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2022年01月01日

2021年コンテンツ回顧

 過去のエントリーを遡って確認してみたが6年ぶりらしい。前回2015年は社会人1年目の終わりでした(遠い目)
 いつも通り、今年リリースされたものからの選出なので旧作は含まず。こちらもいつも通り3つずつ選んでるけど順不同です。順不同のベスト3といったところでよろしくどうぞ。


●小説
1.乗代雄介『旅する練習』講談社
2.サニー・ルーニー『カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ』早川書房
3.カン・ファギル『別の人』

旅する練習
乗代雄介
講談社
2020-12-28


カンバセーションズ・ウィズ・フレンズ
サリー ルーニー
早川書房
2021-09-02


別の人
カン・ファギル
エトセトラブックス
2021-08-26



●ノンフィクション
1.郝景芳『人之彼岸』早川書房
2.鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』文藝春秋
3.ケイト・マーフィ『LISTEN』
次点:『現代思想2021年9月号:特集=<恋愛>の現在』、『ユリイカ2021年11月号:特集=綿矢りさ』





LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる
ケイト・マーフィ
日経BP
2021-08-05







●社会科学
1.マイケル・フリーデン『リベラリズムとは何か』ちくま学芸文庫
2.アン・ケース&アンガー・ディートン『絶望死のアメリカ』みすず書房
3.山口慎太郎『子育て支援の経済学』
次点:濱口桂一郎『ジョブ型雇用社会とは何か:正社員体制の矛盾と転機』岩波新書

リベラリズムとは何か (ちくま学芸文庫)
マイケル・フリーデン
筑摩書房
2021-03-12


絶望死のアメリカ――資本主義がめざすべきもの
アンガス・ディートン
みすず書房
2021-01-18


子育て支援の経済学
山口 慎太郎
日本評論社
2021-02-15





●映画
1.『ひらいて』
2.『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』
3.『KCIA 南山の部長たち』
次点:『劇場版 きのう何食べた?』、『ファーストラヴ』

●音楽(アルバム)
1.あたらよ『夜明け前』


2.Pastel*Palettes 「TITLE IDOL」


3.Hakubi「era」


次点:Awesome City Club「Grower」


次点:ユアネス「6 cases」
6 case
HIP LAND MUSIC, FRIENDSHIP.
2021-12-01



●音楽(楽曲)
1.Homecomings「Here」


2.フィロソフィーのダンス「テレフォニズム」


3.武藤彩未「SHOWER」


次点:にしな「ヘビースモーク」


 にしなはこのライブ映像がかなりよいので置いておく。



次点:ヨルシカ「春泥棒」


 ヨルシカも公式がライブ映像の一部をアップしている。配信で見ていたが、そういえばこのライブも今年だったな。



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2020年01月02日

2019年の映画記録

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2018年12月31日

2018年を振り返らない

 すげー適当なタイトルだけど、いまの率直な気持ちはこういうところです。要は、今年はこういう年だった、というのが無い。とりたてて。前の仕事を退職して、引っ越して、新しい仕事を始め、なんとかそれに食らいつくようにして過ごして、そして空いた時間に膨大に本を読んだ。つまるところ、それ以上に特筆すべきことは無い。我々の業界でよく使われる表現で言うと、特記事項なし、というやつ。

 読んだ小説とか、見た映画とか、そういうのは個別にまた振り返ろうと思うんだけど、自分自身の仕事とか、生活とか、人生とかを考えた時に、何が残されたのだろうかと考えると非常に難しい一年だった。とりあえず給料は上がったがそれは転職したからであって、いまの仕事で求められるスキルにはとうてい及ばない。アラサーではあるが精々一年目の立場でしかないということだ。

 まあそんなことは分かっているから別にかまわないのだけれど、それを抜きにしても人生の選択というのは難しいな、と思う。逆に言えば、それが人生なのだろうということを、自分の身を持って学んだということかもしれない。お金を払っての学びではなくて、いただきながらの学びだったので(仕事なので)ある意味贅沢である。


*******


 考え方を変えれば、自分にとってどのような仕事をするかは思った以上に重要だ、ということも身に染みて分かった一年ではあった。選び取ったものが最善とは限らない。他方で、選べなかったものが最悪でもない。自由恋愛がいいか見合い結婚がいいかみたいな話かもしれないい。どちらにせよ、後の結果は保証されない。皮肉なものである。

 そういう流れで2018年をちゃんと振り返ってしまうと、大いに反省して2019年に生かす、みたいなことになるので、あえて2018年は振り返らない。ただ、いま感じていることをこうやってブログに残しておく。こうすることで、2018年が結果的に自分にとってどういう一年だったかは、未来の自分が判断してくれる、はず。

 思えば去年の年末は神戸で映画『ハッピーアワー』を見ていて、人生のままならなさというものと、でもそれが人生だよなっていうことを寒空の中で感じたりもしていた。それが他人の人生であれ、自分の人生であれ、人生というものは誰にでも平等に訪れる。

 やるべきことは、生き延びていくしかないのかなというシンプルなところであって、2019年はもう少しマシな形で生き延びていきたいと思っているよ。だから今年は振り返らない。その分、これからもうちょっと、人生をいろいろ模索してみたい。このままで留まり続けて歳をとっていくのは嫌だ、ということだけはよくわかっている。はずなので。




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2017年05月03日

2016年の映画記録

 Evernoteに下書きだけしておいて投稿していなかったのでいまさらですが振り返ります。

劇場(17本)
・『傷物語 機戞イオンシネマ高松東
・『ザ・ウォーク』@イオンシネマ高松東
・『スティーブ・ジョブズ』@ホールソレイユ
・『同級生』@イオンシネマ宇多津
・『劇場版 響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ』@イオンシネマ綾川
・『ヤクザと憲法』@ホールソレイユ
・『ずっと前から好きでした 告白実行委員会』@シネリーブル神戸
・『ちはやふる 上の句/下の句』@イオンシネマ高松東
・『64 ロクヨン 後編』@イオンシネマ高松東
・『シン・ゴジラ』@バルト9
・『劇場版アイカツ! ねらわれた魔法のカード』@バルト9
・『劇場版 アイカツスターズ!』@バルト9
・『君の名は。』@イオンシネマ高松東
・『聲の形』@イオンシネマ綾川、ピカデリー新宿
・『この世界の片隅に』@イオンシネマ岡山
・『ポッピンQ』@イオンシネマ高松東

 劇場新作が17本で、そのうちアニメが10本なのは今年の象徴かな。『ちはやふる』は漫画原作だし、『シン・ゴジラ』は言わずもがななので、今年の傾向がよくわかる。というか全然洋画見てなかったのな、今年は。
 20行ったかなと思ったど後半は月1ペースになっているのでまあこんなものでしょう。『聲の形』だけは二回見に行ってます。
 『君の名は。』については『アニクリ』vol.5.5で、『聲の形』については『アニバタ』vol.16で長めの文章を書いています。

アニバタ Vol.16 [特集]聲の形
すぱんくtheはにー
アニメ・マンガ評論刊行会(販売:密林社)
2017-01-17



 それと、『ずっと前から好きでした』、『劇場版ユーフォ』、『同級生』、『劇場版アイカツスターズ!』、『劇場版アイカツ!』については『Fani通 2016年上半期』に短評を寄せているので、こちらも合わせてぜひ。
 Filmarksではどれも3点以上つけていて不満らしい不満は少なく、数はやや物足りないものの楽しめた一年。
 ランキングをつけるとするとこんな感じかな。映画館で見る映像作品としての体験のすごさ、みたいなのを重視した。

1.劇場版 響け!ユーフォニアム
2.聲の形
3.同級生
4.シン・ゴジラ
5.ザ・ウォーク
6.劇場版アイカツ!スターズ
7.この世界の片隅に
8.ヤクザと憲法
9.君の名は。
10.ポッピンQ

 もちろん映像体験だけでパッケージは成功しないし、それだけではつまらないのだけど、上位5作品はどれも物語のすごさと演技演出面でのインパクトがあってこそ、音や映像が一つのものとしてとてつもないところまで行ってしまったなという感じがある。
 ユーフォ劇場版は一期の再構成になるわけですが、ほとんど別のものとして提示されたようなインパクトは2時間にもう一度おさえこむ、という制約がプラスに働いた証拠。『聲の形』と『同級生』は映像もさることながら音がとてもよかった。
 いやまあ音楽ものであるユーフォも音は言うまでもないんだけど、この二作品の音へのこだわりは音が映像を引き立てるだけでなく、映像もまた音を引き立てるという相互作用がパーフェクトだったんだろうと思う。この点は『劇場版アイカツスターズ!』のクライマックスも同様だし、『君の名は。』は言うまでもなく。
 『ポッピンQ』を推す理由はいろいろあるんだけど、おジャ魔女どれみを通ってきたという個人的な体験が下支えしてくれるエモさに乗っかれたから。たぶんこれに乗っかれるかどうかで、要はかつて思春期だったころをフラッシュバックさせることができるかどうかが重要なのかなと思う。アニメっていうのはある程度の世代を狙い撃ちしたものでよかったはずで、この戦略自体は間違ってないと思う。
 であるがゆえになぜ、なぜ12月に公開してしまったのか、という疑問だけが重くのしかかるんだけれども。

自宅(7本)
・『舟を編む』(2013年)
・『Wの悲劇』(1984年)
・『たまこラブストーリー』(2014年)
・『劇場版 神戸在住』(2015年)
・『ハーモニー』(2015年)
・『マイブルーベリーナイツ』(アメリカ、2007年)
・『リップヴァンウィンクルの花嫁』(2016年)


 TSUTAYAにもよく行ったはずなのだが、アマゾンプライムビデオを積極的に使ってた気がする。プライムビデオがなければ『Wの悲劇』をちゃんと見る機会もなかなかなかった。
 今年は職場近くのTSUTAYAが少し離れたところに移転するのでさらにTSUTAYAから遠ざかりそうな気がしている。
 配信もまだまだ使いこなせていないので、来年はもっと積極的に使っていきたい。ちなみに今年はNetflixにも加入した。のんきり映画ばっかりは見てられないだろうが、元はとれるように見ていくつもり。

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2016年01月02日

2015年のアルバム15枚

 明けましたが、2015年のベストアルバムを選びました。10枚にしようと思ったけど絞りきれなかったし2015年だしということで15枚にしてみた。勢いで20枚くらいでもよかったけど、まあそれはまたいずれ。
 去年、一昨年とやってきた企画なので過去のエントリーもはっておきます。
2014年のアルバム10枚+2曲
2013年のアルバム10枚

 それでは、今年の15枚いってみます。番号はふってあるけど順不同。ジャンルは思ったよりも偏った感。

1.坂本真綾『FOLLOW ME UP』
FOLLOW ME UP(初回限定盤)(DVD付)
坂本真綾
FlyingDog
2015-09-30


 以前全曲レビューをやったのでくわしくはそちらを。
 リリースしてから数ヵ月が経つがいまだにヘビロテしている。国際フォーラムでのカウントダウンライブ組にうらやましさを感じつつ、16日の高松公演を楽しみに。ってかまあやが高松に来るとはさすがに思わなかった。当日が楽しみ。

2.南條愛乃『東京 1/3650』
南條愛乃/ 東京 1/3650(初回限定盤CD+Blu-ray×3)
南條愛乃
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-07-22


 グリザイアシリーズの楽曲になった「あなたの愛した世界」、「黄昏のスタアライト」、「きみを探しに」を筆頭に南條の-icec力強い声が響き渡るとても耳に優しいアルバム。
「スタアライト」はfSでコンビを組むsatが手掛けているためエレクトロ色全開のアッパーなナンバーだが、「きみを探しに」で歌い上げる切ない恋模様の様子など、幅広く自由に歌えるいまの南條を象徴している。
 タイアップ以外だとTr.2の「believe in myself」やTr.9「Recording.」のようなまるで南條自身のことを歌っているようなナンバーがいい。こういう曲はグループやユニットではなく、ソロで歌うからこそ意味を持つ。

3.牧野由依『タビノオト』
タビノオト(初回限定盤)(DVD付)
牧野由依
インペリアルレコード
2015-10-07


 待望と言って大げさにならない4thアルバム。歌手活動10周年、前作『ホログラィー』から4年かけてのアルバムなのでほんとうに待ってましたという感じ。
 Tr.1の「ワールドツアー」のノリにはちょっと驚かされつつも、Tr.3の「囁きは"Crescendo"」を聴くとやっぱこの人すごい・・・と思わせられる。音大に通っていたとはいえそれはあくまでピアノのためにだとは思うけれど、牧野由依のようにあまりにもナチュラルに歌える声優をいまのところ知らない。彼女の場合、ナチュラルさがそのままかわいいという声の質を持っていて、花澤香菜のようなかわいすぎるとしか言えない声とはまた別の「かわいい歌声」を持った希有な人だなということを再確認した。あと、ピアノとこんなにきれいに混ざる声っていうのもなかなかないんじゃないか。
 『ARIA』シリーズの主題歌を手がけていたころから天使のような歌声を持つ人だとは思っていたけれど10年経ったいまもなお、ならこれからも楽しみでしょうがない。音楽活動のほうでは紆余曲折のあった10年だったが、次の10年もしっかり見守っていこう。

4.戸松遥『Harukarisk*Land』
Harukarisk*Land(初回生産限定盤)
戸松 遥
ミュージックレイン
2015-03-18


 アルバムタイトルからも分かるように、自分の色をつめこんだかのような一色。戸松といえば高身長を生かした快活さであったり、とびっきりの明るさであるわけだけど、とにかく元気、元気すぎる一枚。その中だとタイアップになったTr.2「courage」のやや硬派な感じは逆に目立つ。逆にTr.8「PACHI PACHI PARTY」のほうはアルバムの中でも完全になじんでいる。
 前作『Sunny Side Story』ももちろんいいアルバムではあったんだけど、今作のほうがより楽しさが伝わってきてクオリティどうこうよりもそっちに好感を持てる。Tr.3「ラブ ローラー コースター」には「自分らしくあれ 下手にバランスとらないでいいのさ」という歌詞があるが、戸松自身がこのアルバムでその詞の中身を十分体現できていると思う。
 ライブ、行きたさがある。

5.花澤香菜『Blue Avenue』
Blue Avenue
花澤香菜
アニプレックス
2015-04-22


 もはや歌う声優というよりは一人のシンガーとしての活動が定着してしまったかのように思う3rdアルバム。
 シングルから収録されている「ほほえみモード」、「こきゅうとす」、「君がいなくちゃだめなんだ」の三曲がやはり完成度の高さからすると目立つ。いろんな作り手が花澤の声を試し、あるいは遊んだりして(「こきゅうとす」を手がけたやくしまるえつこからはそんな匂いがぷんぷんする)きた結果がこれ、という感じ。
 全体としてはいままでの流れ通り渋谷系リバイバルという色はあるものの、Tr.1の「I LOVE NEW DAY」なんかを聴いているとありふれたいまどきのシティポップを花澤なりに歌っている、というようなイメージに近い。ありふれているというのは悪い意味ではなくて、もう歌手活動一年目のような新鮮さはいい意味でないのだから、過度なキャッチーさはいらない。
 それよりも自由で、ちょっとふわふわとした、花澤香菜の持っている声が素直に使われているところに大きな満足を覚える。

6.Faint*Star『PL4E』
PL4E [CD+DVD盤]
Faint★Star
Faint Star Tokyo
2015-07-07


 一年ほどしか追いかけられなかったとはいえトマパイのファンだった人間としてはあのサウンドが帰ってくるかもしれないと期待した一枚。先行したシングル2枚から8曲を収録しているので、アルバムのみの新曲はさほど多いわけではないが、一枚通して聴くってのはやはり何とも言えない快感なのだと感じる。
 たとえばTr.5「スライ」、Tr.6「フィルム! フィルム! フィルム!」からのTr.7「今夜はRIDE ON TIME」までの一連の流れを味わえる感覚。力強さとかわいらしさを兼ね備えているのは当然として、洗練されたメロディが彼女たちを鮮やかに彩る。Tr.2「Boyfriend A.S.A.P.」のようなキャッチーなメロはむしろイレギュラーなんじゃないかと錯覚してしまうほど、HINAとYURIAが二人して歌っていることをもっとちゃんとみつめてあげないといけない。(それがなによりこのユニットの真骨頂であるはずだ)
 「今夜はRIDE ON TIME」に関しては明らかに歌詞が狙いすぎなんだけど(どこかのインタビューでHINAが「大丈夫なの?」って驚いてた気がする)まあけどこの二人ならしゃーないよねってなる。たぶん。
 ひところのももクロやベビメタなんかもそうだけど、いまのアイドル業界がポストかわいいをほしがっているのだとするならばこのユニットはもっと上まで突き進んでほしい。

7.アップアップガールズ(仮)『サードアルバム(仮)』
サードアルバム (仮)(初回限定盤)
アップアップガールズ(仮)
T-Palette Records
2015-03-17


 去年出た『セカンドアルバム(仮)』の感想に「総じて最高だった」って書いてたけどこのアルバムもすさまじかった。
 47都道府県ツアーの公演に参加したからかもしれないが、こんなにすごかったっけって思うほどのダンスダンスダンス。そしてもちろん声を上げて歌いまくるし、観客を煽りまくる。「虹色モザイク」をライブで聞いたときの多幸感は捨てがたいけど、リード曲の「Beautiful Dreamer」の力強さも彼女たちの強い魅力だし、かわいさとかっこよさと力強さをぐるぐるにミックスして自分たちだけのアイドル像を作り上げようとしているのはほんとうに素晴らしいと思う。
 願わくばそのハードなスタイルに身体が追い付かないことのないようにと思ってしまうが、それは少しお節介かもしれない。

8.Negicco『Rice&Snow』
Rice&Snow
Negicco
T-Palette Records
2015-01-20


 昨年リリースした「光のシュプール」というシングルに虜になってしまい、そんなに深い思い入れやリスナー体験があったわけではないけどアルバムを購入してしまった。そしてまったく後悔しなかったのでたいへん満足している。
 若いと言っては語弊があるかもしれないがキャリア10年以上を数えるだけあって、若さやかわいらしさを売りにするアイドルたちとは違って多様なトラックメーカーの提供した楽曲にどうやって乗るか、その質が重要なのだと思う。
 たとえば「トリプル! WONDERLAND」のような明るくキャッチーなアンセムソングと歌いやすいメロディと音程とは言えない「BLUE, GREEN, RED AND GONE」のいずれもを質を落とさずに歌うのは容易ではない。
 大人っぽいアイドルとは単に大人のセクシーさのようなものを売りにするんではなくって、ちゃんとキャリアを重ねてきたことを示せばいい。Negiccoを聴いて満足かつ安心できるポイントがあるとすればそれだろう。でなければここまでファンだけでなく楽曲提供者から愛されるユニットにはならない。

9.Tokyo 7th Sisters『H-A-J-I-M-A-L-B-U-M-!!』
H-A-J-I-M-A-L-B-U-M-!!
Tokyo 7th シスターズ
DONUTS
2015-05-20


 アニソン、声優業界では今年一番の衝撃。ナナシスはこれだけアイドルものが続いたあとだとだいぶ後発の企画になるわけだけど、2010年代以降のトレンドを象徴するトラックメーカーを集めたこのアルバムはまさしく未来を生きているよう。
 ゲームは全然やっていないけどこの作曲陣なら信頼できると思いアルバムを購入し、Tr.1の「H-A-J-I-M-A-R-I-U-T-A-!!」とTr.2の「Cocoro Magical」を聞くだけであっというまに虜になってしまった。文字通り始まり、スタートラインにたった心境を歌う歌に「どんなに遠くたって春舞う綿毛のように」という目に浮かぶようなきれいな歌詞がつらなっていく。十分に期待感を高めたあとの「Cocoro Magical」のキュートな歌詞にめちゃくちゃときめく。
 最初のうちはこの二曲をひたすらリピートしてたけど全体的にかなりサウンドの幅があって、時には等身大の女の子であったり背伸びをしたい女の子だったりといったポップな歌詞を若手の声優陣が歌にこめている。
 全体的には元気で明るく、かわいい曲が目立つなかでWITCH NUMBER 4というユニットの歌う「SAKURA」はひときわ目立つ。この曲だけがとびっきりに切なくて、メロディアス。
 あとまあ、手掛けている人たちの名前や経歴を見れば瞭然だが、どの曲もとにかく踊れる。なので1stライブ行った勢がうらやましくてたまらなかった。
 本当に、ナナシスはいいぞ。

10.STAR☆ANIS『SHINING STAR*』


 『アイカツ!』二期の集大成となるアルバム。今回も二枚組。一期より二期が、特にドリアカ勢が好きな勢としては「ハッピィクレッシェンド」を幾度となく再生したか分からない。
 それと、映画を見たあとに「SHINING LINE」を聴くとアイカツ!という作品がつくってきた物語の魅力をこれほどきれいに鮮やかに凝縮できるんだと感動してしまう、いまだに。
 アニメのシーンがまざまざとよみがえる、至福の二枚組。

11.AIKATSU☆STARS『JOYFUL DANCE』
Joyful Dance
AIKATSU☆STARS!
ランティス
2015-06-24


 こっちは大空あかり世代の三期を彩る最初のアルバム。歌い手も交代して、まさに新時代の始まりという感じ。
 アルバムのタイトルと絡めるなら新世代の中でもニューウェーブである黒沢凛のソロ曲、Tr.3「MY SHOW TIME!」だろう。たとえばあまふわなでしこのTr.6「恋するみたいなキャラメリゼ」と比べると曲も歌詞も驚くほど違うけれど、いずれもキャラクターの個性に寄り添う形で生まれている曲で、魅力的。キャラソンというよりは持ち歌として聴くほうがいい。
 
12.米津玄師『Bremen』
Bremen (初回限定盤)(CD+DVD) (映像盤)
米津玄師
Universal Music =music=
2015-10-07


 ハチとしてボカロ界隈をとどろかせていたころの活動はある程度追っかけていて、同人時代のアルバムもしっかり持っているわけだけど、メジャーに行ってからはさほど追いかけてなかった。 
 ただあるときラジオを流していたら彼がゲストとして表れてトークをしておりアルバムのリードトラックである「アンビリーバーズ」を聞いた瞬間なんだこれは、と思ってしまった。生身の彼はボーマス会場で何度か見たことがあったし(もうずいぶん前のことではあるが)彼が自分の言葉で歌っているとして違和感が全然なくて、渇いている声で情熱的に歌い上げる様にバンプの藤原を重ねなくもない。
 ボカロPをしているころから変わらないことがあるとすれば(というといくらか失礼かもしれないが)一つ一つの曲にはっきりとした物語を持ったタイプのミュージシャンであるということ。もうひとつ、私性を歌うシンガーソングライターというよりは、ソロではあるがバンド志向の音楽を作っていること。適切な説明ではないかもしれないが、歌詞だけじゃなくてサウンド面でも彼の音楽はギタ一本ではきっと物足りなさを感じる。
 「アンビリーバーズ」を聞いて思ったその感覚は、Tr.4の「Flowerwall」でもう一度強化される。彼は僕「たち」や僕と「君」といった形での複数形の物語を歌い上げるし、それがいまも昔もしっくりくる。
 
13.Chouchou『ALEXANDRITE』
ALEXANDRITE (BICOLOR EDITION)
Chouchou
Ulula Records
2015-04-25


 インスト曲も含んではいるがボーカルメインの楽曲を中心に構成されたアルバムとしてはかなり久しぶり、かつ2014年の『piano01 oto』に続くフィジカル盤のリリースとなった。クオリティの高い美麗なアートワークはブックレットの作り込みにも及んでいて、素晴らしさしかない。
 Tr.1の「fjord」でjulietの声がほとんどまったく変わってないことに安心するし(一定のキャリアはあるはずだがいろいろと謎の多い人だ)julietの可憐な声を支えるピアノサウンドの秀逸さも相まって期待感が高まる。
 なんと言っても言及すべきはTr.12の「Innocence」だろう。今回収録された新曲で、かつMVも作られている楽曲だが、Chouchouにしてはキャッチーで耳に残るサウンドで、わりかし王道寄りの楽曲でもある。
 ただ、7分25秒の長さの中にこめられているのは王道なんてものではなくって、最後に持ってくるしかない物語性のこめられた一曲になっている。ハッピーエンドとバッドエンドの中間というか、何かの終わりにゆるやかに向かっていくような心情が(MVと合わせて見るとなおさらに)とても美しい。


14.仮谷せいら『Nayameru Gendai Girl』
Nayameru Gendai Girl
仮谷せいら
PUMP
2015-12-16

 
 12月にリリースされた2ndEP。1stよりもより私性がポップに表れた表題曲はとても楽しい。1stのころはまだややぎこちなかった歌い方ものびのびと明るく、どこか吹っ切れたように歌っているところはとても魅力。
 Tr.5の「夜が終わるまで」はいままであまりなかったようなテイストの曲で、この曲があることで仮谷せいらの表現の幅を見ることができた。ただかわいく明るく歌えるだけの若い女性シンガーならたぶんたくさんいるだろうけど、自分で詞も曲も作り、あえて背伸びをせずにしっとりと自分たちのことを歌い上げる様には何とも言えない魅力がある。一種のノスタルジーかもしれない。

15.keeno『before light』
before light
keeno
ワーナーミュージック・ジャパン
2015-09-16


 タイトルチューンの「before light」と先行してニコニコで公開されたTr.1「morning haze」だけでもおなかいっぱいなのに、持ち味のkeenoサウンドがたくさん聴けて満足しかない。
 同人時代に出した「at dusk」というミニアルバムを聴いている身からすると1stアルバムはベストアルバム的な印象があったが、2ndの今作は一つのアルバムを作りにきたんだというメッセージがあちらこちらにあって、聴いているだけでとても楽しい。
 早朝のもやもやした感情から始まる「morning haze」から始まり、Tr.2「decide」、Tr.3「yours」を経由する流れが白眉。「before light」までの流れにはいくらか浮き沈みがあるものの、最初の3曲でkeenoの試みが十分理解できるし、最後まで安心してディープなサウンドにどっぷり浸ることができる。耳が幸せとはこういうことを指すのだろう。

 以上、今年は全部で15枚でした! まだ挙げたいけどもうつかれたのでこのへんで!

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2015年12月30日

2015年の映画記録

 ねりまさんがブログでまとめていたのを見てさすがだと感動してしまい、数は少ないがちゃんと整理しておくのは大事かなと思ったのでやってみる。
 記録としては今年からFilmarksを使いはじめた。以前はvideometerだったがこれは読書メーター同様にamazonからデータを引っ張ってくるので、公開されたばかりの映画の記録にはあまり向いていない。そもそもビデオの記録なので映画以外も多くてごちゃごちゃしてるし。
 Filmarksは映画のデータベースとしても使えるし、オサレなUIも悪くない。あんまり知り合いで使ってる人がいないのでフォローフォロワーの数は大したことないので、みんなもっと登録しようぜ、的なレコメンドをこめつつ。

 以下、今年のログ。ブログでレビューしたものにはリンクを貼った。
 アニメ映画のなかからだと『百日紅』と『アイカツ! ミュージックアワード』は同人誌『Fani通2015上半期』のなかで短いコメントを書いた。明日まで開催のコミックマーケット89で頒布されたあと、おそらくCOMIC ZINで販売が開始されるはず。


映画館

・劇場版 PSYCO-PASS(2015年、日本)
・幕が上がる(2015年、日本)
ニンフォマニアック(2013年、五ヶ国合作)
・幸せのありか(2013年、ポーランド)
・百日紅(2015年、日本)
海街diary(2015年、日本)
・ザ・トライブ(2014年、ウクライナ)
・きっと、星のせいじゃない(2014年、アメリカ)
・Mommy(2014年、カナダ)
セッション(2014年、アメリカ)
・バケモノの子(2015年、日本)
・アイカツ! ミュージックアワード(2015年、日本)
・心が叫びたがってるんだ(2015年、日本)
追憶と、踊りながら(2014年、イギリス)

 というわけで、常守朱がかっこよすぎる劇場版サイコパスから始まり、香川レインボー映画祭で見たゲイ映画で終わる一年でした。14本。
 二つだけ。まず「幸せのありか」はいましている仕事とも絡められるかなと思って見てみたが、素朴にドラマとして見応えがあるということと、主役の演技に最後まで圧倒された映画だった。一つのヒューマンドラマとして見るべきだろう。家の中での所在のなさとつかのまの幸福、障害者として施設に入ってからの生きづらさと生き甲斐、そしてその後。どういう形であれ、人生は続いていく。
 「きっと、星のせいじゃない」はいわば難病ものだが、「(500)日のサマー」の脚本を書いたコンビが脚本を書いているだけあって、会話のノリが非常に巧みにできている。「サマー」よりも年齢層の低い主役たちの、文字通りの青春ものの王道を突き進む展開ともマッチしている。結末はどんでん返しととらえるべきか、できすぎた終わり方ととらえるべきかは人によるだろうが、生き残ったものの強さが発揮されるワンシーンはとても痛快で気持ちいい。

自宅
・幕が上がる その前に(2015年、日本)
・地獄の黙示録(1979年、アメリカ)
・チョコレートドーナツ(2012年、アメリカ)
・君がいなくちゃだめなんだ(2015年、日本)
・劇場版タイムスクープハンター 安土城最後の一日(2013年、日本)
・ウォールフラワー(2012年、アメリカ)
・舟を編む(2013年、日本)

 6本と思ったより少ないが、Amazon Fire Stickで見てみたい映画をガンガンウォッチリストに入れたので来年はもう少し増えそう。
 いま挙げたなかだと『ウォールフラワー』と『舟を編む』はfire stickのプライムビデオで見た。

 もう一つ、せっかくなので「高松のソレイユという映画館でやっていたのに見逃したリスト」も。ソレイユは高校時代に時かけを見たり『潜水服は蝶の夢を見る』を見たりととてもお世話になった&そしていまもなっている高松のミニシアター。
 年が明けたら1月に「ヒトラー暗殺、13分の誤算」が、3月に「恋人たち」が上映開始されるらしいのでこっちは絶対みたい。

・パレードへようこそ
・サンドラの週末
・野火
・わたしに会うまでの1600キロ
・ピッチ・パーフェクト
・ピッチ・パーフェクト2
・ふたつの名前を持つ少年

 2016年もいろいろ見ていきたいです。最初に見るのは『クリード』の予定。

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2015年12月28日

2015年コンテンツ回顧

●小説(国内)
1.米澤穂信『王とサーカス』
2.滝口悠生『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』
3.柴崎友香『パノララ』
次点:渡航『やはり俺の青春ラブコメは間違っている』11巻(ガガガ文庫)

 2014年に『満願』で各種ミステリベストを制した米澤が『さよなら妖精』の10年後を書いた小説で再びランキングを制するという結果に。『満願』はまだ読んでないのでなんとも言えないけれど、『王とサーカス』はある意味では『さよなら妖精』の正統な続編だし、しかしまったく別物の小説に仕上げているというぜいたくさが味わえる。
 レビューで長く書いたので短くまとめるが、『さよなら妖精』が青春の屈折だとするならば『王とサーカス』はプロフェッショナルとしての屈折であろうし、守屋がマーヤに接近しつつおれたところと、太刀洗がネパールで出会う人々に対するアプローチの困難さは類似するものが多い。しかしほとんどなにもできなかった守屋と異なり、10年後の太刀洗には様々な武器がある。そこがプロフェッショナルの挫折と格闘を書いたこの小説の大きな醍醐味となっているし、ミステリーとしても非常に面白く、読者を引き込ませてくれる。舞台設定にはかなり難儀しただろうが、日本とは違う異国であることを基盤とした物語に大いに魅了された。
 滝口は今年三島賞と芥川賞にノミネートされ、年明けの芥川賞にも「死んでいない者」がノミネートされるなど勢いにのっている。ジミヘンとロードノベルと3.11後の東北といったやや詰め込みがちなこの中編小説にも、滝口の持ち味である時間と空間のトリックが自在に発揮されていて読むのが楽しい。同じく時間を操作した小説である『パノララ』を書き上げた柴崎にも、新しい魅力を存分に感じることができた。
 次点はこちらもこのラノ三連覇という記録を打ち立てた俺ガイルをセレクト。みんなの関係性がちょっとずつ変わっていく。学年的にまだ高校生活は続いていくわけだが、別れの日は近いかもしれない。雪解けの春はすぐそこにある、のか。

王とサーカス
米澤 穂信
東京創元社
2015-07-29




パノララ
柴崎 友香
講談社
2015-01-15




●小説(海外)
1.ミッチェル『風と共に去りぬ』(新潮文庫、全5巻)
2.ボラーニョ『アメリカ大陸のナチ文学』
3.ラモーナ・オースベル『生まれるためのガイドブック』
次点:ケン・リュウ『紙の動物園』

 ミッチェルの有名作を鴻巣さんが新訳で、ということで読んでみたが思った以上に楽しく読めた。細かいところでどこが現代的な訳か、というところまでは意識しなかったし、戦乱に巻き込まれるなかでの生活という時代特有の要素は大きいわけだけど、めげずに自立していくかつてはおてんばだった少女と、様々な誘惑をちらつかせるレット・バトラーという対比は作劇としても分かりやすくて魅力的。
 ボラーニョは白水社から訳出が続いていて読むのが追い付かないけど、架空の文学者辞典を一個の物語に仕立てる手腕は驚くし、そして面白い。あの超大作『2666』にもつながる人物があるとのことだが、まだあの長すぎる小説を再読する勇気はまだない。ほんとうにぽっかりと時間ができたときにまたむさぼるように楽しみたい。
 オースベルのこの本も白水社から出ているので海外小説は白水社ばかり読んでいたかもしない。あと新潮社。オースベル自身はまだ若い女性の作家だが、生まれるまでと生まれてから死ぬまでの人生のライフステージを細かく切り取って一つのオムニバス小説として仕上げたこの本は本国でもなかなかに評判らしい。いくつかの英語の記事を読んでみたが、一つは若い女性らしいビビッドさ(妊娠や出産をめぐる視点など)が小説にいかされてるのは間違いないということ。それだけでは単に女性らしい、という以外の要素にもふんだんに想像力を働かせて物語を書く力がある、つまり普遍的な小説かとしての能力を有しているからこそ評価されているのだろうと思う。訳されているのはまだ本書だけのようだが、新訳を楽しみにする海外作家がまた一人増えたのはとても嬉しい。
 ケン・リュウは初めて読んだが、個人的にSFの短編ですぐれたものを書ける書き手は高く評価したい。SFというジャンルはアイデアをつめこめば長くなってしまいがちなので、シンプルに短くまとめられる才能は貴重だ。本の内容については、表題作と「もののあはれ」が素晴らしかった。

風と共に去りぬ 第1巻 (新潮文庫)
マーガレット ミッチェル
新潮社
2015-03-28








●評論、学術、ノンフィクション
1.渡辺直己『小説技術論』
2.筒井淳也『仕事と家族』
3.マルティ・パラルナウ『ペップ・グアルディオラ』
次点:魚川祐司『だから仏教は面白い!』

 なおみーの本は保坂和志以降の現代小説の一トレンドをおさえた「移人称小説論」が読めるのでオススメ。
 筒井淳也はシノドスなどで文章を読んだことはあったがまとまった本を読んだのはこれが初めて。最近良作が続く中公新書ならではの堅実さとクオリティの高さ(もはや新書ではない感じ)を体現した一冊。仕事と家族がいかに両立されえないかを様々なパターンを提示して分析した上で各国の政策や取り組みを見ながら未来図を考えるという意義のある一冊。突破口はさほど大きくないが、それでもなにかをしなければ仕事と家族の関係はどちらもが疲弊して終わるだけだ。
 パラルナウのペップ本は密着したからこそ書ける充実の一冊で、訳も読みやすく本の価格を考えると十分元をとれた一冊。ペップがバイエルンを率いるのは今季で一区切りかもしれないが、だからこそいまのうちに読むべき価値のある本。
 ニー仏さんは単著を二冊出すという年だったが、配信を書籍化したこの本がとても読みやすく分かりやすく、そして面白いというなかなか完璧な本だった。『ゼロポイント』のほうはまだ積んでるので読まねば。

小説技術論
渡部 直己
河出書房新社
2015-06-23








●マンガ
1.アキリ『ストレッチ』
2.東村アキコ『かくかくしかじか』
3.冬目景『マホロミ』
次点:武者サブ『冴えない彼女の育てかた 恋するメトロノーム』、志村貴子『淡島百景』

 『ストレッチ』に泣き、『かくかくしかじか』に泣き、『マホロミ』が4巻というコンパクトなサイズで美しく完結したことに感動した一年だった。
 『ストレッチ』は非常に実用的で、電子書籍で落としたページをめくりながらベッドの上で身体を動かしまくりました。東京のどこかにありそうな日常を書きながらも実はポスト3.11を生きる二人でもあるということが物語の端々に挿入される。そうした重要な過去が現在に与える影響は実はさほど大きくないけれど、時おり矢のように突き刺さってくる。そのときに一人なら耐えられないかもしれない、でも二人なら、という希望的な日常が、様々なゆるふわなエピソードを心理的に補強してくれるメタメッセージになっている。最後の別れの瞬間までこうした構造は大きく変わらないし、ミステリーじゃないからいくつかの謎が解かれることもない。ただ、日常は変化とともにあって、変化する日々をこれからも生きていくしかない。でもそうした変化も、この二人ならきっと大丈夫なんじゃないか。別れのシーンにはいくらかの悲しさがあるが、不思議な安心感がある。その感情が、とてもいとおしい。
 『かくかくしかじか』については描くことを書くことに置き換えたら非常にズキズキくるストーリーで、自分はなぜ書こうとしているのかであるとか、書くことを続けられるのかとかをいやでも考えてしまった。マンガのようにドラマチックなエピソードがさほどあるわけではないけど、東村アキコの出身大学の卒展を以前金沢に行ったときに見たことを思い出したし、彼女が宮崎出身で地元宮崎の風景がマンガの中に描かれているのを見ると、宮崎出身の重要な友人を思い出さずにはいられなくて、いくらかセンチメンタルにもなったりした。
 冬目景は結果的に『マホロミ』と『イエスタデイズをうたって』をほぼ同時に完結させることに成功した。しなこ先生派としてはやや納得がいかないまでも、ある意味物語のスタート地点に戻ったというか、同じところを違う視点で眺めるような、きれいな幕切れだったのかもしれない。『マホロミ』はもう少し続けることもできただろうけど、これはこれで建築の歴史をめぐる青春模様としてのコンセプトが一貫していてよかった。人と人の間にあるものを書くのが基本的にこの作家はうまいわけだけど、そこに時間や歴史といった次元が加わると物語にぐっと奥行きが広がっていくところがとても好きだった。
 次点の恋メトはまあ詩羽先輩好きとしては極上のスピンオフなので。志村貴子は例年に見ないほど精力的に本を出した(画集も出している)一年だったが、どこかの学校の寮生活を連作形式で書いた『淡島百景』が『青い花』のような学校と少女たちの関係性や生きざまをめぐる物語をアップデートした感じでとても好み。









淡島百景 1
志村貴子
太田出版
2015-06-19


●アニメ
1.SHIROBAKO
2.響け!ユーフォニアム
3.グリザイアの楽園
次点:THE IDOLM@STER シンデレラガールズ

 アニメの個別評価については冬コミ新刊の『Fani通 2015上半期』で詳しく書いたのでできればぜひそちらを、と思いつつ、そのなかで触れられなかった『SHIROBAKO』について少しだけ。
 このアニメを一言でまとめるのは難しいけれど、P.A.WORKSがポスト青春期の物語として提示したい一つのイメージが宮森あおいとその仲間たちに投影されていたのだろうと思う。お仕事ものとしては『花咲くいろは』に次ぐ第二弾という触れ込みだが、花いろは高校生たちの青春群像劇という要素が途中まではかなり強かった。(最終的には女三代記として朝ドラ的な展開に回帰していく)
 その点、『SHIROBAKO』は学生ではないキャラクターたちのお仕事奮闘記であり、地方からの上京物語でもあるし、高校から社会人へといった形で引き継がれる関係性をベースにしたいままでのP.A.WORKSにはなかったような青春ものでもある。
 で、社会人のお話を書きながら同時に青春ものとしても仕立てるにはドラマが欠かせないわけだけど、そのドラマを書くための舞台がアニメ制作業界だったのは制作陣がもっとも知りうることのできる環境という点ではリアルな物語に仕立てあげやすい。
 結果的にはリアルとフィクションが混在したようなアニメになっているわけだけど、それはアニメという手段(実写ではないということ)を選んだ強みをいかした結果でもあるはず。そして至るところにアニメに対する情熱や愛が満ちあふれている。そこがなにより『SHIROBAKO』の強みになっただろうと思う。
  
【Amazon.co.jp限定】SHIROBAKO第1巻~第4巻セットBlu-ray(オリジナル描き下ろし収納BOX付)
木村珠莉
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント
2015-12-21


響け!ユーフォニアム 1 [Blu-ray]
黒沢ともよ
ポニーキャニオン
2015-06-17


グリザイアの楽園 第1巻 (渡辺明夫描き下ろし収納BOX付き初回限定版) [Blu-ray]
櫻井孝宏
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2015-08-26




●映画
1.Mommy
2.心が叫びたがってるんだ
3.海街Diary
次点:セッション

 キャラクターの躍動と、筋書きの読めなさ。『わたしはロランス』とは違う意味で、でもにたようなことを『Mommy』を見て感じた。うまくまとめることができなかったのでレビューは書いてないけど、ちゃんと映画館で目撃してよかった、と思えた映画には仕上がっている。
 ここさけは期待値以上に楽しめたし、海街も原作の質感を損なわない形で一本の映画として魅力的な作品になっていた。ただでさえ綾瀬はるかや長澤まさみが同じ屋根の下で、という画としての面白さがあるわけだけど、それ以上に彼女たちがしっかりキャラクターになっていた、そのことがとても楽しく、そして味わい深く見ることができた大きな要因だと思う。

Mommy/マミー 完全数量限定豪華版 [Blu-ray]
アンヌ・ドルヴァル
ポニーキャニオン
2015-12-02




海街diary Blu-rayスペシャル・エディション
綾瀬はるか
ポニーキャニオン
2015-12-16




●展覧会
1.風景画の誕生展@Bunkamuraミュージアム
2.マグリット展@京都市美術館
3.春画展@永青文庫
次点:チューリッヒ美術館展@神戸市博物館

 展示されているものだけの素晴らしさを語るならマグリット展や春画展のような大規模かつ貴重な展覧会を挙げるべきだろうけど、風景画の誕生展が面白かったのは絵画を一つ一つ見ながら歴史に裏付けされた明確なストーリーを味わえるところだ。教養主義的でもあるなあとは思ったものの、最近美術史に関する本をいくつか読んだタイミングとしてはもっとも面白く見ることのできた展示がこれだった。


 以上、こんな感じ。小説は今年もかなり読んだが新しいものよりも古いものを多く読んだ気がする。その上で海外小説の割合を意識的に増やしていったので、来年もうまいことバランス取りながら読んでいきたい。英米だけじゃなくてドイツ、フランス、ロシア、ラテアメあたりも。
 音楽だけは去年と一昨年同様、2015年のアルバム10枚的な感じで別記事にしてまとめようかと思っているので、次回。

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2014年12月31日

2014年のアルバム10枚+2曲

 今年もいっぱい聴いてきたのでやってみます。順不同で。去年の10枚はこちらから。

 
小松未可子『e'tuis』
e'tuis(初回限定盤)(DVD付)
小松未可子
キングレコード
2014-05-14



 小松未可子は去年も選んだので2年連続。ただ、この二枚目のアルバム(『Cosmix EXPO』を含めると3枚目)がなかなかすごい。初っぱなの「Sky Message」からガンガン飛ばしてきながら「エメラルドの丘の上で」のような曲で歌手としてのみかこしのイメージをさらに広げる。とにかく自由で、自由だ。



古川本舗『Hail against the barn door』

Hail against the barn door
古川本舗
SPACE SHOWER MUSIC
2014-10-22



 古川さんは同人でのボカロ活動に区切りをつけた2011年移行毎年一枚ずつアルバムを出してきているので、これでもう4枚目(いまのレーベルからは3枚目)。アルバムタイトルは「Rage Against the Machine」のもじりかな。
 1stと2ndがボカロ時代の名残を残すものだとするならば3rdと今回の4thは完全にイメージを一新している。キクチリョウタをボーカルとして継続採用しているあたりは3rdから4thは延長にあると思うが、同時にちびたを採用しているあたりはボカロ時代のタッグを思い出してなつかしい。そして古川さん自身もボーカルに再び加わっているのだが、いい意味での開き直りというか、何か吹っ切れたような快感を感じる。ライブ活動を増やしたからか、あるいは単純に4枚目にしてたどりついたのがここだったのか。あるいは、バンドマンだったかつての自分を復活させられたのかもしれない。




アップアップガールズ(仮)『セカンドアルバム』

セカンドアルバム(仮) (2CD / 初回限定盤)
アップアップガールズ(仮)
T-Palette Records
2014-02-19



 総じて最高だった。ほとんどシングルで出てるんだけど、通して聴くと最高感しかないって感じ。タワレコ限定の20分のDJmixも素晴らしい。アプガは現場に行くと本当に熱くて楽しいんだろうけど、現場に行かなくても楽しすぎるのは素晴らしいな、って思う。



V.A.『宇多田ヒカルのうた 13組の音楽家による13の解釈について』



 12月にこんなの放り込まれたらいやとは言えない。
 全体的に意外だったのは井上陽水「SAKURAドロップス」をはじめとした男性ボーカル曲がすさまじくクオリティが高いこと。名前を挙げれば岡村靖幸、キリンジ、大橋トリオなどが続くので妥当と言えば妥当なんだけど、実際に曲を聴いてみるとうまいぐあいに彼らが自分の曲にしてみせているのが素晴らしい。
 逆にAIやラブサイケデリコは、自分の曲にはなっているんだが原曲のイメージと比較しちゃってどうしてもハマれなかった。ただ、あゆの「Movin' on without you」はしみじみしながら聴けるし、椎名林檎やBONNIE PINKはさすがだった。後者はtofubeatsらしいアレンジの妙ももちろんあってだけど。



nano.RIPE『涙の落ちる速度』
涙の落ちる速度【初回限定盤A】
nano.RIPE
ランティス
2014-01-08



 これに関しては3枚組になっているので3枚まとめての評価という形になるんだけど、しばらく聴いていなかったnano.RIPEというバンドを再評価せざるをえないという意味では個人的に重要だった。
 「影踏み」が2013年に公開した花いろ劇場版の主題歌になっていて、そこで久しぶりにnano.RIPEを聴いた上でのこのアルバム(年明けのリリースだったので、2013年までの活動のまとめということになる)を聴いた。1stにあったインディー感をきれいに脱却し、彼らのバンドサウンドを高らかに奏でていることがよく分かった。



Chouchou『piano01 oto』
piano01 oto (The Collector's Edition)
Chouchou
Ulula Records
2014-08-16



 Chouchouのピアノインストアルバム。内容もさておき、リミテッドエディションの中身が非常に豪華。静かに聴き入るべし。以前から大好きな「Sign」はほんと何度聴いても心に染みる。




やなぎなぎ『ポリオミノ』
ポリオミノ (初回限定盤 2CD+Blu-ray)
やなぎなぎ
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン
2014-12-10



 端的に方向性をぐいっと変えてきたなというのが第一印象。古川さんのような変化、つまり同人時代の電子音楽的な個性よりも人に見せるため、聴かせるためのサウンドを重視していきたい意思が見える。前にも「ユキトキ」や「ラテラリティ」にその萌芽があったとは言え、だ。
 これはこれで非常に面白いし、アルバムの統一感は前回よりも上かも。一度彼女を見たことはあるが、いまのやなぎなぎのライブを(映像ではなく生で)見たらどう感じるんだろうか。 




津田朱里、小木曽雪菜(米澤円)、上原れな『WHITE ALBUM2 VOCAL COLLECTION』
TVアニメ WHITE ALBUM2 VOCAL COLLECTION
津田朱里,小木曽雪菜(米澤円) 上原れな
F.I.X.RECORDS
2014-03-26



 まずジャケットがずるい。これは最強のヒロイン感ありすぎでしょう。
 声優としての米澤円もけいおん!くらいでしか認識してなかったが、こんなにかわいらしくかつ力強いボーカルで歌える人だとは思わなかった。「届かない恋」という曲にある切なさと悲しさと、それでも残る喜びのようなものを、彼女は丁寧に歌い上げている。
 他だとSPEEDの「WHITE LOVE」カバー(津田朱里と米澤のデュエットで歌っている)がけっこうハマっていて好き。

9nine『MAGI9 PLAYLAND』



 2ndの『CUE』が到達点だと去年のブログで書いたけど、完全にEDMにこだわって作られたコンセプトアルバムのようなこの3rdは2ndとはまったく違う持ち味を見せる。
 『CUE』のほうがおそらく幅広く受け入れられると思うが、いまの9nineをじっくり聴いて欲しいという意図と、リードトラックの「Re:」にあるようなチャレンジなのだろうという気がしている。「できるよ、さあ、始めよう」って言う確信を持って。




Tokyo Audio Waffle『Travel Sound Sandwiches』


 最後の一枚どうしようかなーと悩みつつ、同人が一枚もなかったのでこれにした。
 Tokyo Audio Waffleというサークルのサウンドは初めて今年聴いたけど、ジャケットのオサレ感も含めてソッコー惚れた。いやー同人音楽ってほんと底が知れない、おそろしく面白い! と再確認するには十分。
 ほぼ毎回参加しているボーカルの砂糖子さんの文化系女子感(なんだそれは)がすごくいい。名前のようにとろけるような甘いボーカルである。


 そんなわけで今年はこんな感じでしたー。来年もいっぱい音楽聴いていこう。
 あ、あとアルバム単位じゃなくて曲単位だと今年はハナヤマタOPの「花ハ踊レヤいろはにほ」とSHIROBAKOの1クール目EDの「Animetic Love Letter」が最高でした。前者はMVも含めて今年のアニソンのなかではもっとも好きです。アニメは1話しかまだ見てないけど!

チーム”ハナヤマタ”「花ハ踊レヤいろはにほ」
花ハ踊レヤいろはにほ(CD+DVD)
チーム・ハナヤマタ
エイベックス・ピクチャーズ株式会社(Music)
2014-08-27




宮森あおい(木村珠莉)&安原絵麻(佳村はるか)&坂木しずか(千菅春香)「Animetic Love Letter」




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2014年01月13日

2013年のアルバム10枚

 2013年のアルバムから10選のようなものをやりたいと思ったので。
 こうやって振り返ると偏りは明らかにあるのだが(おそらく知らない人はまったく知らない名前ばかりだろうし)その偏りの中にも幅というものがあって、という聴き方をしているような気がする。偏りの中でさらに偏りすぎないようにとは普段から思っているので、その思うままが出たという感じかな。

 そんな感じで、発表順に並べました。数が多いのでコメントは極力多すぎないように。クロスフェードがあるものは並べたのと、ようつべなどで一部のトラックを公式に視聴できる場合はその動画を貼り付けました。
 それでは10枚一気に。(内訳:メジャー7枚、インディー・同人3枚)

小松未可子『THEE FUTURES』
THEE Futures
小松未可子
キングレコード
2013-02-13



 みかこしの多様性と、歌手としての小松未可子の確実な成長を感じられる記念すべきファーストアルバム。
 今年はこのあとシングル2枚を出していて、このアルバムで区切りをつけつつさらに新らしいことをやろうとしているのが分かる。すでにその萌芽はいくらでもあると思うし(たとえば動画を貼り付けた「Baby DayZ」だとか)安心して期待できる人がまた一人増えたのはとても嬉しい。




花澤香菜『claire』
claire
花澤香菜
アニプレックス
2013-02-20



 みかこしと違い、花澤香菜はここが一つの到達点。ファーストアルバムではあるがその意味合いは違う。違うが、花澤香菜は花澤香菜なのであって、彼女らしさがあふれていることには変わりない。
 北川勝利とacane madderによるTr.2の「Just The Way You Are」はたぶん彼女にしかできないテン年代の渋谷系なのだろう(ちょっと矛盾してるけど)。Tr.6、宮川弾の「スタッカート」にしろ、Tr.12、古川本舗の「眠るサカナ」にしろ楽曲提供者の色は強く残る中でどれだけ花澤香菜らしさを主張できるかが試されているように感じた。
 その試みは、基本的にはうまくいってると思う。たとえ好き嫌いが分かれたとしても、好きか嫌いかを判断できる色を出せることは重要だ。

9nine『CUE』



 9nineはセカンドアルバムにして一気に成長の階段を駆け上がっている気がする。到達点はまだ見当たらない。
 


坂本真綾『シンガーソングライター』
シンガーソングライター【初回限定盤】
坂本真綾
フライングドッグ
2013-03-27



 坂本真綾を記憶するための一枚だと思っている。というのは、10曲入りのこのアルバムを評価するにはどうしても坂本真綾が作詞作曲を全て手がけた、というバイアスを避けられなくて、そのバイアスの上であえて選んだということを強調しようかなと。通常のオリジナルアルバムだと非常に多彩な作曲陣が並ぶが、さすがに一人ですべてを作ると地味になりがちだ。でもそれを肯定的に評価してもそう悪いことではないだろうと思う。聴くに値しないわけはないし、先ほどのバイアス混みで言えばとても面白かった。
 Tr.8「誓い 〜ssw edition〜」がそれでもなかなか珠玉の出来で、悲しさのまじった激しさを表した原曲を、反対方向へ優しく転換させた。彼女の中にあった変化なのか、単なる時間の経過なのかは分からない。でもいまの彼女はこうして受け止めているんだと主張していることが、この曲を聴くとよく分かる。
 歌詞が面白かったのはTr.6の「なりたい」で、ああ真綾っぽいなーとにやける。




tofubeats『LOST DECADE』
lost decade
tofubeats
ワーナーミュージック・ジャパン
2013-04-24



 マルチネレコーズなどで曲を発表していたtofubeatsが大学卒業を機にメジャーデビューして出した一枚。ベストアルバムのような位置づけ、かな。
 マルチネ出身らしく、youtubeやsoundcloudで全曲フルサイズで試聴できる。それでもCD版はたとえばタワレコ各店舗で売れ行き好調だったようで、いまの時代のミュージシャンとファンとの関係だなと実感した。





QUADROPHENIA『epitaph』
epitaph
QUADROPHENIA
2013-05-06



 サークル「QUADROPHENIA」4枚目のアルバム。完成度を全く落とすことなく常に新しいことをやろうとしているのが素晴らしい。唯一のボカロ曲Tr.4「祝祭と流転」はこのサークルならではの音を出す宮沢もよよ作。さすがです。ゲストとして今回はWonderlandicaさんが参加。





やなぎなぎ『エウアル』
エウアル (初回限定盤)(CD+DVD)
やなぎなぎ
ジェネオン・ユニバーサル
2013-07-03



 デビュー1年半なので待望といっていいファーストアルバム。初回版でついてくるDisc2のカバー曲集に「カゼノトオリミチ」が収録されていて歓喜したのを思い出す。もちろんDisc1も非常によかったし、凝られたブックレットも面白かった。





多田葵『ホップミュージック』
ホップミュージック
多田葵
BounDEE by SSNW
2013-10-09



 多田葵はAB!のEDで初めて知ったが、それ以前からずっとシンガーとしての活動をやっていたようで、オリジナルアルバムも何枚かリリースしている。去年秋リリースのこの新作は渋谷系テイストが中心の一枚で、ポップではなくホップと名付けられているアルバムタイトルからも遊び心がうかがえて面白い。
 聞き込む度に味が分かる。



ryuryu『Vibgyor』


 びにゅPとしては約3年ぶりのアルバム。前作以降はニコニコ動画へのアップロードのペースを落としていたが、時間をかけて作ったと本人が語るこのアルバムは珠玉の一枚。おなじみ岬さんのアートワークは楽曲の世界観に寄り添ったもので、前回までになかった「色をつけること」をかなり意識しているように見えた。
 初期のキラキラしたミクノポップ路線からは少しずつ遠ざかっていた印象があったが、時間をかけてこういう形でアルバムを作ってきたことは非常に嬉しかった。sasakure.UKさんとは異なるベクトルで現代の寓話世界を作る一人(のボカロP)だろうと思う。



toivoa『KUKKA』

KUKKA
toivoa
BounDEE by SSNW
2013-11-20



 年末に発見したドリーミーなロックバンドのファーストアルバム。2012年に一枚シングルをリリースしているようだが、最初のアルバムでここまで仕上げてくるとは。
 二人の女性ボーカルの癒やしに似た歌声と、その空気を包み込むような優しいサウンド。ピアノが響き、ギターが鳴り、ドラムが叩かれる。バンドの編成としてはシンプルでも、表現の多様性は広がるばかりだ。








 10枚紹介してきたけど、たとえば声優のCDが3枚入ってたり、ボカロは意外と少なかったり、ああいまこういうのを好んで(あるいはやや遠ざけて)聴いてるんだなーというのが分かって面白かった。
 キャリアで言うとファーストアルバムが多い(みかこし、花澤、やなぎなぎ、toivoa、tofubeats)のは新しい人たちの音楽を常に聴こうという現れだと思うので悪くないかなと思います。年を経て追い続けられるかどうかは分からないけど、一瞬のきらめきが多々含まれているファーストアルバムをリアルタイムで経験できたってことは後々意義深いのかなあと思ったりしたり。
 2014年の音楽も楽しみです。ジャンルをあれこれ横断しながらいろんなものを聴いていきたい。

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2012年12月18日

2012年コンテンツ回顧

 例によって年の瀬恒例の。
 そういえば週末に文フリの記事がはてぶやらRTやらを複数いただいたようで、139PVという過疎ブログにしては年に一度もない3ケタをいただきました。どうもありがとうございました。当ブログを初めて閲覧した人も多いと思いますが、今後もひいきにしていただけると助かります(ぺこり

 それでは本題へ。小説→アニメ→映画→音楽の順。

【小説】
柴崎友香「わたしがいなかった街で」(『新潮』4月号掲載、のち「ここで、ここで」を併収して単行本化)
松家仁之「火山のふもとで」(『新潮』7月号掲載、のち単行本化
綿矢りさ「ひらいて」(『新潮』5月号掲載、のち単行本化
次点:岡本学「架空列車」(第55回群像新人文学賞受賞。『群像』6月号掲載、のち単行本化)

わたしがいなかった街で
わたしがいなかった街で


火山のふもとで
火山のふもとで


ひらいて
ひらいて


架空列車
架空列車


 新潮にやたら固まってしまったが、群像と新潮のなかからいくつか読むということを意識して続けた一年だったのでこうなりました。この2冊なら大学図書館で読めるしね。
 ただ、衝撃の発表でもあった円城、伊藤の『屍者の帝国』は買ったまま大事にしてあってまだ読んでません。年越ししながら読むかという心づもり。あと、現在進行形で読んでいる長谷敏史『BEATLESS』もなかなか評判のいい大作なので、こういうぬけもれはあります。
 他に売れた本のなかで気になってるというほどのものはあまりないかなあ。このミス2013も発売されてたのでぱらぱらとめくったが、もう昔みたくミステリーだからというだけで食指が伸びなくなったのを感じる。なんでかしらん。SFは今も昔も大好物なんだけどね。

 閑話休題。柴崎はいくつか読んでいたのだが今年発表したこの長編が圧倒的でした。オチが弱いんじゃね、という感じはするけれども「いま、ここ」を相対化することから始まり、「いま、ここ」と物理的、時間的に遠いどこかとの距離を見据え、縮まらないと分かりつつ想像力を膨らませようというその試みは2012年のいま必要なんじゃないかな、とも感じる。まあ、こういう見方で小説を評価していいのかどうか問題はあるかもしれないが。詳しくは投稿したエントリーをごらんになってください。
 松家さんの処女長編は、処女作とは思えないほど丁寧で重みのある文章で書かれおり、派手さはないが濃密な人間ドラマがひとつの空間と夏の浅間山を舞台に展開されていく。うまく言葉にはできないが、読書しててよかったと思わせてくれる一冊。文字を、言葉を味わいながら人と人とのドラマを読むことは、最上の楽しみだなあと。
 綿矢は同時期に『群像』にも「人生ゲーム」という短編を発表したり、『かわいそうだね?』で大江健三郎賞を受賞したり、かなり充実した一年だったんだろうと思う。どこかで大江との対談も読んだが、大江が綿矢にこめる期待感をひしひしと感じた。

【アニメ】
氷菓
坂道のアポロン
モーレツ宇宙海賊
次点:夏色キセキ、夏雪ランデブー





 1クール平均10前後は見ているのでアニメは現在放映中のものも含めて40本近くは見たかな。一時期は一日を終えて深夜アニメを見るのが生きるモチベーションだったりもしたので貴重な栄養分だった。これからもたぶんそう。今クール放映中のPSYCO-PASSがどう終わるのかによって個人的ランキングが変わってくるが今クールは個人的に小粒な印象。あーけど中二病見てないのでなんとも言えないか。
 夏色キセキ以外は原作ものということで、2011年に比べるとオリジナルアニメの勢いは若干そがれたかなという気はする。もちろんいくつか見てないのもあるのでそれ以上はなんとも言えないが。シンフォギアも途中まで見たが録画の失敗を繰り返したので完走はしてない。

 スロースタートの印象が強かったが愚者のエンドロール編以降じわじわと盛り上げ、クドリャフカ編でピークに達した後、一話完結のものをいくつか続けて一年間の物語をしめくくるという非常に全体の構成がきれいだった。スロースタートなのは原作ゆえの影響もあるのでまあ仕方ないし、ちゃんと見続けることで十分楽しませてくれた。ちょっとというか、ここまで千反田えるってあざとかったっけ?とは思ったものもw まあ原作でも『遠回りする雛』ではなかなかあざとさを発揮していた記憶はあったが。
 ベストエピソードはチョコレート事件の21話。最終回の22話もきれいだったが、伊原摩耶華好きとしてはこのエピソードは至高。原作にない演出もいくつかあったり、ゲーセンでやってるゲームがバーチャロンそのままだったりと、1話のなかでここまでつめこむか、という回でもあった。さすが京アニ。

 シンフォギアにしろ「TARI TARI」にしろ(「夏色キセキ」も部分的にそうか)アニメと音楽の関係が今年は目立っていたかも知れない。そのなかでも坂道のアポロンは音楽の面では丁寧に作られていた印象。時代考証的な問題はあるようだし、まああるかなという気はするが(あんまり50年前の空気感じゃなかったしなあ)最後まで楽しかったです。最後のほうが駆け足になるのはノイタミナなのでしゃーない。
 モーレツパイレーツは最初の方はほとんど見てなかったけど、ニコ生の一挙放送で見て追いつき、そのあとテレビで最後まで楽しく見た。小松未可子という、今後楽しみな声優かつ歌い手と出会えたというだけで個人的には収穫が大きかったが、役割を自覚し、だんだん役割が体に合ってくる、という過程を2クール使ってちゃんと描けていたのでお話としてもいいまとまりになっていったのがこのアニメだった。

 次点のなかからは夏ものの2本。夏色キセキもじわじわと個人的な評価を上げていった作品で、最初は日常系かと思ったら日常系のテイストを生かしつつ、ジュブナイル的なSFの要素もあるという、しっかりとしたストーリーの軸があったからこそうまくいったアニメ。
 夏雪ランデブーは六花ちゃんかわいいよ六花ちゃんでFA。大原さやかは至高。

【映画】
(邦画)
ヒミズ
次点:桐島、部活やめるってよ





 映画館で見たのが多くないのでこんなところかな。ヒミズは染谷くんと二階堂ふみがとても生き生きしていてよかったと思います。「かぞくのくに」を結局見に行けなかったのが大きな後悔。ちゃんと時間作れというお話ですね。
 桐島はいろんな意味で話題の尽きない(語り甲斐があるという意味で)作品なので、人とあれやこれや言いながら見ると楽しそうだなーと思います。

(洋画)
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い [Extremey Loud and Incredibly Close]





 これも主演の男の子のオスカーくんがすばらしかった。別にショタコンでもなんでもないがこれはよかった。映画館とニコ生の有料放送で2回見た。

(ノンフィクション)
相馬看花 第一部
次点:フタバから遠く離れて







 「相馬看花」はエントリーに書いたので省略。
 「フタバから遠く離れて」はある人が薦めていたこともあって見たのだが、非常に淡々と出来事を見つめている。もちろん、出てくる人、主に双葉町からの避難民の方の語りはあるし、井戸川町長へのインタビューなども試みてはいるが、時間の経過が残酷なまでに感じられるのは現状がよくなっていっているようには思えないからだろう。
 ではやるせないのか、と言えばそうでもない。町長も住民の多くも、戻ろうとしているし戻りたがっている。確固たる地元というものを持つ人たちにとって、ずっと生きてきた地元を離れ、ある日突然どこかで生きていくしかないという現実をつきつけられたのはそれ自体かなり酷なことだ。


(アニメ)
伏 鉄砲娘の捕物帖
ヱヴァQ
ねらわれた学園
次点:おおかみこどもの雨と雪

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 下半期に上映されたものが固まったが、春に上映されたものでいくつか見てないのもあるので(BLOOD-Cとか図書館戦争とか)こんな感じ。あと見ていなくて気になってるのだとゴティックメードかな。年内に見る時間があるか。
 この3作はいずれもブログエントリーに起こしているので詳しくはそちらを。まどマギ劇場版をあえて外したのは総集編という重みが強いので、単体として評価するならこっちかな。
 おおかみこどもは後半の展開がすさまじかった。12年間を2時間に圧縮しているなかでどこまでを表現するのかと思ったけど、前半部の説明的な展開とは違って後半部分はかなりドラマチックな展開。あの広く壮大な絵の中で見せる手腕はさすがだなあと感じた。
 おおかみこどもとまどマギとヱヴァが重なったこともあったし、見ていなかったものも含め劇場アニメの収穫は多い一年だったように思う。テレビアニメが2011年に比べると勢いがやや弱かった印象がある(個性の強い作品は多かったと思うが)し、来年も年明け以降STAR DRIVER、花咲くいろはなどなどが予定されていることもあり、劇場でのアニメを見る機会は来年も多くありそうだ。ああ、今年の最終週には青エクも上映が始まるんだったか。
 
【音楽】
(メジャー)
宇多田ヒカル「桜流し」
古川本舗『ガールフレンド・フロム・キョウト』
Tomato 'n Pine『POP SONG 4U』
次点:中島愛『Be with you』、livetune feat.初音ミク「Tell Your World」

 耳が幸せという基準で選んだらこの3つになりました。桜流しはもう100回以上聞いてるんじゃないかと思われます。古川さんの2ndもエントリーに書いたけどほんとにすごかった・・・
 トマパイのPSP4Uがでたときには、まさか解散するとは思ってなかったので最初で最後の3人でのアルバムになったんだなあと思うと宝物かもしれないな。それは言い過ぎか。





PS4U(初回生産限定盤)(DVD付)
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Be With You(初回限定盤)(DVD付)
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(同人)
QUADROPHENIA『slow』
fhana『New World Line』
沙野カモメ『夏の星空 E.P.』
次点:acane madder『ライトガール』

 エレクトロニカを好きになってよかったと再確認させてくれたアルバムをチョイス。宮沢もよよさん、村上くるるさんといっサークル所属のメンバーにLeggysaladくんがリミックスで参加していたりわっふーである。いまはとらのあなの通販で手に入れられるようです。


 そのLeggysaladくんも所属しているfhanaの『New World Line』もすばらしかった。歌っているボーカリストが好みすぎてもうね、という。「kotonoha breakdown」もかなりの回数聞き込んだなあ。monoral in the stereoというバンドのボーカルをつとめていたtowanaさんが2曲歌っているのもよくて、モノステのライブは2年前に1回見たことがあるがこのときよりも格段に歌が上達しているのが分かる。独特なはかなさと甘美さを持った声そのままに、迫力もついてきたなという感じ。amazonでも流通しているので手に入れられます。
New World Line
New World Line



 今年も精力的に製作をしていた沙野カモメさんですが、一番お気に入りはこの4曲入りのE.P.でした。冬に出した『science(non)fiction』もすごく好きなアルバム。カモメさんの曲は公式サイトで視聴できたり購入できたりダウンロードできるのでぜひぜひ。


 週末のボーマス23でようやくげっとした茜さんの2ndアルバムを次点として滑り込みで。コンセプトも素敵だし、茶ころさんと夏さんのアートワークも素敵だし、茜さんの音楽に出会えてよかったと再確認。


 というわけで、こんなところかな。今年は読んだ小説の数は減ったが見た映画とアニメの数はたぶん増えてるはず。来年はあまりゆとりのない一年になりそうだけど、まあ合間合間にいろんなコンテンツに触れていたいなと思います。というか触れないとひからびる体質だろうしなあ。

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burningday at 23:26|PermalinkComments(0)TrackBack(0)