Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

2023年04月

 去年はすっかりサボってしまい、一年分をまとめて記録した。今年はちゃんとやるぞ、と思っていたらもう4月になったので、とりあえず3か月分をまとめて。







 合計で92冊。2,3月は意識的に比較的長く積んでた本(『生命と自由を守る医療政策』や『分裂病の少女の手記』など)を崩せたのが良かったかなと思います。
 あと意識的に小説も多く読んだのでそれも楽しかった。この期間だと呉明益『自転車泥棒』、ソン・ウォピョン『他人の家』、鈴木涼美『グレイスレス』がスマッシュヒット。mediumにもレビューを書いています。







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見:イオンシネマ高松東

 スピルバーグの自伝的映画と聞いたため、私小説なものなのだろうかと予想しながら見ていた。まず面白いのはタイトルがフェイブルマン”ズ”である、つまり複数形になっていることだ。主人公であるサミー・フェイブルマンの若き日々を描くのがこの映画の筋だが、彼がまだ子どもであるがゆえに(最後の場面ですら、大学生年代に相当する若者だ)完全な自由と自律を持たない。単純に言えば、親の管理の下で、コントロール可能な範囲で生きていくことしかできない少年だ。

 コントロール可能な範囲というのは、例えば手持ちの撮影機材や友人たちと協力して自主映画を撮影すること。コントロールできないことは、両親それぞれの選択であったり、移住したカリフォルニアでの高校生活などだ。元々住んでいたアリゾナからカリフォルニアは遠すぎる距離ではないため、一家は車に家財道具を積んで引っ越しを行う。しかし逆にサミーにとっては、かつて過ごした広大な土地(自主映画撮影にも荒野!)を後ろにしていく寂しさが募る演出になっているように見えた。

 新たに住んだ土地での高校生活も、期待していたものとは違っていた。名前をいじられるところから始まり、ユダヤ人であるというだけでいじめの対象になる。実際に経験したいじめよりは表現が和らいでいるという説もあるが(確かにいじめだけで映画を割くわけにもいかない)、いずれにしても引っ越しが彼にもたらしたものは孤立だったと言ってよい。少し、いやだいぶ変わった女の子とは親密になり、撮影を一緒に手伝ってくれるようにはなるものの。

 話を戻すと、この映画はフェイブルマン”ズ”なのである。妹たちの存在はフェイブルマンが成長するに従って後景に退くものの、親二人に振り回されるサミーは、そうであるがゆえに自分で自分の世界を作れる映画の撮影に没頭してゆくのだが、大人たちの生きざまは結果的にエゴイズムを植え付けているのでは? と感じながら見ていた。お前らが好きに生きるなら俺も好きに生きるぞ、的なマインドを。

 もう一つナラティブというワードをタイトルに並べたが、これは両親の振る舞いを見ていた感じたことだ。父も母も、自分の人生を生きることに忙しい。子どもの人生がどうでもいいというわけではないが、父と母の語るナラティブはしばしば重ならず、対立もする。自分で自分の人生を設計し、貫くというエゴイズムがベースにあるナラティブは、フィクションの映画として見る分には楽しいけれど、いい歳した大人二人が自由に生きるのは・・・という子ども目線の複雑な感情を丁寧に掬い上げていたなとは感じた。

 つまるところ、子どもは親を選べないし、住む場所も選べない。多くの場合がそうである。それでも、所与の環境でもがきながらやりたいことを貫くことはできるし、あきらめないほうが良い。あきらめの悪さが実を結ぶかどうかはわからないが、それができることは10代や20代の特権かもしれないな、と思いながら見ていた2時間半だった。青春は苦いが、青春期だからこその魅力もあるということがよく分かる2時間半でもあった。
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 前回の続き。前回はこちら。


 ウクライナ戦争から一年が経過したこともあってか、この一年を改めて振り返る番組が多かった。
 NHKの動画はなぜか埋め込みができないのでリンクを貼っている(そういうところやぞNHK・・・)。しかし改めて小泉悠がめちゃくちゃ出ているな(大学が春休みという事情もあるだろうが)と感じた。

■国際報道2023(NHKBS1)「ロシア人への怒りと恐れが表面化” ロシア系住民には戸惑いも バルト三国のラトビアはいま ウクライナ侵攻からまもなく1年」(2023年2月17日)



 有馬キャスターがラトビアからレポートする特集。ウクライナ戦争関係でラトビアを取材するのはさすがBS1の国際報道だなと思いながら、ロシア(ソ連)に対する怨念の名残を強く感じる特集だった。学校でのロシア語の制限や本などが排除される中、ロシア系住民の複雑な思いを取材しているのも良い。

■報道1930(BSTBS)「バイデン大統領キーウ電撃訪問 “仲裁”強調する中国の狙いは… 」(2023年2月21日)


■荻上チキ・Session(TBSラジオ)「【特集】ロシア軍の侵攻から1年、小泉悠さんと考えるウクライナ戦争のこれまでとこれから」(2023年2月21日)


 小泉悠ゲスト回。50分ほどある特集なので、この1年だけではなく、この1年に連なる過去の出来事(2012年のプーチン大統領返り咲きや、2014年クリミア侵攻に対する制裁についてなど)の振り返りもあるのがよい。

■ニュースウォッチ9(NHK)「【専門家解説】プーチン大統領演説から何を読み取る?国民の支持,中国との関係,制裁の影響…ロシア現地取材で徹底分析」(2023年2月22日)

 小泉悠のゲスト回。
解説部分はロシア市民が戦争をどうとらえているかの分析と、経済制裁の影響やロシアの兵器の現状について。制裁の効果がないわけではないが、制裁だけでは難しいという見立て。兵器についても戦車を多く失っているが、回復もしている。

■日本経済新聞「【ウクライナ侵攻1年】小泉悠氏「プーチン失脚でも終わらない可能性」」(2023年2月22日)


 「一つ大きいのは軍事力が存在していて国家間の対立が存在していれば、それはいつか使われるということを改めて可視化した」という小泉悠の語りから始まる番組。22分というコンパクトな内容だが、この一年間を振り返る上では面白い内容だった。中国の動静についての言及もあり。
 防衛3文書については、安全保障のコミュニティが長年言ってきたことを形にしたものだろうと述べた上で、「政府の文書に書く前に国民に一言あってしかるべきだった」と不満を述べているのも印象的だ。「いかにして戦争を起こさないようにするか」は政府や防衛省だけの仕事ではない。民主主義の思想に則った上で日本全体を巻き込んで考えていかなければならない、ということなのだろう。

■日経プラス9(BSテレ東)「ウクライナ侵攻1年 アメリカが描く戦争終結のシナリオ」(2023年2月24日)



 ロシアは攻勢を強めていると言いながら、アメリカ大統領がキーウを(あっさり)訪問した、というのはロシアと世界双方に対して大きなメッセージになったはずだ、との鶴岡の指摘は重要。アメリカでは共和党が支援疲れを訴える中で、バイデンがウクライナ支援を改めて現地表明した意義は大きい。

■国際政治ch「細谷雄一×高橋杉雄×鶴岡路人「ウクライナ侵攻、1年」 」(2023年2月25日)



 最近刊行になった鶴岡、高橋それぞれの単著の紹介を挟みながら、ウクライナ戦争一年の振り返り。ウクライナの死者数に言及する場面で、まだ埋もれている未計数の膨大な死者数(マリウポリなど)がいるはずだ、だから今わかっているよりもっと被害は大きいはず、という指摘は印象に残った。

■豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス「ロシア大攻勢の”初戦”は失敗か?ウクライナ戦争2年目の戦局は」(2023年3月2日)



 この一年間を振り返りながら2年目の攻防や展開を予測する動画。バイデンのキーウ訪問や消耗しながらもバフムトが持ちこたえていることを挙げながらロシア軍の「失敗」を指摘。また、ワグネルとロシア政府との緊張関係についてはプリコジンとショイグ国防相との間の対立があるのだろうと解説している。


■豊島晋作のテレ東ワールドポリティクス「ロシアは敗北しないのか?ウクライナ戦争2年目の論理と欧米の失敗」(2023年3月2日)



 前記の動画と同じ日に公開されているが、こちらは戦局からいったん目を外し、ロシアが戦争を継続する論理とその継戦能力についての分析。兵器の損傷は激しいが、20世紀型のオールドタイプの兵器はまだ残っており、生産可能。財政力については原油価格の上限規制を欧米が仕掛けているが、こうした経済制裁は即効性というより、中長期的なダメージを与えるものという見立て。


■報道ステーション(テレビ朝日)「「プーチンにとってその程度の命」ロシア優勢の裏に“非人道的”戦術」(2023年3月9日)



 高橋杉雄ゲスト回。バフムトの攻勢でロシア軍の死者が膨大に上がっていることはこれまで指摘されてきたが、そのロジックはプーチンの戦争の目的より人命のほうが軽い、大義のために死ぬのだからむしろ良い、という解説。同じようなことは80年代のイラン・イラク戦争でも同じようなロジックで、訓練を受けてない兵が地雷原を歩いて突破した、という事例があったとのこと。いずれにしても、人の命が軽すぎることを改めて感じさせられる。

■報道1930(BSTBS)「ウクライナ“大消耗戦”の真実 ロシア“動員兵”「消耗品でも肉片でもない」」(2023年3月16日)



 小泉悠、兵頭慎治ゲスト回。前半はアメリカの無人機墜落について。これで緊張感が急激に高まってはいないものの、大国間のにらみ合いが続くとこういうことが起こりうる、それはリスクだという小泉の指摘は重要。戦争のエスカレーションはお互い回避したい中での事象であるため。中盤ではロシアの消耗についての議論になるが、大量動員をして人海戦術的な戦いをやるのはソ連時代からのやり方で、ロシアからすれば想定の範囲内。つまり、消耗が激しいからと言って戦争を止めるということにはならないだろうと兵頭が指摘している。

■テレ東BIZ「“第2のウクライナ”に?ロシアが欧州最貧国・モルドバの政権転覆計画か」(2023年3月17日)



 隣国であり、凍結された紛争地域である沿ドニエストルを抱えるモルドバ。貧しい国であり、インフレに苦しむ市民からはサンドゥ大統領に対する不満も噴出している。そんな中でロシアによる、サンドゥ政権転覆の計画があったことを大統領自身が公開した。アメリカも同じような認識を示している、と番組は解説している。モルドバ国内の反政府デモにロシアの手が及んでいることも狡猾であるし、沿ドニエストルをも利用しようと試みている。これがロシアのハイブリッド戦争である、と。

■国際政治ch「大庭三枝×東野篤子×鈴木一人「日本の外交力」」(2023年3月25日)



 もともと日本外交に焦点を当てた回だったが、岸田のキーウ訪問のタイミングと重なったため、多くの時間をその評価に割いている。物議をかもした某しゃもじについてここまで議論が交わされるのは尺に余裕のあるネット番組ならでは。
 また、民主主義と権威主義といった単純化して理解しようとする向きについては、「それぞれの国にはそれぞれの利害がある」ということを改めて主張している鈴木の言葉が印象に残った。今回のウクライナ戦争を見ていても、どちらでもないグレーな領域は多分にある(し、そういった勢力が早期の終結や和平を望んでいるかもしれない)。

■角谷暁子の「カドが立つほど伺います」(テレ東)「ロシア軍 失速? 中国はどこまで支える?」(2023年3月28日)



 兵頭慎治ゲスト回。バフムトではここしばらく激しい戦闘が続いているが、ゼレンスキーのバフムト訪問や大きく打撃を受けているロシアの失速をレビューする。ロシアほどではないがウクライナの消耗も大きいため、欧米のウクライナ支援は今後の戦況にとってやはり引き続き重要なキーになってくる。
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