見:イオンシネマ高松東
前作は神戸で見たが今回は高松で見たので多少客層が違うかな、と気にしたがそういうわけではなく、10代の女の子集団がマジョリティなのは変わらなかった。その他若いカップルや、俺のように一人で見に来ているアニオタ(今回はTrysailがプッシュされているので声オタもいただろう)がちらほら、といったところ。前作も今回みたいに期間限定で全国から遅れて上映という形になったようで、前作から引き続き見に来た人もいるだろうし、前作のパンフレットも販売されていたのはサービス精神として十分気遣いができているな、と思った。
ストーリーについては前作が『ずっと前から好きでした。』が「告白すること」とそのプロセスに重きを置いていたことに比べると、今回はまさに「好きになるその瞬間」とそのプロセスに焦点を当てた、というところだろう。それはつまり個人的な現象である。個人として誰かを「好きになるその瞬間」というのがビビッドに、そして男の子の場合でも女の子の場合でもものすごくキュートに表現されるのだけれど、今回描いているのは徹底的な気持ちのすれ違いだ。デートムービーとして今回も製作されているきらいがあるが、最終的に主人公が思いを寄せる幼なじみの男の子に告白して成功する前作と比べると、この徹底的なすれ違いは前作と逆の意味でリアルなものとして10代の少年少女たちに響いてしまうんじゃないか、というきらいを感じた。
前作で主役をつとめた榎本夏樹と瀬戸口優を中心とした世代のストーリーだったが、今回は2つ下の世代、二人の弟と妹にあたる榎本虎太朗と瀬戸口雛を中心とする世代が主役となる。だが唯一、雛が好きになる先輩綾瀬恋雪だけが前作から引き続き大きくフィーチャーされることになっている。夏樹と優、として恋雪の存在が学年の離れた二つの世代をつなぐ役割を果たすことと、先輩を好きになるがどうすることもできない雛の切なさやもどかしさを前面的にクローズアップすることに成功している。
ていうか、第一に雛役の麻倉ももの演技がめちゃくちゃかわいい。本作が面白いのは雛と虎太朗たちの中学生編から物語が始まっていることで、恋雪の入った高校と同じ高校を目指して勉強する雛や、その雛と同じ高校に入ろうとする虎太朗という思いの一方通行を最初から演出している。
中学生から高校生になるなかで雛の身体が成長していき、「瀬戸口、スタイルいいよな」「幼なじみだしもんだことあるの?」と虎太朗がクラスメイトに茶化されて赤くなるシーンや、気合いを入れるために雛がメイクするシーンなど、過去と現在の変化と連続性を同時に演出していく構成はなかなかうまい。前作がいかにシンプルな構成になっていたか(とはいえシンプルながら複数の色恋を並行して扱うのはうまかった)を再確認しつつ、同じものと違うものを描き分けていく表現はなかなかのものである。
雛と同世代である10代の女子たちが最後の雛の決断をどのように解釈したのかが気になるところだが、今回の場合むしろ「なにかをできなかったこと」が大きくクローズアップされるからこそ「好きになるその瞬間」からつながるプロセスを鮮やかに切り取ることに成功していると言っていい。その上で、エンドロールとテレビアニメでいうED後のCパートも含めて一つの映画として構成されていることが、本作がシリーズものとして作られているという前提をうまく使えていると思う。
興行成績次第ではあるだろうが、HoneyWorksの持ち曲を考えるとまだ続きが作られてもおかしくないだろうし、何らかの形で作中の世界は続くだろうという予感が『告白実行委員会』シリーズの魅力であり面白さなのだろう。もうとっくにその世代からは離れているが、VOCALOIDとアニメという方法だからできるデートムービーという新しい展開は気になるし、続きがあればまた見に行くだろうと思っている。