2016年12月

2016年12月30日

#C91 『MIW−MUSIC OF IDOL WORLD−』に参加しました

 冬コミ2日目がそろそろ始まりそうなタイミングになりましたが、3日目の告知です。3日目の東U12bで頒布されます。『』
 詳細:http://d.hatena.ne.jp/sakstyle/20161229/p1
 膨大な楽曲データの分析と8本のエッセイからなる本ですが、「ラブライブ声優を卒業した彼女たちの途上――南條愛乃、新田恵海、三森すずこの現在地」というタイトルのエッセイで参加してます。
 夏ごろに本誌主宰のシノハラさんに今回の面白い企画に誘われ、10月ごろに原稿を書きました。原稿に誘われたころとほぼ同じ時期にシノハラさんも寄稿している『ユリイカ 総特集:アイドルアニメ』が刊行されていますし、この本と合わせて読むとより楽しめるかもしれません。
 ほかにもブースでは『筑波批評2013春』や『フィクションは重なり合う』が頒布されるようです。筑波批評ではシノハラさんとやおきさんのラブライブ対談が入ってますし、後者でもアイドルアニメ(二次元アイドル)特集があるので、合わせてどうぞ。




 今回参加した『MIW』がユリイカと異なるとすれば、タイトルにMusicと打ってあるように二次元アイドル世界における楽曲に焦点を絞っていることでしょう。MONACAフェスの興奮をシノハラさんは以前どこかで書いていましたが、作曲家や作詞家を軸に二次元アイドルの世界をとらえるとまた違った視点が生まれること、そして世界の広がりを別の角度でとらえられること。この二つが、今回企画に参加して個人的に感じた二次元アイドル音楽の面白さでした。
 最初から声優について書くつもりはなかったのですし、歌う声優というくくりは二次元アイドルから少し離れているではないかという話になりそうなので流れを説明します。今回文章の以来を受けた際に、シノハラさんから二次元アイドルに関することならなんでもオッケーということと、できればラブライブでなにかという二つの要素があったので、これらを考慮した結果ラブライブ声優に焦点を当てて書くことになりました。
 他の寄稿者の原稿にはジャニーズや宝塚というワードも入っているので、声優について書くのもそう遠からずだろうと思いました。結果的に。

 サブタイにもあげてますが、ラブライブ声優9人のうち、南條、新田、三森の三人の音楽活動について書いています。1年生役がいないと気づいて、最後に少しだけ飯田里穂についても触れています。ちなみに9人の中で一番歌がうまいのはPileだと思っていて、次点で三森と南條かなと。
 すでにfripSideとしての実績があった南條、音大出身ではやくから歌手志望だった新田、声優以前にはミュージカル女優であり、声優としてはミルキイホームズでのユニット経験を持つ三森、という感じの切り口で彼女たちの音楽活動の多様性に触れています。活動の多様性というより、活動の方向性の多様性といったほうがより正確でしょう。
 ラブライブ声優について書くことにしたのは、彼女たちがラブライブ声優というアイドルユニットとしての卒業を迎えているとあこと、卒業したということはグループの活動からソロ活動へと重心が移ることを意味します。徳井青空は唯一ソロ名義での音楽活動をおこなっていませんが、他の8人は音楽活動を行っているということは特筆すべきことかもしれません。

 歌う声優の存在は90年代の林原めぐみや椎名へきるあたりを出発点ととらえて、國府田マリ子や坂本真綾、堀江由衣、田村ゆかり、水樹奈々などなど、現在においてはもはや珍しい現象ではありません。『声優ラジオの時間』が90年代の声優特集を行って刊行した本がありますが、あのときといまとではもちろん声優が歌う意味は大きく変わっています。


 他方で、ラブライブ声優の9人はみながみな歌う活動をしていたわけではありません。そもそもPileのように、歌手オーディション出身で声優としての仕事はラブライブ!が初めてだという声優もいれば、飯田里穂や久保ユリカのようにビジュアルを押し出した芸能活動をした経験を持ちながら選ばれた声優もいる。
 単に新人声優9人で組みました、というわりには先ほど述べた南條や三森は年齢的にも経験的にも他のメンバーより少し先を行っています。はっきりした統一感があるわけではない9人がラブライブ声優になり、2013年のアニメ化以降のフィーバーを経験しながら2016年の4月で卒業を迎えます。唯一彼女たちをつなぐ共通点と言ってもいいラブライブ!というコンテンツが一つの終幕を迎え(そのかわりサンシャイン!!にバトンが渡されるわけですが)たいま、彼女たちのゆくえを探るのは面白いのではないかと思った次第です。

 他のコンテンツ、たとえばアイマスの場合はシリーズが次々に進行しながらも765プロダクションのキャラクターをつとめた声優たちはいまだにアイマス声優としての活動を続けています。毎年夏に西武ドームで恒例のライブを行っていることから、継続していく意志を強く感じます。それだけ成功した前例がありながらラブライブ!は同じ道を歩まなかった。必然的に、9人は卒業という選択をとらざるをえない。
 卒業しても声優としての活動は続いていく。いや、あるいはPileのように元々声優でないのなら、声優としての活動自体が必要でないのかもしれない。先ほど書いたようにもともと統一感のないメンバーだったにも関わらず、徳井青空以外の8人がソロ名義での歌手デビューの選択を選んでいるのは非常に面白いと思いました。
 AKB48などの例をとっても、みながみな卒業後に歌手を目指すわけではありません。グループとしての成功が卒業後の個人としての成功をそのまま意味しないことは、すでに卒業した大物メンバーたちの活動を見ていれば分かることです。
 答えはない、だからこそ自分で選ぶしかない。「たまたま」徳井以外のメンバーは歌手になったが、今後もみんな歌い続ける保障はない。新しい選択には迷いや挫折がつきものだということを、今回書いたエッセイから感じ取っていただければと思います。
 それは翻って、普通の人々の人生にとってもまったく無縁ではないのではないか、ということもふと感じました。だからこそ、彼女たちを応援したくなるのかもしれません。応援することで生まれる誰かの人生があるとすれば、応援することで生きられる自分の人生もあることでしょう。

 宣伝というよりは長ったらしいあとがきのようになってしまいましたが、まず第一にデータ的に非常に充実した本になっています。二次元アイドルの楽曲のべ1400曲以上を調査し、ことこまかくカテゴライズする本はなかなかないでしょう。シノハラさんが物量で攻めたとツイートされていましたが、その物量に一人の読者として圧倒されました。
 その上で自分を含めた8本のエッセイはこれら膨大な二次元アイドルの楽曲を楽しむ上での道しるべになっているはずです。ただ単に音楽を聞くことと、その背景を知った上で音楽を聞くのとでは、味わいも違うだろうと素朴に思うからです。
 ぜひ冬コミ3日目、大晦日の有明に足を運んでいただければと思います。

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burningday at 09:48|PermalinkComments(0)TrackBack(0)books