引き続き韓国の現代文学と上田岳弘を読んでいた。ただ、やはりこの月は東畑開人『居るのはつらいよ』が圧倒的だった。ケアの現場にいる、いたことのある人間は、身に覚えがあることが随所にあると思う。そういったあるある話から、現代の市場主義への批判を投げかけるあたりは、一目の価値がある。
 mediumには4本しか書評を上げられなかったが、『ショウコの微笑』がやはり心に残る。というか、この小説は日本人にとって残るものが大きすぎるということと、かつ日本と韓国といった関係すらフラットに見立てた上で越境していく、スケールの大きい小説である。これが処女短編集っておい、すごいよなあ。

2月の読書メーター
読んだ本の数:11
読んだページ数:3168
ナイス数:29

走れ、オヤジ殿 (韓国文学のオクリモノ)走れ、オヤジ殿 (韓国文学のオクリモノ)感想
非常によい。デビュー作「ノックしない家」を含め作家の初期作を中心に集めているようだが、だからといって特定の作品のクオリティが悪いわけではなく、ユーモラスで時々怖さも混じるストーリーテリングが相まって不思議な安定感がある。いわゆるIMF世代、通貨危機を経た世代の痛みや生きづらさを書くのは韓国現代文学のひとつのトレンドのようだが、家族関係の不和や見知らぬ隣人たちとの微妙な関係性など、人間関係の困難さに焦点を当てたものが多いかな。その意味では、「ノックしない家」や「コンビニへ行く」が好き。
読了日:02月02日 著者:キム エラン
塔と重力塔と重力感想
主人公の経歴が著者と重なるところがいくつかあり、現代の私小説として読めなくもない。神戸から東京へ、そしてたくさんの小窓を経由して人が世界と否応なくつながっていく。その中で生きる高揚とか苦しみとか、あるいは過去の思い出の再生とか。これで芥川賞でもおかしくはなかった。
読了日:02月05日 著者:上田 岳弘
菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)菜食主義者 (新しい韓国の文学 1)
読了日:02月08日 著者:ハン・ガン
暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)感想
坂井さんらしい切り口の一冊。経済学的に暗号通貨の基幹技術であるブロックチェーンやハードフォークなどの仕組みを分析していく。
読了日:02月08日 著者:坂井 豊貴
異郷の友人異郷の友人
読了日:02月15日 著者:上田 岳弘
ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)ショウコの微笑 (新しい韓国の文学)感想
珠玉のデビュー短編集。小説家としての上手さが際立つわけではないが、現代を生きる多種多用名女性たちを物語る手腕はお見事。徹底的にキャラクターに、あるいは彼ら彼女らが持つ歴史やカルチャーによりそうことで小説を完成させている。その点で表題作「ショウコの微笑」や「彼方から響く歌声」の女性同士の友愛関係(百合だ)はとても美しいし、「シンチャオ、シンチャオ」や「ハンジとヨンジュ」で書くような、分かりあいたいのに、仲良くしたいのにどうしようもなくある断絶だとかは本当にすばらしいと思う。
読了日:02月16日 著者:チェ ウニョン
第160回芥川賞受賞 ニムロッド第160回芥川賞受賞 ニムロッド感想
たぶんいままでの上田の中で一番読みやすく書かれている。それは複雑性の縮減というか、複雑な部分はニムロッドの書く作中作に落としこんでいるからかな。
読了日:02月16日 著者:上田 岳弘
居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)居るのはつらいよ: ケアとセラピーについての覚書 (シリーズ ケアをひらく)
読了日:02月24日 著者:東畑 開人
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART1 (ハヤカワ文庫JA)感想
懐かしい面々がそろいつつあるだが、大団円はまだもうちょい先。
読了日:02月24日 著者:小川 一水
天冥の標勝\塚佞茵∨かなれ PART2 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標勝\塚佞茵∨かなれ PART2 (ハヤカワ文庫JA)
読了日:02月25日 著者:小川 一水
天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)天冥の標X 青葉よ、豊かなれ PART3 (ハヤカワ文庫JA)感想
10年間かあ、と思いながら読み終えた。まだ10大だったころに大学のブックセンターで手に取って、最後は普通に近所の本屋で手に取ったわけだけど、作家もキャラクターも同じ時間の長さを体感したのかもしれないよな、と思うとしみじみ。壮大ではあったけれど、最終的には生きることそのものについての物語だったなと、改めて感じる。
読了日:02月25日 著者:小川 一水

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