著者:桜庭一樹
出版:富士見ミステリー文庫(2005年)、角川文庫(2010年)
1月からアニメ化されているGOSICKシリーズの第4弾。富士見ミステリーで出たのは2005年なのでもう6年も前のことか。本書の面白さは1巻に通じる実際の歴史+偽史をくみあわせている要素(書きすぎるとネタバレになるかもしれないが)で、実際の歴史をとりいれることによってソヴュールという国自体を浮き彫りにしている。ヴィクトリカの正体にも焦点が当たるが、このあたりはまだまだこれからといったところかな。個人的にはアブリルももう少し書いて欲しいけど、というところか。
初夏の学園。時計塔で発見された謎の死体。そして、見つかったリヴァイアサンと名乗るもののメモワールと、錬金術にまつわるお話。これらが「知恵の泉」で再構成されるとき、歴史に隠された謎が見つかる・・・という全体の流れ。世界史とのつながりというのに加え、学園の歴史に関しても触れられている部分があって面白い。そういう意味では、あくまで偽史であるGOSICKがどういう世界であるのか、がだんだん分かってくる巻だ。
個人的にはアブリルをもう少し書いて欲しいと前に書いているが、アブリルらしさが発端となっているのは興味深い。彼女はどちらかと言えばストーリーそのものからは脇役で、あくまで久条になんらかの思いを寄せている少女、としての描写が大半だったが、本作では彼女のらしさが少しだけど生かされている点が少し救われた思いにもなる。いや、けど大半はまだまだ脇役なんだろうけど。あとセシル先生が調子に乗るのはいつものことですね。恋愛パートはまだまだおあずけ、と。
1巻が特にそうだったが、間奏として挟まれた偽史としてのエピソード、それと実際の世界史との混合がかなりすんなりはまっている感のある展開となっている。1巻はあくまで謎解きの要素として、だったが本作では謎解きの要素にはもちろんなっているが偽史と実際の世界史が統合して、前述したようにGOSICKの描かれる世界、つまり久条やヴィクトリカがどういう世界を生きているのかが伝わってくるようになっている。1巻はあくまで現実世界、つまり読者側の歴史の文脈の中で偽史が語られるという形であったが、本作では現実世界を起点として、GOSICKの世界史を描くことに成功していると言えるだろう。
その過程でヴィクトリカたちのいる学園とはなんぞや、である。いわゆる七不思議ではないが、学園に謎はつきものというオーソドックスな展開を巻き込みながら、学園そのものを描写しつつさらに謎に包まれているヴィクトリカとは何者なのか、についても少しだけ踏み込んでいるシーンがある。詳しく書かれているわけではないし、この巻の謎解きそのものには関係ないのだが、シリーズが進む中で少しずつヴィクトリカの仮面がはがされているような気はしないでもない。もっとも、「退屈だけが友人だ」という彼女らしさも当然生きていて、全ての謎が解明される必要は必ずしもないんだろうな、と感じるが。麗しの美女(というか美少女だが)に謎は必要条件である。
今までなんとなく読み流してきたのでシリーズのレビューを書くのは今回が初めてになるが、ちょっとずつミステリとしてもストーリーとしても面白くなっている印象を受けた。アニメも始まって毎回見ているが、同じようなことを感じる。だから今までは少し物足りないと思った人でも、読む価値はあるんじゃないかな、というのが素直な感想である。ヴィクトリカかわいいよヴィクトリカ・・・はさておき、彼女が自ら謎に挑むのは珍しいかもしれない、そういえば。
出版:富士見ミステリー文庫(2005年)、角川文庫(2010年)
1月からアニメ化されているGOSICKシリーズの第4弾。富士見ミステリーで出たのは2005年なのでもう6年も前のことか。本書の面白さは1巻に通じる実際の歴史+偽史をくみあわせている要素(書きすぎるとネタバレになるかもしれないが)で、実際の歴史をとりいれることによってソヴュールという国自体を浮き彫りにしている。ヴィクトリカの正体にも焦点が当たるが、このあたりはまだまだこれからといったところかな。個人的にはアブリルももう少し書いて欲しいけど、というところか。
初夏の学園。時計塔で発見された謎の死体。そして、見つかったリヴァイアサンと名乗るもののメモワールと、錬金術にまつわるお話。これらが「知恵の泉」で再構成されるとき、歴史に隠された謎が見つかる・・・という全体の流れ。世界史とのつながりというのに加え、学園の歴史に関しても触れられている部分があって面白い。そういう意味では、あくまで偽史であるGOSICKがどういう世界であるのか、がだんだん分かってくる巻だ。
個人的にはアブリルをもう少し書いて欲しいと前に書いているが、アブリルらしさが発端となっているのは興味深い。彼女はどちらかと言えばストーリーそのものからは脇役で、あくまで久条になんらかの思いを寄せている少女、としての描写が大半だったが、本作では彼女のらしさが少しだけど生かされている点が少し救われた思いにもなる。いや、けど大半はまだまだ脇役なんだろうけど。あとセシル先生が調子に乗るのはいつものことですね。恋愛パートはまだまだおあずけ、と。
1巻が特にそうだったが、間奏として挟まれた偽史としてのエピソード、それと実際の世界史との混合がかなりすんなりはまっている感のある展開となっている。1巻はあくまで謎解きの要素として、だったが本作では謎解きの要素にはもちろんなっているが偽史と実際の世界史が統合して、前述したようにGOSICKの描かれる世界、つまり久条やヴィクトリカがどういう世界を生きているのかが伝わってくるようになっている。1巻はあくまで現実世界、つまり読者側の歴史の文脈の中で偽史が語られるという形であったが、本作では現実世界を起点として、GOSICKの世界史を描くことに成功していると言えるだろう。
その過程でヴィクトリカたちのいる学園とはなんぞや、である。いわゆる七不思議ではないが、学園に謎はつきものというオーソドックスな展開を巻き込みながら、学園そのものを描写しつつさらに謎に包まれているヴィクトリカとは何者なのか、についても少しだけ踏み込んでいるシーンがある。詳しく書かれているわけではないし、この巻の謎解きそのものには関係ないのだが、シリーズが進む中で少しずつヴィクトリカの仮面がはがされているような気はしないでもない。もっとも、「退屈だけが友人だ」という彼女らしさも当然生きていて、全ての謎が解明される必要は必ずしもないんだろうな、と感じるが。麗しの美女(というか美少女だが)に謎は必要条件である。
今までなんとなく読み流してきたのでシリーズのレビューを書くのは今回が初めてになるが、ちょっとずつミステリとしてもストーリーとしても面白くなっている印象を受けた。アニメも始まって毎回見ているが、同じようなことを感じる。だから今までは少し物足りないと思った人でも、読む価値はあるんじゃないかな、というのが素直な感想である。ヴィクトリカかわいいよヴィクトリカ・・・はさておき、彼女が自ら謎に挑むのは珍しいかもしれない、そういえば。