2021年08月04日

トリックに隠れた友情譚、あるいは百合作品として ――『六番目の小夜子』(2000年)

 2000年に放映されたこのドラマを何回見たか正確には覚えていないが、前回は中学生の時の再放送だったと思う。その後恩田陸の原作と、外伝である「図書室の海」も読んだがそれ以来17年以上は経っているので内容はほとんど忘れた状態で『六番目の小夜子』を見て感じたのは、ああ改めてよくできているなという感想だ。ありきたりではあるが、このありきたりなところも含めて恩田陸の、とりわけ彼女のジュブナイルの巧さだと感じる。

 恩田陸にとってファンタジーやミステリーを学園ドラマに導入するのは、少なくとも当時ではおなじみだった。1992年に今は懐かしき新潮社ファンタジーノベル大賞で最終選考に残った『六番目の小夜子』が出版された後も、『三月は深き紅の淵を』や『麦の海に沈む果実』などのファンタジー色の強い(オカルト寄りとも言える)小説を複数発表している。『六番目の小夜子』自体は2000年にNHKによってドラマ化されたことによって火が付いた作品だと言ってよいと思うが、この小説もオカルトに寄せながらそれは実はトリックに過ぎないことを、2021年に見返すとひしひしと感じるのだ。『六番目の小夜子』は純粋な群像劇であり、学園ものだったことがよく分かるようになった。

 もちろん当時はキャラクターたちと同じ中学生目線で見ていたからでもあるだろう。今は逆に大人の目線で、彼ら彼女らの危うさを生暖かく見守ることができる。その上で実感するのは、ドラマオリジナルキャラクターで、鈴木杏演じる潮田玲のキャラクターである(元バドミントン選手の潮田玲子と一字違いなのも、いま振り返ると面白い)。この彼女がオリジナルでありながら主人公として物語をガイドする役を務めていることが、徹頭徹尾うまくいっているなと感じたのだ。

 山田孝之演じる関根秋、栗山千明演じる謎の転校生津村沙世子、そして松本まりか演じる学級委員長の花宮雅子は、いずれもクセが強い。強すぎるくらいに強い。だから彼ら彼女らは、それぞれの形で「六番目の小夜子」ゲームに興じていく。8話&9話の文化祭編では演劇が作中作として上演されるが、ゲームに興じる秋や沙世子、雅子(まー)も、演劇的なキャラクターだ。彼ら彼女らの語りは常に信用することができない。ただ、主人公である潮田玲だけは信頼できる。彼女なら、裏表のない、直情的だけど素直で明るいキャラクターを以て、物語を動かしてくれるはずだと視聴者は実感できるからだ。

 秋や沙世子が主役を務めてもこのドラマは成立したと思うが、それだとサヨコ伝説にまつわる謎解きが主軸になってミステリー色が強く出すぎてしまうおそれがある。そこを潮田玲という、本人曰くどこにでもいる女の子ではあるものの、どこにでもいる女の子だから共感を集めやすいし、作中でも信頼を集めている。彼女だから、秋や沙世子や雅子のいずれとも仲良くなれる。

 くしくも物語の後半は中学生にとってのアイデンティティの揺らぎにシフトしていく。玲のいくつかのセリフは、『花咲くいろは』や『響け!ユーフォニアム』のようなジュブナイルアニメの傑作を思わせるほど、年代特有のきらめきと不安に満ちている。サヨコ伝説においても「扉」というのが一つキー概念になっているが、ああなるほどこれもまたうまいなと感じた。アイデンティティの揺らぎを自覚して、苦しんで、そしてそれを他者と分かち合ってようやく、扉は開かれる。

 ミステリーめいたトリックに騙されずに(それ自体も面白いものではあるのだが)キャラクターそれぞれの友情や成長譚として純粋に楽しむことができるのが改めてこのドラマを見返す面白さだと気づいた。そして玲と沙世子の間に生まれる特別な関係には、百合みを覚えてもいいだろう(当時は百合という概念を知らなかったので)。平凡だけど非凡さも併せ持つ主人公と、特別すぎるライバルとの絶妙な組み合わせには、何度も『響け!ユーフォニアム』の黄前久美子と高坂麗奈を思い出した。麗奈も沙世子も、ミステリアスで美しいほどにその長い黒髪がよく似合う。

 2021年夏、まさかパンデミックの中開催される東京オリンピックを日々見つめる中、ここまでノスタルジックになれるとは思っていなかった。いやはやNHK恐るべしである。


六番目の小夜子 (新価格) [DVD]
美保純
NHKエンタープライズ
2019-02-22


六番目の小夜子(新潮文庫)
恩田 陸
新潮社
2015-05-22


図書室の海(新潮文庫)
恩田 陸
新潮社
2015-05-22




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2021年06月05日

2021年5月の読書記録


 5月は29冊でした。4月よりはペースダウンしたけどまあいいくらいの読みができたかなという感じ。画像を見たらわかるように文庫本の積読を崩しまくった回。


5月の読書メーター
読んだ本の数:29
読んだページ数:9555
ナイス数:50

どうして男は恋人より男友達を優先しがちなのかどうして男は恋人より男友達を優先しがちなのか
読了日:05月02日 著者:桃山商事
禁書目録×伊藤計劃 01禁書目録×伊藤計劃 01
読了日:05月03日 著者:渡辺 零、他
その日、朱音は空を飛んだ (幻冬舎文庫)その日、朱音は空を飛んだ (幻冬舎文庫)
読了日:05月05日 著者:武田 綾乃
禁書目録×伊藤計劃 02禁書目録×伊藤計劃 02
読了日:05月08日 著者:渡辺零、他
石黒くんに春は来ない (幻冬舎文庫)石黒くんに春は来ない (幻冬舎文庫)
読了日:05月08日 著者:武田 綾乃
母の影 (新潮文庫)母の影 (新潮文庫)
読了日:05月09日 著者:北 杜夫
発達障害はなぜ誤診されるのか (新潮選書)発達障害はなぜ誤診されるのか (新潮選書)
読了日:05月09日 著者:岩波 明
完全版 韓国・フェミニズム・日本完全版 韓国・フェミニズム・日本感想
小説だとユン・イヒョン「クンの旅」、それ以外だともともと好きな作家であるチェ・ウニョンのエッセイが特によかった。チェ・ウニョンが大学に入学したあとにフェミニズムと出会い、フェミニズムを学んでゆく中で得た自由や内面の変化、生き方の変化について、短いながら子細に語っていてよかったと思ったし、女性の物語を一貫して書き続ける彼女の信念が見えて面白かった。その裏返しとして、男性が多数を占める様々な構造への大きな疑いがあることにも触れられている。
読了日:05月10日 著者:
響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話 (宝島社文庫)響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のホントの話 (宝島社文庫)感想
香織があすかに当てた手紙が最の高だった。感情が強すぎる。
読了日:05月11日 著者:武田 綾乃
13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル (朝日文庫)13歳、「私」をなくした私 性暴力と生きることのリアル (朝日文庫)感想
いつか手に取りたいと思っていたので文庫化を機に読んだ本。山本潤さんの壮絶な体験が書き込まれているので読むのがしんどいことも多く記述されている。第三者がしんどいと感じる以上に本人の中に筆舌にしがたいしんどさ、苦しみ、辛さがあったのだろう(そしてそれが終わったわけではない)ということを読み終えて改めて噛みしめる。
読了日:05月14日 著者:山本 潤
贖罪 (新潮文庫)贖罪 (新潮文庫)
読了日:05月15日 著者:イアン マキューアン
サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+ 東浩紀アーカイブス2 (河出文庫)サイバースペースはなぜそう呼ばれるか+ 東浩紀アーカイブス2 (河出文庫)感想
流し読み。エヴァの話のあたりはちょっとだけ面白かったかな。
読了日:05月17日 著者:東 浩紀
寺山修司 (ちくま日本文学 6)寺山修司 (ちくま日本文学 6)感想
競馬の話と同じくらい野球の話も端々に挿入されていて面白かった。毛皮のマリーも収録されている。
読了日:05月20日 著者:寺山 修司
20世紀美術 (ちくま学芸文庫)20世紀美術 (ちくま学芸文庫)感想
19世紀後半の印象派の挑戦とその挫折の説明から始まり、キュビズムなどさまざまな抽象表現を経て戦後の現代アートを含んだ抽象美術までを一つのストーリーで語り下ろす感じ。原著が1965年なのだが1960年代の美術までフォローされている、戦後のフォローも詳しい。現代の美術史をコンパクトに振り返るためにはいい本。
読了日:05月20日 著者:高階 秀爾
無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)無知の涙 (河出文庫―BUNGEI Collection)
読了日:05月20日 著者:永山 則夫
ゴーギャンの世界 (講談社文芸文庫)ゴーギャンの世界 (講談社文芸文庫)
読了日:05月20日 著者:福永 武彦
発達障害 (文春新書)発達障害 (文春新書)
読了日:05月21日 著者:岩波 明
睡眠のはなし - 快眠のためのヒント (中公新書)睡眠のはなし - 快眠のためのヒント (中公新書)
読了日:05月21日 著者:内山 真
国境の南、太陽の西 (講談社文庫)国境の南、太陽の西 (講談社文庫)感想
7年ぶりに再読した。人生がそれなりに順調な30代の男が過去の女の幻影に翻弄されるお話、と解釈するのがストレートだとは思う。違う見方をするならば、あまりにも人生が順調なのでいくらか退屈さが漂っていて、そうした退屈さが過去の女との再会というロマンを過剰に求めてしまう心理に繋がっているのだと思う。もちろんそのロマンに頼る事は現在の生活の破綻を意味するので、島本さんのとった行動は合理的なものだったと思う。合理的かつ、主人公にとって優しい行為であるだろう。
読了日:05月23日 著者:村上 春樹
結婚式のメンバー (新潮文庫)結婚式のメンバー (新潮文庫)
読了日:05月23日 著者:カーソン マッカラーズ
死刑囚最後の日 (光文社古典新訳文庫)死刑囚最後の日 (光文社古典新訳文庫)感想
ノンフィクションかエッセイのように見えたが創作ということで、かなり迫力のある文章が最初から最後まで続く。一気に読んだ。
読了日:05月23日 著者:ヴィクトル ユゴー
きょうのできごと、十年後 (河出文庫)きょうのできごと、十年後 (河出文庫)
読了日:05月24日 著者:柴崎友香
抱擁家族 (講談社文芸文庫)抱擁家族 (講談社文芸文庫)
読了日:05月24日 著者:小島 信夫
いまさら翼といわれても (角川文庫)いまさら翼といわれても (角川文庫)
読了日:05月27日 著者:米澤 穂信
在宅無限大: 訪問看護師がみた生と死 (シリーズ ケアをひらく)在宅無限大: 訪問看護師がみた生と死 (シリーズ ケアをひらく)
読了日:05月28日 著者:村上靖彦
美しいこと (講談社文庫)美しいこと (講談社文庫)
読了日:05月29日 著者:木原 音瀬
心理学化する社会 (河出文庫)心理学化する社会 (河出文庫)
読了日:05月29日 著者:斎藤 環
愛と人生 (講談社文庫)愛と人生 (講談社文庫)
読了日:05月30日 著者:滝口 悠生
ナラタージュ (角川文庫)ナラタージュ (角川文庫)
読了日:05月31日 著者:島本 理生

読書メーター


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2021年05月06日

2021年4月に聴いた音楽

 今月もやります。可能な限り読書記録みたいに毎月やりたい。(基本的に「最近聴いた新曲」を中心に紹介していく予定)

●にしな「ヘビースモーク」


odds and ends
WM Japan
2021-04-07


 4月はとにかくひたすらにしなを聞いてたような気がする。普段からよく聞いている大阪のラジオ局、FM802が月間通じてプッシュしていたのがにしなの「ヘビースモーク」で、ラジオだけでも相当数聞いたし、↑のMVも擦り切れるほど(動画なので擦り切れませんが)聞いた。何がいいかを一言で言うのは難しい気もするが、なんとなくあいみょんを最初に聴いたときの感覚に近い。音楽性は全然違ってて、ギター一本で歌う女性のシンガーソングライターってところくらいしか共通項はないと思うが。ちなみにあいみょんも3年前にFM802きっかけで知った。まだ「マリーゴールド」リリース前で、「君はロックを聴かない」が最初だった気がする。

●牧野由依「シルエット」


 4月の配信ライブで披露したらしい新曲(ライブ見に行くの忘れてた・・・)。15周年ということだが、そうかもう15年経つのねという気持ちと、15年経っても変わらない美しい声の魅力が存分に生きている。牧野由依は牧野由依らしくこれからもあってほしい。

●愛美「MAYDAY」


 
ReSTARTING!!
KingRecords
2021-04-07


 前回紹介した「ReSTARTING!!」が4月7日にシングルとしてリリースされたが、その2曲目の「MAYDAY」もMVが公開された。「ReSTARTING!!」がいかにも愛美らしい底抜けに明るい曲なのに対して、「MAYDAY」は曲調もMVの雰囲気も暗めの曲。両方あってこその愛美だな、と感じる。これもうまく言えないけれど、彼女のパーソナリティを考慮すると「底抜けに明るい」だけではない方がしっくりくるので。

●あたらよ「晴るる」


 去年の秋に「10月無口な君を忘れる」をyoutubeに発表していきなり1000万再生を稼いだバンドの新曲。前作と比べるとオーソドックスで、バンドとしてのやりたいことというか持ち味はこっちなのかもしれない。両方の曲に通じるのはボーカルの使い方がうまいなーということ。あと、春をテーマにした曲なので毎年この季節になると聞きたくなるかもしれないなということ。オシャレなサウンドに、ノスタルジックな香りのするボーカルの魅力がこの季節にはよく似合う。

●Radio Bootsy「春は溶けて」


 これもFM802きっかけで知った。FM802は毎年この時期にオリジナルのコラボ曲を作っていて、二年前のaiko「メロンソーダ」が思ったよりハマってしまったので毎年楽しみにしている。今年はyamaが参加していて驚いた(少しずつ露出を増やす戦略なのかもしれない)。絵音だな〜と思うようなメロディ、歌詞が多様な歌声と合わさって春の訪れによく似合う。

●Awesome City Club「またたき」


 ここ最近活動的なAwesome。「勿忘」の対に充ててもいいような曲かも。
 さよなら、素晴らしき日々よ。

●Awesome City Club「記憶の海」


 今回発表した曲だとこっちの方が実は好き。PORINのソロで歌い上げる楽曲だが、あまりいままではなかったような幻想的なメロディがPORINのスイートなボイスと重なってとても美しい。息継ぎだけでとてもセクシーに聞こえるし、真っ赤な海に浮かんでいるPORINのイラストも芸術的。アーティストってこういうことだね、と思ったりした。

 初出はアルバム『Grower』なのでこちらのリンクも。

Grower
cutting edge
2021-02-10


●燐舞曲「[Re] termination」


 ギリギリ4月なので入れといてもいいかなという一曲。最後になったけど4月に聴いて一番ヤバイのはこの曲でした。数か月前の単独ライブで確か一曲目に演じた曲で、いきなりの新曲だったので配信ライブのコメント欄が沸騰していたのを覚えている。明らかにライブ向きなのだけど、収録された音を聞いて感じるのはボーカルを務める加藤里保菜のうまさ。燐舞曲の曲はどれも簡単には歌いこなせないと思うが、だからこそいろいろな曲をこの何年かかけて歌ってきたことによる、彼女の成長が良く分かる。アイドルを推す喜びは成長を実感できることだよなあ、と再確認した。

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2021年05月03日

31年の人生を支えてくれたマンガの話



 ツイッターで交流のあるおたまさん(@otamashiratama)の↑のエントリーを読んで、自分でも振り返れたら面白いなとつぶやいたところ、おたまさんから「もし同じネタで振り返られたら、是非リプで教えて下さい!!めっちゃ興味あります!」とリプライをいただいたのでそれに応える回。
 同世代のおたまさんのマンガ遍歴は面白く(たとえば同じ漫画家でも影響を受けたものが違う。手塚やよしながふみ、吉田秋生、東村アキコなど)、かつ「知っているけど読んでないな」と思いながら読んだエントリーだったので、「じゃあ自分はどんなマンガ」を読んできたか、および「どんなマンガに支えられてきたか」を振り返ってみたい。

 カテゴリーはおたまさんのブログを参考にした。以下目次


1.初めて読んだマンガ(1995年)
2.小学生の頃に読んだマンガたち(1996年〜2002年)
3.中学生の頃に読んだマンガたち(2002年〜2005年)
4.高校生の頃に読んだマンガたち(2005年〜2008年)
5.大学生の頃に読んだマンガたち(2008年〜2014年)
6.社会人になってから読んだマンガたち(2014年以降)



1.初めて読んだマンガ(1995年):井上雄彦『スラムダンク』


 昔書いたエントリーでも書いたように、闘病中に差し入れてもらったことをきっかけに病院で読んだ『スラムダンク』にドハマりした。(これ以前の記憶はほとんどない。病気の影響もあってかなり欠損している)
 桜木花道のマネをして俺は天才だ!!!といろんな人に言ってたような気がする。やんちゃで自由な男の子って感じですね。スポーツマンガを通して勇気をもらうという経験は普遍的だけど、いいタイミングでいいマンガに出会えたなと今振り返っても思う。
 退院してからは親にねだり、バスケットのリングを庭に設置してもらうことができたので、ひたすら三井寿のマネをしてシュート練習していた。田舎だったのでバスケのチームが地元になかったことだけが唯一悔しい。(結果的に他のスポーツを複数経験できたことは悪くなかった)


2.小学生の頃に読んだマンガたち(1996年〜2002年)

 おこづかいが限られるので、中古or友達の家or図書館(図書室)という布陣。新刊書店が遠かったこともあり、自分で新刊のマンガを買うという発想はあまりなかった。



 今振り返るとどうってことはないが、当時このマンガを読む時の背徳感というか、大人の世界をのぞいているような気がしてドキドキしていた。成瀬川なるが好き。



 『こち亀』はこの時期に集めまくっていた。さっきの文章と矛盾するようだが、こち亀は既刊が1冊100円ほどで古書店で売られていたので、数少ないおこづかいをかき集めてコツコツ集めた。実家にはたぶん130冊くらいあるはず(途中であきらめたのでコンプリートはしていない)。『こち亀』で80年代や90年代の社会風俗を学ぶことができた(情操教育だ)し、競馬を見るきっかけにもなったと思う。その意味では、まだ幼かった自分に多大な影響を与えている。



 『ラブひな』が大人っぽい要素を含むラブコメだとするならば、『SALAD DAYS』はもう少し年齢を下げて手が届きそうな感じの正統派恋愛マンガで楽しかった。オムニバスだが、数少ない繰り返し登場するキャラである河村二葉が幸せになってくれて本当によかったという気持ち。



 30巻くらいまでは友人宅で読み(そこまでしかなかった)続きは2000年に入院した時の小児科の院内図書で読んだ。ありがとう院内図書。(スラムダンクもあった気がする)

【カラー版】海のトリトン 1
手塚治虫
手塚プロダクション
2015-12-20


 細かくは覚えていないけど手塚は図書館で借りられる貴重なマンガだったので、いろいろ読んだ気がする。その中でも好きだったのがトリトンだった。

サバイバル 1巻
さいとう・たかを
リイド社
2013-09-20


 小5,6の時の担任がなぜか教室に持ってきていたので読んだけど小学生が読むにはシビアすぎるぜ……と思いながらしかし読んだ記憶。

はだしのゲン (中公文庫コミック版)
中沢啓治
中央公論新社
2020-07-03


 こっちは図書館ではなくて学校図書室で読んだ気がする。定番の名作。

BUZZER BEATER 1 (ジャンプコミックス)
井上 雄彦
集英社
2005-02-04


 『スラムダンク』の井上雄彦が宇宙を舞台にしたバスケマンガという今考えるとぶっ飛んだことをやってたけど面白かった。


3.中学生の頃に読んだマンガたち(2002年〜2005年)

 この時期はいわゆるラブコメばかり読んでいるのが思春期真っ盛りって感じがして面白い。数が少ないのは部活で忙しかった&小説を読むことにハマり始めたのでマンガに食指があまり伸びなかった、あたりがおそらく要因。



 『ラブひな』がわりと現実に根差したマンガだったので、『ネギま!』で一気にファンタジックになって驚いたけどアニメも見たしマンガも完結まで見届けたので思い出の作品。



 『ネギま!』が思い出の作品と書いたけど『いちご100%』ほど思春期に読めてよかったマンガはない。あとで読んだとしてもこのマンガには「乗れなかった」と思う。最初から最後まで西野つかさ派だったので、最高のエンディングだった。



 スクランはおそらくアニメから入ったと思うが、マンガも完結まで読んだ。これも世代的にうまくハマってくれたマンガだなと思う。沢近愛理が好き。播磨といいところまでいってその先がない演出、本当にうまいと思う。



 今なお連載が続いているが、この頃からずっと楽しみに読んでいる。いつ終わるかは分からないが、今後も見届けていくだろうなと思っているマンガ。


4.高校生の頃に読んだマンガたち(2005年〜2008年)

 この頃も基本的に勉強&読書(小説)に忙しかったのでマンガにはあまり手が伸びなかった。しかしその中でもARIAとガンスリに出会えたのは僥倖だったと言える。人生においても非常に重要な二作品。





 ダイヤとエリア、それぞれリアルタイムに連載されていた野球マンガ&サッカーマンガなのでどちらも続きを楽しみにしていた。アニメは見ていないが、この時期追いかけてたことはよく覚えている。



 はい、高校時代は何を言ってもARIAだった。2005年に放映されたアニメ一期をきっかけに原作を読み始め、最後まで読んだがこのマンガに出会ったか出会わなかったかで人生を大きく左右するようなマンガだと思う。人生とは、生きていくということはどういうことかを、これほどまでに優しく柔らかいタッチで伝えられる天野こずえは本当にすごい……藍華が好き。永遠の推し。

GUNSLINGER GIRL(1) (電撃コミックス)
相田 裕
KADOKAWA
2014-05-01


 もう一つ高校時代に出会って衝撃を受けたのがガンスリ。こういうありえたかもしれない世界を、徹底的に妥協なく描くのは本当にすごい。救いはない、でもそれが現実なんだということを何度も思い知らされるマンガ。

5.大学生の頃に読んだマンガたち(2008年〜2014年)

 ここからは可処分所得&時間が増えてマンガを読む量も急増するので印象に残ったものを中心に。志村貴子やいけだたかし、ヤマシタトモコなど、百合マンガや少女マンガが少しずつ増えていく。

放浪息子1 (ビームコミックス)
志村 貴子
KADOKAWA
2012-09-01


青い花(1)
志村 貴子
太田出版
2013-10-16


 どちらもアニメから。志村貴子という化け物みたいな漫画家に邂逅したことが自分の人生にとっても大きなことだったと思う。末広安那が好き。彼女ならきっと彼女らしく生きていける。



 M1の時によく読書会をやっていた友人に薦められて読んだが、ここまで自分の人生に影響するとは……なマンガ。アニメも去年放映されたので見たけど、原作の雰囲気を生かしながらうまくまとめていたなと思う。榀子先生が好き。彼女の内面のどうしようもなさも含めて陸生にとっては愛おしいんだろうなと。

あまんちゅ! 1巻 (ブレイドコミックス)
天野こずえ
マッグガーデン
2018-11-05


 『ARIA』が完結した天野こずえが次に出したのがこれ。『ARIA』とはまただいぶ雰囲気が違うが、キャラクターの優しさと、舞台の美しさは健在。

バガボンド(1)(モーニングKC)
井上 雄彦
講談社
1999-03-23


 やや曖昧な記憶だが、大学2年の冬に家庭教師をした帰りに三軒茶屋の古書店で買ったのが最初。既刊は全部読んでいるので、リアルと一緒にこれも最後まで見届けたい。

HER (FEEL COMICS)
ヤマシタトモコ
祥伝社
2012-12-21


Love,Hate,Love. (FEEL COMICS)
ヤマシタトモコ
祥伝社
2012-12-21


 いつぞやかのこのマンガがすごい!で上位に入っていた『her』を読んで、そのあと続けて読んだのが『Love, Hate, Love』だったと思う。今を時めくヤマシタトモコが名前を上げ始めたころなので、早いうちに出会えてよかったなと。



 サッカーマンガはいろいろ読んできたが、こういう風にサッカーを描けるんだ、と思っていまでも面白く読み続けている。いまは定番になっている科学的トレーニングの先取り。



 アニメよりは先に触れていたと思うが、音楽の世界をここまで鮮やかに描くマンガは純粋にすごいなと思った。アニメでは音を出せるが、絵の表現で音を描くということをやってのけたのは素晴らしい。あと重くなりそうな展開をギャグで中和するセンスもうまい。



 吉田秋生で最初に触れたのがこれなので、過去のこととかそれこそバナナフィッシュとかは全然知らずに読んだ。映画も見た。女子サッカーという題材はあとで紹介する『さよなら私のクラマー』と共通するところでもあるが、あくまで姉妹たちの、鎌倉の日常を丹念に描いたところが好きだった。ドラマはあるけどドラマチックになりすぎない人間模様が好き。大学生協(早大生協ブックセンター)で全巻揃っていたので買った気がする。







 日本橋ヨヲコもある時期の早大生協ブックセンターに既刊がそろっていたので(フェアではなかったと思うが)せこせこ買って読み進めた。当時親交のあったネットの友人に薦められたのが最初。『少女ファイト』は途中で止まっているので続き読まねばねば。この人も人間を描くのが抜群にうまい漫画家だよなあと思う。



 読んだきっかけはよく覚えていないが大学時代に触れた中でも最高の百合だった。地方と東京の距離を繊細に描くことに成功したマンガだとも思う。



 これも少し古いマンガなのでどういう経緯で読んだかは覚えていないが、当時神戸在住のネットの友人が薦めていたから、だったと思う。エッセイマンガ風で続いていく作品だが、阪神大震災にまつわるエピソードは震えながら読んだ記憶。タッチが柔らかいからこそ、震災を描く時のすさまじさがかえって強調されていたように思えた。等身大の震災の記憶。



 M2の時にアニメ化されており、それきっかけでマンガも読み始めた。唯ちゃんが好き。これも大学時代に出会った最高の百合の一つ。初めて同人誌にアニメ批評を書いたのもそういえばこの作品。





 『ささめきこと』はアニメをきっかけに。これも最高の百合の一つ。『34歳無職さん』は全く違うテイストだが、34歳女性が無職であるという生活を淡々と描いていく。淡々とした日々の中にある発見や辛さをちゃんと描くところが誠実だなと思った。



 これもいつぞやかのこのマンガがすごい!で知った作品。穂積のデビュー短編集だったと思うが、表題作が抜群にうまくてしびれた。センスがなければあの短い中に、「式の前日」という様々な感情が入り混じる一瞬を描くことはできない。



 これはなんというか性癖というやつで、年上のあやしいお姉さんに弱いので読んだやつ。結果的にとてもよかったです、はい。


6.社会人になってから読んだマンガたち(2014年以降)

 さっきと同様数を絞って紹介していく。あとこのあたりからほぼ電子書籍に移行していく。ジャンル関係なく幅広く読んでいるが、医療マンガが急に増えるのは仕事の影響もたぶんある。



 ツイッターで知って読んだマンガ。最高の百合なのは言うまでもないが、渋谷、クラブ、徹夜明けの朝というシチュエーションをエモエモに描いているところがとても好き。そういう夜を経験した人間ならば、思うところがいろいろあるはず。



空電ノイズの姫君 (1) (バーズコミックス)
冬目景
幻冬舎コミックス
2017-04-24


 『イエスタデイをうたって』以降の冬目景は継続して読んでいる。『マホロミ』は建築、『空電ノイズの姫君』は音楽と、ジャンルが幅広すぎてこの漫画家の才能の底知れなさを感じる。

淡島百景 1
志村貴子
太田出版
2015-06-19


どうにかなる日々 新装版 ピンク
志村貴子
太田出版
2020-04-17


 志村貴子も才能が底知れない漫画家の一人だと思うが、『淡島百景』は芸術の領域に表現の水準を高めている。『どうにかなる日々』は旧作の新装版なのでいまはあまり描かないようなタッチで、かつ百合もBLも男女カプも全部描くという器用さを発揮しているオムニバス。映画も見た。確か志村貴子はジャンルどうこうをあまり意識せずその時に描きたいものを描いている、とどこかで言ってたような気がするので、「ジャンルを越境」という認識も強いわけではないのだろうなと思う。読者の側がカテゴリーで把握してしまうことの危うさを感じた。



 どこで知ったかは忘れたが、このマンガをまねていまでもストレッチをしているので実用的かつ、つかの間の共同生活をビビッドに描いた秀作。蘭のように、見た目は軽薄そうだが内面はしっかりしているキャラに弱い。「軽薄そう」という偏見がそもそもよくないのだけどね。



 今まで何度か最高の百合という言葉を使ってきたが、このマンガは間違いなく百合ジャンルだろうけれど、そのジャンルを超える力を持ったものすごいマンガ。アニメも見たが、原作の内容をだいぶはしょってしまっていたのでそこに惜しさがある。こういうマンガが評価されることによって、フィクションにおけるジェンダー描写の奥深さとその価値みたいなものが広まってくれるとよいなと思う。

Spotted Flower 1 (楽園コミックス)
木尾士目
白泉社
2015-12-25








 読んだ順番に。一番好きなのは『四年生』のカップルのその後を描く『五年生』で、社会人と学生五のギャップ、千葉と東京のギャップなど、後々になってみると些細なことがどれだけ切実だったかを思い起こしながら読んだ。人生はまっすぐに進まないが、だからと言って絶望しなくてもいいよな、とも思う。傷ついたり傷つけたりしながら、それでも生きていくことはできる。



 最近ついに堂々完結したが、これ以上のものを描こうとするならばまったく別の物語を立ち上げる必要があるのでこれでよかったと思う。最初から最後までマネージャーの生方が好きだったので、彼女が報われたこともとてもうれしかった。よかったね、よかったね、と思いながら。



 こちらも堂々完結。年の差恋愛をリアルに生々しく描いたならこうなるという感じ。男なので「少年」側にも、世代的には「私」側にも立てるので、読み進めるのが怖いなと思いながらもこの関係が一つの終着にたどり着けたのは救いがあったと言ってよかったと思う。

違国日記(1) (FEEL COMICS swing)
ヤマシタトモコ
祥伝社
2017-11-22


 いまのヤマシタトモコを語る上で『違国日記』は外せないだろうなと思う。デビュー以降一貫して描いてきたジェンダー意識をここまで前面に出すかというほど出しながら、甘くなりすぎずシビアになりすぎない適度な塩梅でつづっていくストーリーが良い。子どもよりも大人たちが感じる痛々しさが響くのは自分がもう30代、子ども時代が遠くなった存在だからだろう。





 わずか2巻の『さよならフットボール』が本当に素晴らしかったので、このテイストを残しつつ女子サッカーをテーマに選んだ『さよなら私のクラマー』もとても好き。アニメも見ている。マンガは最近完結したが終えてないのでアニメが終わったら追いかけようかな。









 医療マンガシリーズ。
 『アンサングシンデレラ』と『春よ来るな』は新聞書評で知って読んだ。前者はドラマ化されて驚いた(しかし見てない)。病院薬剤師も医学生も、そこまで身近な存在ではないので彼ら彼女らの日常の奮闘が見えてくるのは純粋に面白かった。『アンサングシンデレラ』を読んでいると「多職種連携」の難しさ、面倒くささをよく描いているなと思うが、でもそれがうまく機能してこそ良い医療を提供できるよね、というところまで描いているのがいい。医療職ではないが対人援助職である自分にとって学びが多く、励まされることも多いマンガ。
 『リウーを待ちながら』は現代の日本を舞台にしたパンデミック作品。リウーとはカミュ『ペスト』の主人公で、もちろんフィクションの存在だからリウーはやってこない(ゴドーがやってこないように)ので、その中でどうやって人命を救い、自分たちが生き残っていくのか、そのシビアなリアルを克明に描いた凄みはCOVID-19に襲われている現在に読むととてもフィクションとは思えなかった。
 『腐女医の医者道』は外科医として働きながら二次創作もガンガン展開するさーたりさんのエッセイマンガ。医療マンガ半分、育児マンガ半分と言ったところ。医師の世界における女医のマイノリティ性だったり、夫婦が医師であることの良し悪しであったり、いろいろなことが軽妙かつリアルなタッチで描かれていて毎回とても楽しい。





 アニメから入った。原作者が小豆島出身で舞台も小豆島(のおそらく土庄町界隈)なのでアニメでもマンガでも自分がリアルに知っている場所がいっぱい出てきてとても不思議な気持ちになる。『からかい上手の(元)高木さん』は別の漫画家による外伝だが、両方面白く読んでいる。



 東村アキコがいいよ!と教えてくれた前々職の同僚に感謝したい作品。創作に関わる人はみんな読んでほしい。ただひたすらに打ち込んだ日々のこと、そしてそれを支えてくれた人のこと。鮮やかとはとても言えない若くて苦い日々が、とてもまぶしく見える。

憎らしいほど愛してる
ユニ
KADOKAWA
2019-07-30


 これも最高の百合なので、はい。

1限めはやる気の民法 (白泉社文庫)
よしながふみ
白泉社
2017-12-28


 最近ツイッターで仲良くなった人に薦めてもらった作品。よしながふみは『きのう何食べた?』や『大奥』で話題をかっさらっているのでいつかちゃんと読まねばな〜というところに薦めてもらったので読んでみた。まだハガキを送って就活したり、卒論を手書きで製作していた90年代の空気が色濃く残るところをかなり細かく描写しいていて面白かった(このテイストは、同じく90年代の法学部が舞台となっている木尾士目『四年生』、『五年生』とも共通する)。真面目さが空回りしつつも自分の道を進む田宮や、なかなか底を見せないが秘めているものは熱い藤堂の両キャラが好き。二人には幸せになってほしい。


 以上! 紹介作品がこれより増えるとこちらも読者も両方疲れてしまうのでこのへんで終わりたい。
 振り返ると特にジャンル関係なく百合やBLも交えながら幅広く読んできている(ファンタジーやSFがやや少ないくらい?)が結局のところ人間をうまく描いているマンガは全部好きなんだろうなとお思う。その表現の幅や奥行きや、多彩さは各漫画家の個性とセンスと技量によるものではあるのだが、人間とか人生といった文学的な主題をマンガという二次元のモノクロの世界に落とし込んでいる人たちに触れてきた人生だった。そしてこれからも。

 あと、おたまさんが書いているように早く飲み会で気軽にマンガの話をできるようになる(ような社会状況が戻ってくる)といいなと思う。その日が来るまで、まだまだ読めてないものをたくさん読んで飲み会ネタのストックをためておきたい。

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2021年05月02日

副業でウーバーイーツ配達員を一年続けて感じた8つのこと

 昨年の3月25日から高松でもサービスが開始されたウーバーイーツの配達員になってだいたい一年が経つので、いろいろなことを振り返ってみたい。始めた頃の話は以下のエントリーで少し触れている。約13か月が経過するが配達回数は合計1220回ほどである。月間100配達くらいが一つの目安になっている(これは自動的になっているだけで目標にしているとかではない)。



 だらだら書くのもよくないので目次を作っておく。


◆目次

1.副業としての意義
2.前提としてのフィットネス
3.稼げる/稼げないタイミング
4.配達用アプリの選定が肝心要
5.トラブル対応は慣れるしか
6.ヘルメットしろ
7.つながりと情報収集
8.COVID-19とデリバリー



■1.副業としての意義

 去年の3月からスタートして、自転車の故障や自身のケガなどを除けばほぼオールシーズンで配達を行った(梅雨の時期はやや減らしている)。平均して月間3,4万の収入があり、年間でも40万の収入があったので、1月から12月まで通年で稼働すれば50万ほどは得られるだろうと見込んでいる。(ちなみに今年は現時点で約14万なので、単純に4倍すると56万)
 確定申告前がこの水準なので税引き後はここからいくらかは減るだろうが、それでも副業としては大きな影響がある。例えばつみたてNISAは年間40万が限度額だが、ウーバーイーツの収入だけでも(税引き後でも)十分賄えそうだ。

■2.前提としてのフィットネス

 1にまとめて書いてもいいかなと思ったが、前提はあくまでフィットネスであって、収入はその次である。前職と違って現在は仕事で身体を動かすことがあまりないので(介助はするがトレーニングとは違う)休日に運動の機会を作る必要があるが、2019年はあまりこれができていなかった。その結果?2020年の丸亀ハーフマラソンは過去最遅のタイムで完走した。正直言うと、完走できるか危ういかもとも思った。それくらい、運動をする時間やきっかけを作るのが難しい一年だった。
 しかし2020年の場合、休日に強い雨でなければ基本的にウーバーイーツをする、というスケジュールにした。何かしらの予定、例えば人に会ったり映画館に行ったりなどがあれば別として、基本的にはウーバーイーツをすることで休日を利用していた。
 ウーバーイーツも仕事なのでもはや休日ではないと言われたら確かにそうかもしれないが、自転車に乗って街を走るのはあくまで趣味的要素が強い。平均して一日30キロ走るので、月間走行距離が400や500を超えることも珍しくないわけだが、これが継続できるのは「自転車が好き」という一点に尽きる。逆に、ノルマのようなものを課して稼がないと、と思うとこんなに気楽にはできないだろう。

■3.稼げる/稼げないタイミングはある

 東京や大阪だとまた違うかもしれないが、高松のような地方都市の場合、稼げる/稼げないは明確に分かれる。たとえばもしウーバーイーツ一本でゴリゴリ稼ぐなら自転車は体力的に限界がある。バイクならロング/ショートどちらの戦略もとれるはずだが自転車だと運べる距離は限られてくる。これは仕方ないが、まあ副業なのでそういうものだと理解しながらやっている。
 タイミングについては、時期と時間帯と天候で大きく分かれる。時期、たとえば明確に暑い/寒い時期は目に見えて注文が多い。去年であれば、8月と12月は休憩する時間を捻出しなければ難しいほど注文が入っていた。しかし逆に10月や11月などの比較的過ごしやすい時期はこうでもない。ここまで目に見えて需要の差がある稼業なんだなと、ある意味面白く観察した。
 時間帯については、基本的には昼ピークと夜ピークと呼ばれる昼食、夕食の時間帯がねらい目になる。逆にこの時間帯以外はそれほど需要がない(8月や12月をのぞく)ので、よくやってたのは昼ピークに動く→自宅に戻って遅めの昼食&休憩(仮眠)→夜ピークに向けて16時〜17時ごろに再出発という流れ。
 いずれにせよ、このへんは経験で感触をつかみながら戦略的にやったほうが「効率的に稼げる」と思ってやっている。

■4.配達用アプリの選定が肝心要

 Uberのドライバーアプリに搭載されているマップはGoogleマップのデータがベースになっている。ただGoogleマップは「配達用のアプリ」ではない。つまり、マンションやアパート、戸建ての番地などを完璧にはフォローできていない。
 なので、これを補完するアプリがないと実際には厳しい。たとえば新築の集合住宅や戸建ては通常Googleマップには反映されていない(されるとしても時間がかかる)。ただ番地さえ取得できていれば、ゼンリンの「配達アプリ」やヤフーの「YAHOO!map」などで十分補完ができる。ヤフーのベースはゼンリンなので、番地や集合住宅の名称などもかなり正確だ。これを使い始めてからほとんど迷うことはない。(ただし「戸建ての置き配」は難しい。表札があれば別だが必ずしもあるとは限らないので時々間違えることがあるがご了承ください)

■5.トラブル対応は慣れるしか

 一応Uberはガイドライン的なものを公式に配布しているが、細かいトラブルは慣れるしかない。配達先の人が出てこない場合の対応、クレームへの対応、食事の破損時の対応などなど。

■6.ヘルメットしろ

 これは書いてそのまま。思った以上にノーヘルライダー(自転車)が多いけど、香川県の交通死亡事故の多さを考えると、いや考えなくても明らかに命知らずなのでヘルメットはすべき。究極は自己責任ではあるが、ロードバイク乗りでもノーヘルライダーが珍しくないのは本当に驚嘆する。
 
■7.つながりと情報収集

 さっき書いたトラブル対応の話につながるが、最近だと報酬改定とその影響とか、高松以外の他地域で何が起きているのかといった細かい情報は自分で集めたほうがよい。ブログを検索するとその手のブログはいくらでもあるし、ツイッターにも配達員を名乗るアカウントは豊富にあるので、ネットで情報収集しつつ、各種ニュースメディアもチェックしている。例えば日経新聞はウーバーイーツと出前館の統合をすっぱ抜くなど(その後否定されたが)やはり業界記事が詳しい。このへんの業界事情も、まだまだマーケット自体が新しいことも踏まえると勉強しておいて損はない。

■8.COVID-19とデリバリー需要の変化

 最後にCOVID-19がウーバーイーツに与えた影響について書きたい。
 高松で日々運んでいて感じるのは、まず昨年の最初の緊急事態宣言以降注文の仕方が変わってきたことだ。分かりやすく言うと、目に見えて置き配指定が増えた。最近だと体感では半々くらいになってきたが、まだまだ置き配への需要は高いなと感じる。
 また、去年の4,5月は学校が一斉休校になっていたこともあってか、平日日中の配達の際に配達先から子どもの声が聞こえることが多くあった。日々子育てや家事を担う大人たちのためにもウーバーイーツは存在していた(いる)んだろうなと思った。ここに在宅勤務や外出自粛が加わると、家の中にいて、しかも対面せずに食事にありつけるというフードデリバリーの意義はあるのだろう。


 以上、つらつら書いてきたがこんな感じである。引き続き、事故には気を付けてマイペースでやっていきたい所存。

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2021年05月01日

2021年4月の読書記録&書評




 3月はいっぱい読んだので4月は減りそうだと前回書いたけどなんとびっくり41冊も読んでしまった。どれだけ暇なんだと言われそうだが(ウーバーイーツは3月より暇になったので待機中によく読んでいた)暇かどうかより、時間の使い方が重要だなと改めて気づいた。
 このネタ、つまり「日常生活でいかに読書時間を捻出するか」だけで今度一本書いてみたい。

 後半にはmediumにアップした書評も載せている。4月掲載分は11本。

4月の読書メーター
読んだ本の数:41
読んだページ数:11757
ナイス数:71

闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))闇の左手 (ハヤカワ文庫 SF (252))
読了日:04月01日 著者:アーシュラ・K・ル・グィン
子育て支援の経済学子育て支援の経済学感想
実証系の計量経済学ではお馴染みのDIDやRDDを中心に保育政策、幼児教育政策や女性の産育休などについてその政策効果を分析。各章で一つずつのイシューを扱うのでテーマがダブることはあるが(例えば育休は5,8,8章で取り上げられている)それはつまり個々の政策や施策を厳密に分析、解釈しようとしているからでもある。計量経済学の手法を知らない人は多いと思うが、各章で展開される分析は面白く受け留められると思う(数式はイメージが掴めればよいと思う)。各分析の成果と限界がいずれもコンパクトにまとまっているのもリーダブル。
読了日:04月03日 著者:山口 慎太郎
セイバーメトリクスの落とし穴 (光文社新書)セイバーメトリクスの落とし穴 (光文社新書)感想
むちゃくちゃ面白い。もっと早く読んでおきたかったが今季開幕のタイミングで読めたのはよかったかもしれない。数字ではわからないことの魅力や、データ至上主義や勝利至上主義が野球を歪めてしまう事への危機感は結構重要だと思う。(数字やデータを否定するのではなく、限界があるという話として)
読了日:04月05日 著者:お股ニキ(@omatacom)
われら (集英社文庫)われら (集英社文庫)感想
有名なので読んでみたがたしかにこれは1984に影響を与えてそう。主人公のメンタリティの違いはあるけど、慈愛の人はビッグブラザーだよなと思いながら読んだし、過去を葬り去って歴史を変え、人間の生き方を変えて管理国家を形成していくスタイルはディストピア小説の古典といわれるゆえんかな。
読了日:04月06日 著者:エヴゲーニイ・ザミャーチン
闘争領域の拡大 (河出文庫)闘争領域の拡大 (河出文庫)感想
90年代に書かれたウエルベックの長編一作目だけど全然古びてないな。ポストモダンというか新自由主義というか、いろいろなことを感じる。
読了日:04月06日 著者:ミシェル ウエルベック
シェリ (光文社古典新訳文庫)シェリ (光文社古典新訳文庫)感想
岩波文庫で昔一度読んだので訳を変えて再読。ストーリーもあまり覚えてなかったので新鮮な気持ちで面白く読んだ。中年になってさらに老いを感じる元高級娼婦のレアと、25歳にしては幼さも残る若者シェリとの間の歳の差のある恋の面白さや切なさの中には普遍的な感情が豊富にある。離れがたいけどどこかで別れなければ生きていけないのが人生か。
読了日:04月07日 著者:シドニー=ガブリエル コレット
はじめての社会保障〔第18版〕 (有斐閣アルマ)はじめての社会保障〔第18版〕 (有斐閣アルマ)
読了日:04月07日 著者:椋野 美智子,田中 耕太郎
韓国映画・ドラマ――わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020韓国映画・ドラマ――わたしたちのおしゃべりの記録2014~2020感想
面白かった。映画やドラマは詳しくないのでふむふむと勉強する感じで読んだ。小説の話は知っている話題が多かったし、チョ・ナムジュの『彼女の名前は』にまつわるおしゃべりを特に面白く読んだ。キムジヨンと同じくらい評価されていい本だと思う。あと本の最後の方にフェミニズムとSFの話が出てくるが、これを昔の日本で実践していたのが鈴木いづみだろうと思うので彼女が現代のジェンダー/フェミニズムのカルチャーの議論の中で再評価されてもいいんじゃないかなとも思う。
読了日:04月09日 著者:西森 路代,ハン・トンヒョン
モンスーン (エクス・リブリス)モンスーン (エクス・リブリス)感想
空恐ろしい一冊。表題作と「カンヅメ工場」と「少年易老」が好き。「散策」の不穏さもよかった。
読了日:04月09日 著者:ピョン・ヘヨン
あなたもきっと依存症 「快と不安」の病 (文春新書 1304)あなたもきっと依存症 「快と不安」の病 (文春新書 1304)感想
著者のこれまでの研究や社会活動がぐっと凝縮された一冊。新書なのでゴリゴリの専門性というよりは読みやすさを重視した書き方にはなっているが、エビデンスに基づく治療や支援の紹介が随所に具体的になされているのはよい。フィリピンの薬物政策はドゥテルテの強硬なイメージが強かったので日米の支援の枠組みが展開されているところは面白かった。過度な刑罰重視から治療へという流れや、規範や偏見よりエビデンスをという姿勢はもっともっと一般にも広まっていくとよい。
読了日:04月10日 著者:原田 隆之
女ごころ (ちくま文庫)女ごころ (ちくま文庫)
読了日:04月12日 著者:W・サマセット モーム
悪童日記 (ハヤカワepi文庫)悪童日記 (ハヤカワepi文庫)
読了日:04月12日 著者:アゴタ クリストフ
現代民主主義-指導者論から熟議、ポピュリズムまで (中公新書 2631)現代民主主義-指導者論から熟議、ポピュリズムまで (中公新書 2631)
読了日:04月12日 著者:山本 圭
人が死なない防災 (集英社新書)人が死なない防災 (集英社新書)
読了日:04月13日 著者:片田 敏孝
紛争解決ってなんだろう (ちくまプリマー新書)紛争解決ってなんだろう (ちくまプリマー新書)
読了日:04月13日 著者:篠田 英朗
いやしい鳥 (河出文庫)いやしい鳥 (河出文庫)
読了日:04月15日 著者:藤野 可織
IoTまるわかり (日経文庫)IoTまるわかり (日経文庫)
読了日:04月15日 著者:
フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)フランスはどう少子化を克服したか (新潮新書)感想
保育制度はその国の歴史や文化に根づいたものなので容易に変えにくい印象を持ったが、かなり厳格な産育休の制度はもっと積極的にマネをしても良いと思ったし、父親だけど対象にした父親教室の話が面白かった。仕事やキャリアとの両立のむずかしさはどうしてもあるようだけど異議申し立てや試行錯誤をして制度が漸進している様子が伺えるのはフランスらしくて面白い。
読了日:04月16日 著者:盧 順子
本と私 (岩波新書 新赤版 (別冊8))本と私 (岩波新書 新赤版 (別冊8))感想
本と私を題材にしたアンソロジーエッセイ集。書いてるのは一般の人。読み友達の話と沖縄にふらっと移住したら10年以上経っていた話が好き。
読了日:04月17日 著者:
アフリカの日々 (河出文庫)アフリカの日々 (河出文庫)感想
素晴らしい読書体験だった。約100年前、ケニアはナイロビの高地におけるコーヒー農園経営の話から始まり、現地の部族の風習や文化、人間関係、あるいは争いなどの描写を小説に書くような筆致で感情豊かにかつディティールにこだわって書きこんでいる。ヨーロッパ出身者との交流も様々描写があり、中でもデニスとの関係は複雑で切ない。最後はコーヒー農園の経営難が続き、アフリカを去る日の出来事までが書かれる。まさに、作家にとってのアフリカの日々が色濃く凝縮された一冊。
読了日:04月17日 著者:イサク・ディネセン
性格とは何か-より良く生きるための心理学 (中公新書)性格とは何か-より良く生きるための心理学 (中公新書)感想
主にビッグファイブをキーとして読み進めていくタイプの本。内容的には心理学エッセイと言えるほど読みやすいが引用される文献は100を越え、十分読み応えあり。
読了日:04月17日 著者:小塩 真司
良き統治――大統領制化する民主主義良き統治――大統領制化する民主主義
読了日:04月19日 著者:ピエール・ロザンヴァロン
大阪大阪
読了日:04月20日 著者:岸 政彦,柴崎 友香
新型コロナウイルスとの戦い方はサッカーが教えてくれる新型コロナウイルスとの戦い方はサッカーが教えてくれる
読了日:04月20日 著者:岩田健太郎
『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する (光文社新書)
読了日:04月20日 著者:亀山 郁夫
新装版レズビアン短編小説集 (平凡社ライブラリー)新装版レズビアン短編小説集 (平凡社ライブラリー)感想
レズビアンと名打ってあるが比較的広くこの言葉を使っているようで日本の読者には百合小説と言った方がイメージが伝わりやすいかもしれない。どれも面白かった(強いて言えばジュエット「マーサの愛しい女主人」、マッカラーズ「あんなふうに」、ウルフの名作「外から見た女子学寮」がよい)し、訳者である利根川真紀の解説がよい。本作に収録されてある小説が生み出された時代背景や歴史的な文脈、第一波フェミニズムや第ニ波フェミニズム、あるいはゲイ文学との関係性など、非常に丁寧に文脈を抑えていて勉強になった。
読了日:04月21日 著者:ヴァージニア ウルフ
三ギニー (平凡社ライブラリー)三ギニー (平凡社ライブラリー)感想
やはり名著ですね。ウルフが病と呼んでいる男性の中にある固定的な観念はまだまだ根深いので今もなお読む価値がある。
読了日:04月21日 著者:ヴァージニア ウルフ
小説の自由 (中公文庫)小説の自由 (中公文庫)感想
エッセイと文芸批評の中間といった感じの自由な文章。脱線横道お構いなし。アウグスティヌスの話から急にイチローやバリーボンズの話に脱線していくところが好き。
読了日:04月22日 著者:保坂 和志
青い麦 (新潮文庫)青い麦 (新潮文庫)感想
大人になりたい/なりたくない感情が交差するのはどの時代の10代にもあるよねと思いながら読んでいた。青春の美しさというより人生や恋愛の苦味が際立つが、『シェリ』がそうだったようにそこがコレットの持ち味でしょうね。
読了日:04月22日 著者:コレット
ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代ひと相手の仕事はなぜ疲れるのか―感情労働の時代感想
ホックシールドの感情労働の議論を引き合いにしつつ、看護の仕事を中心として感情労働はなぜどのように疲れるのかを語っていくもの。論文というよりはエッセイや批評に近い文体なのでそこは割り引く必要がある(話が割とよく飛躍しがちでもある)が看護師以外の援助職が読んでも参考になる話題は多かった。解決策がないと感想を挙げている方が複数いるが、感情労働の構造を明らかにしていく書籍なのでそもそもハウツー本ではない。その上で、構造を理解することができれば解決できなくても上手く対処することは十分に可能だと私は思う。
読了日:04月24日 著者:武井 麻子
牝猫 (1956年) (新潮文庫)牝猫 (1956年) (新潮文庫)
読了日:04月25日 著者:コレット
ストレスのはなし - メカニズムと対処法 (中公新書)ストレスのはなし - メカニズムと対処法 (中公新書)
読了日:04月25日 著者:福間詳 著
アメリカの政治アメリカの政治
読了日:04月26日 著者:
塀の中の事情: 刑務所で何が起きているか (941) (平凡社新書)塀の中の事情: 刑務所で何が起きているか (941) (平凡社新書)感想
すでに知っていることも多かったが取材を通して一人一人に接近していくリアリティは読み応えがある。ただこの書き方は被害者は被害者家族、遺族の視点が弱いのでその点はバランスに欠ける(構成の限界ではあるだろうが)。個別的には開放的刑務所の話、医療刑務所の話、更生保護施設の話を特に興味深く読んだ。
読了日:04月27日 著者:清田 浩司
目の眩んだ者たちの国家目の眩んだ者たちの国家
読了日:04月27日 著者:キム・エラン,パク・ミンギュ,ファン・ジョンウン,キム・ヨンス
超動く家にて (創元SF文庫 み 2-3)超動く家にて (創元SF文庫 み 2-3)感想
同人誌へ寄せた短編も含むバラエティに富んだ作品集。「アニマとエ^ファ」、「星間野球」が面白かった。
読了日:04月27日 著者:宮内 悠介
バタイユ入門 (ちくま新書)バタイユ入門 (ちくま新書)感想
バタイユはほとんどなにも知らない状態でなんとなく読み始めたが面白かった。ニーチェへの一連の言及とプルーストやマネへの評価が面白かった。
読了日:04月28日 著者:酒井 健
あたしたちの未来はきっと (ウィッチンケア文庫)あたしたちの未来はきっと (ウィッチンケア文庫)
読了日:04月28日 著者:長谷川町蔵
モテとか愛され以外の恋愛のすべて (文庫ぎんが堂)モテとか愛され以外の恋愛のすべて (文庫ぎんが堂)
読了日:04月29日 著者:桃山 商事
競馬の血統学―サラブレッドの進化と限界 (NHKライブラリー)競馬の血統学―サラブレッドの進化と限界 (NHKライブラリー)感想
なんとなく古本屋で読んでみたが面白かった。ネアルコやナスルーラ、ノーザンダンサーなど具体的な馬を基軸に血統とは何かを歴史的に語っていく本。
読了日:04月30日 著者:吉沢 譲治
絶望死のアメリカ絶望死のアメリカ
読了日:04月30日 著者:アン・ケース,アンガス・ディートン

読書メーター


























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2021年04月06日

現代史再考プロジェクトとして生み出された至上のノワール ――『KCIA 南山の部長たち』(韓国、2020年)





見:ホール・ソレイユ

 『1987』や『国家が破産する日』など、去年から意識的に韓国の現代史を題材にした映画を見ているが、その中でも18年間大統領の在位にあった朴正煕を暗殺するまでの40日間に密着した本作を楽しみにしていた。少し前に『知りたくなる韓国』で韓国という国家や社会の成り立ちを勉強していたが、そういった歴史的な知識があった方がより面白く見られるだろうと思う。(韓国人にとっては当然の歴史も、日本人、特に若い世代にとっては近いけれど少し遠い国の歴史はリアリティが薄いため)

 とはいえ、『1987』やあるいは『タクシー運転手』あたりの軍政期の末期の民主化運動を題材にした映画は製作が容易ではなかったとも聞く。本作についても、「事実を基にしたフィクション」という体裁をとった映画としてキャラクターの名前は一部を変えられている。朴正煕の娘である前大統領朴槿恵政権が継続していた場合、本作を含めた一連の映画の製作は難しかっただろう。

 朴槿恵はただでさえ左派、リベラルの文化人をブラックリストとしてピックアップしていただけに、自身の父の威信に関わる映画を(しかも父を民主化を阻害し、市民に対して暴力装置として機能する敵として描く映画を)作るという行為は許しがたいものであったはずだ。ゆえに、朴槿恵政権が倒れたおかげで戦後史や現代史を題材にした映画が作られるようになったのは、当の韓国に住む人たちにはもちろん、海外で見る自分のような立場においても韓国という国を概観し、理解するための有益な道具となっている。これらの映画はそれぞれ独立しているが、続けて見たり比較したりすることで、鑑賞する側にとって戦後史をもう一度振り返り、現代を見つめなおすためのひとまとまりのプロジェクトクトのように見える。

 前置きが長くなったが、本作は大統領暗殺という明確な着地点を設定した上で、それがなぜ起きたのかを解き明かしていくミステリーのような構造をとっている(いわゆるwhy done it型のプロットである)。しかしそれ以上に本作を覆うのは韓国映画ならではのノワールの空気感である。それを真正面から体現するキム・ギュピョン役のイ・ビョンホンが最初から最後まで本当に素晴らしい。

 戦後も長く軍政が敷かれ、民主化までに長く時間がかかった韓国社会において、KCIAのような諜報機関の暗躍や、政治的に対立した人間に対する拷問や虐待などは珍しくなかったはずだ。本作でもわずかながら拷問のシーンが描かれているが、これがリアリティを持つのはまだ近い歴史だからだろう。若い世代は別として、中高年以上の世代にとって軍政の記憶はまだ生々しく残っているはずだから。

 先ほど最初から最後まですばらしいと書いたイ・ビョンホンが物語の軸である。あくまで本作の軸であって、すべての答えを提供しているわけではない。ただ、実行者である彼の動機、つまり心理的な動きの変化に密着することで、直接的な答えとはまた違う意志も見えてくるようになっている。韓国では現在でも権力に欲がくらんだという解釈と、朴正煕の独裁に対して反逆したという二つの解釈があるようだが、どちらが正しいとも言えない(どちらとも正しく、またどちらとも間違いの可能性もある)。イ・ビョンホンがあまりにも完璧な演技をする(特に表情、目の動きが素晴らしい)ことで、観客に対して様々なボールが投げられる。それらをどうキャッチして、どう解釈するかはこちら側にゆだねられているのだ、最初から最後まで。

 歴史でもあり、現代でもある1979年のことを考えるならば、その後に続く歴史である『タクシー運転手』(光州事件)や『1987』(6月民主抗争を中心とした一連の民主化運動や学生運動)に思いを馳せてもよいと思う。民主化して30年以上経つとは言え、少し前までは軍政期のイメージをもまとう朴槿恵が政権を持っていたのが韓国という国家でもある。過去は一時のものとして終わらずに現代まで確実につながっているということを、改めてこの映画を見て考えていた。





知りたくなる韓国
春木 育美
有斐閣
2019-07-11


1987、ある闘いの真実 (字幕版)
ソル・ギョング
2019-02-06


国家が破産する日 (字幕版)
ハン・ジミン
2020-04-08






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2021年04月01日

2021年冬に聴いた音楽

 以前にクールごとのアニソンまとめとか、その月ごとに聴いた音楽をまとめるエントリーを書いてたことがあったがしばらくやってなかったので、ちょっと再び意識してつけてみたいと考えてのエントリー。
 理由はいろいろあるが、ここ最近はフィジカル(CDなど)で音楽を聴かずに、サブスクリプション(自分の場合はamazon music unlimited)とyoutube、あとラジオが主な音楽視聴体験となっている。amazonやyoutubeではマイミュージックに追加するなどしているが、あちこちに情報が散らばっている結果「特定の時期にリリースされた新曲」をまとめる場所が欲しいなと思っていた。
 というわけで今回は2021年の1月〜3月にリリースされた楽曲やアルバムをピックアップして、短評的にコメントを残していきたいと思う。それでは行ってみよう。


●ヨルシカ「春泥棒」、『創作』
創作
UNIVERSAL MUSIC LLC
2021-01-26


 この三ヶ月、一番聴いていたのはヨルシカだと思う。特に1月上旬にリリースされた「春泥棒」の楽曲とMVがいずれも素晴らしい。春が来る前に桜が散りゆく姿を何度映像で見たことか。いま改めてこの曲を聴いて、MVを見て、しみじみとしている。



 オンラインライブ「前世」もめちゃくちゃよかった。



●中島愛『Green Diary』
green diary
FlyingDog
2021-02-03


 以前(活動休止前)と比べるとここ最近は中島愛の活動を熱心に追っていなかったが、本人がTBSラジオのアトロクに出演していた際のインタビューが面白かったので久しぶりに聞き、そのままハマっている。アルバムタイトルにある通り、彼女のデビューのきっかけとなったランカ・リーを意識したグリーンのカラーイメージそのままに、透明感漂う楽曲が多い。同い年なので30代になってもこの透明感は希少だよな……とただただ感動している。

●田所あずさ『Waver』
 
Waver
Lantis
2021-01-27





 初めてセルフプロデュースを行ったというころあずのアルバムも面白い。「クリシェ」と「死神とロマンス」が好き。今までのような「タドコロック」路線というよりは、やりたいことをパッケージで詰め込んだ感じが伝わってくる。

●宇多田ヒカル「One Last Kiss」


 もはや何も言うまいなんだけど、MVがかわいすぎてやばかった。

●佐藤千亜妃「声」


 凍てつくようなMVの風景、消えそうな声で歌う佐藤のボイス、そして文字通り「声」というシンプルで最低限の情報しかないタイトル。別れの季節に佐藤が歌う歌は「桜が咲く前に」(きのこ帝国)を思い出すが、もう少し大人になった女性の目線としてつづられたのが「声」という楽曲かもしれない。
 いずれにせよ、極上の6分50秒。時間が止まったような、そんな不思議な感覚にさせられる。

●古川本舗「yol feat.佐藤千亜妃 (Music Video)」


 古川本舗復帰第二弾。佐藤千亜妃が来るとはさすがに思ってなかったので震えている。100回くらい聴いた。耳が幸せなので一生聴いていたい。あと映像がすげえわね。
 音楽も佐藤の声を生かす最高のエレクトロニカ。「声」も「yol」も、佐藤の声を一つの楽器のようなものとしてメロディに自然に溶けているのがいいなと思う。こちらも別れの季節にふさわしい歌である。

●フレンズ「約束」


 アニメ『ホリミヤ』のED。フレンズがホリミヤ、という組み合わせだけでも面白いと思ったし、かなり青春(MVはもう少し先の青年期かなと思える)に寄せた感じで、普段のフレンズのメロディとも違うオーソドックスなバラードだけど、その分じわじわ効いてくる感じが新鮮。

●愛美「ReSTARTING!!」


 アイマスやバンドリやD4DJなどでもうかなりの楽曲を歌って来た愛美がついに個人名義でデビュー。MVめちゃくちゃかわいくないですか。(さっきからMVかわいいMVすごいばかり言ってる人)
 イメージの楽曲はバンドリに近い気がするのでアイマスのジュリアに寄せたような、nano.RIPEとのコラボが見てみてえ感。

●Ado「ギラギラ」


 「うっせぇわ」がバズりまくっているAdoだけど楽曲の雰囲気とボーカルのマッチ度はこっちの「ギラギラ」が絶妙だと思う。彼女の低音ボイスが今後どういう音楽に寄っていくかは分からないけど、まだまだ若いので全部が楽しみ。
 声質はyamaに近いイメージもあるけどyamaはポップスも行けるのに対してAdoはもっとハードロック寄りなイメージ。「ギラギラ」がいいのはロックバラード調なところだろう。

●yama「一寸の赤」、「麻痺」


 yamaは毎月一曲ずつくらいアップしてません?と思うほどハイペースに楽曲を作っているが、思った以上に器用な歌唱でなんでもできるなと思わせてくれる一曲。優しいyama、いいですね。



 ただ本来の路線はこういうサウンド向きだなと思う。ポップスとロックとエレクトロの間あたり、

●Night Tempo「真夜中のドア/Stay With Me (Night Tempo Showa Groove Mix) 」


 去年の秋ごろからNight Tempoという韓国のDJの80sアレンジがヤバイという話は聞いていて、その中でも一番ヒットしてるのが松原みきの「真夜中のドア」らしいのだけど、これは確かにめちゃくちゃいい!
 レトロと新しさが違和感なく、そしてめちゃくちゃおしゃれに混ざり合っている。COVID-19でなければあちこちのクラブで流されてもいいのでは〜というような万能なアレンジと、色あせない松原みきのボイスが本当に良い。これも100回くらい聴いた。

●Rainych & evening cinema「RIDE ON TIME」


 東アジアで80sブームを作ったのがNight Tempoだとするならば東南アジアでブームを作っているのはいわゆる歌ってみたでブレイクしているRaynichらしい。まあこのシーン本当によく分からないことだらけなのだけど、満を持してカバーした山下達郎の楽曲がかわいすぎてヤバい。え、こんなにかわいく(そしておしゃれに)RIDE ON TIMEを歌っていいんですか感。
 いやまあ原曲もオシャレだけど、そこからさらに現代のエレクトロサウンドをじわじわ足していった感じ。

● Millie Snow「Plastic Love - Mariya Takeuchi (Cover) 」


 night tempoやRaynichを聴いているとレコメンドされたのがこのMillie Snowのカバー。ボッサ風のゆったりとしたアレンジに大人びた歌唱がよく似合う。本当にアジア各国で80sが流行ってんのなと思わせる動画。

●Limonene「nevergreen」


 最近kamome sanoをほとんど聴いてなかったが久しぶりに聴いたらさすがといったセンス。ボーカルの声に合わせた音を作るのがうまいのと、アレンジがハイセンスなのは安定している。

●坂本真綾『Duets』、坂本真綾×内村友美「sync」
Duets
FlyingDog
2021-03-17


 はい、昨日が41歳の誕生日でした。おめでとうございました。ほんとどれも面白いんだけど、la la larks内村友美と組んだ「sync」がお気に入り。冒頭のピアノでやられる上に二人の声の調和が最の高。最の高だよ!



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2021年3月の読書記録


 2月に続いて3月もよく読んだ一か月だった。だいぶ暖かくなってきたので、ウーバーイーツの注文を待ちながら公園のベンチで読書をするのが快適でよい。4月はここまで読めない気もするが、3月だけでかなり積読を崩せたので引き続き積読を減らしていきたい所存。


3月の読書メーター
読んだ本の数:32
読んだページ数:8924
ナイス数:83

知りたくなる韓国知りたくなる韓国
読了日:03月01日 著者:新城 道彦,浅羽 祐樹,金 香男,春木 育美
自閉症 成人期にむけての準備―能力の高い自閉症の人を中心に自閉症 成人期にむけての準備―能力の高い自閉症の人を中心に感想
やや古い本だが事例が豊富で面白く、切り口も実践的かつ引用が多く一冊で多くのものを得られる本。自閉症についての本ではあるが発達障害を伴わない知的障害やADHDなど他の近接する障害児・者への支援に有効な要素も多くあるのではと思いながら読んでいた。自閉症と精神疾患の関係については今読むものとしては情報が古いと思われる。(現在では発達障害を持つ人は一般の人より精神疾患を持つリスクが高いとされている)
読了日:03月01日 著者:パトリシア ハウリン
パリ環状通り 新装版パリ環状通り 新装版感想
ユダヤ系の父を探偵や刑事のように追い求める中で出会う人たちがいい意味でどうしようもない人たちばかりで小説としては面白い。世の中いい人ばかりでもないわけだが、人生を落ちていく過程ではそういう人たちと「出会ってしまう」のかもしれないと考えていた。
読了日:03月02日 著者:パトリック・モディアノ
こちらあみ子 (ちくま文庫)こちらあみ子 (ちくま文庫)感想
あみ子も七瀬も自閉的(そしておそらくあみ子には知的障害もある)なため家族や学校での人間関係や他者との双方向のコミュニケーションが成立しない。そしてそれを正確に認識できない二人の様を、今村夏子は容赦なく書き込んでいる。
読了日:03月03日 著者:今村 夏子
アメリカを動かす宗教ナショナリズム (ちくま新書)アメリカを動かす宗教ナショナリズム (ちくま新書)
読了日:03月05日 著者:松本 佐保
廃墟に咲く花廃墟に咲く花
読了日:03月06日 著者:パトリック モディアノ
人之彼岸 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5051)人之彼岸 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5051)
読了日:03月07日 著者:郝 景芳
専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話 (幻冬舎新書)専門医が教える 新型コロナ・感染症の本当の話 (幻冬舎新書)
読了日:03月08日 著者:忽那 賢志
逃げて勝つ 投資の鉄則 大負けせずに資産を築く10年戦略逃げて勝つ 投資の鉄則 大負けせずに資産を築く10年戦略感想
マクロ経済学や金融論の理論的、統計的な裏付けが豊富で勉強になったが投資手法として新奇性のものはない。ただ何も考えずにひたすらつみたてましょうという手法のリスクを提示した上でコア・サテライト投資を推奨する点は説得力がある。実際に「逃げて勝つ」手法を実践するには正直一般投資家には難しいように思うが、投資ブロガーやyoutuberが書いた理論的裏づけが弱い自己流投資本を買うよりは本書の方がよほど参考になる。
読了日:03月09日 著者:田中 泰輔
光と私語光と私語感想
わせたんっぽかった。
読了日:03月13日 著者:𠮷田 恭大
中央駅中央駅感想
最後まで読んで改めて、男も女も固有の名前を与えられていない、架空だけどどこに存在していてもおかしくない存在として小説の中の世界を生きていたのだなと思う。現実と限りなく地続きな世界で、希望も未来もなく、刹那的にしか生きられない苦しさを、丹念に。
読了日:03月14日 著者:キム・ヘジン
倫理学入門-アリストテレスから生殖技術、AIまで (中公新書)倫理学入門-アリストテレスから生殖技術、AIまで (中公新書)感想
同じ著者の『倫理学の話』の方がより倫理学全体に対して入門的で、本書はむしろ応用倫理学の入門といった印象を受けながら読んだ。
読了日:03月14日 著者:品川 哲彦
親しい君との見知らぬ記憶 (ファミ通文庫)親しい君との見知らぬ記憶 (ファミ通文庫)
読了日:03月15日 著者:久遠 侑
カント『純粋理性批判』 2020年6月 (NHK100分de名著)カント『純粋理性批判』 2020年6月 (NHK100分de名著)感想
タネ本である純粋理性批判はまだ読み通せてないけど本書はなんとか読み通すことができた。カントの課題がフッサールヘ、そして現象学へと引き継がれてゆく流れのダイナミズムもまあなんとか把握できたといったところ。
読了日:03月16日 著者:西 研
暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 (新潮文庫)暗い夜、星を数えて: 3・11被災鉄道からの脱出 (新潮文庫)感想
厚い本ではないが内容は濃い。震災を体験した者ではありながら外部の人間である著者の感受性がいかんなく発揮されている優れた一冊。COVID-19下の今読み返すと共通する感覚が多いことにも驚く。
読了日:03月16日 著者:彩瀬 まる
ドールドール感想
中学生男子とラブドールという組み合わせから予測できる筋を容易に飛躍していく展開の運び方がお見事でした。
読了日:03月16日 著者:山下 紘加
田舎の未来 手探りの7年間とその先について (SERIES3/4 4)田舎の未来 手探りの7年間とその先について (SERIES3/4 4)感想
同世代である著者の成長物語としては面白いが手法として新しいものがあるわけではないし、リチャード・フロリダや宇沢弘文の議論もこの領域では何周もされている話なので新味はない。途中で選挙では変わらないと言う話が出てくるが田舎をなんとかするのは田舎の政治や行政への視点はむしろ欠かせない(都会より官のセクターの存在が大きいため)のでそこへの着目がもっとあってもよかったはず。まあまだ若い著者なので、今後の展開がどうなるかは気にしていたい。
読了日:03月17日 著者:さのかずや
独り舞独り舞感想
3年ぶりに再読。前回はかなり雑な読みをしてしまっていたなと気づいた。この結末を希望的に受け取っていいのか、簡単に美しく死ぬことはできないことへの諦めを受け取っていいのかは難しいけれど、過去とは違う形で「現実に帰れ」というメッセージは重要かなと思う。つまり過去をずっとマイナスに引きずった状態で現実に戻るのではなく、修復的な形で現実に戻ることの可能性を検討することは、あってよいのだろうと思う。
読了日:03月18日 著者:李 琴峰
恋愛結婚は何をもたらしたか (ちくま新書)恋愛結婚は何をもたらしたか (ちくま新書)
読了日:03月18日 著者:加藤 秀一
介助の仕事 ――街で暮らす/を支える (ちくま新書)介助の仕事 ――街で暮らす/を支える (ちくま新書)
読了日:03月19日 著者:立岩 真也
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(上)新装版 (新潮文庫)
読了日:03月20日 著者:村上 春樹
地震イツモノート : 阪神・淡路大震災の被災者167人にきいたキモチの防災マニュアル地震イツモノート : 阪神・淡路大震災の被災者167人にきいたキモチの防災マニュアル感想
イラストが豊富で読みやすく、リアルな体験談が生々しく響く。家具の固定といった日常の防災から避難所の運営についてなど、ポイントポイントがしっかり押さえられて一家に一冊あっていいような本。
読了日:03月20日 著者:
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド(下)新装版 (新潮文庫)
読了日:03月21日 著者:村上 春樹
「個人的なもの」と想像力「個人的なもの」と想像力
読了日:03月21日 著者:吉澤夏子
社会保障再考 〈地域〉で支える (岩波新書)社会保障再考 〈地域〉で支える (岩波新書)
読了日:03月23日 著者:菊池 馨実
人間の絆〈上〉 (岩波文庫)人間の絆〈上〉 (岩波文庫)感想
モームが同性愛者だったのではという話は文学史に明るくないので全然知らなかったけど上巻を読んでいると本質的に女嫌いなのかな?(女性に惹かれるがどこか侮蔑している気持ちもある)と思うやり取りも多いので、この辺が今後どう表現されるか気にしていく。 http://www.kankanbou.com/ireland/item_230.html
読了日:03月27日 著者:モーム
現代思想 2020年3月臨時増刊号 総特集◎フェミニズムの現在 (現代思想3月臨時増刊号)現代思想 2020年3月臨時増刊号 総特集◎フェミニズムの現在 (現代思想3月臨時増刊号)
読了日:03月27日 著者:菊地夏野,河野真太郎,田中東子,貴戸理恵,鈴木涼美,ヤマシタトモコ,瀬戸夏子
ハイウイング・ストロール (ハヤカワ文庫JA)ハイウイング・ストロール (ハヤカワ文庫JA)
読了日:03月28日 著者:小川一水
紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている感想
今読む価値のある一冊だった。
読了日:03月28日 著者:佐々 涼子
人間の絆〈中〉 (岩波文庫)人間の絆〈中〉 (岩波文庫)感想
パリでも画家見習いぐらしを終えてイギリスに戻り、ミルドレッドに振り回されながら医学生として過ごしていく日々。パリでの生活の居心地よさやノスタルジアには、時代は少し違うがヘミングウェイの『移動祝祭日』みを感じる。
読了日:03月28日 著者:モーム
人間の絆 下 (岩波文庫)人間の絆 下 (岩波文庫)感想
ミルドレッドと結ばれても互いに不幸になるだけだろうなと思いながら読んでいたが、結果的に二人が別れることを選択して別々の道に進み始めることでようやく青春期の恋愛が終わったと感じた。無事医者になり職を得たことも含めてようやく大人として独立することで、サリーとそれなりの関係が作れたのだろう。
読了日:03月30日 著者:モーム
東京日記 他六篇 (岩波文庫)東京日記 他六篇 (岩波文庫)感想
久しぶりに百間読んだけど文章に味わいがあってとてもいい。在りし日の東京、まだ路上に電車がいっぱい走っていたころの空気感は好き。
読了日:03月31日 著者:内田 百けん

読書メーター


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2021年03月31日

人間関係とコミュニケーションを繊細かつ力強く ――『ファーストラヴ』(2021年)





見:イオンシネマ高松東

 島本理生の書いた「ミステリー小説」である直木賞受賞作を堤幸彦が映画化するということでこれは絶対見たいなと思っていた。タイミング的に本作と『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を同日に見ることになったのだが、この映画だけでもうかなり大満足という気持ちを抱いた。どの役者も役柄を存分に演じていたことや、犯罪とそのカウンセリングを題材にした難しいイシューを正面から上手く取り上げたことをまず評価したい。

 この映画には心理学者である福島哲夫が監修に入っており、パンフレットにもコメントを載せているように、心理職が本作を見ても大いに楽しめることだろう。また、以下の原作レビューでも触れたが心理職であってもおそらく馴染みが深いとは言えない司法面接の場面が多く取り上げられていることも映画化する意味(一般の人が多く触れられるという意味で)は大きいと感じた。



 前置きが長くなったが、本作のために髪を切った北川景子や、「チャラいが有能」な弁護士をそのまま体現していた中村倫也、そしてメディアからサイコパスと揶揄された殺人事件の被疑者を芳根京子が非常にうまく演じている。ここで指摘したい上手さというのは演技の技術的な上手さというよりは、感情表現の上手さだ。

 北川景子は公認心理師の真壁由紀を演じるが、由紀は淡々とカウンセリングをするキャラではなく、どちらかというと情に入ってしまいがちなキャラでもある。本作の場合、彼女がなぜそこまで被疑者に肩入れするのかというところもミステリーとして重要な要素になっているので、純粋にカウンセラーとしてふさわしくないわけではない。むしろ弁護士と適宜連携して被疑者のカウンセリングを進める様子は有能だと言ってよいだろうし、クライアントに共感する能力も必要なことだろう(もちろん一線を引いた上で)。

 そのパートナーである弁護士、庵野迦葉を務めるのが中村倫也だ。有能さを自負したような自信と、その危うさを常にはらんでいる面白いキャラクターを演じつつ、クライアントに対して真摯すぎる由紀をセーブする役割を迦葉は担っている。二人の過去を適宜挿入する中で、社会人になった二人の間に残った禍根がどのように氷解していくかも見どころで、二人が感情をぶつけ合う様は鬼気迫るシーンが多い。

 そして、二人にとって重要なのが庵野我聞であり、演じる窪塚洋介だ。迦葉の義兄であり、由紀の夫でもある我聞は、映画の中では基本的に目立たない。「目立たないが、そこに確かに存在することが重要」という役割を、気づけばアラフォーになった窪塚が好演している。自分が前に立つのではなく、後ろあるいは誰かの横に「居る」という演技を窪塚がしているのは単純に面白いというか、役者の円熟味を感じる二時間でもあった。

 内容については原作をなぞりながらなんとか二時間に圧縮したなという形でまとまっている。映画で印象的だったのは、パンフレットで西森路代が詳しく触れているように映画を通じてフェミニズムの要素を浮き彫りにしていることだ。真壁由紀自身が結婚後もバリバリ働く女性であり、自宅でも仕事をするシーンが何度か描写される(そして自宅ではいつも料理をしたり妻を気遣う我聞を窪塚が好演している)こともその要素の一つだろうなと感じるし、その由紀と、芳根京子演じる環菜が共通して秘めている傷にしっかり向き合っていることが強く印象に残る。それくらい、由紀と環菜の面接の場面はインパクトが強く、かつとても繊細である。

 そして、性被害という傷を取り上げることである。島本理生は芥川賞候補にもなった「夏の裁断」でこのイシューを取り上げているし、引き続き関心のある題材であることがうかがえる。「夏の裁断」の経験があったからこそ、長編の中で、しかも二人分の過去の中に性被害とその傷を導入するという難しいことをやっているのだろうと感じた。

 映画の中でも傷を描き、そしてそこからの回復や癒しをどのように表現するかが、実は最も重要な要素となってくる。ゆえに由紀と環菜、すなわち北川景子と芳根京子の鬼気迫るようなコミュニケーションの応酬が素晴らしかった。どこまでが演技で演技でないのか分からないような、キャラクターが乗り移っているのではないかと感じるほど力強く、かつ繊細に演じていた芳根は本当に見事だったし、冷静と情熱の間を行き来して彼女を受け止めようとする北川の演技も同時に素晴らしかった。二人がそれぞれに役を強く演じることで相乗効果も生まれたのだろうなと、先に引用した舞台挨拶のコメントを聞いていると感じる。そして、とりわけ環菜が背負ってきた抑圧とか呪いとか傷とか、それらに大胆に切り込んで行く危うさも描きながら告発するまでの流れをダイナミックに描く様子はさすが堤幸彦である。

 原作から映画、映画から原作はどちらでもハマる映画だと思う。もう公開が終わった地域が多いかもしれないが、足を運べる人はぜひぜひという作品だ。

ファーストラヴ (文春文庫)
島本 理生
文藝春秋
2020-02-05


 本作は一年前にNHKでもドラマ化されており、こちらは真木よう子が主演している。こちらは見逃したがオンデマンド配信されているようなのでそのうちチェックしてみたい。




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