いつも5本紹介するが今回は絞りきれなかったので6本紹介します。地上波、BSごちゃまぜだけど全部NHKなので一部の番組はオンデマンドでも視聴可能(リンクを貼っています)。オンデマンドで見られなくてもBS世界のドキュメンタリーなどは今後再放送があるかもしれないので、その時にチェックしてもらえると嬉しい限り。
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◆BS世界のドキュメンタリー「大量収監 急増する女性受刑者 〜アメリカ・オクラホマ州〜」(2023年3月8日)
アメリカは犯罪大国で受刑者の数も先進国では図抜けて多い。というのは一つの事実だが、この番組を見ていると意図的に受刑者を多く生み出しているのでは? という疑問を抱く。保守的なオクラホマ州という政治的な文脈を取り上げながら、同じ犯罪や暴力を行っても男性に比べて女性の方が不当に扱われているという事態を検証していく。この事実(作られた女性受刑者の存在)に向き合う良心的な議員も登場するが、そうした議員が多数を占めるか、あるいは知事が誕生しなければこの現実は容易には変わらないのではないか、という無力感も味わうことになる番組だった。
◆NHKスペシャル「海辺にあった、町の病院 〜震災12年 石巻市雄勝町〜」(2023年3月11日)
3.11から今年で12年になるが、NHKがこの時期に意識的にドキュメンタリーを作り続けることは改めて大事だなと思った。記憶がどんどん薄れていく中、このドキュメンタリーに登場する病院のように自分のまだ知らない被災地のリアリティがあることは、3.11がどれだけ広い範囲を襲った災害だったかを改めて感じさせる。亡くなった人のことを冷静に振り返る患者遺族もいたことを見て、時間が経過したことで話せるようになったことも多くあるんだろうなと感じた。職員を責める患者遺族は登場しない(むしろ高台に逃げられるのに亡くなった職員に同情する人もいた)一方で、亡くなった職員の遺族の悲壮感は消えていない。「一生懸命やったけれど最悪の結果になった」、「家族が負った傷は一生治らない」と受け止める職員遺族もいて、この差は非常にシビアだと感じた。
◆NHK松山「ぼくたちが"家族"になるまで〜離島中学・生徒寮の1年〜」(2023年3月24日)
NHK松山の制作なので最初は四国ローカルの放映だったが、BS1でも放送されたいたので全国でも見られたドキュメンタリーだったと思う。中学生の集団生活ってどう考えても難しいことばかりだよな〜というイメージはあったものの、大きなトラブルというより小さなトラブルをどうやって乗り越えてゆくのか、そして寮生とされる遠方からやってきた仲間同士の絆がどうやって形成されるのかといった、等身大で素朴な視点で最後まで構成されていたのが良かった。
◆BS世界のドキュメンタリー「ペレinニューヨーク サッカーの王様 最後の大舞台」(2023年4月3日)
サッカーの王様ペレが晩年アメリカでプレーしていたことはこの番組で知った事実だった。いまでこそMLSがアメリカでも人気を博しており、女子サッカーの代表チームはオリンピックやワールドカップを制覇しているほどだが、当時のサッカー人気がどれほどだったのかをよく知らない。それでもペレが来る、というだけで地元やメディアが沸きに沸いたことがこの番組からよく伝わってくる。昔のことを、つい最近の出来事かのように興奮して話す当時の関係者や目撃者の証言がとても楽しい。
◆BS世界のドキュメンタリー「秘密の文字 ―中国 女書(にょしょ)の文化を伝えて―」(2023年4月17日)
韓国のフェミニズムは本(フィクション、ノンフィクション問わず)や映画、ドラマなどで頻繁に日本にも伝えられるようになったがこのドキュメンタリーは中国における草の根のフェミニズムを描いた良質なドキュメンタリーだった。フェミニズムという言葉は直接使われていなかったと記憶しているが、日本以上に強い家族主義の伝統の中、主に家庭内のケアを担う女性たちの間だけで紡がれてきた文字があったことは初めて知ったし、その歴史とリアリティを丁寧にたどる番組構成も良かった。
◆ETV特集「魂を継ぐもの〜破滅の無頼派・西村賢太〜」(2023年4月29日)
ETV特集は時々作家を特集する回があるが(大江健三郎の追悼を意識した再放送もあった)、西村賢太回はなかなかに見ごたえがあり。彼の小説と彼の人生をリンクさせながら、七尾の地に眠る西村のお寺まで取材に行くのはNHKらしいところ。住職に頼み込んでまで藤沢清造の眠る七尾の墓地のすぐそばに自分の墓を建て、実際にそこに眠る西村の人生は本当にシンプルで一貫しているなと、改めて感じた60分だった。
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◆BS世界のドキュメンタリー「大量収監 急増する女性受刑者 〜アメリカ・オクラホマ州〜」(2023年3月8日)
アメリカは犯罪大国で受刑者の数も先進国では図抜けて多い。というのは一つの事実だが、この番組を見ていると意図的に受刑者を多く生み出しているのでは? という疑問を抱く。保守的なオクラホマ州という政治的な文脈を取り上げながら、同じ犯罪や暴力を行っても男性に比べて女性の方が不当に扱われているという事態を検証していく。この事実(作られた女性受刑者の存在)に向き合う良心的な議員も登場するが、そうした議員が多数を占めるか、あるいは知事が誕生しなければこの現実は容易には変わらないのではないか、という無力感も味わうことになる番組だった。
◆NHKスペシャル「海辺にあった、町の病院 〜震災12年 石巻市雄勝町〜」(2023年3月11日)
3.11から今年で12年になるが、NHKがこの時期に意識的にドキュメンタリーを作り続けることは改めて大事だなと思った。記憶がどんどん薄れていく中、このドキュメンタリーに登場する病院のように自分のまだ知らない被災地のリアリティがあることは、3.11がどれだけ広い範囲を襲った災害だったかを改めて感じさせる。亡くなった人のことを冷静に振り返る患者遺族もいたことを見て、時間が経過したことで話せるようになったことも多くあるんだろうなと感じた。職員を責める患者遺族は登場しない(むしろ高台に逃げられるのに亡くなった職員に同情する人もいた)一方で、亡くなった職員の遺族の悲壮感は消えていない。「一生懸命やったけれど最悪の結果になった」、「家族が負った傷は一生治らない」と受け止める職員遺族もいて、この差は非常にシビアだと感じた。
◆NHK松山「ぼくたちが"家族"になるまで〜離島中学・生徒寮の1年〜」(2023年3月24日)
NHK松山の制作なので最初は四国ローカルの放映だったが、BS1でも放送されたいたので全国でも見られたドキュメンタリーだったと思う。中学生の集団生活ってどう考えても難しいことばかりだよな〜というイメージはあったものの、大きなトラブルというより小さなトラブルをどうやって乗り越えてゆくのか、そして寮生とされる遠方からやってきた仲間同士の絆がどうやって形成されるのかといった、等身大で素朴な視点で最後まで構成されていたのが良かった。
◆BS世界のドキュメンタリー「ペレinニューヨーク サッカーの王様 最後の大舞台」(2023年4月3日)
サッカーの王様ペレが晩年アメリカでプレーしていたことはこの番組で知った事実だった。いまでこそMLSがアメリカでも人気を博しており、女子サッカーの代表チームはオリンピックやワールドカップを制覇しているほどだが、当時のサッカー人気がどれほどだったのかをよく知らない。それでもペレが来る、というだけで地元やメディアが沸きに沸いたことがこの番組からよく伝わってくる。昔のことを、つい最近の出来事かのように興奮して話す当時の関係者や目撃者の証言がとても楽しい。
◆BS世界のドキュメンタリー「秘密の文字 ―中国 女書(にょしょ)の文化を伝えて―」(2023年4月17日)
韓国のフェミニズムは本(フィクション、ノンフィクション問わず)や映画、ドラマなどで頻繁に日本にも伝えられるようになったがこのドキュメンタリーは中国における草の根のフェミニズムを描いた良質なドキュメンタリーだった。フェミニズムという言葉は直接使われていなかったと記憶しているが、日本以上に強い家族主義の伝統の中、主に家庭内のケアを担う女性たちの間だけで紡がれてきた文字があったことは初めて知ったし、その歴史とリアリティを丁寧にたどる番組構成も良かった。
◆ETV特集「魂を継ぐもの〜破滅の無頼派・西村賢太〜」(2023年4月29日)
ETV特集は時々作家を特集する回があるが(大江健三郎の追悼を意識した再放送もあった)、西村賢太回はなかなかに見ごたえがあり。彼の小説と彼の人生をリンクさせながら、七尾の地に眠る西村のお寺まで取材に行くのはNHKらしいところ。住職に頼み込んでまで藤沢清造の眠る七尾の墓地のすぐそばに自分の墓を建て、実際にそこに眠る西村の人生は本当にシンプルで一貫しているなと、改めて感じた60分だった。