6月の読書メーター
読んだ本の数:10冊(今年通算48〜57冊)
読んだページ数:2464ページ
ナイス数:18ナイス

生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)生者の行進 (ハヤカワ文庫JA)
ハヤカワが売り出そうとしているひとりの作家らしく、書き下ろしで出ていた新刊であるが手に取ったときの印象よりも骨太で楽しく読書できた。キャラの力に頼りつつストーリーを動かしているという印象があるが、主要なキャラ4人相互の関係性や周辺の脇役への目配りも丁寧に成されていて人の書き方に関しては充実していた。それぞれに罪や負い目を抱えながら、自分自身の半生と向きあい、目の前の相手に本気でぶつかるあたりは青春ものの醍醐味。読み始めと最後がまったく印象の違う冬子(だが芯の強さは顕在)にはついつい惹かれてしまう。
読了日:06月24日 著者:石野 晶
セカンドアフター vol.1セカンドアフター vol.1
総じて面白く読んだが、兎男さんのあの花論は秀逸。めんまを生と死の両サイドから論じる語り口は珍しいものでもないが、議論の組み立てかたが骨太で読み応えあり。荘厳という概念を引き出したことも含めて、あの花を語る上では読んでおいて損はないだろう。
読了日:06月24日 著者:熱海 いかほ,イワン,兎男,ココネ,てらまっと,志津A,椚 一樹
商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)商店街はなぜ滅びるのか 社会・政治・経済史から探る再生の道 (光文社新書)
読了日:06月22日 著者:新 雅史
その街の今は (新潮文庫)その街の今は (新潮文庫)
「わたしがいなかった街で」を最近読んだがいくつか共通するようなところがないわけではないな、というところ。街の時代感を素朴な目線やなんでもない出会いを通じて書いてはいて、リアリティはあるんだけど少し弱くて、いろいろと惜しいなという感覚が残る。
読了日:06月22日 著者:柴崎 友香
海流のなかの島々 (下巻) (新潮文庫)海流のなかの島々 (下巻) (新潮文庫)
悲しい人生だった、と言うことは簡単だろうけれど、悲しいだけの人生ではなかった、というほうがより適切なのだろうと感じた。享楽と情熱と仕事と、父と子あるいは男と女として。人生を一言で言い表すことの不可能さをつきつけられているようにも思える。が、それでも悲しさという感情がある程度の適切さを持つのだろうとも思えるくらい、ヘミングウェイの筆致はあっさりしている。その淡泊さが絶妙、なのだろうなと。
読了日:06月19日 著者:ヘミングウェイ
社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論社会科学のリサーチ・デザイン―定性的研究における科学的推論
大学院の授業のテキストとして使用。かなり幅広く方法論について述べているが、授業内の説明では因果的推論と因果的効果に焦点を当てて議論してはいるが、推論の元となる仮説の設計についての議論は本書では十分ではない、ということだった。
読了日:06月16日 著者:G.キング,R.O.コヘイン,S.ヴァーバ,真渕 勝
Size and DemocracySize and Democracy
読了日:06月10日 著者:Robert Alan Dahl
天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標6 宿怨 PART1 (ハヤカワ文庫JA)
久しぶりにラゴスに会える巻。フェオドールも元気。それ以外にもいままでのいろんな人たちがじわじわつながり始めているなあという感想。
読了日:06月08日 著者:小川一水
介護保険制度の総合的研究介護保険制度の総合的研究
タイトル通り、介護保険導入前史として90年代の厚生労働行政の流れをくんだ上で2000年代になって導入後、さらに改正後までを概括した一冊。論文集という形式をとっていて同じ主張を繰り返し行っていることから、重複する箇所がかなり多い。この一冊を読めば二木立がこの15年から20年ほど何を考え、何に言及してきたかが分かるという意味では面白いかもしれない。
読了日:06月06日 著者:二木 立
ベーシック・インカム入門 (光文社新書)ベーシック・インカム入門 (光文社新書)
経済学的潮流とBIを絡めて論じる4,5章は面白かった。意欲的ではあるが、この一冊ではそんなとこかな。
読了日:06月03日 著者:山森亮

2012年6月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター



○ほかに読んだもの
松浦理英子「奇貨」(『新潮』6月号)
→中編程度の長さではあるがなかなかの傑作。まずはメインとなる男女の設定のうまさと、そのコミュニケーションのめんどうくささや変態さを、過剰に書かず淡々と描写しているのも妙。どうしようもない主人公のどうしようもなさにあきれつつもうまくはねかえしているようなヒロイン七島さんの魅力がとてもよい。
松家仁之「火山のふもとで」(『新潮』7月号)
→文章が秀逸。内容に合った落ち着いた、それでいて個性的な登場人物を丁寧に描写することに成功している。新しい図書館のコンペに向けて、というのが一つの話の核心にはなっているが、主人公を含む周りの同僚たちの人間関係がどうなるのかを楽しみながら読んだ。内容的にも文体的にも硬派ではあるが、久しぶりに味わい深い小説を読んだ、という感想が一番ふさわしい。