Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

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 7月のエントリーでヤクルトはなぜ強いのだろうかという雑な分析をつらつら書き連ねたけど、あれは本当に一瞬のものであって、気づけばもはや最下位が定位置である。理由は簡単で、打線に比べて脆弱な投手陣が夏本番になって明らかに疲れて来たのだろうと思った。リリーフも盤石ではなくなり、先発が踏ん張るもリリーフが崩れる試合が増えて来たし、そもそも先発が5回まで投げられないことも珍しくなくなった。

 唯一の希望がライアン小川で、8月15日のノーヒットノーランはまだまだ記憶に新しい。ヤクルトってガトームソン以来では?と思ったら本当にガトームソン以来14年ぶりで、当時はリアルタイムでは見られなかったけど、いまは文明の利器(DAZN)のおかげでリアルタイム視聴することができた。他の投手の、行けそうで行けないノーノ―を多々見て来たけれど、この日のライアンならいけるかもしれないな、と感じた。それほど、大崩れしない安心感があった。ただそれは半分くらいでもあって、そもそも日曜日の登板はほとんど勝ってきていたので、まずは勝つこと、ノーノ―はおまけくらいのノリで見ていたのが半分くらい。

 カツオこと石川はまだ今年は勝てずにいる(このエントリーを書いている9月でもまだ未勝利だ)中、ライアンが勝ち続けるのは一種の希望である。ただその分ライアンに負担をかけてしまっている現状でもある。野球はチームスポーツなので、特定の誰かに負担がかかりすぎるのは好ましくない。結局は、底上げをやっていくしかないんだろうなあと思う。しかし毎年のように同じ課題が露呈するが克服できないのも、つらいことだ。

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 8月は前半あまり体調がよくなかった。それでも、ウーバーイーツはコンスタントに続けていた。体調が悪い中でも運動量をあまり落としたくなかったことが理由としてあるが、それ以上に8月は忙しかったからである。理由はよく分からないが、まだ大半が梅雨だった8月と比べると急に暑くなって外出を自粛したからだろうか。それにしてもラブホから注文が来るとは思わなかった。

 体調が悪い中、ちょうど坂本真綾の「躍動」のストリーミング配信がスタートして、もう100回以上は余裕で聞いたのではないか、と思うくらい聞きまくっていた。FGOは全然フォローしてないけど、個人的には「レプリカ」を思い出すような、後ろめたさが少しにじむ歌詞と疾走感あふれるメロディというアンバランスさがとても好きである。



 「手に入れるのが勝利なら手放すのは敗北でしょうか」という冒頭の歌詞、そもそも勝利を手に入れる人が敗北を「手放す」という表現をすることはまずない。そのあと「誰も傷つかない世界」を「きれいごとかもしれない」と評価するあたりに、ああきっとこれは中途半端に優しい人を歌った歌詞なんだろうと思った。中途半端な優しさは、益になるより害になる方が多い。だから全体的にこの歌詞は後ろめたい匂いがするのに、「躍動」というタイトルとメロディの疾走感に後ろめたさは一ミリもない。

 なんなんだこの曲は??というのが、100回以上聞いている理由なのだろうと思う。「レプリカ」もそうだけど、複製というタイトルを突き放すように歌いながらやたら明るく聞こえてしまうメロディが面白いのだ。こうしたアンビバレンスで、しかもどう考えても難しいだろうという歌唱を、すっとこなしてしまう坂本真綾が憎い。とても愛おしくなるほどに、だ。

 こんな感じで真綾を聞くまくっていたらレコメンドされたのがyamaである。声質は女性だと思われるが、年齢性別不詳の覆面歌手として緊急事態真っ盛りの4月にyoutubeに降臨している。


 
 「深夜東京の六畳半夢を見てた」や「真夜中はすぐそこさ」という歌詞と、エキゾチックでエレクトロなメロディを聞いていると、YOASOBIやずとまよの系列に並べてもいいのかもしれない。(実際この二つのユニットとヨルシカは、多くのリスナーがかぶっているだろう)

 そのYOASOBIが8月最後の日にリリースしたのが、『ブルーピリオド』をイメージした曲、「躍動」だ。この曲も、東京の深夜〜明け方を直接的に表現している。深夜の六畳半も、明け方の渋谷も、どうしようもなくやるせない若さや青臭さが香る(だからこその「群青」なのかもしれない)。

 そういう曲を30歳の自分が聞くのと、10代や20代前半で聞くのとでは、あるいは東京の中と外で聞くのとでは全く印象が異なるんだろうなとは思いつつ、自分には自分の青春があったし、30歳になってもまだこういう青臭い曲を笑い飛ばさずに素直に受け止められるのは、それ自体は悪いことではないんじゃないか。自分がもう若くないことを知っていて、だからこそなお、青臭いイメージを表現することの価値をかみしめる。

 「知らず知らず隠してた本当の声を響かせてよ、ほら、見ないふりしていても確かにそこにある」


 
 ちなみにYOASOBIで一番好きなのは「ハルジオン」です。MVもかわいい。





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8月の読書メーター
読んだ本の数:7
読んだページ数:1832
ナイス数:14

香港と日本 --記憶・表象・アイデンティティ (ちくま新書)香港と日本 --記憶・表象・アイデンティティ (ちくま新書)
読了日:08月01日 著者:銭 俊華
結婚の奴結婚の奴
読了日:08月10日 著者:能町 みね子
絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか
読了日:08月18日 著者:アビジット・V・バナジー,エステル・デュフロ
金融のエッセンス (有斐閣ストゥディア)金融のエッセンス (有斐閣ストゥディア)
読了日:08月26日 著者:川西 諭,山崎 福寿
おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線 (光文社新書)おとなの発達障害 診断・治療・支援の最前線 (光文社新書)
読了日:08月26日 著者:小野和哉,林寧哲,柏淳,本田秀夫,松岡孝裕,横井英樹,鈴木慶太,高山恵子
問いからはじめる発達心理学 (有斐閣ストゥディア)問いからはじめる発達心理学 (有斐閣ストゥディア)
読了日:08月30日 著者:坂上 裕子,山口 智子,林 創,中間 玲子
セルフケアの道具箱: ストレスと上手につきあう100のワークセルフケアの道具箱: ストレスと上手につきあう100のワーク
読了日:08月30日 著者:伊藤 絵美

読書メーター

 バナジー&デュフロは素晴らしかった。『貧乏人の経済学』も近いうち読みます。


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 引き続きやっていきましょうという気持ちでウーバーイーツは継続しており、なぜか自己ベストだった5月の収入を更新するほどの7月だったわけだが(よく分からないが梅雨のせいだろうとは思う)6月から野球が始まったことによって、注文と注文の合間に経過をチェックしたりラジオで中継を聞いたりするのがとても楽しい。

 そうそう、こういう日常が本当は春先からあったんだということを、つい最近まで忘れていたと素直に思った。しばらくスポーツのない時間が続いていたことに半ばあきらめんような気持ちを持っていたが、始まってみるとやはりスポーツは楽しいし面白いなと思う。逆に一貫して無観客での開催を続けている競馬の世界の努力も本当に素晴らしいと思う。4月に桜花賞、5月にダービーといったように、競馬があることによって季節感を担保できた人も多かったのではないか。ちなみに馬券は当たったり外れたりでトントンです。

 そして6月中旬からシーズンが始まったプロ野球だが、いまのところなぜかヤクルトが強い。強いというより、しぶといというか、去年に比べると簡単に負けないチームになったのかなと思うが、なぜ8月になってもなおAクラスにいるのか、正直よく分からない。



 よく分からない理由は主に二つある。一つは外国人選手の不振である。唯一元メジャーリーガーでありバリバリの守備職人であるエスコバーは30代になっても堅実で華麗な守備を披露している。オープン戦や練習試合では今一つだった打撃面でも気づけば打率が3割に近づいて、最近では山田哲人の休養の穴埋めとして2番を打つこともある。だが、エスコバー以外、例えばイノーアはいまだ勝ちなしだし、スアレスも早々に離脱。マクガフはなんとか投げているが防御率が芳しくない。このような、助っ人が助っ人になれていないのがいまのヤクルトだ。

 もう一つは先発陣だ。開幕時、先発ローテに入っていていまも残っているのはライアン小川だけである。スアレスとイノーアが先述したように不振で、カツオもまだ勝ちがないまま調整中。こうなってくると2軍からの選手に頑張ってもらうしかなく、高橋奎二や高梨や原樹理がなんとか勝ちを拾い、山中浩史もシーズン初先発で8回無失点と好投し、ルーキーの大西や吉田大喜が早くも1軍で、という形になっている。吉田は先日プロ初勝利を挙げたが、開幕ローテの先発陣の離脱がなければ登板自体はもっと後になっていたことだろう。初勝利自体はいいニュースであるが、その背景は非常に複雑である。

 それでもなぜかヤクルトはAクラスだ。8月になって4連敗を記録したが、7月までは3連敗以上を経験しなかった。10回で終わりという規定の影響もあるが、大型連敗からそのままずるずるいってしまいうのは2018年に嫌なほど見た光景で、大型連敗がないのは一つ強さである。2018年はあの連敗(何連敗か思い出したくない)で開幕後のスタートダッシュを帳消しにしてしまい、シーズンをほぼ終わらせてしまった。

 この前、元中日の山本昌が『レジェンドの目撃者』という番組で語っていた内容がヤクルトの強さに通じる気がした。山本昌はエリートを歩んできた選手ではない。それでも40代でのノーノ―と200勝、49歳での勝利、50歳での登板という昭和の往年の選手でも作れなかった記録を達成できた。なぜなのか?

 よくも悪くも、持ち味を生かすしかなかったから、というのが山本昌の自己解釈である。大きな体格であったり、緻密な制球であったり、あるいはキャッチャーのサインには基本的に首を振る素直さであったり。自分自身の持ち味をフルに、かつ効果的に使うことによって選手生命を伸ばしてきた。

 これはいまのヤクルトも同じだ。エスコバーがショートを守り、村上がサードの守備を向上させることによって内野の守備はかなり堅実になった。内野が安定しているとピッチャーはゴロを打たせやすい。守備でのファインプレーが出れば攻撃へのリズムにつながる。ベテランの坂口は外野とファーストを行ったり来たりではあるが、ユーティリティーなベテランが出続けることで若手に対して危機感をあおる役割もあるかもしれない。若手とベテランの関係で言えば青木がキャプテンなのもいい。メジャーに行ってからの青木は、チームのモチベーターとしての役割も担えるようになった。(侍ジャパンでもこの能力は生かされてきた)

 現有戦力をいかに効果的に使うか。それも一人ずつバラバラに考えるのではなく、いかにしてチームとして機能させるのか。特に打つ方に関してはバレンティンが抜けたので、打線にホームランの多さは期待できない。その代わり、打率を明らかに向上させている村上が4番として機能しているように、誰かが抜ければ抜けた分、穴を埋めるための結果を各選手が残しているのが非常に頼もしい。巨人にパーラやウィーラー、阪神にサンズやボーア、DeNAにソトやロペスやオースティンといった布陣と比較すると、まるでいまのヤクルト打線は私立の強豪校に立ち向かう地方の公立校のようでもある。でも地方の公立校が常に私学強豪校に負けるわけでもない。特にプロ野球は甲子園のようにトーナメントではないから、三連戦を一つ負けても残り二つ勝てばいい(もしくは1勝1敗1分けでもよい)
というのは、特定の選手に依存するよりも幅広い選手が活躍できる環境の方が実は結果を残せるのかもしれない。(ソフトバンクの層が厚すぎるように)

 いずれにせよ、そんなわけで遅れてやってきた今年のプロ野球はいつになく面白いシーズンになっている。そして遅れてやってきたといえば3か月遅れて放送が始まった『俺ガイル完』もいまのところ順調に楽しんでいる。原作をおそらくなぞるような結果になるだろうから結末は知っている。けれどもずっと追いかけて来たシリーズがアニメでも完結までたどりつけるのは、なかなか幸福であることもまた感じている。

 そんな感じでようやく梅雨も明けた特別な夏、2020はまだしばらく続いていくのだろう。皆さんもどうかご自愛ください。屋外では積極的にマスク外していこうな。(特に人口密度の高くない地方ではさすがにもっとみんな外してもいいと思う)
 


7月の読書メーター
読んだ本の数:17
読んだページ数:4077
ナイス数:16

精神科の薬がわかる本 第4版精神科の薬がわかる本 第4版感想
いい本でした。福祉職は薬剤の知見を十分に持たないまま仕事をしていることが多いので、利用者の変化や不調に対応する上では薬剤の特徴や副作用を知っておいた方が良い。家族や支援者に向けて書かれている箇所も多く、その意味でも使える本だと感じた。
読了日:07月01日 著者:姫井 昭男
源氏物語 4 (新潮文庫 え 2-19)源氏物語 4 (新潮文庫 え 2-19)
読了日:07月05日 著者:紫式部
政治改革再考 :変貌を遂げた国家の軌跡 (新潮選書)政治改革再考 :変貌を遂げた国家の軌跡 (新潮選書)感想
ほぼ書き下ろし、選書という出版形式の中でも骨太な議論を展開するところはさすが。複数の領域を個別的にではなく連関的にとらえるマルチレヴェルミックスというパースペクティブと、アイディアと土着化という二つの視点で選挙制度改革や行政改革を筆頭に司法制度改革や金融、地方分権改革に切り込んでいく。一冊の中で手広く扱うところは学術書ではなく一般書らしいおもしろさかなと思った。数々の政治不信や汚職、そして熱狂なき都知事選挙を終えた今だからこそこの本の扱う内容は色濃く読めるかもしれない。
読了日:07月06日 著者:待鳥 聡史
海外オタ女子事情海外オタ女子事情
読了日:07月07日 著者:劇団雌猫
Number PLUS 野村克也と名将の言葉学。 (Sports Graphic Number PLUS(スポーツ・グラフィック ナンバープラス)) (文春e-book)Number PLUS 野村克也と名将の言葉学。 (Sports Graphic Number PLUS(スポーツ・グラフィック ナンバープラス)) (文春e-book)
読了日:07月07日 著者:
リモートワークの達人 (ハヤカワ文庫NF)リモートワークの達人 (ハヤカワ文庫NF)
読了日:07月10日 著者:ジェイソン フリード,デイヴィッド ハイネマイヤー ハンソン
二軍監督の仕事〜育てるためなら負けてもいい〜 (光文社新書)二軍監督の仕事〜育てるためなら負けてもいい〜 (光文社新書)
読了日:07月11日 著者:高津 臣吾
世に棲む患者 中井久夫コレクション 1巻 (全4巻) (ちくま学芸文庫)世に棲む患者 中井久夫コレクション 1巻 (全4巻) (ちくま学芸文庫)感想
「働く患者」、「医療における人間関係」、「医師・患者関係における陥穽」の三本が特に面白かった。
読了日:07月15日 著者:中井 久夫
白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)白人ナショナリズム アメリカを揺るがす「文化的反動」 (中公新書)
読了日:07月16日 著者:渡辺靖
群青神殿 (ハヤカワ文庫JA)群青神殿 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:07月20日 著者:小川一水
今日のメンタルヘルス (放送大学教材)今日のメンタルヘルス (放送大学教材)
読了日:07月21日 著者:石丸 昌彦
ユリイカ 2020年5月号 特集=韓国映画の最前線 ―イ・チャンドン、ポン・ジュノからキム・ボラまで―ユリイカ 2020年5月号 特集=韓国映画の最前線 ―イ・チャンドン、ポン・ジュノからキム・ボラまで―
読了日:07月22日 著者:ポン・ジュノ,キム・ボラ,チョン・ジュリ,シム・ウンギョン,真利子哲也,深田晃司
コロナクライシス (日経プレミアシリーズ)コロナクライシス (日経プレミアシリーズ)
読了日:07月22日 著者:滝田 洋一
急に具合が悪くなる急に具合が悪くなる
読了日:07月24日 著者:宮野 真生子,磯野 真穂
人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書 2590)人類と病-国際政治から見る感染症と健康格差 (中公新書 2590)感想
COVID-19との日々はまだまだ続いていく中手に取りやすい新書という形で出版されたことがまず素晴らしい。本書の半分以上は古い感染症や新しい感染症に人類がどう立ち向かってきたかの軌跡を辿る旅のようである。後半はやや総花的ではあるがタバコ規制などは生活に密着している重要なポイントであるし、国の豊かさの違いが医療費の公私負担の割合に分かりやすく表れている点や、医療を巡る汚職など、政治学的な関心の高いテーマが紹介される。
読了日:07月24日 著者:詫摩 佳代
エキスパートナース 2020年 6月号[雑誌]ナースのギモンに答えます 新型コロナウイルス感染症/令和2年度診療報酬改定 ケア・看護業務はこう変わる!エキスパートナース 2020年 6月号[雑誌]ナースのギモンに答えます 新型コロナウイルス感染症/令和2年度診療報酬改定 ケア・看護業務はこう変わる!感想
仕事用。COVID-19関連の特集と後半のてんかんの診療ガイドライン2018についての解説記事を中心に面白く読んだ。
読了日:07月28日 著者:
孫基禎―帝国日本の朝鮮人メダリスト (中公新書 (2600))孫基禎―帝国日本の朝鮮人メダリスト (中公新書 (2600))
読了日:07月31日 著者:金 誠

読書メーター
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 本当は一か月区切りで書くつもりだったが、怠惰なせいで二か月分まとめてのエントリーになる。今年のGWはあまりにも街が閑散としていて驚き、しかしまあその影響も相まってかウーバーイーツの需要の一時的な高ぶりも実感した。この需要については、GWが終わると需要はいったん落ち着いたが、6月後半になると再び盛り返してきたイメージがある。

 ちゃんと市場調査をしたわけではないのでいろいろな情報をかき集めての実感だが、理由としては三つほど挙げられるだろう。一つは、GWまでのいわゆるステイホーム期間にウーバーイーツを利用した層が一回きりの利用ではなく繰り返しの利用を行っている形跡があることだ。一番直近までの配達を含めて通算でいうと290回ほどの配達を行っているが、回数をこなすにつれて「リピーター」のお客さんに出会うことが増えてきた。まあこれはウーバーイーツが定期的にクーポンを乱発している要因もあるとは思うが、一回利用した人が繰り返し利用することで定着していくことは需要の安定、ひいては供給サイドである自転車乗りからしてもうれしいことである。

 二つ目は選択肢の増加だ。自分用のグーグルマップに参加店舗をアナログでピンを立てて登録しているが、7月に入ってとうとう100店舗を超えた。Uber側のエリア拡大戦略やCOVID-19の影響も相まって全国的に参加店舗は急増しているが、およそ40ほどで始まった高松でも3.5か月で2.5倍にまで増加したのはいい傾向だといってよいだろう。まだまだ参加店舗の多くはチェーン店であるので手数料をなんとかすることで個人店や小規模店舗の増加を促してほしいとも思う。

 まあUber側にはさほど期待してはいないが、二回に分けて配達員に対して不織布マスクを配布してくれたのは(一種のパフォーマンスかもしれないが)多少なりとも気を遣っているのかもしれない。また、選択肢の増加という点では6月からPaypayが決済に対応し、Paypayのミニアプリからもウーバーイーツの注文が行えるようになったのは大きい。お金関係のトラブルが嫌なので現金配達は対応していないしする気がないので、キャッシュレスの選択肢が増えるのは純粋によいことである。COVID-19からのリスク回避という意味でも。ただ楽天とドコモがそれぞれデリバリー事業を行っているので楽天ペイとd払いが対応するには時間がかかりそうな気もする。

 三つ目は配達員の増加だ。体感ではあるが、バイク配達員の増加が目立つ。頻繁に配達していると同じ配達員に出会うことも増えるが、バイクの人であることが多い。自転車の配達員は遠くまでピックアップすることはないが、バイクは遠くに回されがちだと聞く。つまり需要の増加に適切に対応するためにはバイクが増えてくれる方がありがたい。よって自転車の増加はそのまま競争相手の増加を意味するがバイクとは競合機会が少ないはずなのと、体力的にもバイクの方が長く続ける人が多いと考えられる。

 こういう仕組みがあるので自転車とバイクは需要の取り合いになることも少ない(はず)特にこれからの夏の季節に自転車で配達するには暑さに対応する必要があるので自転車配達員が急増することは考えにくい。自分は夏でも全然いける口なので(元陸上部なので)継続する予定だが、今後配達員の動向がどう変化してくるのかは引き続くウォッチしていきたいと思っている。ちなみにツイッターでウーバーイーツ高松の配達員を探してみたが7:3くらいでバイク。

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 意外な副作用としては、特に4月5月に強く実感したがウーバーイーツがあまりにも忙しくてのんきにツイッターをしていられなかったことだ。これは精神的にプラスに働いたと思う。日本人のみならず人間が疾病や感染症に対して往々にして差別的な扱いをしてきたし、今回もそうしている。そして現代的なのがインフォデミックで、テクノロジーの進化が人間を不幸にしてしまう典型的なケースを多く見てきてしまった。こういう時は距離を置くのが手っ取り早く、ウーバーイーツをやっていると自然と距離を置くことができてしまった。
 
 そして、ようやく本を読むことができるようになった。3月や4月は日を追うごとに明らかに状況が悪化していくので、のんびり本を、特にフィクションを読む余裕がなかった。現実の方がカミュの『ペスト』や小川一水の『天冥の標』2巻を体現しているように思えてしまい、フィクションと現実の境界がひどく曖昧になっていたからだ。だからようやく5月の、確か中旬ごろからだったと思うが、ようやく本を読むという習慣を取り戻せたことが嬉しい。一人本を読むという、自分にとってはもう20年くらい続けている何気ない日常的な行為が、これほどに心理的なパラメータを意味する行為だったとは。

ペスト(新潮文庫)
カミュ
新潮社
2017-03-10



天冥の標供ゝ濱し
小川 一水
早川書房
2013-02-27


 そして調子に乗って古典かつ大長編を読んでみようということで、読み始めたのが円地文子訳の『源氏物語』である。全6巻ある新潮文庫版でいまは4巻まで読み終えた。ちょうどこのパート、光源氏が亡くなるまでの10年間が、最も印象に残った。あえてここでストップしているが、近いうちに残り2冊を読んでしまおうと思う。

 7月に入り、再び感染が拡大している。アメリカが典型的だが、社会経済活動の再開はそのままリスクを生活の中に織り込むことを意味する。その意味では予想できた展開ではあるが、しかしこの展開に政治行政、あと各企業や私たちのようなヘルスケアセクターがどう立ち向かっていくのか、明確な答えが出てない場合が多い。引き続き、歴史のさなかに生きていることを実感しつつ、濃厚接触を避ける日々を送ってゆくしかないのだろう。野球で言えばまだ2回表という言葉も耳にするが、さて先発が大崩れせずいけるかどうか。



 その野球も開幕して一か月。毎日ダゾーンやBSやラジオで野球中継に触れる機会があるのも、これまた幸福なことだ。それをかみしめながら、現実の2回表を生きていく。

5月の読書メーター
読んだ本の数:15
読んだページ数:5039
ナイス数:41

ヤクルトスワローズ論 (MdN新書)ヤクルトスワローズ論 (MdN新書)感想
急いで出版したからかあきらかな校正ミスがいくつかあったのが惜しいが、いま改めて読むと本当にノムさんは野球を好きだったんだなということがよくわかる。そして人をよく見ている。鶴岡一人や川上哲治からヤクルト黄金期の選手を経てマー君、大谷まで。過去の価値観にとらわれずマー君を育て上げたりできたのはノムさんなりの評価基準や人を育てるに当たっての思想が深く根付いていたからだろう。まだまだ生きていて欲しかったが、あの世でサッチーや稲尾ら往年の選手とゆっくりやっていてほしいとも思う。
読了日:05月01日 著者:野村 克也
行動経済学の使い方 (岩波新書)行動経済学の使い方 (岩波新書)
読了日:05月04日 著者:大竹 文雄
食べて、祈って、恋をして〔新版 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)食べて、祈って、恋をして〔新版 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)感想
かなりのボリュームがあるが、一度読み始めたら止まらないそんな一冊。解説にもあるようにギルバートのたたみかけるようなおしゃべりの魅力と、そこに垣間見えるいくつもの闇や苦悩。それがあるからこそしかし彼女を旅へといざなったのであろうし、確固たる目的がある旅の中で彼女が感じ、考えたことに価値があるのだと感じた。
読了日:05月06日 著者:エリザベス ギルバート
測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?
読了日:05月08日 著者:ジェリー・Z・ミュラー
認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング認知療法・認知行動療法カウンセリング初級ワークショップ―CBTカウンセリング
読了日:05月11日 著者:伊藤 絵美
ロールズ政治哲学史講義 I (岩波現代文庫)ロールズ政治哲学史講義 I (岩波現代文庫)
読了日:05月13日 著者:ジョン・ロールズ
香港デモ戦記 (集英社新書)香港デモ戦記 (集英社新書)
読了日:05月18日 著者:小川 善照
平成政治史 (ちくま新書)平成政治史 (ちくま新書)
読了日:05月21日 著者:大嶽 秀夫
アフターダーク (講談社文庫)アフターダーク (講談社文庫)感想
長編というより長い短編という感じ。あまり評価が高くないのは知っていたが確かにこれは読みごたえが弱い。
読了日:05月21日 著者:村上 春樹
賭博者 (光文社古典新訳文庫)賭博者 (光文社古典新訳文庫)
読了日:05月24日 著者:ドストエフスキー
ロールズ政治哲学史講義 II (岩波現代文庫)ロールズ政治哲学史講義 II (岩波現代文庫)
読了日:05月25日 著者:ジョン・ロールズ
どこからが病気なの? (ちくまプリマー新書)どこからが病気なの? (ちくまプリマー新書)感想
このタイミングにこういう本が出版されているのは素晴らしい。かぜと肺炎の違いは何?という超今日的な話題もあるし、個人的にはがんについての記述が面白かった。一部のアレな医療書籍に対する痛烈な批判もあるのが良い。
読了日:05月26日 著者:市原 真
発達障害のある女の子・女性の支援: 「自分らしく生きる」ための「からだ・こころ・関係性」のサポート発達障害のある女の子・女性の支援: 「自分らしく生きる」ための「からだ・こころ・関係性」のサポート
読了日:05月27日 著者:川上 ちひろ,木谷 秀勝
あのころ、早稲田で (文春文庫)あのころ、早稲田で (文春文庫)
読了日:05月28日 著者:中野 翠
ペスト (中公文庫)ペスト (中公文庫)
読了日:05月31日 著者:ダニエル デフォー

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6月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3374
ナイス数:32

エトセトラ VOL.3エトセトラ VOL.3感想
アクロストンのインタビュー、早乙女智子のインタビューと牧野雅子のエッセイを特に面白く読んだ。改めて七生養護学校の事件を含むゼロ年代のバックラッシュは相当に罪深いと感じる。後ろの方にあるすんみのエッセイや伊藤春奈の書いた相撲における穢れの問題も読み応えがある。あとCOVID-19以降のドイツでのあれこれも既視感が強くて色々思うところあり。
読了日:06月01日 著者:長田杏奈
競馬の人類学 (岩波新書)競馬の人類学 (岩波新書)感想
1988年の馬事文化賞受賞作。いま読んでも世界あちこちの競馬の風景は面白い。本場イギリスでどのように競馬と賭けが始まり、長らく非合法だった賭けがいかにして合法化されるかという経緯も面白かった。1988年はオグリキャップ4歳の年だがすでに女性ファンが増えていて競馬場も綺麗になっていた、というのはなるほど既に思ったよりいまの競馬の風景に近いかもしれない。馬券の種類が少なく、まだ世界の競馬からしたらレベルが低いとされていた時代ではあるけども。
読了日:06月03日 著者:長島 信弘
読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)読書嫌いのための図書室案内 (ハヤカワ文庫JA)感想
読書のひとつの楽しみに「解釈の共同体」に参加することができるという要素を発見し、そしてそこから推理に結びつけていく主人公の力業が面白い。あと設定的にこのまま続編書けそう。
読了日:06月03日 著者:青谷 真未
症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る症状を知り、病気を探る 病理医ヤンデル先生が「わかりやすく」語る感想
身体症状から原因を類推する力は福祉職にもある程度求められる事だなあと思いながら読んだ。腹痛、発熱&高体温の項目は日常的に耳にする言葉も多い。
読了日:06月05日 著者:市原 真
ラグビーって、いいもんだね。 2015-2019ラグビーW杯日本大会 (鉄筆文庫)ラグビーって、いいもんだね。 2015-2019ラグビーW杯日本大会 (鉄筆文庫)
読了日:06月11日 著者:藤島 大
司法矯正・犯罪心理学特論-司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開- (放送大学大学院教材)司法矯正・犯罪心理学特論-司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開- (放送大学大学院教材)
読了日:06月14日 著者:橋本 和明
源氏物語 1 (新潮文庫 え 2-16)源氏物語 1 (新潮文庫 え 2-16)
読了日:06月14日 著者:紫式部
源氏物語 2 (新潮文庫 え 2-17)源氏物語 2 (新潮文庫 え 2-17)
読了日:06月14日 著者:紫式部
漂うままに島に着き漂うままに島に着き感想
小豆島出身の人間が読むと身に覚えのありすぎる場所や人がたくさん出てきて少しむず痒い気もしつつ、引っ越しするまでの流れに移住の過酷さが詰まっているなと感じた。それでも引っ越した後の内澤さんは(後にストーカー被害を経験するが)なかなか楽しそうで、そうかあのへんに住むことにしたのかーと思いながら移住後の話題に入る後半も面白く読みました。
読了日:06月18日 著者:内澤旬子
源氏物語 3 (新潮文庫 え 2-18)源氏物語 3 (新潮文庫 え 2-18)
読了日:06月20日 著者:紫式部
房思(ファン・スーチー)の初恋の楽園房思(ファン・スーチー)の初恋の楽園
読了日:06月26日 著者:林奕含

読書メーター


過去のエントリー:2020年4月振り返り
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 4月はCOVID-19の社会的インパクトが一気に深刻化した一か月だったと思うが、個人的には気づいたら5月になっていたという感覚が強い。理由の一つは仕事にさほど変化がないことだ。入所施設の福祉職員であるため、日中の通所施設のように閉鎖や休業という概念はない。日中施設については障害者施設も高齢者施設も800〜900ほどの施設が全国で休業をしているようで(利用時間、受け入れ人数の縮小などを合わせるともっと多いだろう)、高松も例に漏れず通所施設や短期入所の休業や縮小という情報を耳にする。




 こうした状況の変化もあり、自分の仕事は暇になるというよりむしろ忙しくなる。通所施設に通う時間が減った入居者がGHで過ごす時間が増えるのだから、当然である。増えた時そのものへのケアより、感染防止やストレス対策、運動不足対策などいろいろこまめに考えてはいる。いずれにしても、本業は3月よりずっと忙しくなってきた。在宅ワークや自宅待機で暇という人も世の中にはいるようだが、自分がいまの仕事をしている限りそういった人たちと同じ経験をすることはなさそうだ。ただ事務処理や書類作成の一部はクラウドで実施しているので、家で作った資料を職場からクラウドにエクスポートしたりとか、そういうことはこれまでもやっている。

 もう一つの理由が原稿である。二つの本にほぼ同時進行の形で参加していて、一つはまだ公式な情報が出てないのでこちらからは何も言えないが、もう一つはツイッターで普段から絡みのあるセラブルクラスタで作ったSeraphicBlue16周年を記念する同人誌『EVER BLUE』だ。ゲームのリリースとなった5月15日を目指して制作がスタートし、先日怒涛の締め切り追い込みと校正ラッシュを終えて無事
完成の運びとなった。このブログの読者の中にセラブルというゲームについて知っている人がどれだけいるかは分からないが、興味がある方は下記リンクからboothの通販で予約販売が始まっているのでリンクだけでも踏んでもらえるとありがたい。



 短いのも含めるとこの本だけで3本書いており、1つが書き下ろしの小説、もう1つが去年書いて発表したものに加筆修正して大幅に書き直した小説、もう1つがあとがきを兼ねたショートコラムだ。今回は意図的にどちらの小説にも精神医療的要素を入れてみたが、これはセラブルというゲームやそのキャラクターの特性を考えると無理くりではなく自然な形であると思う。宮内悠介のように精神医療を題材にした小説をいつか書いてみたいと思っていたので、二次創作ではあるがそれを実現した運びとなった。たぶんこれまでこの手のネタを仕込んだことはないので、お楽しみいただけるとうれしい。(どれだけの人が楽しめるかは分からんが)

 そして最後、三つ目の理由がウーバーイーツである。高松でも始まるという噂は今年の初頭から流れており(結構いろいろなお店に営業電話が来ていたようだ)あとは開始時期がいつからかが気になっていた。3月25日のサービス開始から一ヶ月ほど経ち、配達件数も100件ほどに到達したのでこのネタだけでブログ一本書けそうだとも思っているから今回は長くは書かない。

 書かないが、個人的なインパクトを少しだけ。まず腰痛が改善したこと。あえてスピードの出るロードバイクではなくternのverge P10(折りたたみのできるミニベロ)で配達しているが時速10〜12キロほどで配達の注文が途切れない限りは走り続けている。最長で一日に6時間稼働したが、その時は63キロというロングライドでもしない限りなかなか見ない数字を一日で記録した。さすがに体力や筋力を考えると現状の限界はこのあたりみたいで、翌日の疲労感が大きかった。

 ただ、これだけ一日で走っていると、夜の睡眠の質がぐっと上がり、これもかなりポジティブなインパクトである。特に去年は継続的に不眠に悩んでいた時期があって(気づいたら改善していて謎なのだが)特に寝つきの悪さをかなり気にしていた。しかしウーバーイーツでこれだけ走ることにより、寝つきの向上と、睡眠そのものの質の改善は心身ともに健康へのポジティブなインパクトがあった。そのため、本業や原稿を抱えながらも「運動」という名目でウーバーイーツを継続したことは、結果的に良かったと思っている。健康でなければ原稿を完成させることはできないが、画面にずっと張り付いていると運動する機会はやってこず不健康だ。そのため、ウーバーイーツというアクティビティをあえて日常の余暇として挿入することで、意外な形で効用を得られた一ヶ月でもあった。

 街で出会った何人かの配達員とも雑談をしたが、現状高松ではインセンティブがほとんどなく(あっても雨の日&週末クエストくらい)報酬単価も東京などに比べると安いため、ネットでよくあるような「ウーバーイーツで自由に稼ごう!」みたいなギグワーカー志望には向いてない。あくまで自分のように余暇時間を生かして生活の足しにすればいいのでは、くらいのレベルのための仕事だろう。

 このエントリー冒頭でも書いたが、4月に入りCOVID-19の影響が高松でも深刻化する中で飲食のデリバリー需要の高まりは肌で感じている。週末になると街にはウーバーバッグを背負った配達員や、ピザ屋や銀のさらの配達員を見かける機会がぐっと増えたように思うからだ。

 ウーバーイーツについては外出自粛需要がただでさえある上に初回クーポンを乱発していた効果もあるだろうから、このGWが明けてからが実際の利用実態を掴むタイミングかもしれない。まあそんな感じで、引き続き「運動」の一貫としてウーバーイーツ活動をマイペースでやっていこうと考えている。

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 昨日の話だが、雨の中行われた名古屋ウィメンズマラソンの一山麻緒は本当に素晴らしかった。ほぼ一年前の東京マラソン(これも寒いレースだった)で初マラソン&24分台を記録し、ロンドンマラソンを経てMGCにも出場。昨日の名古屋がまだキャリア4戦目にも関わらずここまで横綱相撲を発揮できる選手に成長したとは。本当に素晴らしいことだと思う。

 ちょうど一か月前の丸亀ハーフマラソンで自分も走りながら彼女の走りを少し拝見したわけだけど、ラストスパートが非常に力強く、1時間8分台でゴールしたと聞いても驚きはなかった(男子では日本新が出ていた)。昨日のレースにしてもプラン通り、イメージ通りという言葉を何度も聞いたが、29キロ地点から一気にギアを切り替え、35キロを過ぎてもラップが大きく落ちない走りは本当に見事だった。

 市民ランナーの視点からすると、本番へ向けたピーキング、絶対的な練習量、プランを着実に実行する力の3点はとても参考になるなと思う。前2つはレース前、プランの実行は走りながら実行するしかないわけだけど、ちょうど大迫傑が走った東京マラソンを見ても同じことが言えるなと思った。一山はアメリカに行き、大迫はケニアに行って鍛え上げた。当日、レース展開を見て仕掛けたのは二人とも共通しているし、30キロ〜35キロの間で勝負をほとんど決めてしまったのも似ている。

 早めに勝負を決めるということは、成功すれば後続を振り切り、圧勝することができる。だが後続を振り切ることができなければ。あるいは、35キロ以降で失速してしまえば、勝つことは容易ではなくなる。MGCの大迫がこのパターンで、最後の数キロで中村と服部につかまり、3位に終わってしまった。一山もまた、早めのスピードアップが裏目に出て後半に大きく失速していた。

 二人のレースを見ていると、本番での失敗を次の本番にどう生かすか、その重要さを強く感じる。そしてうまくやればそれは可能だということも、大迫と一山は教えてくれた。






 原油価格が急落し国内と海外の相場が悪化する中で3年4か月ぶり(トランプ当選以来)の1ドル101円台を記録したらしいが(確認したときは102.0円台だった)このタイミングで97年の韓国通貨危機(IMFショック)をエンタメ的に描いた『国家が破産する日』を見て来たのはなかなか面白いなと思った。危機は繰り返す、何度でも、形を変えて。

 主演のキム・ヘスが御年49歳と知ってたまげたけどね。どう考えてもアラサーにしか見えなかったし、ググったら美魔女と呼ばれていて納得した。『バーニング』のユ・アインは『バーニング』とは対極にある逆張りで大儲けする投資家を演じていたけれど、儲けたり投資会社を起業したあとも表情に翳りがあるような演技は見事だった。社会が落ちていく中で勝ち組になったことに対する負い目が、いまの韓国にもリアルに残っているのかもしれない。

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 少し間が空いた。この間に東京に行ったりもしたので、気が向いたら振り返りたいと思う。2泊3日滞在したが3日間で15人くらいの人とお会いすることができてありがたいと感じた。香川というか四国にいったん引きこもってしまうとそれなりに楽に生活できてしまうんだけれど、でもそれだけだと物足りないよなという現実も確かにあって、東京でいろいろな人と会うことによって自分の立ち位置をその都度再確認しているような気がする。

 東京を離れてもう6年になる学部と修士を合わせただけの年月を香川で過ごしていて、その大半の時間を労働に費やしてきた。そして先月30歳になってしまったので、これからの身の振りをどうしていこうかという話を東京ではひたすらにしていた。自分がやりたいと思っていることは隙間産業的であるとは思っているけれど、周囲の人と同じようなキャリアを歩むことにはまったく興味がないので、良くも悪くも引き続き我が道をゆくしかないなと感じる。ゴーイングマイウェイ、でしか生きていけない。まあそれが「早稲田らしさ」かもしれないし、単なるこじつけかもしれない。

 その早稲田出身で陸上界のスターである大迫傑が今日やってくれた。たった1年半の間に2度も日本記録を更新する選手なんて、もう相当先まで現れないのではないか。確かにナイキの厚底シリーズは革命的かもしれないが、それを使いこなせるだけの能力がランナーに備わっていなければ靴はただの靴である。多くの人はランニングシューズの能力を勘違いしているように思う。シューズが走るのではなく、あくまでも走るのは人間であって、同時に万人に最適なシューズは存在しない。シューズの能力を存分に発揮できる能力まで含めて現代のトップランナーたりえるのだろうと、今日改めて強く感じた。

 大迫傑を見ていてそのレース運びにはすさまじいものがあった。前半から前へしっかりついていくと思いきや折り返したあたりから少しずつ遅れ始め、一次は第二集団に近いのではと思わせるシーンもあった。ただ、その後の盛り返しが本当に見事だった。2分50秒台前半で刻む速すぎる前を追わず、いったん3分台に落とし込むことで自分のペースを作って見せた。20キロ台で自分のペースを取り戻したからこそ、30キロ台になって落ちて来た井上を拾い、そして一気に突き放したのだろう。

 マラソンランナーにとって重要なのはいかに自分の身体と対話しながら走り続けることができるか、だと思う。今回のように高速のタイムを刻むペースメーカーがいると、自ずと速いタイムを刻んで走ることになる。ついていける場合はいい。だが、たとえばMGCの設楽がそうだったように、前半のハイペースは確実に30キロ台になってボディブローのように効いてくる。今日その影響をもろに受けたのが井上である。いったん大迫が離されたとき、このままズルズル行くとまずいが前が見える範囲でついていけるならば、後半の逆転はあるだろうと思っていた。

 コメントを見る限り大迫自身も折り返し付近でヤバイと思ったようだが、気持ちを切らさず冷静に残り20キロのレースを展開できたのが彼のいまの実力だったのだと思う。ペースダウンは一つのギャンブルである。前に追いつけるかどうかは、前が落ちてきてくれるはずだという仮説が成り立った時であって、仮説が成立しなければ離されるだけだった。

 さらに大迫の成長を感じたのは32キロでスパートして一気に井上を離したところだ。MGCではスパート後に服部勇馬に追いつかれた大迫が、その時よりもずっと手前でスパートをするのは、二つ目のギャンブルだと感じた。確かに井上を離すことはできるが、そのあと自分が落ちていく可能性はなかったか。もちろん、ないと確信があったからこそ、スパートをかけたのだろう。冷静に、したたかに。

 その大迫がフィニッシュ地点でガッツポーズをし、その後のインタビューで涙を流していた。クールな素顔の裏にある切実さ、必死さ、孤独。いろいろな感情がこみあげる、そして本番での飛躍を期待したくなる、素晴らしい一日だったと思う。




 午前中はずっとマラソンに張り付いていて(ちなみに夜勤明けだがまだ職場に残留していた)午後はイオンシネマ綾川で『劇場版 SHIROBAKO』を見ていた。テレビシリーズから4年後、つまりだいたい宮森あおいが社会人6年目になったころだなと思いながら、最近社会人6年目になった人間としてとても楽しく見ていた。

 変わらないもの、変わっていくもの。その両方を受け止められるようになった宮森あおいのたくましさが、とにかくまぶしくて、心揺さぶる2時間だった。



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 辻邦生『物語の海へ 辻邦生自作を語る』を読み終えた。いろいろポイントはあると思うが、自作を振り返りながら小説論や作家論を不意に始めるくだりがいくつかあり、強い関心を持った。



 自作については『安土往還記』、『背教者ユリアヌス』、『春の戴冠』といった代表作についてはかなりのボリュームを割いている。もともと雑誌に個別に掲載されたものを収録しているので内容やボリュームにはばらつきがあるが、それを加味しても辻の書いてきた小説についていま一度概観するためには良い本だと言えるだろう。

 『春の戴冠』については、もともとモネなどのフランス印象派画家に興味を持っていた辻がある日ボッティチェルリやルネサンスといったイタリア的なものへの関心を強めるところから自作を語り始めていく。

 私はモネについてもゴッホについても小説を書こうとは思わなかった。だが、ボッティチェルリについてはごく早い時期から、なんとなくその生涯を小説に書いてみたいと思っていた。(p.120)

 スタンダールの恋愛論などを惹きながらボッティチェルリの絵に、そしてボッティチェルリそのものに恋をしてしまったとの記述(p.123)にはそれほどインパクトがあったのだろう。

 また、戦後の混乱の中で生活を立て直したいという現実的な欲求の中で小説を書きたいという欲を封じて来たというエピソードも叙述している(p.154)が、こうした中で小説を書くという気持ちを封印している自分に向き合っていくのは、精神分析的な香りもさせてくれる。いずれにせよ、この時代の作家は時代そのものといかに向き合うのか、そしてその中で表現や美といったものは何かに向き合わざるをえなかったのかもしれない。

 美によって現実を包み、いつでも、どこでも、フィレンツェの最初の旅が味わわせてくれたような喚起を見出す可能性はないのか。もしあるとすればどういう条件が必要なのか――私の文学的主題が、次第にはっきり掴まれ、ようやく小説を書く手がかりが見出されてくるにつれて、現実のなかの美の探求から、次第に、美による現実の芸術化へと移っていったのはこうした理由があったからだ。(p.156)

 また、『安土往還記』をきっかけに「歴史小説と現代小説とのあいだに何らの差異を認めなかった」(p.223)と持論を語るくだりがあるなど、まだまだ辻邦生の小説の奥深さについての理解が足りないと感じた一冊となった。

 昨日になるが『さよならテレビ』を見に行ってきた。この前も少し触れたが以前の『やくざと憲法』が非常にクリティカルで野心的だったので(内容もアプローチも)今回はさすがにそこまでのインパクトはないだろうと思ったが、案の定期待を超えるものではなかった。期待を超えないまでならまあいいのだけれど、そもそも映像自体に面白さを感じるものではなかった。

 理由はいろいろあるだろうが、制作側が守りに入ったからだろうと感じる。いろいろインタビューを読むとタブーなしとか攻めているというワードが見受けられるし、確かにいままではそうだったのかもしれない。しかし今回は、そこまで攻めているとは思えなかった(あるとすれば身内びいきをせずにミスや弱みをさらけ出したこと)し、最初と最後のワンクッションがあることで映画にポジティブなイメージをもたらしていない。ワンクッション置くことであえてネガティブに描いてみたかったのか、とさえ思わせる。

 いずれにせよ、ドキュメンタリーというジャンルのある種の特殊性のようなものを再認識できたことや、いまのテレビ局、特に地方のテレビ局にジャーナリズムを求めるのは限界があることも感じた(NHKは例外)。とはいえこれも初めて知ったことではないし、やはり内容のインパクト、新規性や斬新さが乏しいのは少し寂しいと思えた。

 日本株は低調ながらアメリカの指標は相変わらず力強いなと感じる週明け。久しぶりに6000円を割ったバンナムを買い増したり、製薬や不動産銘柄を物色した。アメリカ株は個別株を整理してETF主体に組み替え中(ただの原点回帰)。
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 辻邦生(2019)『物語の海へ 辻邦生自作を語る』(中央公論新社)を半分ほどまで読む。




 雑誌などに掲載された、自作品についてのエッセイを集めたもの。すぐに読み終わるようなものもあれば、「安土往還記」や「春の戴冠」について書かれている部分は、それぞれが大作であり、かつ代表作であるだけに自作について語る筆が止まらない。「春の戴冠」についてのエッセイは学生時代から始まる。北杜夫はエッセイで学生時代から話を始める印象が多々あるが、辻邦生にもやはり様々語るべき過去があるようだ。

 ルネサンス期の画家の一人である当人はボッティチェリと表記されることが多いが、辻にならってサンドロ・ボッティチェルリと表記しよう。彼に惹かれた理由からエッセイが始まるので、この文章はとても長い。モネなどの印象派に惹かれるような自分だったが、なぜボッティチェルリに心を奪われ、そして彼を軸に据えた小説を書くようになったのか。

 どのように、そしてなぜボッティチェルリに惹かれたのか。そしてその美とはいかようなものなのか。自分が好きなものについて語る時に筆が止まらないまま進んでいくのは非常にオタク感もあって面白いなと思いながら読んだ。

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 今日はこのアルバムの発売日だったとツイッターで知った。




 ジャケットの二人が楽しそうなのがいい。ストリーミングや配信にはまだ来ていないので聞けてないが、そのうち聞けるだろうか。

 その代わりこのアルバムの存在を知ったので、今日だけで3周くらいした。




 いろいろ聞いたが、WA2の主題歌の一つである「幸せな記憶」がいい。声の雰囲気がどことなく上原れなに見た美しさと冷たさを持っているが、その奥深くには情感が確実にこもっている。生天目仁美が歌を歌うとこういう風になるんだ、というのはわりと驚きがあった。




 もう一つ音楽絡み。DATEKENさんの「Cardioid」が10周年だと知った。



 学生のころ、DATEKENさんの曲をよく聞いていた。非常に多彩なPで、「Ur-style」とか「*tear*」のような透明感のある楽曲を好んで聞いていたのを覚えている。「Cardioid」は珍しいバラ―ド調だが、どのボカロを使っても、どんな曲を作っても耳にとてもなじむ。ボッティチェルリではないが、独特の美しさの基準を持ったPだなと思う。
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 深夜になってから青ブタの最新作が出ていることを開いていたAmazonでたまたま知り、そのままキンドル版を注文した。






 主人公である梓川咲太と(メイン)ヒロインである桜島麻衣が大学に進学し、実質的に新章に突入したシリーズの初回であるが、なかなか今回も面白く、1時間と少しで一気に読んでしまった。おかげで床につくのはほぼ明け方になってしまったのでまた生活リズムが崩れてしまったことについては少し反省している。少し。

 作中に言及されている金沢八景近くの市立大学という手掛かりをもとに考えると咲太と麻衣が進学いたのはおそらく横浜市立大学である。昔会ったことのある市立大の人の姿を少しだけ思い浮かべつつ、高校生から大学生になることへの心境の変化を読んでいくといろいろなことが懐かしく感じる。クラスや制服がなくなること、人間関係も自由になること。その自由を使いこなすことが案外難しい。

 咲太が相変わらずスマホを持たない生活をしている設定なのはすごいなと思ってしまうが、彼にとってのスマホ、彼にとっての人間関係がどのようなものなのかはこれまでにも度々本人の口から述べられているからあえて触れる必要もないのだろう。大学生になっても、スマホを持たずに人間関係を築く様を読んでいくのは(いささかリアリティに欠けるかもしれないが)面白い。彼を遠ざける人はいるし、逆に彼に興味を持って近づく人もいる。このあたりの距離感の描写は、人間関係を自由に設定できる大学生活においてはリアルなものだ。

 大学生になったことで同級生の美藤美織といった新キャラは登場するが、本巻のメインヒロインは豊浜のどかも在籍するアイドルユニット、スイートバレットのメンバーである広川卯月である。彼女も同じ大学、同じ学科に在籍しているが、ある講義の開始前の彼女の挙動を見て、咲太が感じた違和感。そこから物語は一気に展開されていく。

 彼女の悩みを因数分解するならば、自分が本来やりたいと思っていることと、周囲が期待している自分でいたいことが分裂して同居していることだ。前者はユニットとしての目標ともダブる内容で、ありふれた掛け声かもしれないが武道館という具体的な目標を指している。また、演じることのない、天然とも指摘されるほどの素の自分でいたいということ。後者は、空気を読んでキャラを演じることによって周囲の評価を受けたいという欲求だ。

 ユニットの中で卯月だけが持っている才能が評価され、彼女個人の仕事(歌唱、テレビ出演等)増えていく一方で、ユニットとしても2000人の箱を埋められるようになり、Zeppダイバーシティがモデルと思われる場所でのライブも経験する。広川卯月として活動しながら、ユニットとしても活動することに少しずつ時間的、体力的、精神的な限界が迫っていく。これまでも桜島麻衣と母親との確執を書いていたが、今回も広川卯月や豊浜のどかを通して「ビジネスとしてのアイドル」を取り巻く現状や、いわゆる大人の事情が導入されていく。これらに彼女たちが個人として抗うのは、容易ではないだろう。

 ではどうするのか。一つは決断である。分裂した状態を続けることは難しい。ならば、何かを選択するしかないのは自然なことだ。ではどうやってそれをすればいいのか。卯月が選択するのはまず、自分の気持ちを隠さず表に出すこと。空気を読みすぎることが逆に自分を苦しめていることを知った彼女は、自分に素直になることで現状を打破しようとする。

「そういうのがわかるようになって、大学の友達が言ってる『 卯月 ってすごいね』の意味も理解したら……今までいろんな人に言われてきた、いろんな言葉が気になるようになっちゃった」  顔を上げた 卯月 は、どこか遠くを見ていた。目の前には 武道館 があるけれど、それを通り越してその先を見ている感じがする。いや、何も見ていないのかもしれない。 「私の頭の中に、みんながいて、みんなが色々言ってて……いちいち聞いてたらさ、何が自分なのか、わかんなくなってきた」
前掲書kindle版、位置No.3089


 この、「何が自分なのか、わかんなくなってきた」卯月に対して真摯に向き合う咲太はカウンセラーとしての才能に満ちているなと感じる。美人の友達が多いね、と何度か大学の友人に指摘される咲太であるが、同性だけでなく異性の友人が多いということはそれだけ幅広くラポールを築くことができるのだろう。それはおそらく、彼自身が妹の経験を通して人の痛みや傷に敏感であり、傷ついた人のそばにいることを自然に選択してきたからだろう。

 その意味では咲太がモテる理由が改めて分かるし、ああこのシリーズはルート分岐のないノベルゲームのようなものだなと感じた。1巻でメインヒロインの桜島麻衣と結ばれた以上、トゥルーエンド後のアフターストーリーがずっと続いているようなものだ。それ以外の展開は同人誌でも読めばいいのかもしれないし、新しいヒロインが次々と登場すればするほど麻衣との関係が深まっているのも憎めない。新しい巻が出るたびに関係の進展を読むのが楽しい。

 今日は起きた時に最初に見た情報がノムさんの訃報だったので、しばらく何も手がつかなかった。いや、手は動いて、情報を探していたのだけれど、頭の中がぐるぐるして何かをしたいという気になかなかならなかった。午後、テレビでカーリング日本選手権の映像を流しながら一時間ほど昼寝をして、ようやく少し気が楽になったかなと感じた。昼寝の間に見ていたのは変な夢だった気がするが。いろいろ思うことはあるけど今日は書かない。書かないが、いろいろな情報や写真を見ていて、去年の神宮球場でのヤクルトOB戦での一幕は本当に美しいものだったなと思う。




 昼寝のあとは図書館に行き、まず2月2日号の『日経ヴェリタス』をぱら読みした。エムスリーについてあちこちに触れられていて、5年で株価3倍だとか、無形資産(サービスのことだろう)の割合が高いので利益率が良い、などの話があった。

 エムスリーについては日経平均採用が株価急騰の最も重要なファクターだと思うが、高配当割安株の多くが割安なままでいる(恩恵があったのは一部の商社、金融、不動産銘柄くらいだろう)のに対し、大型ではないものも含めたグロース銘柄に資金が集まっているのはこの一年の流れだろう。他には13年ぶりの高値をつけたアドバンテストや、信越化学への言及があった。アドテストはエントリータイミングを失敗したのですでに売却したが、信越化学は最近の決算もまずまずで、しばらく保有していくつもり。

 そのあと原稿を書いたりしつつ、帰る時に新刊コーナーで見つけた本を二冊借りた(辻邦生と高山羽根子)。原稿の合間に読む時間を作りたい。







 夜は最近文庫化されたマーセル・セロー『極北』を少しずつ読み始めた。春樹が訳していて、単行本の時から少し気になっていたのでこの前購入した。まだ少ししか読んでないが、急いで読む本ではなさそうなので、ゆっくり読んでいけばいいと思う。これが終わってから図書館本に移りたい。

極北 (中公文庫)
マーセル・セロー
中央公論新社
2020-01-21



 最近まで読書をややサボっていたが気づいたら完全に読書日記になりつつある。読んだものについてすぐに書くのも、いいリハビリかもしれない。
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 乗代雄介の『最高の任務』を読み終えた。

最高の任務
乗代 雄介
講談社
2020-01-11



 表題作はすでに読んでいたので(これで芥川賞はさすがに厳しかったようだ)再読となる。もう一つ収められている「生き方の問題」は初読となった。「生き方の問題」は手紙、表題作は日記と、いずれも書くことを題材にしている。日記は本来誰かのためにあてたものではないが、本作の場合は日記を書くことになった叔母や叔母の死が必然的に介入してくるので、結果的に手紙に近い要素も持ち合わせていると言える。特に「生き方の問題」を読んだあとに表題作を読むと、そういう風に読まされるようにも思う。(あくまで個人的な読み方だが)

 どちらの小説も、たとえば「生き方の問題」であれば従姉の存在が、表題作であれば叔母の存在が、いずれも小説の中ではほとんど不在であるにも関わらず(叔母はすでに早逝している)存在感が極めて大きい。このようなタイプの小説は純文学では珍しくないので、芥川賞にまでたどりつくには何らかの形で変化球が必要だったのだろう。では表題作である「最高の任務」には変化球的要素が欠けているだろうか。そうではないと考える。

 確かに従姉との個人的なエロチシズムを書いたとも言える「生き方の問題」の方が変化球的であり、そしてある意味ではオーソドックスに文学的である。いとこ同士だと結婚できるというワードも自覚的に挿入されているように、最初は抑制的に書かれた手紙の文面が次第に性愛を表に出してくるのは分かりやすい。そもそも本編のほとんどすべてが手紙であるかのように書かれていること自体を読者はすぐに疑うことはできるが、その顛末が重要ではなく、手紙を書くことで従姉との関係について回想する主人公の「生き方の問題」の方が重要な短編である。

 やや雑な解釈だが、このように考えると表題作は「最高の任務」とは何かという問いに当たる。しかしこの小説の場合、そこはあまり重要ではない。重要なのは「追悼の方法」であろう。主人公である女子大生が自分自身の半生とどのように向き合うのか、叔母との関係をどのように振り返るのか。残された謎についてどのようにアプローチするのか。ある意味この小説も、性愛が強く絡むわけではないが「生き方の問題」についての問い直しでもある。そもそも大学の卒業式に親を呼ぶかどうかとか、かつて受けた公務員試験の面接をすっぽかしたとか、こういった一つ一つの行為の選択も、小さいけれども自分や家族を巻き込んだ「生き方の問題」には違いない。

 それと、表題作の主人公である私と叔母の関係に性愛は介在しないが、百合的な関係性を読みこむことくらいは許されてもいいだろう。

個人としては、誰にも見せない風景描写をあちこちで書いていれば感動の連続で、さしあたって幸福に生きていられる。でも、その感動を一大事だと受け入れてほしいただ一人の相手がいる時、こう言ってよければ恋をしている時、人はどのように文章を書けばいいんだろうか、書くしかないんだろうか。そんなことを、「生き方の問題」を書いている間は考え続けることができた。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69805



 月曜日は郷東の免許センターに更新に行った。今回から準中型免許という区分になったが、既得権でこうなっただけで乗れる車種は変わらない。昨日はただの月曜日だが人がまあまあいたので、日曜日に行っていたとしたらもっと人が多かったのだろう。こういう時に平日休みはありがたいと感じる。講習では香川県の事故の件数は年々減っているが全国的にも減っており、香川だけに着目すると全国平均を大きく上回っている(減ってはいるが平均的には悪い)とか、今年だけですでに8人が死亡しているとか(毎年冬の時期は死亡事故が増える気がする。ソースはないが)の話は聞いた。個人的に最近思うのは夜間の走行でライトの切り替えをしない人の多さである。細い道の対面通行だとまぶしすぎるのでさすがにどうにかしてほしい。暗い道ならともかく、市街地だと上向きじゃなくても街灯などで十分明るい。

 そのあと帰る道にあったバッティングセンターに行き、75球くらい振る。キャンプやトレードのニュースを見るたびに体がうずうずしていたのでちょうどよかった。100キロ、110キロ、125キロと少しずつ球速を上げたが久しぶりの割には対応できた。マックス135まであったので、次行く機会があれば振ってみたい。

 バットを振ったあとはカフェテリアボストンでコーヒーを飲みながら本を読む。今日はエチオピアのブラックレーベルを飲みながらエアーズ&ネイルバフの『ライフサイクル投資術』を読んでいた。

ライフサイクル投資術 お金に困らない人生をおくる
イアン・エアーズ
日本経済新聞出版社
2019-09-24



 この本の肝は端的に言うと
・若いうちこそレバレッジをかけるべき
・レバレッジは2倍までがよい(以下、レバレッジのかけ方について長く続く)
・時間分散の効用
・アセットは株式と債券だけで考える

 というあたりだろう。この三つのポイントをあれこれ書き綴っている本だと雑に理解した。若いうちこそレバレッジというのはよく聞く話だが、学生ローンなどの借金は早く返すべきという良心的なことも書かれている。人生という長い間においては老いてからのレバレッジや株式投資はリスクが大きい(リスクそのものというより、損失を回収できないという意味で)が、若いうちの損失はあとあと十分回収ができる。だからこそ損失を見込みながらレバレッジをかけよ、という話。

 その上でレバレッジ2倍でいいというのは、2倍程度で十分なリターンが確保できるからだろうし、時間分散することによって損失も小さくなっていく。最近たぱぞうさんが以下のような記事を書いていたが、同じ対象(たぱぞうさんの記事で言うならETF)に長く投資すればするほど、下値は切りあがり、暴落があったとしても当初購入した水準を下回る可能性は極めて小さい。



 以上を踏まえるとレバレッジをかけるならばインデックスの投資信託かETFがよい。前者で最近人気なのはグローバル三倍三分法ファンドだろう(REITは含むがほぼ株式と債券という商品)だし、後者ならばSPXLだろう。前者は債券を先物で抑えることリスクを抑え、後者は単体だとレバレッジ3倍のハイリスク商品だが、S&P500に連動するインデックス商品を合わせて買うことでレバレッジを自分で調整できる。

 去年の夏ごろからSPXLを買い始め、ほかのレバレッジ商品にも手を伸ばしているが、現状はまだレバレッジの比率はポートフォリオにおける2割にも満たない。ということでまだまだレバレッジを増やしても大丈夫だろうと思いながら、レバレッジだけに賭けることなく淡々と積み増していくのが適切だろうなと思う。とりあえず少額ながらレバレッジを買うことで資産の増減は激しくなったが、これも長く続けることで下値が切りあがり、緩やかな変動になるのだろう。なってほしい。まあ暴落しても死ぬわけではないのが、若いうちの資産運用の利点である。

 安克昌『心の傷を癒すということ』は半分ほど読んだ。もう少し時間をかけて、じっくりと読んでいきたい。
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