Days

日常と読書日記。 受験生日記は閉幕です。

2021年12月



見:Jaiho

 前回『自由が丘で』を見たのに引き続いてJaihoでホン・サンス作品を見てみた。本作も『自由が丘で』といくつか共通していて、ドラマチックなことは起こりそうにない日常の中である男女の恋愛の風景が描かれている。その中では書くこと(今回は日記、『自由が丘で』では手紙)が反復されるし、日記も手紙もいずれも主観的な記録なため、事実関係や時系列は非常にあいまいだ。この映画でも、あいまいなものはあいまいなまま説明しすぎず、静かに時間だけが流れてゆく。

 へウォンは演技を学ぶ学生という設定で、彼女は所属している映画学科のゼミの教授と不倫関係にある。いい加減この関係を終わらせたいと思いながら、冒頭でカナダに行くことになったと語る母と離別する寂しさを埋めるために、教授との逢瀬を選んでしまう。そしてある日同じゼミの学生たちにバレそうになるのだが(おそらく明らかにバレている)、うまくごまかしながら関係を終わらせられず、時間だけが流れてゆく、という筋書きだ。

 そうした日々の記録をへウォンは定期的に日記に書き記そうとする。日記を書くのはいつも同じテーブルで、もしかしたら時間も決まっているのかもしれない。そして日記を書こうとするたびに彼女はなぜか眠くなり、机に伏してしまう。ある時に唐突に目覚めるシーンも何度か描かれているが、彼女が眠ってから目覚めるまでの間に映画が映し出す光景はいったい事実なのか虚構(夢の中の願望)なのか、容易には見分けがつかない。

 『自由が丘で』でホン・サンスは「手紙の順番がわからないが、とりあえず一枚ずつ読む」という方法で映画の中の時系列を混乱させた。最初から登場していた人物が、途中からはさも初めて登場したかのように振る舞うことがあったため、視聴者にもこうした混乱は具体的に伝わっている。他方で今回の場合、夢を見ているへウォン自身にはそれが夢か現実かの判断がつかない。視聴者はいずれもを見ることができるが、やはりはっきりと断定はできない。(これは明らかにうまくいきすぎだろうという展開ならば夢だと判断できるため、まったくわからないわけでもない)

 へウォンの中にあるさみしさが具現化する願望(夢)と、決着をつけなければならない展開(現実)との相関の中で、視聴者は彼女の心理状況を追体験する。いわば「寝逃げ」でリセットしたい気持ちと、消えてくれないさみしさの中で彼女の向かう先を、じっとみつめることができるのが視聴者の特権だということだろう。虚実ないまぜのまま進む、日常を。

ヘウォンの恋愛日記(字幕版)
イェ・ジウォン
2015-06-15

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◎個別株(日本)
・ソニー[6758]
・シスメックス[6869]
・トヨタ[7203]
・バンダイナムコHD[7832]
・東京エレクトロン[8035]

 あさひと武田と任天堂を売却し、シスメックスを久しぶりに購入。コロナショック以降好調で、今後も業績が伸びる見通しなので&武田を売った分ヘルスケア銘柄が欲しかったので、というところ。


◎個別株(アメリカ)

・ダナハー[DHR]
・サーモフィッシャー・サイエンティフィック[TMO]
・アドビ[ADBE]
・エヌビディア[NVDA]
・Amazon[AMZN]
・Shopify[SHOP]

 HCA、TDOC、CRWD、PYPL、SQを売却して新規はなし。どれも含み益はあったが、ごちゃごちゃしてきたのである程度長く買い持つ予定の銘柄に絞った。

◎ETF
・iSharesS&P500[1655]
・iSharesオートメーション&ロボット[2522]
・MAXISナスダック100[2631]
・グローバルXゲーム&アニメ[2640]
・グローバルX半導体[2644]
CURE
SMH
SPXL
VIG
VHT
VYM
XLV
XLY

 ほとんど変わらないが3つだけ追加した。
 まず、ブラックロックからオートメーション&ロボットという商品が出ていて、株価好調&出来高まずまず、というところで少しだけ買っている。中身はこれのようで、アメリカ株中心だが日本株のレーザーテックやキーエンス、ファナックといった個別で気になる銘柄が入っているのでバランスよさげ。主力はAMDやエヌビディア、サービスナウ、ザイリンクスあたりなので半導体銘柄の株価に左右されがちかも。
 また、グローバルXから日本株のETFがいくつか上場されており(最近知った)、2640と2644を少しだけ買ってみた。
 2644は最近の半導体人気もあってか出来高がまずまずだが、2640はちょっとさみしいので2644の買い増しが中心になるかなというところ。どちらも欲しかったけどなかったETFなので、ちゃんと資金を集めて大きく育ってほしい。


◎投資信託
eMaxis Slimオールカントリー
eMaxis Slim S&P500
eMaxisQQQ
ifreeQQQ
ifreeレバレッジQQQ
SBIVOO
楽天VTI
楽天レバレッジQQQ

 11月に取引が始まった楽天版レバナスを楽天証券で購入している。すでにそれなりの資産を集めているのでそのへんは問題なさそうだが、しばらくは本家ifreeのレバナスと併用していく予定。
 あと、つみたてNISA開始時からSBI証券でコツコツ買い続けている楽天VTIの評価額が110万に達した(手持ちの中で一番多い)。これを機にというわけではないが、色々考えてつみたてNISAは楽天VTI1本に絞ることにした。SBIも三井住友系のカードに限ってのクレカ積み立てを導入したので、利用している(Amazonマスターカードが対象になっている)
 楽天証券では楽天カード積み立てで毎月5万を継続している。内訳はeMaxisのSlimS&P500と、QQQをそれぞれ1ずつ。残り3をifreeと楽天のレバナスに割り振っている。しばらくはこの比重でいく予定。


◎その他(REIT/BDC/暗号通貨)
・iShares米国不動産ETF[IYR]
・グローバルX SuperDivinded REIT[SRET]
・不動産セレクトSPDRファンド[XLRE]
・NFJリート[1343]
・iSharesJリート[1476]
・エイリス・キャピタル[ARCC]
・メイン・ストリート・キャピタル[MAIN]
・ビットコイン[BTC]
・イーサリアム[ETH]

 新規はなし。ARCCとMAINとじわじわ継続で買付している。暗号通貨も堅調だけど新規で買ってないので手持ちがじわじわ増えているくらい(少ないです)。


〇展望
 
 個別株以外のパフォーマンスが安定してきたので個別株をすっきりさせて投信&ETFで組み立てるという方向性を継続したい。ただそれだと退屈なのでAmazonとかエヌビディアとかShopifyとか、そういうところでちょっとずつ遊ぶ。
 今年は意識してレバレッジ商品を買い進めたが、来年もこれは意識して買い続けていく。元手がまだまだそう多くはないので、使えるレバレッジを積極的に使っていくほうが効率がよい。ある程度まで増えれば比重を落とすかもしれないが、まだそこまで大きな比重ではないので。

 来年、もしかしたら8桁に届くかもしれないという期待を持ちつつ、マイペースでやっていきましょうというところ。今年は去年ほど増えないと思っていたが去年並みかそれ以上のペースで増やすことができた(レバレッジ比重を高めた影響もあるが)ので、この勢いを継続できるように、かつオフェンシブになりすぎないように、と思う。ヘルスケアをこつこつ拾っているのはこれが目的でもある。
 レバレッジ以外で意識して比重を高めたのは半導体銘柄で、これもまだしばらくの間は上昇基調(のはず)なので、来年も引き続き。

 展望を書いてみたが、つまるところ継続することが肝要である。継続とはすなわち、労働による収入を確実に得ることの継続である。ほとんどそれ、であるので面白味も何もないが、刺激が多くても疲れるのでよくも悪くも退屈なくらいでちょうどいいのかもしれない。
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見:イオンシネマ綾川

 綿矢りさの近年の作品では傑作の部類に入ると言ってよいし、2010年代の彼女の飛躍作でもあると思っている。駆け込みで劇場に行ったおかげで、原作を読んだ時の感慨を久しぶりに思い出すことになった。文藝誌『新潮』に一挙掲載だった原作を大学図書館で読んでうおおお、と悶えた記憶がある。2012年の春のことである。気づけば大方10年前の話だ。

 主人公の愛、愛が片思いをしているたとえ、そしてたとえの彼女である美雪。この3者関係が軸となっているのは原作と同じだが、学校とその周辺が舞台になっているだけあって、学校の同級生や先生、またそれぞれの親との会話など、主役3人の生活がより立体的に見えるなと感じた。文化祭に向けたアイドルダンスの練習で始まる冒頭は、今風の女子高生の日常を象徴的に映し出していると言える(楽曲はオリジナルのようだが、明らかに坂道を意識している)。アイドルダンスは一体感とルッキズムの象徴とも言えるので、地味な雰囲気の美雪や、チームワークが苦手な愛がそうした活動になじめないことも、早い段階から予見されているという意味でも象徴的な冒頭のシーンになっている。

 たとえの存在感も、原作よりはくっきりとしている。愛がみつめるたとえ、そして美雪が手紙をつづる相手としてのたとえ、二人の同級生から見つめられながら、しかしその内心は誰も知らないんじゃないかという、曖昧な存在としてのたとえを、ジャニーズJr.の作間龍斗が好演している。少しイケメンすぎるきらいはあるものの、学校でのたとえはほとんど常に表情を崩すことがなく、思考や感情が外に漏れないように見せるキャラクターとしてのたとえを違和感なく演じているのはとてもよかった。普段が普段なだけに、たとえの家を二人が訪問する終盤のシークエンスでは、普段と違ったたとえを演じることにも作間は成功している。

 美雪もまた、愛の視点からすると「よくわからない同級生」だ。美雪がたとえに渡した手紙を愛が盗み見ることで、美雪とたとえの関係に愛は気付く。その発見の後、愛はたとえを攻略することをいったん中止して、愛を攻略しようとする。しかしながら、たとえがそうであるように美雪もまた、一見してよくわからない上に、近づいてもよくわからない存在なのだ。だから愛は時に強引に攻めるというスタイルをいとわないわけだが、そうして身体の距離が近づいたところで、逆に感情のわからなさに愛は苦しむ。人間の心は、物理的に近づけば開くというほど単純なものではない。

 もっともこれは逆から見ても似たような構図だと言える。たとえは愛のことをよくわかっていないし、美雪もまた愛のことをよくわからない。二人とも、そのわからなさを愛に伝えているが、愛からするとなぜ二人が自分のことを理解しないのかがわかっていないのだ。美雪は愛の強引な姿勢と、それが純粋な恋愛感情に基づかないことをおそらく早いうちから察している。

 それでも美雪が愛を受け入れるのは、自分自身の寂しさゆえでもあるだろうし、たとえとの関係があるからだ。美雪は自分とたとえの関係が、愛とたとえの関係に比べて圧倒的に優位であることを知っている。だから愛にどれだけ攻められても、心を完全に許すことはない。自分の性欲を自覚しつつ、その欲に完全に流されることはない。だから、たとえとのプラトニックな関係を数年間にわたって継続することができているのだ。こうした時間の流れを、愛は頭でなんとんく理解していても、腹落ちするほどには理解できていない。

 愛はまた、自分が親や教師にも理解されてないことを知っている。周囲から見たら容姿端麗で、リーダーシップもあり、成績も良好だという評価を受けているようだが、それは彼女の本質ではない。自分の本質をわかってほしいのに、理解されない苦しさ。乱反射、とはパンフレットに掲載されていた山田杏奈の言葉だが、自分自身が誰にも理解されてない、それでもわかってほしいし、自分自身をさらけ出したい。そうした様々な欲求が(強引に)乱反射することで、「ひらいて」ほしいというメッセージを送り続ける。

 原作でも映画でも非常に愛はやっかいな存在で、監督である首藤凛の助言を受けながら愛のことを辛抱強く理解しようと山田杏奈はつとめたようだ。対して美雪は、一見よくわからない薄い存在だが、愛が美雪に接近すればするほど、美雪の芯の強さが際立つことがよくわかる。愛はきっとこの美雪の内面の強さが悔しかったのだろうな、だからこそ、衝動を発露するやり方が強引になってしまったのだろう。実はめちゃくちゃ不器用な愛の存在が、最終的には愛おしいとも思えてしまう、そういう愛を山田杏奈は本当に巧みに、粘り強く演じることができていると思う。

 愛は誰にでもできるような役柄では絶対ないので、原作ファンとしては山田杏奈の好演、熱演が、何よりとてもうれしかった。

ひらいて(新潮文庫)
綿矢 りさ
新潮社
2015-07-24


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