が知っている10のこと

 『幸腹グラフィティ』OP。アニメも見ました。
 10曲目にもラスマスが曲を書いているが、こっちはアップテンポに最初から最後まで突き抜けますよ、というテイストの四つ打ちサウンド。同じ電子音楽でもコーネリアスの作るアンビエントよりはラスマスの作る四つ打ちのほうがいまのところ坂本真綾の声を自然に音に乗せることには成功しているのかなと思う。(もちろん、ラスマスとはこれまでにも仕事をしてきた経緯があるので、単純にコーネリアスと完成度を比較することはできない)
 アニメのテーマに寄せるようにひたすら「幸せ」を推しまくるこの曲は、歌詞だけを見るとまあやらしくない。らしくないけれど、かわいくてポップなラブソングだってちゃんと歌える坂本真綾を聴けるのは楽しい。まだまだいけるじゃんわたし、っていう。こっちも岩里詩なので、大仰な歌詞はお手の物ってところかな。

8.はじまりの海

 『たまゆら〜もあぐれっしぶ〜』OP。アニメも見ました。
 大貫妙子についてよく知っているわけではないけど、逆によく知らなくてもおお、と思うくらいのビッグネームだということは分かる。彼女がまあやと『たまゆら』のために曲を書くという意外さが面白いし、アニメに寄り添ったゆったりとした優しいメロディがあたたかく心地よい。
 まあやもこの曲に関しては素朴に歌うことに徹していて(「やさしさに包まれたなら」をカバーしたときと同じようなイメージ)Tr.7から比べると落差がすごいけど、逆にこのアルバムの多様性を象徴しているとも言える一曲。

9.これから

 『たまゆら 卒業写真』主題歌。シリーズの終幕へ向けてまあやによって書き下ろされた曲。アニメはまだ見てないがいずれ。
 いままで『たまゆら』で書いてきた曲と違い、エンディングロールが目に見えるような壮大さを持ったイントロから始まる。やさしさよりも切なさがあるのは「さよなら」という言葉を明確にサビに持ってきているところだろう。「わたしには分からない」と歌ったあと「これからそれを知るために」という、別れに向けた時間の流れが見えるのは切なさだけじゃなくってちゃんと希望や期待があることを意味しているのだろう。

10.Waiting for the rain

 ラスマスは中島愛をボーカルに起用した「Ame」という曲を書いているが、今回はまあやに対して雨に関する曲を書いている。どういう経緯かはよく知らないけど面白い類似で、どちらもしっとりとした切なさのある曲だ。
 Tr.7がそうであるようにラスマスと言えば四つ打ちのダンスミュージックを真っ先に思い浮かべるけど、ピアノを大量に散りばめるイントロにまず驚く。サビまで行けばラスマスらしい美メロを後ろから重ねてくるし、まあやの歌い方も力強くなる。

11.ロードムービー

 「さなぎ」と迷いながらも、何度も聞き返しているうちに音楽と歌詞の調和が抜群だなと気づいたのでこの曲がアルバムの中ではベスト。かの香織と岩里祐穂という珍しいコンビがいままでなかったような楽曲を届けてくれたこと自体がまずめちゃくちゃポイントでかい。
 そしてこの曲もポスト15周年の曲の一つだろうと思う。ロードムービーと題されたこの曲は長い旅のことを歌っているのであって、その旅というのは何かの比喩でもあるだろうけれど、エッセイ『everywhere』で書いたように初めて海外を一人で旅して歩いた日々のことがきっとまあやの頭の中にはあったはずだ。
 それに加えて20年という年月。これもしっかりと坂本真綾が声優兼歌手として歩んできた「旅」の日々が。「旅っていつか終わると思っていた でも終わらない旅もあるのね」という歌詞は、岩里が20年歩んできたまあやにこめた素直な思いの表れのようでもある。その先には「どこまでも続く明日」がある。

12.That is to say

 今回の中では一番ピアノが強調されたメロウな大人っぽいバラード。Tr.10、11と特徴的な楽曲が並んできたあとにこの曲を聴くとおとなしくてちょっと印象が薄いところがあったけれど、何度も聞いているうちにギターとピアノのサウンドが優しく響いてきてとてもよい。
 深夜にゆったりとしたところで聴いていたいタイプの曲で、まあやの歌い方も大人っぽく成熟している。音感の良さもあってのことだと思うが、しっとりとした曲を丁寧に歌いこなす安定感はさすがだなと思う。
 いままでにいろんなタイプのまあやを聴いてきたあとのちょっとした羽やすめという意味もありつつ、この曲にはこの曲の魅力もたっぷり詰まっていて、後半に据えたのはたぶん正解。

13.レプリカ

 『M3』OP。アニメは見てません。
 去年受けてた大事な面接の前にこの曲をひたすら聞き込んでテンションをあげてたという個人的な話を置いておいて、andropとまあやのコラボがこうやって完成するんだ、すごい!というテンションには違いなかったかなと思う。
 北川勝利と組むようになってからライブの本数を増やしたり明らかにライブ向きするようなバンドサウンドがそれ以前(菅野よう子時代)より格段に割合として増えたと思うのだが、そのもう一つ先の結実としてあるのがTr.2の「Be mine!」と「レプリカ」かなと思う。
 「さあ、響け!」のかっこいい一声の後に入るコーラスの快感だとか、サビの疾走感とその疾走感あるサウンドに寄せた歌がわりとかわいい路線であることとか、語るとキリがないのでこのへんで。

14.かすかなメロディ

 15曲中一番レビューしづらいので最後に書いている。
 これはなんだろう、Tr.15の前座として羽根休めとして聴くには惜しい気がするが、Tr.13のあとだと一気にかすんでしまう印象の弱さ。それは決してネガティブなものじゃないと思うし、「かすかなメロディ」というタイトル通り、かすかであってもいいチューンなのだろうと受け止めている。
 
15.アイリス

 (結果的にアルバムの最後の曲として)鈴木祥子が書き下ろした曲。これはたぶん、多幸感そのものなのかなと思う。レビューする言葉としては抽象的すぎる気がするけど、「SAVED.」のような壮大さは抑えて、控えめに控えめに音と言葉をちょっとずつ足していく。
 その中にふっと「こいのうた」というワードが浮いているような気がする。このワードが何度か登場するたびに少しニヤリとしてしまう。こんなに素朴な曲が20周年の最後でいいんだって思ってしまうけど、それはどちらかというとプラスの意味で、派手さも激しさもこなしてきたけれど、「こういう歌も大事にしたいこれからのわたし」というところなのかなと勝手に察している。
 15周年の武道館の現場にいた人間からすれば、鈴木祥子との蜜月がここでまた一つの曲として結実したのは素直に嬉しい。

 
 以上15曲。たっぷり、たっぷりという感じでまだまだ聴き足りない。
 5年前の『everywhere』がこれまでの総まとめだとするならば、本作は「20年やってきたいまのわたし」だろうと思う。改めてこの5年間を総括するというよりは、現在地をしっかりと指し示すこと。その先にはしっかり、未来への期待がこめられている。
 時系列的には少し前になるが、『かぜよみ』に収録されている「Get No Satisfaction!」の歌詞を思い起こすこともできるだろう。坂本真綾は思った以上に芯を深くに持っている人なので、このときからスタンスが大きく変わっているわけではないと思う。
 その上で、「アルコ」で歌い上げたように進化していく。ならばこれから先も楽しみにしていよう。ひとまずはそろそろ始まるツアーでの、彼女のステージを見届けることで。




Interview File cast vol.52
棚橋 和博 笹川 清彦
ジョイフルタウン
2015-09-30

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 今年もいっぱい聴いてきたのでやってみます。順不同で。去年の10枚はこちらから。

 
小松未可子『e'tuis』
e'tuis(初回限定盤)(DVD付)
小松未可子
キングレコード
2014-05-14



 小松未可子は去年も選んだので2年連続。ただ、この二枚目のアルバム(『Cosmix EXPO』を含めると3枚目)がなかなかすごい。初っぱなの「Sky Message」からガンガン飛ばしてきながら「エメラルドの丘の上で」のような曲で歌手としてのみかこしのイメージをさらに広げる。とにかく自由で、自由だ。



古川本舗『Hail against the barn door』

Hail against the barn door
古川本舗
SPACE SHOWER MUSIC
2014-10-22



 古川さんは同人でのボカロ活動に区切りをつけた2011年移行毎年一枚ずつアルバムを出してきているので、これでもう4枚目(いまのレーベルからは3枚目)。アルバムタイトルは「Rage Against the Machine」のもじりかな。
 1stと2ndがボカロ時代の名残を残すものだとするならば3rdと今回の4thは完全にイメージを一新している。キクチリョウタをボーカルとして継続採用しているあたりは3rdから4thは延長にあると思うが、同時にちびたを採用しているあたりはボカロ時代のタッグを思い出してなつかしい。そして古川さん自身もボーカルに再び加わっているのだが、いい意味での開き直りというか、何か吹っ切れたような快感を感じる。ライブ活動を増やしたからか、あるいは単純に4枚目にしてたどりついたのがここだったのか。あるいは、バンドマンだったかつての自分を復活させられたのかもしれない。




アップアップガールズ(仮)『セカンドアルバム』

セカンドアルバム(仮) (2CD / 初回限定盤)
アップアップガールズ(仮)
T-Palette Records
2014-02-19



 総じて最高だった。ほとんどシングルで出てるんだけど、通して聴くと最高感しかないって感じ。タワレコ限定の20分のDJmixも素晴らしい。アプガは現場に行くと本当に熱くて楽しいんだろうけど、現場に行かなくても楽しすぎるのは素晴らしいな、って思う。



V.A.『宇多田ヒカルのうた 13組の音楽家による13の解釈について』



 12月にこんなの放り込まれたらいやとは言えない。
 全体的に意外だったのは井上陽水「SAKURAドロップス」をはじめとした男性ボーカル曲がすさまじくクオリティが高いこと。名前を挙げれば岡村靖幸、キリンジ、大橋トリオなどが続くので妥当と言えば妥当なんだけど、実際に曲を聴いてみるとうまいぐあいに彼らが自分の曲にしてみせているのが素晴らしい。
 逆にAIやラブサイケデリコは、自分の曲にはなっているんだが原曲のイメージと比較しちゃってどうしてもハマれなかった。ただ、あゆの「Movin' on without you」はしみじみしながら聴けるし、椎名林檎やBONNIE PINKはさすがだった。後者はtofubeatsらしいアレンジの妙ももちろんあってだけど。



nano.RIPE『涙の落ちる速度』
涙の落ちる速度【初回限定盤A】
nano.RIPE
ランティス
2014-01-08



 これに関しては3枚組になっているので3枚まとめての評価という形になるんだけど、しばらく聴いていなかったnano.RIPEというバンドを再評価せざるをえないという意味では個人的に重要だった。
 「影踏み」が2013年に公開した花いろ劇場版の主題歌になっていて、そこで久しぶりにnano.RIPEを聴いた上でのこのアルバム(年明けのリリースだったので、2013年までの活動のまとめということになる)を聴いた。1stにあったインディー感をきれいに脱却し、彼らのバンドサウンドを高らかに奏でていることがよく分かった。



Chouchou『piano01 oto』
piano01 oto (The Collector's Edition)
Chouchou
Ulula Records
2014-08-16



 Chouchouのピアノインストアルバム。内容もさておき、リミテッドエディションの中身が非常に豪華。静かに聴き入るべし。以前から大好きな「Sign」はほんと何度聴いても心に染みる。




やなぎなぎ『ポリオミノ』
ポリオミノ (初回限定盤 2CD+Blu-ray)
やなぎなぎ
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2014-12-10



 端的に方向性をぐいっと変えてきたなというのが第一印象。古川さんのような変化、つまり同人時代の電子音楽的な個性よりも人に見せるため、聴かせるためのサウンドを重視していきたい意思が見える。前にも「ユキトキ」や「ラテラリティ」にその萌芽があったとは言え、だ。
 これはこれで非常に面白いし、アルバムの統一感は前回よりも上かも。一度彼女を見たことはあるが、いまのやなぎなぎのライブを(映像ではなく生で)見たらどう感じるんだろうか。 




津田朱里、小木曽雪菜(米澤円)、上原れな『WHITE ALBUM2 VOCAL COLLECTION』
TVアニメ WHITE ALBUM2 VOCAL COLLECTION
津田朱里,小木曽雪菜(米澤円) 上原れな
F.I.X.RECORDS
2014-03-26



 まずジャケットがずるい。これは最強のヒロイン感ありすぎでしょう。
 声優としての米澤円もけいおん!くらいでしか認識してなかったが、こんなにかわいらしくかつ力強いボーカルで歌える人だとは思わなかった。「届かない恋」という曲にある切なさと悲しさと、それでも残る喜びのようなものを、彼女は丁寧に歌い上げている。
 他だとSPEEDの「WHITE LOVE」カバー(津田朱里と米澤のデュエットで歌っている)がけっこうハマっていて好き。

9nine『MAGI9 PLAYLAND』



 2ndの『CUE』が到達点だと去年のブログで書いたけど、完全にEDMにこだわって作られたコンセプトアルバムのようなこの3rdは2ndとはまったく違う持ち味を見せる。
 『CUE』のほうがおそらく幅広く受け入れられると思うが、いまの9nineをじっくり聴いて欲しいという意図と、リードトラックの「Re:」にあるようなチャレンジなのだろうという気がしている。「できるよ、さあ、始めよう」って言う確信を持って。




Tokyo Audio Waffle『Travel Sound Sandwiches』


 最後の一枚どうしようかなーと悩みつつ、同人が一枚もなかったのでこれにした。
 Tokyo Audio Waffleというサークルのサウンドは初めて今年聴いたけど、ジャケットのオサレ感も含めてソッコー惚れた。いやー同人音楽ってほんと底が知れない、おそろしく面白い! と再確認するには十分。
 ほぼ毎回参加しているボーカルの砂糖子さんの文化系女子感(なんだそれは)がすごくいい。名前のようにとろけるような甘いボーカルである。


 そんなわけで今年はこんな感じでしたー。来年もいっぱい音楽聴いていこう。
 あ、あとアルバム単位じゃなくて曲単位だと今年はハナヤマタOPの「花ハ踊レヤいろはにほ」とSHIROBAKOの1クール目EDの「Animetic Love Letter」が最高でした。前者はMVも含めて今年のアニソンのなかではもっとも好きです。アニメは1話しかまだ見てないけど!

チーム”ハナヤマタ”「花ハ踊レヤいろはにほ」
花ハ踊レヤいろはにほ(CD+DVD)
チーム・ハナヤマタ
エイベックス・ピクチャーズ株式会社(Music)
2014-08-27




宮森あおい(木村珠莉)&安原絵麻(佳村はるか)&坂木しずか(千菅春香)「Animetic Love Letter」


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 2013年のアルバムから10選のようなものをやりたいと思ったので。
 こうやって振り返ると偏りは明らかにあるのだが(おそらく知らない人はまったく知らない名前ばかりだろうし)その偏りの中にも幅というものがあって、という聴き方をしているような気がする。偏りの中でさらに偏りすぎないようにとは普段から思っているので、その思うままが出たという感じかな。

 そんな感じで、発表順に並べました。数が多いのでコメントは極力多すぎないように。クロスフェードがあるものは並べたのと、ようつべなどで一部のトラックを公式に視聴できる場合はその動画を貼り付けました。
 それでは10枚一気に。(内訳:メジャー7枚、インディー・同人3枚)

小松未可子『THEE FUTURES』
THEE Futures
小松未可子
キングレコード
2013-02-13



 みかこしの多様性と、歌手としての小松未可子の確実な成長を感じられる記念すべきファーストアルバム。
 今年はこのあとシングル2枚を出していて、このアルバムで区切りをつけつつさらに新らしいことをやろうとしているのが分かる。すでにその萌芽はいくらでもあると思うし(たとえば動画を貼り付けた「Baby DayZ」だとか)安心して期待できる人がまた一人増えたのはとても嬉しい。




花澤香菜『claire』
claire
花澤香菜
アニプレックス
2013-02-20



 みかこしと違い、花澤香菜はここが一つの到達点。ファーストアルバムではあるがその意味合いは違う。違うが、花澤香菜は花澤香菜なのであって、彼女らしさがあふれていることには変わりない。
 北川勝利とacane madderによるTr.2の「Just The Way You Are」はたぶん彼女にしかできないテン年代の渋谷系なのだろう(ちょっと矛盾してるけど)。Tr.6、宮川弾の「スタッカート」にしろ、Tr.12、古川本舗の「眠るサカナ」にしろ楽曲提供者の色は強く残る中でどれだけ花澤香菜らしさを主張できるかが試されているように感じた。
 その試みは、基本的にはうまくいってると思う。たとえ好き嫌いが分かれたとしても、好きか嫌いかを判断できる色を出せることは重要だ。

9nine『CUE』



 9nineはセカンドアルバムにして一気に成長の階段を駆け上がっている気がする。到達点はまだ見当たらない。
 


坂本真綾『シンガーソングライター』
シンガーソングライター【初回限定盤】
坂本真綾
フライングドッグ
2013-03-27



 坂本真綾を記憶するための一枚だと思っている。というのは、10曲入りのこのアルバムを評価するにはどうしても坂本真綾が作詞作曲を全て手がけた、というバイアスを避けられなくて、そのバイアスの上であえて選んだということを強調しようかなと。通常のオリジナルアルバムだと非常に多彩な作曲陣が並ぶが、さすがに一人ですべてを作ると地味になりがちだ。でもそれを肯定的に評価してもそう悪いことではないだろうと思う。聴くに値しないわけはないし、先ほどのバイアス混みで言えばとても面白かった。
 Tr.8「誓い 〜ssw edition〜」がそれでもなかなか珠玉の出来で、悲しさのまじった激しさを表した原曲を、反対方向へ優しく転換させた。彼女の中にあった変化なのか、単なる時間の経過なのかは分からない。でもいまの彼女はこうして受け止めているんだと主張していることが、この曲を聴くとよく分かる。
 歌詞が面白かったのはTr.6の「なりたい」で、ああ真綾っぽいなーとにやける。




tofubeats『LOST DECADE』
lost decade
tofubeats
ワーナーミュージック・ジャパン
2013-04-24



 マルチネレコーズなどで曲を発表していたtofubeatsが大学卒業を機にメジャーデビューして出した一枚。ベストアルバムのような位置づけ、かな。
 マルチネ出身らしく、youtubeやsoundcloudで全曲フルサイズで試聴できる。それでもCD版はたとえばタワレコ各店舗で売れ行き好調だったようで、いまの時代のミュージシャンとファンとの関係だなと実感した。





QUADROPHENIA『epitaph』
epitaph
QUADROPHENIA
2013-05-06



 サークル「QUADROPHENIA」4枚目のアルバム。完成度を全く落とすことなく常に新しいことをやろうとしているのが素晴らしい。唯一のボカロ曲Tr.4「祝祭と流転」はこのサークルならではの音を出す宮沢もよよ作。さすがです。ゲストとして今回はWonderlandicaさんが参加。





やなぎなぎ『エウアル』
エウアル (初回限定盤)(CD+DVD)
やなぎなぎ
ジェネオン・ユニバーサル
2013-07-03



 デビュー1年半なので待望といっていいファーストアルバム。初回版でついてくるDisc2のカバー曲集に「カゼノトオリミチ」が収録されていて歓喜したのを思い出す。もちろんDisc1も非常によかったし、凝られたブックレットも面白かった。





多田葵『ホップミュージック』
ホップミュージック
多田葵
BounDEE by SSNW
2013-10-09



 多田葵はAB!のEDで初めて知ったが、それ以前からずっとシンガーとしての活動をやっていたようで、オリジナルアルバムも何枚かリリースしている。去年秋リリースのこの新作は渋谷系テイストが中心の一枚で、ポップではなくホップと名付けられているアルバムタイトルからも遊び心がうかがえて面白い。
 聞き込む度に味が分かる。



ryuryu『Vibgyor』


 びにゅPとしては約3年ぶりのアルバム。前作以降はニコニコ動画へのアップロードのペースを落としていたが、時間をかけて作ったと本人が語るこのアルバムは珠玉の一枚。おなじみ岬さんのアートワークは楽曲の世界観に寄り添ったもので、前回までになかった「色をつけること」をかなり意識しているように見えた。
 初期のキラキラしたミクノポップ路線からは少しずつ遠ざかっていた印象があったが、時間をかけてこういう形でアルバムを作ってきたことは非常に嬉しかった。sasakure.UKさんとは異なるベクトルで現代の寓話世界を作る一人(のボカロP)だろうと思う。



toivoa『KUKKA』

KUKKA
toivoa
BounDEE by SSNW
2013-11-20



 年末に発見したドリーミーなロックバンドのファーストアルバム。2012年に一枚シングルをリリースしているようだが、最初のアルバムでここまで仕上げてくるとは。
 二人の女性ボーカルの癒やしに似た歌声と、その空気を包み込むような優しいサウンド。ピアノが響き、ギターが鳴り、ドラムが叩かれる。バンドの編成としてはシンプルでも、表現の多様性は広がるばかりだ。








 10枚紹介してきたけど、たとえば声優のCDが3枚入ってたり、ボカロは意外と少なかったり、ああいまこういうのを好んで(あるいはやや遠ざけて)聴いてるんだなーというのが分かって面白かった。
 キャリアで言うとファーストアルバムが多い(みかこし、花澤、やなぎなぎ、toivoa、tofubeats)のは新しい人たちの音楽を常に聴こうという現れだと思うので悪くないかなと思います。年を経て追い続けられるかどうかは分からないけど、一瞬のきらめきが多々含まれているファーストアルバムをリアルタイムで経験できたってことは後々意義深いのかなあと思ったりしたり。
 2014年の音楽も楽しみです。ジャンルをあれこれ横断しながらいろんなものを聴いていきたい。
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