監督:樋口真嗣
原作:福井晴敏
主演:役所広司
製作が決まったのは2003年12月だったか。その後すぐに原作を読み終えていたく感傷に浸った。これは2005年の春が楽しみだと。受験から解放された気分もあるだろうし、待ちきれないなと。2005年になって文庫化を機に再読してみた。
太平洋戦争終戦間近。後のない日本。そこで海軍の浅倉の意志で呼ばれた絹見。腰抜け艦長と呼ばれていた絹見に、ドイツの遺産である戦利潜水艦《伊507》を預けられる。これに秘められた秘密兵器を利用し、広島に次ぐ2個目の原子爆弾投下を阻止せよ。そこに人間魚雷回天の乗組員折笠征人や清永喜久雄らが招集されて。
映画に関しては原作を読んだものとしてはだいぶ違う感じを受けた。設定、シナリオ、核となる一つの音楽。あくまでも映画の中で表現されたローレライなのだろう。これはこれで、小説の中では表現しきれない透き通った感じがする。耳から入っていけるのは映画だけだから。
潜水艦、深海。常に海の中をどのようにスクリーンで描くか、そして伊507をどのように表現するか。この面では樋口らしいというのかCGの駆使と、実際模型を作っての製作。狭いという雰囲気そのままに詰め込まれている乗員たちの臨場感が映画でも随所に出てくる。
一番核となるのはローレライシステムのオペレーターであるパウラ。あまり詳しくはかけないが彼女の存在は不可欠で、一番感情移入できるかもしれない。その点では、絹見にしても木崎にしても田口や時岡、そして折笠。それぞれが絹見の元に、小説の中で使われていたもので適当な言葉を使うと「一蓮托生」して必死に、という状況が目から伝わってくるのは映画らしい。ただ、スピード感があるから焦っている部分があったのも、特にプロローグなのだが感じられた。原作を読んでいるものとすればパウラへの想いは強いということを思うとそのあたりは設定もあるのだが小説の方が上回る。
ミステリー的な要素としては浅倉と、ローレライそのものにある。やや分かりづらかったというのもあるんだが許せるかな。一筋縄でいくようなものじゃない。ただの戦争物ではなく、あくまでも原作者は福井晴敏、ミステリー作家であるから。
だからといって映画が悪いわけでなくなかなか良作であるだろう。小説と映画では全く違うだけにそれぞれのメッセージ性を感じ取れる。俺としては、そのように感じた。ただ、守り、生きる、ということには変わりないのだが。
クライマックスに達すると涙も出てくるのではなかろうか、すべてに感情移入できれば、そのときの切なさは格別。俺は小説で泣けて映画では泣けなかったのでやはり小説が凄いなというのはあるんだが。比較しなくても映画を見る価値は十分にある。まだ公開中なので春休みを利用してぜひ見てほしい。軍記物だが、女性でも楽しめるはずだから。そこが夏にある『亡国のイージス』との違いなんだろうね。
原作:福井晴敏
主演:役所広司
製作が決まったのは2003年12月だったか。その後すぐに原作を読み終えていたく感傷に浸った。これは2005年の春が楽しみだと。受験から解放された気分もあるだろうし、待ちきれないなと。2005年になって文庫化を機に再読してみた。
太平洋戦争終戦間近。後のない日本。そこで海軍の浅倉の意志で呼ばれた絹見。腰抜け艦長と呼ばれていた絹見に、ドイツの遺産である戦利潜水艦《伊507》を預けられる。これに秘められた秘密兵器を利用し、広島に次ぐ2個目の原子爆弾投下を阻止せよ。そこに人間魚雷回天の乗組員折笠征人や清永喜久雄らが招集されて。
映画に関しては原作を読んだものとしてはだいぶ違う感じを受けた。設定、シナリオ、核となる一つの音楽。あくまでも映画の中で表現されたローレライなのだろう。これはこれで、小説の中では表現しきれない透き通った感じがする。耳から入っていけるのは映画だけだから。
潜水艦、深海。常に海の中をどのようにスクリーンで描くか、そして伊507をどのように表現するか。この面では樋口らしいというのかCGの駆使と、実際模型を作っての製作。狭いという雰囲気そのままに詰め込まれている乗員たちの臨場感が映画でも随所に出てくる。
一番核となるのはローレライシステムのオペレーターであるパウラ。あまり詳しくはかけないが彼女の存在は不可欠で、一番感情移入できるかもしれない。その点では、絹見にしても木崎にしても田口や時岡、そして折笠。それぞれが絹見の元に、小説の中で使われていたもので適当な言葉を使うと「一蓮托生」して必死に、という状況が目から伝わってくるのは映画らしい。ただ、スピード感があるから焦っている部分があったのも、特にプロローグなのだが感じられた。原作を読んでいるものとすればパウラへの想いは強いということを思うとそのあたりは設定もあるのだが小説の方が上回る。
ミステリー的な要素としては浅倉と、ローレライそのものにある。やや分かりづらかったというのもあるんだが許せるかな。一筋縄でいくようなものじゃない。ただの戦争物ではなく、あくまでも原作者は福井晴敏、ミステリー作家であるから。
だからといって映画が悪いわけでなくなかなか良作であるだろう。小説と映画では全く違うだけにそれぞれのメッセージ性を感じ取れる。俺としては、そのように感じた。ただ、守り、生きる、ということには変わりないのだが。
クライマックスに達すると涙も出てくるのではなかろうか、すべてに感情移入できれば、そのときの切なさは格別。俺は小説で泣けて映画では泣けなかったのでやはり小説が凄いなというのはあるんだが。比較しなくても映画を見る価値は十分にある。まだ公開中なので春休みを利用してぜひ見てほしい。軍記物だが、女性でも楽しめるはずだから。そこが夏にある『亡国のイージス』との違いなんだろうね。
コメント